食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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十三食目

おはよう、北上様だよ

…テンション低いかな?ごめん、寝起きは弱いんだよね

観測者(オブザーバー)のみんなは朝強い?

 

…あたしは、朝は嫌いだなぁ…

 

北上「……ふぁ」

 

早霜「起きたんですね」

 

北上「大淀は?」

 

霞「帰っちゃったわよ」

 

北上「…そっか」

 

…変な夢見たせいで、なんか寂しくなっちゃったけど…そんな事ない、あたしは大淀は嫌いだ

 

暁「でも、また近いうちに来るって」

 

北上「……」

 

早霜「それと、夕張さんの診断結果と明石さんの経過は携帯に送るそうです」

 

携帯を取り出し、チラリと見る

 

夕張は意識が戻り、診断も異常ないため今から帰す、しばらくしたら戻る、との事だ

 

北上(ちゃんと帰って来れるのかな…)

 

早霜「何か不安が?」

 

北上「…まあね、夕張だけは帰ってくるらしいし、それまでに食べ物でも取ってこようかね」

 

阿武隈「あ、なら私も…!」

 

北上「要らない」

 

阿武隈「そんなぁ…!」

 

 

 

 

山道を歩き、夕張が帰ってくるルートを模索する

多分車だから少しすれば来るとは思うけど…

 

北上(…どっから来るんだろう、病院のある街っていうと…あの街に戻す?いや、流石に……え?)

 

…ここ、基地につながる車道…いつもの道なのになんか、人の気配っていうか、変な違和感…

 

北上「これ…」

 

車道にワイヤートラップ…しかも、鳴子とかじゃ無くて…簡素な作りの投石器みたいなのに、たくさん小石が…

 

北上「……艦娘相手なら、何しても良いってことか」

 

石を外して、ワイヤーを解いて…

 

北上(…罠仕掛けるってことは猟師?でもやってることが若い、嫌がらせ目的の……)

 

仕掛けてあったカメラを取り外し、海に投げ捨てる

 

北上「…腹立ってきた、全部捨ててやる」

 

と、息巻いたものの、車道にあったのは2、3個

それだけでも十分脅威だけど…やっぱりこの選択はあってたんだろうな

 

しかし、もう30分近く歩いたけど、どこの病院から送り出したのやら

夕張は影も形も見えない

 

北上「…ケータイ鳴ってる……うわ」

 

大淀からメール、内容は…

明石の証言の裏が取れた事で、真実を報道するから冤罪はない、という事らしい

 

北上(そもそも、報道しなきゃいけないほど広がってんの?)

 

だとしたら、もうどこの街にも近づけない

頭が痛いことばかりだ

 

北上「……そもそも深海棲艦さえ居なけりゃ、こうもならなかったのに…アイツらのせいだ、あーあーあー」

 

あたしらは深海棲艦さえいなければ、ただの人間でいられた筈なのに

 

北上「!」

 

海の方から、悲鳴と砲撃音、そして銃声

 

北上(明らかに夕張の声じゃない、しかも多分こんなとこにいるのは罠仕掛けた奴ら…)

 

助けてやる理由も何も無い

今は夕張の安全と今日の食事の確保がメインの仕事…

 

北上「……はあ」

 

腰から拳銃を抜いて、弾が入ってるのを確認し、悲鳴の方に走る

 

北上(居た!1匹…でもヒトガタ…!)

 

濃い血の匂いを辿ってきたら、まだ遠いけど、海からやや離れた森の中に居た

こんなところにまで入ってきてたのか…!

深海棲艦は人に近い形になる程知能が高いはず

でもこうやって人を襲ってるのは…そういうことだろう

 

草木の間を駆け抜け、深海棲艦の脇から近づき、ドロップキックを横っ腹に叩き込む

 

ル級「ギャッ!?ギィィッ…!」

 

吹っ飛んで転がった深海棲艦がこちらを睨んでくる

…いい気味だ、しかし、マズイ

 

北上「よりによって戦艦級…?拳銃(コレ)じゃダメージになるわけないな、全身バカ硬いんだし……あん?」

 

足元に転がってる上半身のない人間の死体…

周りには猟銃が落ちてる、後大きめの解体用ナイフ…

 

北上「コレでやるしかない、か…あたし雷巡なんだけどな……そっちのアンタ、生きてるんなら、隠れてなよ…助けたげるから」

 

生き残った猟師が茂みの中に隠れたのを確認し、ナイフを逆手に小指と薬指で握り、残りの指で猟銃を支える

 

北上「どこなら痛い?脳天にブチ込めば良い?それとも…」

 

一度銃口を降ろし、姿勢を低くする

 

ル級「ギィィィィッ!!」

 

砲撃を交わしながら距離を詰める

地面を蹴り、木を蹴り、ル級の艤装を飛び越え…

 

北上「その目ん玉に…!」

 

引き金を引く

 

ガチッ…

 

北上「あら、安全装置(セーフティ)かかってら」

 

ル級の背後に着地し、裏拳の要領でナイフをル級の首に突き刺す

 

ル級「ギッ!…ガギッ…」

 

北上「…コレでよし」

 

猟銃を弄り、安全装置を外す

ナイフを引き抜き、傷口に銃口を当て、引き金を引く

1発2発と引き金を引き、抉れた傷口にナイフをもう一度突き立てる

 

北上「死ね、死ね死ね死ね死ね…死んじゃえ」

 

首を落とし、四肢を切り裂いて

完全に、完璧に殺す、おまけに刎ねた頭にナイフを突き立ててやる

 

北上「ペッ……口ん中に血入ったし…マズ……ん?」

 

生きてる方の猟師が出てきて、こっちに猟銃を向けてくる

 

北上「ああ、さっきの銃声そっち?…どうりでセーフティなんか……で、何?」

 

猟師「お、お前のせいでせがれが…ミキオが喰われちまった!お前のせいで!」

 

北上「なにそれ…あたし知らないし、深海棲艦に襲われるようなとこに来んのが悪いんでしょ、熊と変わんないよ、こいつら」

 

猟銃「黙れぇ!」

 

北上「…銃を下ろしてくんないと…その、困るんだけど…あたし人間とやり合うのは専門外だし」

 

自分の手から猟銃を棄て、無害をアピールする

…でも、雰囲気は変わらないし、緊張感は増すばかり

 

北上(あ…ダメだぁ…コイツ撃つわ)

 

相手が行動を起こす前に姿勢を屈め、深海棲艦の頭が突き刺さったナイフを掴んで接近する

銃声がして、なんか痛い気もするけど取り敢えず無視して…

ナイフを振り抜く

 

北上「……わかったら、さっさと消えなよ」

 

へし折れた猟銃の半分が、木に突き刺さる

ナイフで斬れるほどの技術はないから、鉄の銃身をへし折ってやった

 

コレでわからないなら…どうしようもない

 

猟師「ヒッ…ヒいィィっ!?バケモン!バケモンだぁぁ!」

 

武器を失った猟師が逃げ出す

 

北上「…誰が……アンタの頭の中のがよっぽどバケモンだよ」

 

 

 

 

 

北上「…お、徒歩だったんだ」

 

夕張「あ…!?え、何、迎えに…って何その傷…」

 

北上「深海棲艦が(おか)まだ来てて、やり合ったんだけど…流石に無傷とはいかなかったよねぇ…」

 

夕張「あ、脚…大丈夫?」

 

北上「ヘーキヘーキ、それよりそっちは?ゴメンね、明石と引き離す結果になって…」

 

夕張「いや…えっと……最早それはいいんだけど…本当に大丈夫…?」

 

北上「んー、焼いて塞いだほうがいいのかな?ライターとかある?」

 

夕張(怖…この子、発想が野蛮すぎない…?)

 

夕張「肩貸すから、案内してくれない?」

 

北上「…じゃ、それで手を打つかー」

 

 

 

 

…考えないようにしてたけど、この状態で帰ると…やっぱこうなるんだよね

 

北上「あの、早霜…包帯巻き方キツい」

 

早霜「止血の為です」

 

北上「もう血止まって…」

 

早霜「止血の為です」

 

北上「はい…」

 

北上(めちゃくちゃキレてるじゃん…)

 

早霜「ところで北上さん、この傷口は明らかに…砲撃を受けた傷ではないようですが?」

 

北上「…機銃をね、使われたんだよ、ほら、ル級の艤装についてる奴」

 

早霜「人間に撃たれたのでは?」

 

北上「助けた相手にそんなことされちゃ敵わんさね、それにほら御礼にナイフまでもらったし?」

 

早霜「……」

 

北上「何さ」

 

早霜「いいえ」

 

 

 

 

北上「…まーた、しばらく動けない…?」

 

早霜「一週間は走らないでください」

 

北上(逆に考えればそれで走れる体も十分おかしいんだけど……ん?)

 

すごい勢いで夕張走ってきた…

 

夕張「ね、ねえ!ちょっと!?」

 

北上「何」

 

夕張「…ここ、ホントにガスも水道もないの?電気はわかるけど…!」

 

北上「ちなみに言うと、今日のご飯もないからね」

 

夕張「は……ぇ…えぇっ!?」

 

北上「何も聞いてないの?ってかそもそも、ひっそり生きてる艦娘がまともな生活送れると思わないでよ」

 

夕張「にしてもこれは限度があるでしょ!?」

 

北上「言いたいことは分かるけどさぁ…」

 

早霜「うるさいですよ、あまり騒がないでください」

 

夕張「…そう言えば…ちょっとごめん」

 

夕張があたしを抱き上げる

 

夕張「軽っ……え、そっちの子が細いのも…?」

 

北上「まあ、まともに栄養取れてないだろうしねぇ…」

 

早霜「まるで他人事のようですね」

 

夕張「……最初に、謝っていい?」

 

北上「何を」

 

夕張「…あの、大淀って人から貰った缶詰……くる途中でいくつか開けちゃった…」

 

早霜「…残りはどのくらいありますか?」

 

夕張「さあ…でも、リュックサックにたくさん入ってたから…まだしばらく持つと思うけど」

 

北上「見に行ってみる?」

 

 

 

 

暁「北上さん!すごいわ!」

 

北上「おお、どしたのさ」

 

阿武隈「計算してみたんですけど、9人で1週間は食べ物に困りませんよ!」

 

夕張(え?そんなにあったっけ…)

 

北上「それはいいね」

 

曙「こっちの袋麺なんて、2人で食べればもう少しなんとかなるんじゃない?」

 

夕張(え?)

 

霞「流石に少ないと思うから、缶詰も足して3人で一食くらいに…」

 

夕張(…ここ、そんなに困窮して…え?え?)

 

北上「あ、ようやく気付いた?そういうとこだよココ」

 

夕張「……す、すごく、アットホームな場所ね…」

 

北上「ちなみに最近は昆虫食に力入れてるよ」

 

阿武隈「絶対に食べませんからね!!」

 

北上「…だってさ」

 

夕張「……」

 

北上「あー、お腹へった」

 

霞「はい、これ」

 

北上「…お…?何コレ」

 

串に刺さった、魚の塩焼き…?

しかも、小さめだけど十分なサイズ…

 

阿武隈「あ!それ、実は釣りに成功したんです!」

 

北上「え、釣れたの!?」

 

阿武隈「はい、2匹だけですけど!」

 

曙「その後は糸が切れて断念、やっぱり引きが強くても耐えられる素材じゃないとダメね」

 

阿武隈「でも、ツタを編んで釣り糸にするのはナイスアイデアじゃないですか!?」

 

北上「おお…なるほどね、編んで強くしたんだ?…賢い、やるじゃん!」

 

霞「冷めてるけど、さっさと食べちゃいなさいよ」

 

北上「…良いの?貰っても」

 

曙「こんなに保存食があるんだから、問題ないわ」

 

北上「じゃ、遠慮なくいただきます……はぐ…んー…ふふふ…うっま…」

 

疲れた体に濃い塩の味

そして魚の旨み…

 

北上「え、これめちゃくちゃ美味しいんだけど、ほら、曙食べる?」

 

曙「……じゃあ…うん…」

 

北上「阿武隈、後で残ってる糸集めて編んでみようか、もしかしたらもっと強い糸にできるかも」

 

阿武隈「ですね!」

 

北上「これでもっと……ん?…あ!コラ!いつのまに霞と暁まで!」

 

暁「んー…おいひ…」

 

霞「焼きたてはもっと美味しいけどね」

 

北上「ふん、残りは1人で…って、ほぼ残ってないし…阿武隈ぁ、これ出汁とってスープにしようよ」

 

阿武隈「はーい」

 

北上(…ま、これで充分か…高望みは…よくないしね)

 

北上「にへへ…」

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