食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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大湊へ

摩耶「…く…っ……?…また、意識が落ちてたのか…」

 

なんとか体を起こす

…うごく、全身の痛みが多少マシになっている

 

摩耶「…あの茶のおかげなのか?…北上…どこ行きやがった…」

 

後部座席をミラー越しに確認する

 

摩耶「…山城も霧島も寝てるのか…いや、意識が落ちたのか」

 

摩耶(…これは)

 

北上が飲ませてきたペットボトル…?

 

蓋を開き、泥の様にまずい液体を流し込む

 

摩耶「ぶっ!?…ぅぐ…おぇ…クソマジぃ…これでマシにならなきゃ恨むぞ…」

 

とはいっても、すぐに効くはずもない

それでもこのままここに留まることもできない

 

摩耶「…チッ…」

 

今敵に出会ったら…できるのは逃げることだけ…

いや、それすらも厳しい

 

摩耶(…クソ…せめて体がちゃんと動けば…)

 

摩耶「…!…今、何かが上を通りやがった…?」

 

 

 

 

 

 

北上「うあぁっ!?」

 

蹴り飛ばされ、地面を転がり、背中を木に打ち付ける

 

北上「うぐ…ぅ……っ…」

 

ゆっくりと立ち上がる

 

何度も地面に這いつくばったおかげで随分スムーズに立てるようになった

 

北上「…まだ…!」

 

走るのも、だいぶそれっぽく動けるようになってきた

 

棒切れを振り上げて近づく

 

北上「…やぁっ!」

 

いとも簡単にいなされ、また転がされて

 

北上「このっ!」

 

届かない

当たり前だろう、全く届かない

 

北上(…どうしよう、どうしたらいいんだろう…どうすれば、えぇと…!)

 

レ級「マズイ」

 

北上「っ!?」

 

声がした方を向く

…あのバケモノだ

 

レ級「ナンナンダ、オ前…相変ワラズ不味イ感情ヲ馬鹿ミタイニ振リ撒キヤガッテ

無理矢理クチノ中ニクソヲ押シ込マレル気分ガワカルカ?」

 

北上「…わかんないよ、そんなの、一ミリもわかんない」

 

棒切れをバケモノの方に向ける

 

レ級「ナンデダ、一瞬ダケ確カニ恐怖ガ混ジッタハズナノニ…ナンダコノクソマズイ感情(アジ)

何故恐怖シナイ?」

 

北上「…怖くなんかないよ?」

 

レ級「何故ダ、オ前ハ死ヌンダゾ」

 

北上「…確かに、死ぬのは怖いよ」

 

レ級(…死ヲ意識スレバ、確カニ恐怖ノ味ガスル)

 

北上「でもね」

 

レ級(ダガ、ソレ以上ニ…)

 

北上「今頑張れば、摩耶さんが生きて帰ってくれるし、いつか暁がバケモノなんて全部やっつけてくれるって信じてるから

私に意味ができるのなら、怖くなんかない…!」

 

レ級「コノ腐ッタ生ゴミノ様ナ…クソノ様ナ味ダ!気ニクワナイノハ!!!」

 

耳を切り裂く様な咆哮が響く

 

北上「うっ…!?」

 

耳がキーンとする

それに、体の感覚も、痺れて…動けない…

 

レ級「死ネ!」

 

尻尾の先端が伸びて…

 

カッ…カカッ

 

木の乾いた音が響く

そして、それと同時に…

 

レ級「ウ、動カナイ…!?…ナンダ!」

 

尻尾が止まって…

 

レ級「ッ!」

 

レ級の爪と何かがぶつかって火花が散る

 

北上(何アレ、クナイ…?)

 

弾かれたクナイは、空中で何かに引っ張られる様に軌道を変えて…

 

川内「間に合ったね」

 

誰かの手に収まる

 

北上(う、浮いてる…宙に浮かんでる…?)

 

レ級「貴様…死ンダハズダ!」

 

川内「死んでるから宙に浮いてるんだよ、ほら幽霊幽霊」

 

レ級「舐メタ事ヲ…!」

 

北上(…今、キラキラしたのが見えた…糸に乗ってる…?)

 

レ級「今度コソ殺ス!!」

 

川内「はいはい…ま、この状況じゃあ倒し切るのは無理だね」

 

川内(北上を巻き込みかねないし…流石に北上を見捨てる選択肢は、取りたくないかな…)

 

北上「……!」

 

即座にレ級に背を向けて走り出す

 

川内「え、ちょっ!?」

 

レ級「逃ガスカ!」

 

北上(今動かないと…やっぱり!)

 

大井「!」

 

義手で蹴りを受け止める…が…

 

北上「っ…!折れたの…?!」

 

レ級「ハッ!」

 

川内「待ちなって!」

 

川内(…マズイね、気配がなかったから気づかなかったけどもう1匹居たんだ…しかも、大井か…

レ級の相手だけで手一杯…神通が来るまで北上をなんとか生かしながら耐えなきゃいけないのか)

 

北上(…!)

 

へし折れた義手を木に叩きつける

 

川内(さっきから、何を…!)

 

北上「……これで、いいよね…!」

 

何度も叩きつけるうちに逆方向に折れて、捩じ切れる

剥き出しになった義手の金属部は…

 

北上(これなら、刺せる…充分鋭い…)

 

川内「…嘘でしょコイツ…記憶喪失なんだよね…?」

 

レ級(…マタアノ味ダ、気持チ悪イ…!)

 

北上「うあぁっ!」

 

 

 

 

 

神通(…ここで会敵するのは想定外でしたが)

 

深海海月姫「……コイツ、強イナ…イヤ、地形ノセイカ…面倒ナ…」

 

伸びてきた触手をクナイで斬り落とす

 

神通(これが…保護色、触手の位置がハッキリとは見えない)

 

クナイを両手に掴み、四方八方に投げる

 

深海海月姫(…?)

 

神通(…結界はできた、後は)

 

眼を閉じ、印を結ぶ

 

神通(臨む兵、闘う者、皆陣烈れて前に在り)

 

深海海月姫「隙ダラケ…ッ!?」

 

振り下ろされた複数の触手がボタボタと音を立てて落ちる

 

深海海月姫(ワイヤートラップ?!)

 

神通(…反転、ここで、攻め切る)

 

太刀を抜刀しないまま接近して振るう

 

深海海月姫「ッ!?」

 

1撃目を触手で絡め取られ、受け止められる…

 

神通「!」

 

が…

 

深海海月姫「ガフッ…!?」

 

深海海月姫(キ、斬ラレタ…?ナンダ、何ガ起キテ…)

 

刀を納刀し、再び振るう

 

深海海月姫「ウグ…!場所ヲ変エルシカ…!」

 

逃げようとした方向にクナイを放つ

 

深海海月姫「クッ!?…マタ、ワイヤーデ…」

 

神通(どうやら触手は自重をかけるだけで随分と簡単に切れる

なら、このワイヤーの結界の中なら逃げる事はできない)

 

深海海月姫「……コウナッタラ…コレデ」

 

触手の保護色が解け、バラバラに分離する

 

神通(アレは…艦載機!?触手ではなく、艦載機をつなげた物…!)

 

艦載機の波状攻撃を飛び退いてかわす

 

神通(ワイヤーの位置は…)

 

空中で刀を振るい、ワイヤーを弾いて移動する

 

深海海月姫(刀ヲ振ル度ニ移動…ナラバ!)

 

神通(次は、ワイヤーを張った木を狙う…その前に)

 

深海海月姫へと手裏剣を放つ

 

深海海月姫「ッ!…!?」

 

神通(これにも、ワイヤーを仕込んでる…だから!)

 

ワイヤーをしならせ、手裏剣の軌道を変えて木に巻き付ける、そしてそのワイヤーを手繰り寄せて空中で自身の軌道を変えて…

 

深海海月姫「コッチニ…!?」

 

神通「っ!!」

 

右手で抜刀し、刀を上段に振りかぶる

 

深海海月姫(大丈夫ダ、腕一本デ…)

 

ガスッ

 

深海海月姫「ナ…カ、カタナジャ、無イ…!?」

 

振り下ろしたのは、鞘…そして刀は下から…

 

神通「っ!!」

 

振り上げ、刃が深海海月姫を捉える

 

深海海月姫「ギャアァァァァァッ!?」

 

神通(…私の得意分野はは、抜刀と…)

 

怯んだ隙に鞘での突きを喉に叩き込み、即座に刀で斬りつける

 

神通(刀と鞘の二刀です!)

 

一切の反撃を許さない

重力に従って落下しながら斬り、殴り続け、鞘で木を殴りつけて反撃をかわし、体を捻って勢いをつけて斬り裂く

 

深海海月姫「ガァァァァッ…ウッ…」

 

神通「……」

 

着地し、即座にとどめを刺すために刀を引き、喉元への突きを…

 

深海海月姫「待テ!話ヲ聞ケ!」

 

神通(……)

 

深海海月姫が人間の姿をとる

 

深海海月姫「…北上とか言ったか、アイツには今、自爆用の艦載機を取り付けてある…その他3人にもだ!お前がその刀を収めないなら…殺す」

 

神通(…北上さんが、生きている?…ここで条件として出すなら…間違いなく生きているでしょう、それに他の3人というのも気になる…しかし…)

 

深海海月姫「…早く、早くしろ!!」

 

神通(……もし生きているなら、姉さんが助けてくれるはず…それにコイツを逃すわけには…)

 

神通「っ!?」

 

神通(今の攻撃は、あのレ級…!)

 

遠くで熱線が山を吹き飛ばして…

 

深海海月姫「…お仲間も、レ級の癇癪でやられかねないぞ」

 

神通「……」

 

刀を収めてその場を離れる

 

神通(コイツはいつでも殺せる…それよりも、仲間の命を救うほうが優先…)

 

 

 

 

川内「…チッ…」

 

レ級「クソ…!オ前モバケモノカ!」

 

川内「流石に本物には負けるよ」

 

川内(…これ以上は耐えるのもきついな…だって…)

 

イ級「ギシャアアァァッ!」

 

ロ級「ギギ…ガ」

 

リ級「ジャァァァッ」

 

川内「雑魚も増えてきたし、これは…撤退だね」

 

鉤爪のついたロープを取り出し、北上を視界で探す

 

川内「居た!」

 

鉤縄を北上の義足に巻きつけ、引っ張る

 

北上「うわぁっ!?」

 

北上を掴み、木の上に飛び乗る

 

川内「レ級!」

 

レ級「アァ!?」

 

川内「大湊まで来なよ、そこでなら逃げずに勝負してあげるからさ」

 

レ級「逃ゲラレルト思ッテルノカ!?」

 

川内「当たり前じゃん、こちとら忍者だからね」

 

木の根本が爆破し、倒壊する木に紛れてその場から離れる

 

レ級「…消エタ…チッ……大湊ダト?…アノ場所ノコトナノカ?」

 

 

 

 

 

川内「神通!」

 

神通「!」

 

川内「良かった無事だった!北上を確保した、急いで離脱しよう」

 

神通(他に3人、生存者がいる様です)

 

川内「3人も…!?…流石に連れて帰るのは無理だよ…」

 

神通(それから…)

 

神通が北上の体をまさぐる

 

神通(やはり、ブラフでしたか)

 

北上「…あの、あなた達は…」

 

川内「今は面倒だから黙ってて」

 

北上「あぅ…」

 

川内(…それにしても、脚の義足まで折れて、その上体もボロボロ…大井も軽くダメージは負ってたけど、今の北上は戦闘センスまでは無いのかな)

 

神通(どうしますか、3人は…)

 

北上「道路!3人とも道路の方にいるはずだよ!車の中!」

 

川内「道路?」

 

神通(…待ってください、今、私の言葉に…?)

 

川内「…え?神通が何言ってるかわかるの?」

 

北上「た、多分…歯をカチカチさせて、モールス信号で喋ってるんだよね…?」

 

神通(……姉さん、この人はやっぱりどこかおかしいんだと思います)

 

川内「だね、これじゃ見捨てる相談もできないよ、探しに行こう」

 

北上「ありがとう…」

 

 

 

 

北上「摩耶さん!」

 

摩耶「…また会うとは思ってなかった」

 

川内「こっちこそ、その車、動かせるの?」

 

摩耶「ああ…だいぶん体もマシになってきた、これで遠くに逃げる」

 

川内「なら大湊までよろしく、今は本部がそっちだから」

 

摩耶「…チッ…自由の身にはなれそうもねえな」

 

神通(…しかし、唯一の生き残りが全員犯罪者ですか)

 

川内「悪運だけは強かったみたいだね」

 

摩耶「うるせえよ」

 

川内「…見つけたの黙っててあげようか?修復材もあげるし、4人で逃げても…」

 

摩耶「後ろでオチてるヤツらは置いといて、少なくともアタシは逃げる気はねえぞ」

 

川内「なんで?自分のために生きればいいじゃん」

 

摩耶「…ここ一番で裏切る様なクソだと思われてんのかもしれねえが」

 

摩耶がチラリと北上を見る

 

摩耶「安心しろ、アタシにもプライドはある、カスみてえなプライドだけどよ…」

 

川内「…ひゅ〜…カッコいいじゃん」

 

摩耶「……大淀に言っとけ、艤装を用意しろってな…絶対にあるはずだ」

 

川内「重巡用ね、了解」

 

摩耶「頼んだぞ」

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