食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
北上「ふぁ…あ」
あれから私は廃墟の民家を転々としている
目覚めた時の状況から推察すると…
あの時、攻撃で吹き飛ばされた時…民家の窓を突き破り、寝室の布団の上に着地したおかげで何とか生き延びてたみたい
北上(それにしても、この辺り、ホントに人がいない…)
代わりに…
イ級「ギシッ?」
ロ級「ギギッ」
北上(……昨日寝てた家、荒らされてる…やっぱり痕跡が残っちゃうのかなぁ…)
大量のバケモノがいる…
執拗にねちっこく探してるみたいで、私は今のところ何とか隠れて逃げ延びてるけど…
北上(行くアテもないし、どうしよう…)
毎日毎日、寝床を変えながら、電気の生きてる家に入って冷蔵庫を漁ったりしてる…でも
北上(…だめだ、この家も電気が…)
…やっぱり、この街、電気が止まり始めてる
というか、とうとう止まったというべきなのだろうか?
人のいないエリアに電気を送り続けるもの好きはいないだろうし、いつかは止まると思ってたけど
北上「…うーん……移動しなきゃだよね」
とは言っても、この義足じゃ歩くのもやっと…
北上(…見つかったら、逃げ切れるのかなぁ)
北上「…わ…」
何かに足が辺り、躓く
北上「…っ…!…こ、これ…人?」
膝をつき、遺体を調べる
…服装は軍人の様だったけど…
北上「年…私と同じくらい…?もうちょっと上かな…」
…顔も半分食べられてるし、お腹も…
北上「…食べられたら…死んじゃうんだ…?
…死ぬ…?……何だろう、この感じ…」
…心臓が、早くなる様な、頭がパチパチする様な感覚…
北上「…死ぬ…?死ぬって、何…?何、これ…は…はぁ…っ…?」
遺体の手に握りしめられていた無線機を持ち上げる
北上「……何も聞こえない…ふ…はぁ…息、なんだか…くるし…」
改めて、辺りを見回す
北上「…う…うぅ…」
ぐちゃぐちゃになった深海棲艦の死体の山
捩れて壊れた小銃
半分に折れて突き刺さってるナイフ…
北上「は…は……う…うぇ…っ…」
その場に
北上「うえぇ…うぷっ…は…」
ぼんやりと視界が歪む
私は何をみてたんだろう…そうだ、寝泊まりしてた家も、そこかしこに血溜まりがあったのに
そうだ、ちゃんと見ればわかったはずなんだ
ちゃんと怖かったはずなんだ
北上(なんで…?な、なんで、どうして…?今になって、急に怖い…何が、何なのか…)
おかしい
おかしいおかしいおかしい…
北上「あっ」
イ級「ギ、ギギ…」
バケモノが、いつの間にか…
北上(…だ、ダメ、体動かない…)
逃げたいのに、上手く立ち上がれない
目の前が点滅して、涙が溢れ出て来て…
イ級「ギジャアァァァッ!!」
ババババババッ!!
イ級「ギ、ギジッ…」
銃撃を受け、バケモノが転がる
「おーおー、意外とちゃんと使えるじゃねえの、ええ?」
ガラの悪い人がバケモノの死体を蹴っ飛ばす
北上「ひ、人…?」
「…なンだ…オイ、オイオイオイ、ホントに幽霊になったってか?片足だけ無えぞ」
北上「へ?え?」
「…オイ、何ボーッとしてんだよ……お前、ホントに北上か?」
北上「…いや…えっと…どなた様、ですか…」
「っ……」
摩耶「…ふざけんなよ、摩耶だ、見りゃわかんだろーが」
北上「いや…その…」
摩耶「……どうなってやがる…っ?…オイお前、それ…」
北上「へ?…これ…?
…無線機を差し出す
摩耶「そうだ、それだ…こっちのが壊れてな
よし、これは壊れて無いな…あ?…なんだ?これ…何も聞こえねー…音量か…そうか、位置を特定されない様に音を消してたのか…」
無線機『…り離脱せよ…繰り返す突入部隊に伝達する、現在援軍は望めない、自身の身を守ることを最優先にし、交戦地域より離脱せよ…繰りか』
摩耶「…なるほどな、そいつは逃げる途中にやられたか」
北上「あの…?」
摩耶「…お前、ホントに何もわかんねえのか?…そんなボケッとした顔しやがって…」
北上「……ホントに、人…?…生きてる…?」
摩耶「…お前ホントに頭おかしくなったんだな」
北上「えぅ…ぁ…」
摩耶「あ?」
北上「ぐすっ」
摩耶「な、泣いてんのか!?お前が…?!ちょっと待て!ここで大声で泣くな!」
口を抑えられ、家屋の奥の方に引きずられる
摩耶「…マジで何も覚えてねえのか」
北上「はい…」
摩耶「…それでよく生きてやがった…いや、感情がバグってたせいか?」
北上「感情…?」
摩耶「生体ユニットの抑制機能だ、メンタル管理とか抜かして不安定になった人間の感情を封じ込める…
恐怖とか、そういう感情は特に最初に消される、その影響だろ」
摩耶(三宅島で会った時に感じた雰囲気の違いも、それなら説明がつくしな…)
北上「…だから、さっきまで怖さを感じてなかった…?」
摩耶「……深海棲艦は、視覚、聴覚、嗅覚、それから、相手から漏れ出す感情で獲物を探す…恐怖を振り撒くのは、自分がここにいるって伝えてる様なもんだ、怖がるなよ」
北上「そんなこと言われても…」
摩耶(…一般人のガキになっちまったら、怖いもんは怖いか…ったく)
摩耶「ああクソッ!…大淀のヤツ、情報何もかも間違ってんじゃねえのか?
北上は生きてるし、この調子じゃ生存してるやつもほとんどいないだろうし」
北上「…あの、摩耶さんは…」
摩耶「あぁ!?」
北上「ぴっ」
ビックリして体が跳ね上がる
摩耶「…悪りィ…でもこの位でビビんなって、頼むから…」
北上「は、はい…」
摩耶(クソ、北上のクセにこんなんでビビられると…マジに調子狂う…!)
摩耶「で、なんなんだよ」
北上「…摩耶さんは、何しにここに…」
摩耶「ここに取り残された奴が逃げるのを支援しに来た、装備品もほとんど無しで、実質捨て駒だがな」
北上「え…」
摩耶「……ここに敵の親玉がいるらしくてな、結構な戦力を送り出したが、ほとんどが壊滅、一部の戻って来た奴ら曰く、ここに取り残されてるらしい
…するってーと…見殺しにするか、助けるかって選択肢が出てくるわけだ…助けたいが、これ以上はリスクが大きすぎる」
北上「なのに、来たんですか…?」
摩耶「…責任をとりに来た様なモンだ」
北上「責任?」
摩耶「……何でもない、忘れろ」
摩耶(…無線機使っても、他の生存者との連絡は取れなかった、さっきの死体みたいに音を消してる可能性が高いな
本部への無線も応答なし…通信機器も壊されてる可能性が高い…ヘリも近づけないって話だし、となると…)
摩耶「オイ、ついて来い」
北上「どこへ…?」
摩耶「お前を連れて帰る、取り敢えず、ここはもう終わりだ」
北上「…終わり?」
摩耶「もう誰も助けられねぇよ、これ以上生き残ってるやつは居ねえだろ…」
北上「……居ます」
摩耶「あ?見たのか?」
北上「見ては、無いけど…」
摩耶「ならなんでそんな事が言える、この状況でどうやったら生き残ってる奴がいるなんて…」
北上「私が生きてるから…多分、私みたいに生きてる人が、きっと…!」
摩耶「……話になんねぇ、運が良かっただけだろ?」
北上「確かに、そうかもしれないけど…でも、他の人なら私よりもきっと…!」
摩耶「じゃあテメェ1人で行けよ、片目がダメで片手片足も無え、歩くのも遅い上に戦えもしねえ…そんなお荷物連れてさらに荷物を増やすなんざ、無理なんだよ…!」
北上「っ…」
…確かに、私は…
摩耶「良いか、お前が今生きてるのはたまたま運が良かったからだ、みんな等しく運良く助かるなんざ思うな!!
…誰も助からねえなんて、良くある話だ、誰1人帰ってこないなんてのも、稀じゃ無え…」
北上「でも…なら、私、私はいいから…!」
摩耶「置いて行けってか?どうするんだ?お前1人で」
北上「それは…えっと…戦う…?」
摩耶「戦えるのか?その身体で!!今ある命を捨てるな、お前はもう戦わなくて良いんだろうが!」
北上「もう…戦わなくて、いい…?」
摩耶「そうだ、お前に戦う理由は無い、一般人になったんだろ…?自分が生きてりゃそれで良いだろうが、それ以上を望んで何になる?何にもならねえよ」
北上「……何にも、ならない…?」
摩耶「そうだ、何にもなりゃしねえ…特に、お前にとってすれば…知りもしない奴らだろ」
北上「……」
摩耶「変な気を起こすのはやめとけ…自分の為に生きろ」
北上「自分のために…」
…逃げて、生きて…生き延びて…
その先に…私に、何が待ってるんだろう?
北上「……」
摩耶「オイ、聞いてんのか?」
北上「…私、の…為…私の…?逃げ出して、生きて、どうしたら…?」
摩耶「オイ」
北上「っ…」
摩耶「ったく」
抵抗する間もなく、肩に担がれる
摩耶「暴れんなよ」
北上(…私、どうしたら…暁…)
大淀「荷物は」
瑞鶴「積み込んだけど…」
葛城「この先、どうなるんでしょうか?」
大淀「わかりません、取り敢えず、私はここに残ります」
瑞鶴「えっ?」
大淀「…生存してるチームを回収する為に、斥候を送りました…と言っても、皆さんに装備を回したせいでまともな装備は用意できませんでしたが」
葛城「あそこにいるチームは、現状どのくらい生き残ってるんですか?」
大淀「わかりません、救難信号は全て途絶えました、対空に特化した深海棲艦もいるようで、航空機も近づけません」
瑞鶴「斥候は…」
大淀「実力の高い者を送りました、少なくとも簡単には死にません、しかし…通信施設も破壊されたので…」
瑞鶴「…逃げ出してくれれば、助かる道はあるんだろうけど」
大淀「何か見つけるまで、逃げないでしょうね…何かしらは持ち帰ろうとするはずです」
葛城「…そう」
大淀「なので、私はここで待ちます、それが指示を出した私の役目です」
瑞鶴「…役目、ね」
大淀(…やはり、私にはこんな立場は向いてなかったんでしょうね)
川内「よっと」
瑞鶴「うわぁ!?」
葛城「い、今…降って…!?上空なんだけど!?」
神通「……」
大淀「任務、お疲れ様でした」
川内「うん、とりあえず…できる限りの深海棲艦潰して来た」
神通(武装がもうボロボロになりましたけど)
大淀「…あなた達が現在の最高戦力です、もう一働きお願いします」
川内「プランは」
大淀「…まだ考えています、どうにか、深海棲艦を集めて、殲滅できれば…」
川内「その後は?」
大淀「……」
川内「仮に国内の深海棲艦が全部消えても、どんどん乗り込んでくるよ、原種一匹上陸されたら終わりだよね?」
大淀「…私は、今から、海底センサーの再稼働を進言して来ます」
神通(…昔の防衛システムを…?)
大淀「…今やれることをやります」
瑞鶴「でもそれ外務省の仕事じゃないでしょ」
大淀「今更です、それに深海棲艦と交渉する為だけに異動したのに、その深海棲艦が敵対している以上…私の価値はそこには無い」
川内「…ま、深海棲艦と全面戦争って方向性だけは変わらなさそうだね、新しい武器を用意しないと…」
夕張「それなら、任せて?」
大淀「夕張さん…」
明石「私もいるんですけど!!」
神通(どなたでしょうか…?)
明石「ラボは無くなったけど、艤装くらい生きてる工廠と資材があれば作れる」
夕張「そして、尻屋崎の大湊警備府は空襲でほとんど壊れてるけど、工廠の設備がある…行ってみない?!」
川内「へえ…良いね!そうしよう!」
神通(できれば刀も作り直してもらいたいんですけど…)
川内「わかったわかった、神通の太刀作り直せる?」
夕張「…やっぱダメだった?」
川内「いや、使いすぎで刃がボロボロになっちゃってて」
夕張「耐久力とかそういう壊れ方じゃ無いわねこれ…」
神通(私の使い方が荒いと?)
川内「連戦だったんだから仕方ないって」
明石(この2人、どうやってコミニケーション取ってるの?)
夕張「オーダーは了解したわ、さあ、いきましょうか!大湊に!」