食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
山城「ねえ」
摩耶「なんだ?」
山城「山中には深海棲艦が居ないんじゃなかったの?」
摩耶「居ないとは言ってねえ、少ない筈だって言ったんだ」
北上「その辺にウヨウヨいる…」
霧島「しかも、元来た道も塞がれてしまいましたね」
…まあ、これでも歩いてかなり進んだ
引き返すにはそれと同じ以上の時間がかかる
山城「…怯えは捨てなさいよ」
霧島「わかってます、というか、苛立ちも抑えてください」
北上(怖い以外もダメなんだ…?)
摩耶「チッ…行ったか、進むぞ」
北上「あ、待って、あそこ」
摩耶「あん?」
北上「向こうに生えてる木の実、食べられるよ」
摩耶「……」
言われた方向を見上げる
赤い小さな果実…
北上「たしかね、ヤマモモって言うんだよ、ジャムにしたら美味しい」
山城「……もうずっと何も口にしてないし」
霧島「とってみましょうか…」
枝を折り、果実をそれぞれ口にする
山城「……ん…酸っぱ…」
霧島「美味しくは、ないですね…多分このまま食べるものでは…」
北上「え?すごく美味しいと思うけど…」
摩耶「口に入れるのを躊躇うほどじゃねえ、さっさと食え」
北上「え?ねえ、それ遠回しにマズイって言ってない?」
摩耶「ウマくはない」
山城「まあ、うん…」
北上「えー、じゃあ、じゃあ、これは?」
北上が草の根を掘り、見せる
山城「なにこれ」
霧島「…緑の草に、小さい玉ねぎみたいなものが…」
摩耶「コレあれだろ、スイセンってやつだろ」
北上「んーん、ノビルだよ、コレ、土を落として酢味噌でこの球根食べると美味しいんだぁ」
摩耶「酢味噌なんかねぇよ」
北上「まあね」
北上が泥を落として球根を頬張る
北上「んー、おいしい」
…続いて食べたが、とても美味しいとは…
摩耶(なんでコレが上手いんだ?味覚イかれてんのか?)
山城「ゔぇっ!…ま、まず…」
北上「…好き嫌いは良くないよ」
霧島「コレはそんなレベルじゃ…」
摩耶「なあ、なんでこんなのに詳しいんだ?お前、自分の家族の顔も思い出せないんだろ?」
北上「んー……なんでだろ?…不思議と覚えてるんだー
…好きだから、かな?」
霧島「好き?コレが?」
北上「こう言う、身近にある食べ物、食べたり発見したりして、すごく楽しいんだよ?」
摩耶(よくわかんねぇ…)
北上「だから……っ?…あ、上!」
摩耶「あれは…!」
真上を通り過ぎたが、あれは深海棲艦の艦載機
霧島「見たかった?」
摩耶「そう考えるのが妥当だ、急ぐぞ!」
北上「う、うん!」
できる限り急いで先に進む
摩耶(追いつかれる前に引き離さねえと、勝ち目はねェ!)
深海海月姫「ドウ?」
レ級「…多分居タ…カナリ離レテル、1時間クライ追イカケタ辺リダナ」
深海海月姫「20キロッテ所ネ…爆撃機用意」
ヌ級「ギギッ…ギシッ」
ヲ級「ギィ…」
深海海月姫「発艦、絨毯爆撃、脚ヲ止メナサイ」
レ級「アッチハドウスル」
深海海月姫「…アノ覚醒種ノ死体ハモウ使エナイ、ソレヨリモ、アノ艦娘達ヲ捕マエル…
モシ、コレ以上私ノ手ヲ
摩耶「クソッ…無茶苦茶しやがる…」
山城「なんとか洞穴に隠れられたから良かったけど…」
霧島「さっきから爆撃が止みません、このままじゃ進めない…」
摩耶「進ませないつもりだな、クソ…しかも、位置を絞ってねぇぞ、無差別だ
次々に別の爆撃機が来やがる」
山城「どうするの…!」
摩耶「だいたい一箇所あたり3分に1回のペースで爆弾が落ちてくる、その合間を縫って移動するしかない
だが、この山中で運良く爆弾が当たらないことを祈りながら逃げるのは…」
山城「ああ…もう、本当……」
霧島「でも、そうするしかありませんね…この洞穴だっていつ崩れるか…」
摩耶「…次の爆発の直後に行くぞ、動く用意はいいな?」
北上「うん…」
山城「…今真上を通り過ぎた…くるわよ」
落下音と共に洞穴の手前に爆弾が落ちる
摩耶「っ!?伏せろ!」
…炸裂と同時に、爆音と身を焦がす程の熱風が襲う
山城「っ…ぐ…!」
霧島「体が…」
…なんて事だ、一瞬で壊滅だ
動き出そうとした途端に…
摩耶(だが、熱風だけだ、死ぬほどのダメージじゃ…いや)
摩耶「北上!」
北上「だ…大丈夫…」
くぐもった声が洞穴に響く
霧島「山城さん…?」
山城「……」
山城の下から北上が這い出る
摩耶「かばったのか?」
山城「…これ以上傷を負ったら再生できないんでしょう…動けなくなって置いていくのも寝覚めが悪いのよ…!」
摩耶「…だな、さっさと行くぞ!」
とはいっても、あの閉所に全身火傷レベルの熱風
動くたびに身体中が痛む
摩耶(とにかく身を隠さないと死ぬぞコイツは…っ!)
…タイミングのズレた爆発音
いや
摩耶「今の音、聞こえたか?」
霧島「え?」
摩耶「今の音、どう聞いても火薬を爆発させた音じゃねえ、多分ガソリンだ、近くを車が通ってる!行くぞ!」
3人を引き連れ、自身の直感を頼りに進む
北上「あ…」
霧島「……酷い…」
摩耶「こりゃあ、思っていた以上だな」
なんて事だ、希望を持って車を探しに来たのに
道路ごと車も破壊され尽くしている
僅か数台だが、これが最後の望み…
北上「…ねえ、なんでこんな事するの…?」
摩耶「怪物と分かり合えるわけねえだろ、おい、そっちのひっくり返った車は生きてるか」
霧島「わかりま…うっ……な、中で、人が…」
山城「…こんなの…」
摩耶「ちょっと汚れてるくらいでとやかく言うな!…さっさと使える車を探せ、外板が歪んでても動くやつはあるはずだ、また爆撃が来る!」
北上「ちょっと汚れてるって…これ…」
摩耶「黙って探せ!生きるためだろうが!!」
山城「うぅ…」
霧島「…どれもダメ…だと思う…」
摩耶「外からペタペタ触っただけで何がわかんだよ!ちゃんと運転席に乗れ!
クソでも血でも払い除けろ!生きたいんだろうが!」
山城「わ、わかってるわよ…!」
霧島「か、かかった!エンジン!」
摩耶「おっしゃ!そいつに乗り込め!倒れてたらひっくり返せ!とにかくそれで逃げるぞ!」
乗るのに邪魔なミンチを引き摺り出し、なんとか身体を押し込む
摩耶「飛ばすぞ!」
アクセルを強く踏み込む
摩耶「っ!?」
衝撃を受けて車体が大きく揺れる
北上「う、うしろ!もう来た!」
何が来ようと、今は関係ない…
爆撃機は正確には狙えないはず…
摩耶「おおぉぉぉっ!!」
道路を最高速で飛ばす
北上「避けて!」
摩耶「あぁ!?」
声に反応してハンドルを切った、一瞬遅れて熱線がすぐ隣を通り過ぎて、ドアが
摩耶「来たってレ級かよ!?」
霧島「いいから前!前見てください!」
山城「死にたくない死にたくない死にたくない!」
レ級「…チッ、外した」
深深海海月姫「…チッ…マタカ、チャント狙イナサイ」
レ級「黙レ!クソッ!」
夕張「あ、暁ちゃんが総司令!?」
暁「そう、納得できないかもしれないけど私に従って」
川内「…いや、天才児なのは知ってるけど、こんな子供に任せるの?」
大淀「最善の選択肢と判断しました」
暁「悪いけど、私がなんとかするから、だから準備をしてくれる?」
夕張「…なんの?」
暁「武器、とにかく戦いの準備、今から私はあなた達の戦闘データから使える戦術を集めてくる」
川内「…こっちから仕掛けるの?」
暁「そのつもり、向こうがまばらに動いてゲリラ戦をしてる以上はね、全ての深海棲艦を掃討しなきゃ意味がないでしょう?」
川内「できると思ってる?」
暁「無理、私のはあくまで理想論、だから実際に目指すのは…大湊の陸奥湾を最終決戦の地にする事
このほとんどの方位を陸に囲まれた場所で…敵の親玉を仕留めるのが狙いよ、今は誘い出すための下準備」
川内「なるほど、多少は考えられてそうだね」
暁「うまく行く保証はないけど、とにかく深海棲艦を狩るのよ」
摩耶「…今日はここで一休みだ」
山城「もう追って来ないかしら」
摩耶「いや、来るだろうな、だが、これ以上進むには…」
もう、意識が限界だ、目の前がチカチカと…
北上「え、あぇ…?」
摩耶「う…」
山城「確かに、もう無理…」
霧島「一旦休むほかないですか」
北上(動けるの私だけ…?)