食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
北上「…いいね……いいねぇ…」
1発撃つたびに、感覚が研ぎ澄まされる
飛んできた砲弾を最低限の動きでかわして、その身体の動きの勢いを腕に乗せ、狙いをつけてもう1発放つ
海月姫「ク…ヤハリ、動キガ違ウ…」
北上「!」
前方、少し離れた位置に砲弾が着弾し、
北上「……へぇ」
…地面を砕き、吹き飛ばされた石が額を割った
だらりと顔面に流れる生暖かい液体が、どんどん冷えていく
霞「大丈夫!?…血が!」
睦月「頭部に被弾…?!退がるにゃしぃ!」
北上「そうだね、そんなやり方もあるんだよね…勉強になるよ」
この砲弾を撃ったのは…
北上(あそこの、小物か)
即座に砲撃し、直撃させる
北上「…いいじゃん…」
すぅっ…と大きく息を吸い込み、血の匂いで鼻を満たす
北上「…あははっ…ようやく、鼻の感覚戻って来たかも!」
曙「き、北上さん…!?」
早霜「様子が…!」
北上「…みんな!」
一瞬だけ、全員の動きが止まる
北上「やり方変えようか?」
如月「えっ?」
ヨタヨタと、でも確実に前に進む
海月姫(ナ、ナンダ?!何故前ニ…!)
北上「…思い出したよ、うん、あの時思い出してたんだ…そう、だからこの戦争は私の戦争なんだ」
飛んできた艦載機を砲撃で撃ち落とす
海月姫(馬鹿ナ!?ステルスヲ…見抜イテ…イヤ、マグレダ!)
北上「平面の視界ってのも悪くないね…立体感がないおかげで、少しの差がはっきり分かる」
続け様に撃ち落とす
北上「ずぅー……っと…アンタを殺したくてたまらなかったよ、わかる?覚えてる?あたしの事」
海月姫「ア、アノ研究所ノ事カ!?」
北上「…はぁ……」
前方に、倒れ込むように体を沈め、一歩踏み出す
海月姫「ッ!来ル!!」
走る
あくまで歩行用の義足だ、激しい動きには対応してないけど、それは生身でカバーすれば良い
北上「もう、6年前か、覚えてなくても仕方ないのかな」
撃つ時は止まる
リスクがあるのは分かってるけど、そうしないと当たらない
よく狙って…
北上「ここ」
海月姫「ッ!!」
至近弾…しかも、着弾じゃなくて通り過ぎる方だから、ダメージは全く与えられてない
でも
海月姫(コイツ…!ココデ消サナクテハ!)
北上「…?おかしいな…」
もっと、プレッシャーを与えられるはずだったのに
まるで、直撃を怖がってないような感じ…
北上「ああ、なるほどね、了解」
足を止め、砲撃しながらゆっくり退がる
北上「みんな、近くの民家使おう、睦月如月霞、曙と早霜に別れて逃げ込んで」
曙「どうするつもり!?」
北上「あとは無線で指示する」
引きながら撃ち、遮蔽物の多い森の方へと動く
海月姫「逃ガスカ!」
北上「うわあ、怖い怖い…」
煙幕を足元にばら撒き、離脱する
早霜「…こちら早霜、退避完了」
北上『いいね、そのまま敵の死角を意識してその家から抜けて、あたしの指示したタイミングで家ごと吹っ飛ばして』
曙「本気!?だ、だって…」
北上『いいから、どうせこの辺りは砲撃戦でメチャクチャだよ』
如月『こ、こっちも!?』
睦月『でも、多分死なないんじゃ…足止め?』
北上『そう、睦月は頭がいいね、向こうも木造家屋に押し潰されて死ぬほど脆くない…でも、動きは止められるよ』
早霜「…行きましょう」
曙「目的地はどこ!?」
北上『最終的にコンテナに行けるように立ち回って、遠回りしてでも、安全にね』
早霜「了解しました」
曙「窓から出るわよ!…待って!撃って来た!」
家の反対側が吹き飛ぶ
北上『2人とも無事?敵が近づいてるよ』
早霜「ええ…曙、たてる?」
曙「ッ!…う……夕張さんの修復材が無かったら、死んでたわ…」
早霜「行かないと」
窓を乗り越え、外に出る
曙「ッ!?」
早霜「回り込まれて…!」
イ級「ギギッ」
リ級「キキッ…ギャッ!?」
主砲を向けられた瞬間、リ級の腕が吹き飛ばされる
早霜「砲撃?!」
睦月『2人とも大丈夫!?』
霞『見たらわかるでしょ!これ以上の支援はできないわよ!』
曙「良い仕事してくれるわね!」
早霜「ええ…!早くコンテナへ!」
川内「神通!」
海月姫に詰め寄り、抜刀せずに刀を振るう
海月姫(ッ…ヤハリ、疾イ…)
鞘を用いて外から内へ、そして内から外へ
軽い、致命的にならない打撃の連続
神通(動きを、完全に封じ込める)
腕を動かせば腕を、脚を動かせば脚を
軽く、疾い打撃を与え続け…
海月姫(クッ…!)
神通(そう、抵抗するために、鞘を掴むしかない)
とにかく、こちらの動きを制限するために
咄嗟に手が伸びるとすれば、鞘を…
海月姫(掴ンダ!コレデ…)
掴まれた瞬間、鞘を掴んでいた手で
神通(…北上さんにコレが通じなかったのは、ショックでした)
相手が鞘を保持した瞬間、抜刀して全身を捻りながらそのまま斬撃を繰り出す
神通(片手を潰し、対応力を低下させる…
そして…武器を封じ込めたという勘違いの中から、意識外の斬撃…)
ヒュンッ
神通「……」
川内「流石」
夕張「い、今…何が起きたの…?」
明石「見えなかった…でも、首が…切り落とされてる…」
海月姫を蹴り飛ばし、鞘を奪い取って納刀する
川内「これで、親玉は始末できた…」
神通(…)
刀の鞘を腰に当て、抜刀の構えを取る
川内「って感じじゃ無いのか」
神通(手応えがありません、これも偽物です)
川内「そいつも本体じゃないってさ!」
夕張「じゃ、じゃあどこに!?…まさか」
川内「うん、多分それで正しいよ」
神通(この近辺には居ない、超遠距離から操作している…
動きが生々しいので考えにくい可能性ですが、でも、それしか…)
川内「対空砲火よろしく!低空のやつはアタシがやる!」
夕張「了解!」
曙『コンテナ到着!被害無し!』
睦月『コンテナ到着!合流完了にゃしぃ!』
北上「おつかれ、とりあえずそこで待機かな」
森の中でじっと見てた
みんな安全に避難できた
まあ、まずはコレで良い
家を潰しながら、数十匹の深海棲艦を無力化できた、コレも良い
でも、この倍以上の敵がまだ居るのが笑えない
北上(…っ…空母型?)
艦載機の音がした
気づかれてはないけど…このままじゃマズイ
北上(さっさと動かないと、みんなが危ない)
北上「みんな、コンテナの中の小銃を使って、動きながら使わなきゃいけないから主砲よりはマシ、そのまま撤退方向に進んで」
早霜『北上さんは』
北上「大正首を落として、海上作戦に向かう」
曙『死なないでよ!』
霞『信じてるから!』
北上「囮役、頼んだよ」
単騎で、海月姫を狩る
…1番不向きなあたしが、
北上(動いた!)
小銃の銃声、爆発音
始まった、みんな戦ってる
北上「大淀、聞こえる?…迎えを出して、今すぐに」
大淀『了解しました、10分後に到着します』
北上(早いな…間に合えば良いけど!)
銃声が遠ざかり、深海棲艦の匂いが薄れたタイミング
つまり今、打って出る
茂みから飛び出し、生身の足で地面を蹴り飛ばし、義足で身体を支えながら接近する
海月姫「ッ!?」
北上「反応が遅いね…やっぱ、遠隔操作か…っ!?」
足元への砲撃を飛び上がってかわす
北上(マズ…!)
爆発の衝撃、
北上「ぐ…ぅ…うぅ…!」
海月姫「アハハハハッ!馬鹿ミタイニ突ッ込ンデ!」
パチパチと音を立てて、ステルスを解除した艦載機達が飛び上がる
そして艦載機の群の中から…
ル級「ギ…ギギ…」
北上「へぇ…っ……あたま、回るじゃん…」
立ち上がる前に砲撃し、怯んだ所に拳銃の射撃を三発撃ち込む
ル級「ギャ…ア……ッ…」
海月姫「ッ…コ、コイツ…!」
北上「…ふ…く…」
上手く立てないな…
囲まれてる
北上(…10分は早いと思ったけど、こりゃ、遅すぎるかもね…別の迎えがきちゃう)
主砲を地面に突き立てながら、なんとか上体を起こす
海月姫「終ワリダ」
北上「…すぅ……んー?…ホントにそう思う?」
海月姫「何?」
北上「そうでもないみたいだよ」
ダンッダンッダンッダンッ
海月姫「砲撃!?クッ…!ドコカラ…ウグッ!?」
動揺してる顔面にこっちからも1発ぶち込む
摩耶「よぉ、苦戦してるみたいじゃねえの」
北上「…美味しい登場だね」
摩耶「ああ、カッケェだろ?」
立ち上がり、手榴弾を右手に掴む
摩耶「本物か?」
北上「いや、偽物だよ」
主砲の先端に手榴弾を押し込む
摩耶「何してんだよ!?」
北上「コレ投げて」
摩耶「はあ!?」
北上「良いから、早く」
摩耶「ったく、しょうがねえ…なぁ!!」
海月姫に投げられた主砲を拳銃で撃ち抜き、爆破する
海月姫「ッ!…ウ…ァッ…!」
燃えてバラバラになる艦載機達に中指を立てて見せる
北上「6年前の復讐だよ、まだまだ味わえるから、楽しみにしてな」
摩耶(北上…お前…)
北上「……」
阿武隈「…見えました!東から、来ます!」
加賀「…出撃用意」
青葉「問題ありません…」
暁『みんな、無茶せずに足止めに専念して!艦載機の攻撃で撃破を狙って!』
阿武隈「了解!…艦隊、出撃します!」