食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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生き残り

摩耶「ッ!」

 

修理されたばかりの艤装が、どんどん傷付く

何度も何度も攻撃の盾にしてしまっている、本当に必要な時に動く保証が無くなっていく

 

多摩「!」

 

摩耶「く…ッ…!」

 

さっきまでとは練度(レベル)が違う、動き一つ一つ、それこそ…本当に一挙一動が力強く、速く、そしてなにより…

 

摩耶(ここだ!)

 

摩耶「えっ…」

 

…かわされた、しかも、まるで見切ったみたいに体を揺らす程度の動きで

 

多摩「……」

 

…スキが無い、攻撃を“させられている”

 

摩耶「があっ…!?」

 

重い打撃が腹に響く

 

一発撃つたびに痺れる腕が、全身の動きを鈍くする

そしてその砲撃を“誘われて”いる、こちらのスキを創り出すために

 

摩耶「クソッ…クソがァ!!」

 

弄ばれているのとは違う

無駄のない動き

 

摩耶(なんだこれなんだこれ!!意味わかんねぇっ……クソォッ!!)

 

摩耶「!」

 

後方から、金属が擦れる音

 

摩耶「北上!手ェ出すな!!」

 

すぐさま振り返り、銃を持ち上げようとしていた北上を怒鳴る

 

北上「だ、だって…」

 

摩耶「見てらんねえなら1人で逃げろ!絶対に…うぐっ…!」

 

蹴りを受け止め、顔面に頭突きを喰らわせる

 

摩耶「ちょっと待ってくれよ…!絶対、アイツにはアンタを傷つけさせねえから…!」

 

多摩「……」

 

あの日、面会に来た川内から話を聞いて、どれ程悔いたか

どれほど想ったか

 

摩耶「…もう遅いのは、わかってる…でも、これ以上は失いたくねェ…!」

 

掴んでいた脚を離して突き飛ばし、軽く屈んで…

 

多摩「!」

 

摩耶(後ろに跳ぶ…と、思ってくれよ…!)

 

多摩さんが銃を向けようとした瞬間、跳び上がり…

 

摩耶(上から!!)

 

摩耶「っらぁぁァァッ!!」

 

銃を持った手を蹴り飛ばし、顔面を踏みつけるようにのしかかる

 

…が

 

摩耶(固っ!?)

 

コンクリートに着地したようなこの感覚…

 

摩耶「っ…クソがクソがクソが!!」

 

地団駄を踏むように顔面を何度も踏みつける

何度も、何度も…何度も

 

摩耶「っ!!」

 

体制を崩しながら、飛び退く

…ついさっきまで脚があった部分を多摩さんの手がすり抜ける

 

摩耶(っぶねぇ!あの状況で反撃できるのか……掴まれたら、逃げられなくなったらそれで終わりだ!だが距離をとっても有効打がねぇ…!)

 

摩耶「どうする、どうすれば…殺し切れる?」

 

…もっと火力が…

 

摩耶「…そうか!北上!さっきの、艤装の位置まで先に行け!すぐに追いつく!」

 

北上「えぇっ!?」

 

摩耶「そこまで行かなきゃ勝ち目が無えんだよ!!」

 

北上「わ、わかった…!」

 

摩耶(今は、時間を稼ぐ!)

 

北上をそこまで行かせなきゃ、助かる道はない…

 

 

 

 

北上「はぁ…はぁっ…」

 

義足の右足を引き摺るよ、できるだけ速く、できる限り速く

 

北上(ちゃんと、動かない…!)

 

でも、さっきよりだいぶん早く着くことができた

 

北上(そうだ、摩耶さんを助けるために…)

 

…直したものは、主砲一つじゃない

もし可能なら…

 

 

 

摩耶「うァあッ!?」

 

吹き飛ばされ、漁港の壁に叩きつけられる

 

摩耶「ぐ…う……!」

 

多摩「……」

 

摩耶「…大丈夫だって、多摩さん…北上にゃ、アンタを傷つけさせねぇ…何より、アンタにアイツを傷つけさせねぇ…」

 

よろよろと立ち上がり、口の中の血を吐き捨てる

 

摩耶(だが、そうは言っても…勝ちの目は無いも同じ)

 

背を向けて逃げ出す

…数秒だ、そろそろか?

 

摩耶「…3……2…1……ここだ!」

 

姿勢を低くして背後から飛びかかって来た多摩さんをかわす

 

摩耶「オラァ!!」

 

ガラ空きの背中を蹴り飛ばし、目的地を目指して走る、ただひたすらに走る

 

摩耶「!」

 

北上「ま、摩耶さん!これでいい!?」

 

摩耶「おまっ…魚雷なんか直しても使い道ねえだろ!!それじゃねえ!艦載機だ!よこせ!」

 

北上「わ、わか…危ない!」

 

摩耶「っ」

 

その場を飛び退いて、多摩さんの攻撃を交わす

 

多摩「……」

 

ちらりと、視線が北上の方へ…

 

摩耶(ダメだ、ここで逃げたら北上を狙われる!)

 

摩耶「北上!お前が飛ばせ!」

 

北上「えぇっ!?」

 

摩耶「やれ!さっさとしろ!!」

 

北上「と、飛ばすって…ラジコンじゃ無いのに…」

 

素早く、そして小さいジャブのような攻撃をギリギリでかわす

かわす、かわす、かわす…捕まった

 

摩耶「っ…」

 

肩を掴まれ、抵抗すらできない程の力で地面に引き倒される

 

多摩「……」

 

顔面に向けて振り下ろされた拳をギリギリでかわす

…後頭部に触れているコンクリートが砕けた音がした

 

摩耶「っ!」

 

地面に突き刺さった腕を片手で掴み、もう片方の手で肩を押し、あとは体の勢いで…

 

摩耶「らあっ!」

 

持ち上げて、地面に叩きつける

 

摩耶「…その腕コンクリに固定してへし折るつもりだったのにな…

コンクリの方がぶっ壊れちまうんだから、やってらんねえよ」

 

多摩「……」

 

摩耶「…多摩さん、そろそろ勘弁してくれねえか?」

 

まあ…容赦無く距離を詰めてくるあたり、答えはNOだ

 

摩耶「だよな、だと思ってた…」

 

掴みかかってくる腕を逃げずに受け止める

 

多摩「!」

 

摩耶「この距離なら、どうだ!?」

 

主砲を腹部に突きつけて接射

1発、2発、3発…カチッ

 

摩耶(弾切れ…だが!)

 

掴みかかって来た力は確かに弱まって…

 

摩耶「っらあ!」

 

頭突きをかまし、よろけた所を殴り、蹴り飛ばす

 

摩耶「…は…よーやく、かすり傷くらいはつけられたか?」

 

撃ち込んだ場所が、約5センチほどえぐれて出血している

 

多摩「…!」

 

摩耶「希望が見えて来やがった!」

 

距離を取り、北上の方に走る

 

北上「え、あ、飛行機まだ動かないよ!?」

 

摩耶「用があるのはこっちだ!!」

 

魚雷発射管を持ち上げる

 

摩耶(コイツを叩き込む!)

 

多摩「……」

 

摩耶(あの傷口、ゆっくりただが再生してる、あんな小さな傷口だが、今は…アレが勝機だ!)

 

内側からぶち壊せば…チャンスはある…!

 

摩耶(多摩さんの一撃一撃の破壊力はとんでもねえ、だが…動きは単純だ、なら…やれる!)

 

踏み込み、近づこうとした瞬間向こうから前蹴り…

 

摩耶「読めてンだよ!!」

 

横に跳んでかわし、追撃をいなし

 

摩耶「もらった!」

 

魚雷発射管を持った手で、殴りつける

 

多摩「!」

 

摩耶「な…?」

 

…殴りつけた、あとは、射出するだけのはずが…

魚雷発射管ごと腕を掴まれ、鋼鉄の外装が紙のようにひしゃげた…そして、腕も

 

摩耶「っ…ぁ…!?」

 

声も出ない、肉と血が弾けて飛び散った…だが

 

摩耶「…うあぁぁぁっ!!」

 

ひしゃげた魚雷発射管を身体ごと押し付ける

 

摩耶(こんだけグチャグチャにイカれたんだ!なら…)

 

炸薬に火が付くはず

 

摩耶「っらぁっ!!」

 

突き飛ばして体制を崩した所を馬乗りになり、魚雷発射管を顔面に押し付ける

 

摩耶(爆発しろ!さっさと()ぜやがれ!!)

 

…爆発しない…

 

摩耶「チッ!なら!」

 

無事な手で足元の石を掴み、弾頭を叩こうとした瞬間…

 

摩耶「っ!?」

 

炸裂して、身体が真上に吹き飛ばされる

 

摩耶「か……あがっ」

 

…地面にボタリと落ちた

身体中がヘドロのように重たく、感覚が無い

 

摩耶「…どう…だ…」

 

多摩「……」

 

摩耶「……な…!?」

 

生きている

しかし、腹部が吹き飛ばされて大穴が空いている…

 

摩耶(くそ…アレで…致命傷にならねえのかよ……)

 

…多摩さんの傷口がゆっくりと再生していく

 

摩耶(ダメだ、ダメだダメだダメだ!…ここで、止まれねぇ…!)

 

摩耶「う…ふぐ…!…が…!」

 

体が動いてるのかすら…もはやわからない

見えてないだけでもう全身がグチャグチャに…

 

摩耶(…こんなとこで!!)

 

摩耶「っ!?」

 

多摩さんに背後から艦載機が突っ込んで、自爆した…?

 

摩耶(何が、起きて…)

 

視界に誰かが映る

…こっちに来てる…アレは…

 

摩耶(アレは…榛名か…?…そうか、あの世からの迎えが来やがった…か…)

 

…近づいて来た榛名らしき人物が目の前でかがみ込む

……急に、意識が覚醒して…

 

摩耶「いっ…!?いぎっ…いでっ…!クソッ!なんだ、これ…!」

 

北上「き、傷、塞がってる…!?」

 

摩耶「な、なんだ…これは、修復材…か…?」

 

山城「良かった、間に合った…」

 

霧島「でも、これで装備は全部ダメになりましたね…」

 

…体が動く

さっきまでがどれほど酷い状態だったのだろう…指先が動く感覚にすら脳が混乱している…

 

摩耶「……」

 

立ち上がり、バラバラに吹き飛んだ多摩さんの肉塊(にくかい)に近づく

 

北上「ま、摩耶さん…?」

 

摩耶(……)

 

目を閉じて、ただ、祈った

 

 

 

摩耶「…お前らがあの艦載機を動かしたのか?」

 

山城「まあ…そうね」

 

霧島「あんなガラクタみたいな艤装がほんとに動くなんて…」

 

摩耶「助かった、礼を言う、で、お前ら何モンだ?見た目も…正規の装備じゃ無さそうだしな」

 

山城「それはそっちもそうでしょ…」

 

霧島「……」

 

摩耶「言いたくねえか、じゃあ質問を変える、お前らを動かした奴は、大淀か?」

 

山城「…そう」

 

霧島「貴女も…?」

 

摩耶「そうか、じゃあお前らも罪人か?」

 

霧島「…“も”ってことは…」

 

山城「……こっちの霧島は何も悪い事はしてないわ、私が…良くないから巻き添え」

 

摩耶「そうか、霧島か……まあいい、境遇は同じだ、お前ら手伝え、生き残り同士ここから脱出するぞ」

 

山城「それよりも、確認したいことがあるんだけど」

 

霧島「あの…そこの人って」

 

摩耶「…あ…?」

 

北上「あ…摩耶さん、私この人たちと舞鶴で会ってるらしいんだけど…」

 

摩耶「……お前らの知ってるやつとは別人だ、期待すんなよ」

 

山城「…そうなのね」

 

霧島「同じ人でも、片手片足じゃあどうしようもないですよ」

 

北上「……」

 

摩耶「おい、霧島、口に気をつけろよ

北上(コイツ)が艤装を修理してなかったらアタシは死んでた、アタシの命の恩人を侮辱するな」

 

霧島「……わかりました」

 

摩耶「とりあえずここに留まるのはヤバい、ついてこい」

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