食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
やあやあ、アルティメット北上様だよ〜
ん?そう、記憶戻って、ちゃーんと帰ってきたよ
…ちゃんと、“私”の事も覚えてる、ぜーんぶ含めた北上様だよ
夕張「北上!」
北上「夕張さん、そこの瓦礫動かせる?急ぎで救助して、それから向こうの瓦礫にも人が埋まってるはずだから…」
夕張「わかってる、すぐ取り掛かるから!」
北上「よろしくね〜」
夕張(…あ、あれ?…今普通に会話しちゃったけど…あれ?え???)
大淀「……」
北上「民間人の死者が少なくとも7、ほかには死人こそ出てないけど…まあ、早いとこ助けてもらわなきゃね」
大淀「北上さん…」
北上「直接くると思ったよ、久しぶり」
大淀「……」
大淀が目を伏せる
北上「…ごめん、苦労かけたね」
大淀「それは、違います」
北上「何も違わない、あの時のあたしらはみんなまだ幼すぎたんだよ、それだけでこれを言う理由になる
あたしは大淀を許してる、だからアンタも自分を許して、もう苦しむことはないんだよ
優しいアンタが苦しむ必要はもう無い」
大淀「…わ、私は…ただ心の底から……っ…!…その気持ち一つでやってきたのに…それすらも取り上げるんですか…?!」
北上「……ごめん、でも、アンタが囚われたままでいる必要なんてないんだよ
もう苦しまなくていい、アンタは…確かに、陽の光が当たるところを歩けないかもしれない
それは全部あたしのせい、だから…恨んでいい」
大淀「…っ……そん、なの…」
北上「わかってる、ズルいよね、今更恨むだなんて、今更好きにしろなんて、簡単に気持ちを裏返すなんてできないよね」
大淀「……わかっているのなら…」
北上「うん、だけど許すよ」
大淀「…どうしてですか、私は…私は!殺したんですよ!あなたの姉を…!
……それも、2度も…!」
北上「それはただの結果、殺そうとしたわけじゃ無いのはよく知ってる
それにもういいんだ、大淀、前のあたしじゃ無理だけど、私はズルいんだよ?」
大淀「っ…?」
北上「これ以上、私から大事な人を奪わないでよ、大淀、アンタまでいなくなったら、私もっと辛いよ」
大淀が大きくため息をつき、目を閉じる
大淀「……それは、あまりにもズルいですよ」
北上「だから、これ以上失わない為にやるべき事をやる、できるよね?」
大淀「はい、先輩」
北上(っても、もう時間はない…あのタイミングで引き上げてくれるってことは、要するに、本隊は別にいるんでしょ?ビビって逃げ出しても採算取れる本隊が
…さて、暁の手腕はどんなもんかな)
暁「…そう、センサーに引っかかった?」
川内「うん、しかもかなりの量…500匹はいるかな?」
暁「…陸上にいる敵もこっちに侵攻してるだろうし、こっちの戦力も陸と海上に分散させないとね
まあ、何より先に…避難勧告を、それから神通さん達の部隊は?」
川内「原種の場所はわかんない、完全に見失ったって」
暁「まあ、透明になれるんだし、人にも化けられる…仕方ないわね…川内さん達も避難誘導に混じってくれる?」
川内「え?」
暁「避難した人たちを人質に取られるのが一番厄介よ、その動きがあったら、お願いね」
川内「……ま、暗殺は専門だし…いいけど」
暁「海と陸は私達で対応するわ」
川内「…やれる?」
暁「海上の敵500は…まあ、ギリギリかしら、陸上から来る敵は国に要請を挙げて…それと、避難先と経路を…」
川内「…あからさまに手が足りてないね」
暁「今までも足りない手で回してきたのよ、このくらいなんともないわ、陸上戦は殆ど捨てて、一旦海上に注力するわ、あとは…大淀さんの部隊も動いてくれれば、海はなんとかなるはず…」
川内「…それが最善の手?」
暁「そう、最善の手……最善よ、一番ベター」
川内「わかった、じゃあそれでいこう」
暁「……」
川内「それじゃ、先に行くよ」
…ほんとにこれでいいの?
相手の目的は何?どうすれば相手は私たちに勝ったと認識するの?
暁(今更だけど、どうしてこんなに戦うのかしら)
相手の目的を看破しなくては、相手の行動は読めない…
暁「…今までとってきた行動は?…次は?どうするの?」
大淀「深海棲艦の行動に整合性なんてありませんよ」
暁「大淀さん?帰ってきてたのね」
大淀「存在そのものが行動理念と言っても差し支えのない存在です、生きているから人を襲う
たまに気分で地位やら嗜好品を愉しむだけの、野生動物です」
暁「……」
大淀「長期的に物事を見通せる存在なら、こんな戦争なんて起こしません
それこそ…一瞬で制圧し切れる程の準備をしてから実行するべきですよ」
暁「それはそうだけど…」
大淀「…相手の目的は、ただ勝つこと、この本丸を制圧して、敵となる艦娘を全て下す事、シンプルに考えてください、お互い、もう引けないんです」
暁「……いいの?」
大淀「何がでしょうか」
暁「私、将棋は攻めるタイプなんだけど」
大淀「…つまり?」
北上「言わなくてもわかるでしょ、攻めるんだよ、こっちから」
暁「北上さん…!?」
大淀「…部屋にいてくださいと言いましたよね」
北上「あたしが黙ってるタマだとおもってんの?」
大淀「……はあ…」
暁「…やる気は充分なのね」
北上「もちろん、でも、あたしの艤装那珂が持っていったって?あれ使えんのかなぁ」
暁「それより、どうして記憶が戻ってるのよ」
北上「ああ、それ?…まあ、あたしもよくわかってないんだけどさ…人間を深海棲艦にする薬品みたいなのを投与された」
暁「それで?」
北上「そしたら、記憶が戻った…そんだけ」
暁「はあ?!」
大淀「んんっ!…落ち着いてください、要するに、その薬品の作用でしょう…
私の推論ですが、艦娘としての記憶が生体ユニットに眠っていたとして、その薬液は修復剤に近いものだったのでは?」
北上「多分そのセンがあってるかなぁ、あたしの生体ユニット復活してるの?…いや、してない方が好都合か」
暁「…どう言う意味?」
北上「あたしは海の担当にしてよ、手札が増えたから、例えば……」
北上さんが耳元で囁く
暁「……本気?」
北上「イカしてるでしょ?」
暁「イカれてるの間違いでしょ?」
北上「あはは、酷くない?」
大淀「…まあ、いつもの事です」
暁「でも、らしいって言えば、らしいのよね」
北上「んー?」
暁「自分の現状を
北上「あたしさあ、
暁「…自分の身体、そうもいかなくなってるのわかる?誰の助けもなく戦えるわけないって」
北上「わかってるよ、でも…」
暁「でもじゃない、北上さん、また居なくなるつもり?」
北上「……」
暁「…私は、あなたを失いたくはない」
北上「えー…あー、うわー…」
北上さんが大淀さんの方を向く
大淀「……くっ…ふふっ…!」
暁「な、なんで笑ってるのよ!?私真面目よ!?」
北上「…いやー……それ言われたら、ねえ」
大淀「北上さんは絶対に断れませんよね」
北上(大淀に言った手前…仕方ないか)
北上「なら、仕方ない、できるだけ気をつけてやるよ」
暁「気をつけるじゃダメ…この戦いで誰も死なない事が、唯一の勝利条件よ
大淀さん、私にできないことは任せるわよ」
大淀「国への交渉でしたら、もうある程度合意しています
今、私たち以上に頼りになる戦力は居ませんから」
暁「北上さんは、どうせ何を言っても前に出るんでしょ?」
北上「…まあね」
大淀「なら、先に陸上の敵に対する殲滅作戦よ」
北上「うえー…あたし陸戦は得意じゃないのに」
暁「ほとんどみんな未経験よ、でも、機動力が極端に下がった状態の戦闘って意味なら…」
北上「あー…そりゃあ、確かにあたしの得意分野だよ」
暁「しかも、市街地戦闘になるわ、侵攻地点で待ち伏せ」
北上「…うん、はいはい、わかった、もういい…」
暁「これ以上の適任はいないでしょ?前に出たいなら先にこっちにいって?それか大人しく座ってて、選んでいいけどどうする?」
北上(…暁には負けるなぁ、やっぱ)
北上「んじゃ、罠張りにいきますかぁ」
暁「資材なんてほとんどないわよ」
北上「避難した家屋から拝借すりゃいいじゃん」
大淀「窃盗罪です」
北上「緊急避難って法律が…」
大淀「適用外です」
暁「だって、それでもやる?」
北上「……あたし行く意味無くなるじゃん…」
明石「夕張が救助に行って手が全く足りてないのに、本気で、そんなことを?」
大淀「手が足りてないのは理解していますが、必要なんです」
北上「整備道具さえ貸してくれれば艤装の手入れくらいならやるよ」
明石がマイナスドライバーを押し付けてくる
明石「なら!一刻も早くお願いします!」
北上「…ま、片手での練習はしてきたしね」
大淀「……」
明石「な、なんですか…こっちは猫の手も借りたいんです!」
大淀(だとしても、片腕を欠損してる人にやらせますかね普通)
北上「いいっていいって、大淀、それに私はそう言う目苦手なんだよ」
大淀「…すみません」
北上「…そうだ、猫の手も借りたいんだよね?」
明石「だからそう言って…」
北上「じゃあ大淀、連れてきて欲しい奴がいるんだけど」
大淀「はい?」
青葉「……」
那珂「青葉ちゃん!」
天龍「おい!無事か?!」
病室のドアが荒々しく開けられ、2人が入ってくる
朝様「天龍サン…それに那珂さんも…」
青葉「大丈夫…修復剤を投与してもらって…もう体は平気ですから」
那珂「よ、良かった…」
天龍「……」
天龍さんが私の顔を掴み、自分の方へと向けられる
那珂「ちょっと!何してるの!?」
天龍「これが大丈夫な奴のツラかよ、よく見ろよ、このままだとコイツ死ぬぞ、間違いなく死ぬ」
那珂「な、何言ってるの?」
青葉「……大丈夫ですよ、私は…死にませんから」
天龍さんの手を掴む
青葉「まだ、やらなきゃいけない事が沢山あるんです…まだまだ、終われないんですよ…」
青葉(いつまで経っても償いきれない、この業を…背負っていかなきゃいけない…)
天龍「その濁り切った目で生きるって言われてもな」
那珂「ねえ!さっきから酷いんじゃないの!なんで否定しかしないの!?青葉ちゃんはちゃんと…」
天龍さんが那珂さんの方に手を向けて言葉を静止する
天龍「わかった、悪いな…オレは、口が上手い方じゃねえ、これ以上は対立を深めるだけだろうな、だから簡潔に言う
青葉、そこで寝てろ、戦いに出てくるな、それだけだ」
青葉「……」
那珂(…心配なだけなら素直に言えばいいじゃん…)
天龍「那珂、お前はどうする、ブリーフィング行くか」
那珂「……そりゃ、戦うしかないからね」
部屋から出ていく2人を見送る
青葉(…ガサ…私、どうしたら…)
朝霜「…青葉さん、その…」
青葉「……」
朝霜ちゃんに渡された、ボロボロの小包を受け取る
青葉「…ありがとう」
ずっと持っていた、大井さんと合流して、みんなの前で開けようと思っていた
なのに…こんな…
青葉「……?」
破れて、少し覗いた中身に既視感を覚えて、つい小包を開く
青葉「…これ」
朝霜「…カメラ…?」
青葉「…うん、型式はちょっと前のだけど…そっかあ…これを、くれたんだ…」
パスワード、ずっと何のことかわからなかったけど…
それはつまり、ガサが神戸にいた時のパスワード
大井さんとガサの間でだけ、わかってた何か
青葉「……私、どうしようかな…」
コンコンコン
病室のドアが開く
青葉「…ぁ」
大淀「……」
朝霜「…なんだよ、大淀サンまで居んのかよ…」
大淀「少し、来てくれませんか?」