食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
瑞鶴「…こんなのって…」
葛城「ホントに横須賀基地が崩壊してる…」
大淀「お帰りなさい、生きてる様で何よりです」
瑞鶴「…一緒に行った他のチームは…?」
大淀「2割ほど生還しました、それ以外にも生きていると伝達を送ってきてる分隊もいますが、救助は絶望的です」
瑞鶴「…各地に深海棲艦が現れたとは聞いてたけど…福島の状況は特にひどかったわ」
大淀「でしょうね、深海海月姫を追いかけていたのですから、1番酷い有様を見てしまうのも仕方ありません
それに、敵の本拠地の特定まで達成した時点で十分すぎる戦果です」
葛城「でも、私たちは…」
大淀「北上さんのことは、忘れてください」
葛城「……」
大淀「戦えない人を無理やり生かすくらいなら、戦えるあなた達が生き残った方がいい」
瑞鶴「…ごめん」
大淀「あなた達は、最善を尽くした…責めるつもりはありません、まあ…レ級が生存してしまったことくらいが辛い点ですか」
葛城「あのレ級…一撃の威力がイカれてるわ」
大淀「ですがそれが弱点にもなります、あのレ級は砲撃の直後は動けない」
瑞鶴「…確かに、結構クールがあった様な…」
葛城「動けないなら、その隙さえつければチャンスは…」
大淀「ありますが、あの耐久力は異常です、いくら戦艦とはいえ、主砲の接射を頭に10発以上喰らって耐え切れるはずがない
だというのに、体は千切れとんでいるのに、平然と生きている」
瑞鶴「……殺しきる手段は無いの?」
大淀「なくは無いですが、中々厳しいですね、それこそ辺り一帯ごとチリも残さずに焼き払うとか」
瑞鶴「…それで生きてたらバケモノすぎるわね」
大淀「とりあえず…休む暇は有りません、即座に移動の用意を」
葛城「どこへ?」
大淀「大湊です、物資もそっちに移しますよ」
夕張「はー…マジ?それ…私ホントにこっち優先していいの?」
大淀『はい、ご自分の手で決着を』
夕張「横須賀も無くなったっていうのに…」
大淀『本拠地なんていくらでも移せばいいんですよ、次は大湊です』
夕張「……いつまでやるつもり?」
大淀『死ぬまでです』
夕張「……」
大淀『嘘ですよ、とりあえず落ち着くまでは戦わなきゃ…犠牲者が増えるのを止めなきゃ、私は…どこにも行けない』
夕張「…慰めの言葉は…要らない?」
大淀『いつでも受け付けてますけど、直接会った時のお楽しみで』
夕張「……ありがとね」
夕張(私が生きて帰って来るって信じてくれて)
由良「モウイイノ?」
夕張「これが最後じゃ無いから」
由良「……ソウネ」
夕張「……さて、待ってなさい、明石…すぐ助けるから」
ビル街の中の一軒のビル、その地下駐車場…
夕張「人気が無いというか、駐車場なのに車が無さすぎる、有人タイプのゲートなのに誰も居ないし…何かあったのは間違いなさそうね」
由良「武器ハ?」
夕張「なくは無いけど、取り敢えず進みましょ?」
…それにしても、静かすぎる
夕張(警備員が全滅してるにしても、深海棲艦の1匹くらい…いてもおかしくなさそうだけど)
由良「…夕張…」
夕張「わかってるから」
由良(…違ウ、夕張ハ、何モ…)
夕張「……居る」
由良「エ?」
拳銃を取り出し、前方に向ける
由良「…ドコニ…ッ?!」
照明が消えて、辺りが真っ暗になる
夕張「……」
由良(…ナンデ、暗ク…夕張ハ、見エテナイノ?…私ハ、見エルケド……ア)
夕張(知ってるわよ、深海棲艦の中にはその名の通り、深海に適応して暗闇でも見える個体がいる…知ってる、知ってるから、屋内戦の準備はして来た)
片手で拳銃を向けながら、もう片方の手でグレネードを取り出す
夕張「……」
親指でピンを抜き、投げ、目を閉じる
由良「ッ!?」
夕張「…暗闇では瞳孔が開く、光をできるだけ取り込むために…それは人間も同じね、だけど…一瞬でも光を受けると瞳孔は収縮するの…これで暗闇はあんたの味方じゃ無いし」
1発発砲する
ネ級「ク、クソッ!」
声のした方をライトで照らし、撃つ
夕張「暗闇から急に閃光を受けると、そもそも視界が機能しなくなる、アンタの負けって事よ」
ネ級「知ルカ!ソンナ事ォ!!」
ネ級の艤装がこちらに向き、主砲を向けてくる
夕張「…この狭い通路じゃ、逃げられない、わよね…」
ネ級「コレナラ見エナクテモ!……ァ…?」
夕張「どうしたの?なんで撃たないの?…いや、撃てないわよね?」
ネ級「…ナ、ナンダ!?ナンダコレハ!!」
夕張「同じ失敗を繰り返さないのが科学者よ、たとえ失敗しても、データを取り、学ぶ…同じ失敗をしたとしても、それはちゃんと意味がある」
ネ級「ナ、何ヲシタ!オ前ノコントロールハ…」
夕張「この銃、実は2つ仕込みがあるの、一つは弾丸、受信機能を搭載してる、つまりアンテナ…もう一つは銃本体、これは…信号を拡大する装置
ホントは、空母棲鬼の信号を拡散するための機能だったけど」
ネ級「ソ、ソレデ艤装ノコントロールヲ…?」
夕張「アンタらの艤装、生体ユニットと互換性があって、触れればコントロールできちゃう様なシロモノなのよ?忘れてた?
…弾が当たった時点で、アンタのコントロールは私のもの」
ネ級「……マダ…マダダァ!奥ノ手トイコウジャナイカ!」
夕張「奥の手って…由良のこと?」
振り返る
手を振り上げたまま、由良も止まってる
夕張「…悪いけど、さっき、アンタよりも先に撃ったのよ」
由良「夕張…」
夕張「ネ級がなぜ私のコントロールを受け付けなかったのか、それを考えた結果…こちらの信号を打ち消しているのだと推測した
だとしたら、より強い信号でそれを無効化すればいい…でも、もしかしたら…原種は深海棲艦をコントロールできる、ここにいるのなら…」
…原種がここに潜んでいたら、由良は間違いなく敵になる
だから誰にも気づかれない様に撃ち込む必要があった
夕張「由良の事、信用してないわけじゃなかったけど、可能性を否定はできなかった、だから念の為備えさせてもらったわ」
由良「……違ウ、夕張…」
夕張「後で聞くから」
ネ級「…クソ…クソクソクソ!コウナレバ!!」
ネ級が走り出す
夕張「っ!動けるの…!?当たりどころが悪かった!?」
即座に追いかける…が
ネ級「止マレ」
夕張「…っ…」
明石「…夕張、それに…なんで?由良まで…死んだんじゃ…」
由良「明石…」
夕張「放しなさい、アンタに助かる道は無いわよ」
ネ級「黙レ!ソノ銃ヲ捨テロ!」
夕張「……」
銃を捨てる
ネ級「オイ!ツ級!ソレヲ壊セ!」
由良「……」
由良が拳銃を踏み潰す
明石「由良…」
夕張「…アンタ、ホントに……知らないわよ?」
ネ級「脅シガ通用スルトデモ?…今脅サレテルノハオ前ダ」
夕張「……」
余計な動きはできない…か
でも、もしチャンスがあるのなら…残された手段は…
夕張「…いや……無理ね」
ネ級「オ前ヲ殺シテ、終ワリダ、ツ級、連レテ来イ」
由良に両手を後ろで掴まれたまま、ネ級の方へと歩く
夕張「……はあ…」
ネ級「モウ、2度トソノ顔ヲ見ズニ済ム」
ネ級の腰から生えた、2つの艤装が大口を開く
ネ級「死ネ」
夕張「っ!」
明石「夕張!」
両肩に喰らい付いて…
そのまま、骨を…
ネ級「ッ…?」
夕張「奥の手って…知ってる?最後まで隠しておくから、奥の手って言うんだけど」
ネ級「ナ、ナン…ダ…動ケ、ナイ…!?」
夕張「…私、遠隔でしか艤装をジャックした事なかったけど…直接触れても当然…止められるのよね
なんで深海棲艦ってみんな詰めが甘いのかしら」
ネ級「ダ、ダガ…ソノ身体デハ…!」
夕張「知ってる、だから」
由良「…ッ!」
由良がネ級に飛びかかり、顔面を蹴り飛ばす
夕張「こういう事」
ネ級「グ……ガ…」
夕張「由良は、深海棲艦である前に、私の…1番古い友達の1人よ」
由良「夕張…」
夕張「まあ、信用しきれなくて撃っちゃったけど」
由良「夕張!?」
夕張「後ろでの高速も、掴んでるフリだったし?ちゃんとそこで信用しなおしたって」
ネ級「クソ…コンナ…」
夕張「明石、アンタは無事なの?」
明石「うん…ありがとう、助かった」
夕張「さて、と…」
ネ級「クッ…!」
夕張「……アンタを痛ぶる様な真似はしないわ…敵討ちだもの、中途半端なことはせず…確実に殺す」
ネ級「…ヤッテミレバイイ…!」
夕張「言われなくても…ッ!?」
爆発音が響く
夕張「何よこの爆発…!」
明石「えーと…秘匿性の高いラボなので…有事の際は…その…チリとなる予定で…」
夕張「こんな街中でなんて事してくれてんのよ!?」
由良「今チリニナッテモ…カナリ手遅レネ…」
ネ級(…今ダ!)
夕張「えっ」
ネ級の艤装が突如動き出し、次は明石を狙って…
由良「サセナイ!!」
由良が間に割り込み、艤装に噛みつかれる
明石「ゆ、由良!?」
ネ級「貴様ァ!」
由良「2人共!逃ゲテ!」
夕張「…っ……行くわよ!」
明石「で、でも…」
由良「イイカラ!…ネッ?」
夕張「…ごめん」
由良を置いて、来た道を走る
由良「…貴方ハ、ココデ由良ト一緒ニ死ヌノ…!」
ネ級「何故ダ!貴様モ強イ恨ミトトモニ深海棲艦ニナッタハズ…!」
由良「ソンナノ……とうの昔に、忘れちゃった」
夕張「…他のビルまでは倒壊しなかったか…ちゃんとラボだけ潰れるように計算されてるのね」
明石「えと…うん」
夕張「……由良…」
明石「由良の事、また聞かせて…ずっと、謝りたかったのに…また、謝れなかった」
夕張「わかった…っ?」
今、瓦礫が…
夕張「由良!?」
明石「えっ!?」
2人で瓦礫を掘り起こす
夕張「由良!……って…」
瓦礫の中から出て来たのは…
ネ級「ゲ……」
明石「身動き取れないみたいだけど」
夕張「……チッ」
掘り起こした瓦礫を持ち上げて、振り上げる
ネ級「ヒッ」
グチャッ…ドチャッ…グチャッ……
夕張「ふぅ…ようやく、敵討ちも終わったし…帰りましょ」
明石(爽やかな顔してるけど、あの…すっごいグロい事に…)
夕張「……由良のお墓も、建てなきゃね」
明石「…うん」
摩耶「面会謝絶だって言われなかったか?」
大淀「病院じゃないので、そんなシステムはありませんよ」
摩耶「…で、何の用だ?まさか今更深海棲艦と戦えとか言わないよな?」
大淀「そのまさかです」
摩耶「……裏切るぞ」
大淀「裏切りませんよ、貴方は」
摩耶「……」
大淀「貴方には、死ぬ気で働いてもらいます、1番危険な仕事をしてもらいます…もう、貴方しか北上さんの代わりができる人はいませんから」
摩耶「…代わり?」
大淀「亡くなったんですよ、北上さん」
摩耶「……何だと」
…どこだろう、ここは
布団の上?なぜ…窓ガラスも散らばってる
「……」
何とか立ち上がり、辺りを見渡す
「…下への階段?」
階段を降りるとすぐに、キッチンとリビングがつながった部屋があった
「……お腹減ったな」
冷蔵庫を開けてみた
冷たい空気が感じられた
色々あった
「……盗み食い…いや、だめ……うう…ごめんなさい」
……最終的に、冷凍庫にあった唐揚げと、炊いたご飯、それからパックのサラダを拝借してさらに盛り付け、レンジで温めた
「…冷凍唐揚げ食べるの初めてだ…美味しいのかなぁ」
温まった皿を並べ、シンクのフォークを軽く水で濯いで拝借する
「…いただきます……あむ……」
北上「…おいしい…」