食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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交戦

北上「…あー…はー…はー…」

 

霞「北上さんうるさい」

 

北上「生きた心地しないんだけど、なんでこのコンテナ真っ暗なの?」

 

早霜「空気孔の光があるじゃないですか」

 

北上「めっちゃ揺れるんだけど」

 

睦月「乱気流があるって!」

 

北上「…クッションが少ないと思うんだけど」

 

如月「計算上は耐えられるらしいですよ?」

 

北上「…なんでみんなそんなに平然としてるかなぁ…」

 

曙「むしろ、北上さんがこんなに取り乱してるのが珍しいのよ」

 

北上「…まあ、なんか…ううん」

 

怖いという気持ちは湧かない

脳が鈍いせいで感情が追いついてないんだと思う

昂りはしない、だけど、心臓の鼓動だけは早くて、危険信号が鳴ってる

息が荒くなってるのに、冷や汗ひとつでない

 

北上(体調不良疑いたくなるレベルだ)

 

曙「…ところで、艤装、本当にそれでよかったの?」

 

北上「んー…?」

 

自分の持ってる艤装を確認する

陸上戦ということもあって、とりあえずは主砲とブーツ

それから脚にはホルスターにさした拳銃

煙幕と手榴弾まで持たされた

 

北上「装備は十分だよ、コンテナの中にもたくさんあるし」

 

クッション代わりの毛布に包まれたライフルやら主砲やらがコンテナの中にはたくさんある

武器には困らない

 

曙「じゃなくて!…改二艤装、せっかく整備してもらったのに」

 

北上「まあ、いんじゃない?」

 

北上改二の艤装は那珂が持ってるらしい

その那珂は今どこにいるのやら

 

つまり今持ってるのは夕張さんの開発した汎用型装備(はんようがたそうび)

 

北上「にしても」

 

ホルスターから拳銃を抜く

 

北上「これ意味あるのかね」

 

曙「生体ユニットを停止させる弾を改修した、深海棲艦特攻弾って話だけど」  

 

北上(…実際見た、摩耶さんの持ってたライフル、それに込められてたのも多分これの弾だろうね

でも、物足りないかな)

 

要するに、火力不足だ

硬い装甲を砕けないし、1発で仕留め切るのは至難の業

 

それに拳銃の取り扱いは慣れてない

 

北上(でも、無いよりマシかもしれないし)

 

手札は多少なら多くてもいい

むしろ個人的には多いくらいが良い

 

北上「…ん…」

 

外が騒がしいし、赤い光が入り込んで…

コンテナの中には声があんまり入ってこないけど、話し声も…

 

早霜「ハッチが開きますね」

 

北上「だね」

 

…振動が強くなる

コンテナを誰かが叩き、放り出される事を伝えてくる

 

北上「……はあ…これで死んだら、笑えないなぁ」

 

曙「口閉じて!舌を噛む…わぎゃっ!?」

 

大きく揺れると同時に曙が口を抑える

 

早霜(優しさが裏目に…)

 

北上(…おー…)

 

強い衝撃がさまざまな方向から来たと思ったら…

地面を滑る感覚

 

早霜「う……」

 

曙「気持ち悪い…」

 

霞「全員無事…?」

 

シートベルトを外し、コンテナの扉を開く

 

北上「まぶし…っ……ふう、ようやく外だ」

 

飛行機の音が遠ざかっていく

ポツポツと住宅があるけど、人気はまるで無い

 

少し先は山と森…

 

北上「ここで()き止める、か」

 

曙「…北上さん、ごめん、ちょっと待って…」

 

北上「うん、大丈夫、みんな酔ってるんでしょ?無理しなくて良いから…無線無線…あーあー、こちら北上、現着したよ」

 

暁『了解、北上さんの隊が最後になったわね、全員無事?』

 

北上「みんなグロッキーだけど平気」

 

暁『すでに他のチームは交戦を開始してる、油断しないで、そこは既に敵がいるエリアよ』

 

北上(…鼻が効かないから、どこにいるのかわからない)

 

早霜「1人で進まないでください…うぅ…」

 

北上「仕方ないでしょ、早く周りの安全確保しなきゃ…っと」

 

…来た

 

北上「正面!駆逐3!軽巡2!移動速度は遅いけど、上下の動きが激しいよ!」

 

曙「まだ、頭クラクラしてるのに…」

 

霞「やるしかないったら…!」

 

北上「交戦開始!」

 

主砲を構えて撃ち込む

 

北上(っ!…これ、衝撃…!)

 

砲撃の衝撃をなんとか流しながら撃ち続ける

 

北上(1発打つたびに腕が千切れそう…!)

 

狙いも甘い、まだ慣れてないせいか…

 

北上(当たらない…!)

 

霞「駆逐2体!西からきてる!」

 

曙「南から重巡級のヒトガタ!」

 

北上(倒すより敵が増える方が早い、このままじゃ潰れる!)

 

とにかく、撃ち続ける

攻撃の手を緩めたら、やられる

 

早霜「正面の駆逐2体撃破!」

 

如月「軽巡接近して来てるわ!」

 

睦月「火力を集中させないと!」

 

北上(…この編成できてよかった、みんなが動けてるおかげであたしが足手纏いになってもカバーしてもらえてる)

 

でも、これじゃマズイ

陸上だから自分の脚で進む必要がある

だからみんな動きが悪いし、体力の消耗も激しい

 

持久戦は特にキツイ

 

北上(足手纏いでは、いられない…!)

 

幸い、状況は敵も同じ…だから…

 

北上「!」

 

ヒトガタが動きを止め、主砲を向けて狙いをつける

海の上を移動している時と違い、走っている時は体のブレがより激しい

止まって狙いをつけるのは、当然有効…

 

北上(させない!)

 

1発、即座に砲撃を放つ

 

リ級「!」

 

当たらなかった、至近弾にもなってない

しかも、撃った衝撃で主砲が跳ね上がって、真後ろに飛んでった…

つまり、今右手は(カラ)の状態

 

北上(右手を開けられたし、撃つのを一瞬遅らせられた)

 

義手の指を拳銃のグリップに引っ掛け、引き上げる勢いで顔の高さまで投げる

ジッと、右目でヒトガタを睨む

 

北上「早撃ち対決だ、どっちが速いか試してみようか?

…あたしはもう、狙いはつけたよ」

 

生身の右手で拳銃を掴み、即座に発砲する

 

リ級「ギッ」

 

リ級の左目から体液が吹き出し、倒れる

 

北上「…こっちのがまだマシかなぁ…」

 

拳銃を義手に持ち替えて、ホルスターに挿し直し、主砲を拾って戦闘を継続する

 

曙「っ…!南西!新手!」

 

早霜「…“当たり”を引きましたか…!」

 

体をそちらに向け、視認する

 

北上「…予定外だけど、まあ良いや」

 

海月姫「…ココニ居ルナンテ、マア、問題ハ…無イワ」

 

 

 

 

 

 

川内「…暁の読みは外れたかな」

 

大量の避難民は一切の澱みなく避難ルートを歩いてる

 

神通(静かですね、そろそろ騒ぎを起こしてもおかしく無いはず…)

 

明石「あ!居た!」

 

川内「何?明石?………え、何それ?」

 

片目に、なんか凄い機械が…

 

明石「これはね、航空機用IFF(敵味方識別装置)を模して作った物なんだけど…まあ、これがあれば…」

 

明石が指差した方向に2人して駆け出す

 

神通(“コレ”か…!)

 

民間人「ひっ!?」

 

川内「神通!」

 

神通(わかってます!)

 

神通が刀を抜かず、振り回して勢いをつけ、鞘の端を引っ掛けて投げ飛ばす

 

川内「民間人に化けるとこまでは読み通り、だけど…なかなか行動してくれなくて焦っちゃったよ」

 

投げ飛ばされたソレに接近し、両手の短刀を抜刀して…

 

川内(ッ!?斬った感触が…)

 

それどころか、触れた感覚すら…なのに、ソレは真っ二つに…

 

明石「待って!そいつだけじゃ無い!複数居る!」

 

川内「えっ…!?」

 

複数…

 

神通(どれが…)

 

神通「ッ!」

 

神通が何かに弾き飛ばされる

 

川内(さっき斬った奴が消えてる!やっぱり、自分で分離して…)

 

明石「右正面!それから左にも…!」

 

川内「手が、足りない…!」

 

神通(敵は、どこに…!っ!新手!)

 

「IFF接続、全ターゲットロック!」

 

川内「あっ!?」

 

アレは…

 

夕張「小型ミサイル射出!」

 

川内「夕ば…ちょっ!?ほんとに撃って…」

 

放たれた複数の小型ミサイルが弾ける

 

神通(爆発ではなく…電撃…!?これは…!)

 

パチパチと弾ける音と共に艦載機の迷彩が解ける

 

川内「み、見えた!」

 

宙を飛んでいた艦載機を斬る

 

川内「何コレ!どうなってんの!?」

 

夕張「北上に使わせる予定だった義手のパーツでね、小型ミサイルとか電撃とか仕込んでたんだけど

まあ、迷彩付き航空機の情報もあったし?そっちの対策として持って来たの!もちろん人体へのダメージは最小限に抑えてるから!」

 

神通(ダメージはあるんですね…)

 

川内「神通!さっさと動いて!」

 

夕張「飛んだ奴は、私が!」

 

神通(えっ、あれ…)

 

川内「…うわぁ…佐世保ってほんと、頭いかれてる…」

 

耳が壊れそうなほどの大きな銃声が絶え間なく響く

 

明石「な、なんで機銃をこんなところに持ち込んで…いや、対空手段として正しいのはわかるけど…」

 

川内「アレ、艤装じゃないよね、普通の機関銃…」

 

神通(よく手持ちで撃てますね…)

 

銃声が病み、薬莢が転がる音だけが響く

 

夕張「…ふうっ…良い仕事した!」

 

川内(いや…確かに助かったけど)

 

神通(この人、義手を持って行ってもらえなかったストレス発散に来たのでしょうか…)

 

川内「北上になんか用意してって言われてなかった?」

 

夕張「そっちは大丈夫、アイオワ級の主砲が手に入ったから、アイオワ本人が改修中」

 

神通(アイオワ級の主砲を…?)

 

明石「…確認だけど、軽巡よね…?」

 

川内「もはや別物な気はするけど」

 

夕張「まあ…北上は北上なりの考えがあるのよ」

 

川内「……待って、まだ居る」

 

明石「え?…IFFに反応は…」

 

川内「…“匂い”が、濃い…」

 

夕張「もう対応されたの?…信号の暗号化も簡易的だったけど…!」

 

川内「かもね、でも、さっき迄の艦載機だけの擬態とは違う、ハッキリと感じられる…」

 

明石「ダメ、やっぱりこっちに反応は…待って、信号の変更を…」

 

短刀を振りかぶり、明石に詰め寄る

 

明石「えっ」

 

明石の肩越しに短刀を突き刺し、蹴り飛ばす

 

バチバチと音を立てて、迷彩が壊れて…

 

海月姫「……何故…」

 

川内「初手にレーダーを潰すのは定石だからね、読めてたよ」

 

海月姫「ダガ…ッ!?」

 

神通(息つく暇すら…与えない!)

 

神通の刀が海月姫の背後を捉える

 

海月姫「ッ……」

 

川内「やっぱり、全身艦載機でガードしてるか」

 

迷彩の解けた艦載機が一つ落ちる

 

神通(……ここで、仕留めましょう)

 

川内「わかってる、親玉を狩るよ」

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