食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
やあ、数日前に食生活が一時の安寧を得たと勘違いした北上様だよ
…うん、1週間って言ったよね、2日で壊れた
霞「ほら、さっさと言いなさいったら!」
阿武隈「うぅ…今回は私たち何もしてないのに…」
北上「前科は重いよ、阿武隈」
阿武隈「わ、私達は…」
北上「ギンバイ行為を決して許しません…」
霞「って事だから」
夕張「…はい」
…ご覧の通り、夕張は空腹に耐えかねて残ってる食料にこっそり手をつけていた、それがバレた
あたし達は前科があるので罪を噛み締める役割
そもそも夕張と明石は数日前まで車中生活をしながらもちゃんと食事を取れていたらしい
…3食取れてるなんて想像してなかったから気付くのが遅れた…
となると…この生活は苦しいだろう事も、明らかだった
北上(気が回らなかったな…ごめん、夕張さん…)
霞「で?許さない側の2人はどうするのか、ハッキリ言いなさい」
阿武隈「…私たちが責任を持って、この生活について教育して…足りない分の食糧も確保しに行きます…」
北上「あの、あたし怪我人…」
霞「監督役」
北上「…はい」
別に全部食べられたわけじゃないから、今日明日はなんとか凌げると思うんだけどなぁ…
夕張「…その…ホントにごめんなさい」
霞「言葉じゃなく、行動で示しなさい、ココにいる限りは」
北上(普段、誰よりも食べないようにしてる分…こう言う時の霞は怒らせたら怖い…)
北上「ま、しゃーないよ、でも次はないから」
夕張「ごめんなさい…」
阿武隈「最初はキツイですよね…私も、ホントに辛かったです…
元々餓死寸前で来ましたけど」
北上「ま、とりあえず…夕張さんはあたしと砂浜回ろうか、阿武隈はどうする?」
阿武隈「…山に入ろうかなって…」
北上「やめときな、あたし軽く見回ったけど…なんか、この辺の山まで猟師が来るみたいで罠が張られてた
それと、熊もいたよ、罠で怪我してかなり気が立ってる…
ってか、そもそもこんな時期にいる熊自体近付くのはやばいからね」
阿武隈「じゃあ…海釣りしてきます」
北上「ん、任せた、期待してるよ」
阿武隈「たくさん釣りますね!」
北上「がんば〜」
夕張「…歩けるの?」
北上「問題ないよ、多少ぐらつくくらいでさ」
夕張「……それにしても、よく生きてるわね、みんな」
北上「必死だけどね」
夕張「そうじゃなくて…あんなに少ない食事で、ほとんど栄養も取れてないのに…
私は栄養学とか医学は知らないけど、確かに生命維持に必要な量は取れてるのかもしれない、でもあんなに動き回れるもの?」
北上「さあ?考えた事ないや、艦娘だからで、人間との違いは解決してきたから」
夕張「そっか」
北上「にしても…なんも落ちてないなぁ…この生活始めた頃は、たまに船から落ちたっぽい水浸しの食料とか落ちてたんだけど」
夕張「深海棲艦が船を襲わなくなって、なくなったのかもね」
北上「……良いことだね」
夕張「そうね」
北上「…聞き辛かったんだけど、夕張さんはさ、なんで戻って来れたわけ?大淀のトコから…」
夕張「え?」
北上「…普通に戻してくれたんだ、何考えてるんだろ、アイツ…」
夕張「良い人だと思うけど…大淀さん」
北上「……そうだろうね、別に悪人じゃないんだ、うん、知ってる…」
夕張(…因縁アリ…か……)
北上「潮が引いてるし、ちょっと奥まで入る?」
夕張「そこの岩場とか貝が取れそうね」
北上「いや、この辺の貝食べちゃダメだよ」
夕張「…漁業権的な話?」
北上「毒あるから」
夕張「貝毒?…じゃあ、これは?」
巻貝…?
北上「それも貝じゃん…」
夕張「実はね、貝毒って二枚貝、アサリとかしかならないの」
北上「え、ウソだ」
夕張「もちろん、毒性を持つ巻貝も居るけど、二枚貝の貝毒っていうのは、毒性を持つプランクトンを食べ続けたことが原因なの。
巻貝は種類によるけど、植物や藻、魚の死骸なんかを食べるから、多分大丈夫だと思うわ」
北上「へー…物知りだね」
夕張「まあね?あと…ほら、あそこの砂浜…あれ見て」
北上「…何これ?」
砂に、変な跡…?
大きい四角みたいな…
夕張「エイのいた跡、もしかしたら居るかもしれないから気をつけて」
北上「気をつける?」
夕張「毒針があるから」
北上「……もしかして、夕張さんって毒に詳しいだけだったりする?」
夕張「…まー、実験開発メインだったから、海の毒についてはかなり調べてたわ、深海棲艦は耐性があるのかとかね」
北上(どーりで)
夕張「ちなみにその辺にいる蟹も小さいもので危険な毒を持つ個体が居るから注意してね」
北上「え、たまに食べてたよ、怖…」
夕張「…これを?油なんてないのにどうやって?まさかそのままって訳じゃ…」
近くのカニを1匹踏み潰し、、動かなくなった所を海水で洗い、口に含む
北上「
夕張「……え、えぇ…?今毒の話したのに食べる…?しかもそのまま…」
…ドン引きされてるけど、こうするしかない時もある
バリバリ食べてるけど、正直口の中が痛い
あと、凄い海の味する
夕張「本当に食べ物に困ってるのね…」
北上「…むぐっ…もごっ……ふー…ようやく信じてくれた?」
夕張「信じてなかったわけじゃないけど、ここまでだと思ってなかったのよ、だって、逃げながらでも私たちそこそこまともに生きられてたし…」
北上「むしろそっちが気になるね、どうやってた訳?」
夕張「…基本的にドライブスルーとか使いながらね、なんとか生きれるだけの額はあったから」
北上「じゃあなんで艤装まで盗もうとしたかなぁ…そのまま海外に飛べばよかったんじゃない?」
夕張「先が見えなくて不安だった…って言ったら言い訳に聞こえる?
明日もわからない生活を続けてると、安定が欲しくなる、たとえそれが危険な道でもね……
でも、結局進んだら破滅の道だった訳だけど」
北上「あたしに止められたから?」
夕張は首を振って俯く
夕張「私達、監視されてたの、海に出たら撃たれるはずだったって」
北上「……は?誰に」
夕張「国が抱えてる部隊に、ずっと、ずーーっと、監視されてたんだって、証拠の写真まで渡された…ホント、あの怯えてた日々はなんだったのか…」
北上「え、ちょっと待ってよ、じゃあつまり…あえて放置されてたって事?」
夕張「そう、理由までは教えてくれなかったけど、国外に逃げられてたら本当に殺すしかなかったって言われた」
北上「……」
そんなの、納得したくない
だけど、おそらく…あたしらが捕まってない理由は…
北上「やっぱ、あたしらも、留置所の奴らも、“念の為”に残してる訳だ」
夕張「あ、やっぱって事は気づいてた?」
北上「想像だけはしてたよ、でも、やってる事は最低だよね」
もう一回深海棲艦とやり合う時のために、飼い殺しにされてる訳だ、あたしら
でも、深海棲艦は艦娘の放棄を求めた、そして世界はそれを呑んだ
だから誰も支援はしてくれない、だけど、それでも戦争になれば戦う事を求められる
夕張「それと…留置所の扱いや、残された艤装の状態を見るに…艦娘はメインの戦力としては期待してないと思う。
きっと今は深海棲艦と戦える、新しい世代の武器を作るための、冷戦期間…それは、艦娘の犠牲の上に成り立ってるの」
北上「へー…酷い話だね」
夕張(……)
夕張「そう、酷い話、ところでもう二つ、さっきの貝について面白い話があるの」
夕張が砂浜を手で掘り、二枚貝を見つけ出す
北上「毒は?」
夕張「今はある、でもね、8月を過ぎたあたりで毒を持つプランクトンが減って、食べても問題ないくらいにはなるはず」
北上「そうなの?」
夕張「貝自体が毒を持ってる訳じゃないから、時期が過ぎれば治るの、それとこの毒のある貝も…」
夕張が殻を破り、中身を取り出す
夕張「釣り餌くらいにはなるでしょ?」
北上「そっか、体内に吸収されなきゃ良いんだもんね」
夕張「そういう事!」
北上「ってわけで、コレ餌に使ってよ」
阿武隈「…もう、釣り終わったんですけど…」
夕張「へー、ミミズ?触れるんだ!」
阿武隈「頑張って触れるようになったんですけど…っていうか…そっちの収穫は…?」
夕張「巻貝!」
北上「あと、野草、魚は?」
阿武隈「…よくぞ聞いてくれました……見てください!」
北上「おー…?デカいじゃん!」
40センチはある、でもこれ…なんの魚?
夕張「スズキ…このサイズだとフッコかー!え?釣竿とかないと思うけどどうやって釣ったの!?」
阿武隈「糸をよりあわせて、丈夫にしてみたんです、そしたら切れずに上がりました!」
北上「やるじゃん」
阿武隈「えへへ」
夕張「コレだけあれば許してくれるかしら?」
北上「うん、大丈夫だと思うよ」
夕張「ホントにごめんなさい!」
霞「次やったらホントに許さないから」
夕張「はい!反省してます!」
北上(どっちが年上かわかったもんじゃないね…で、あっちは?)
曙「へえ、それで、どの辺で釣ったのよ、餌は?」
阿武隈「地面を掘って出てきた幼虫を捕まえて、それで!」
曙「えっ……あのキモいのを?」
阿武隈「…もしかして曙ちゃん、触れない?」
曙「…そんな事ないわよ!」
北上(あーあ…素直に虫苦手って認めりゃ良いのに…でも、阿武隈はそろそろ虫食べさせられそうかな)
早霜「貝、焼けましたよ」
北上「ありがとう、早霜」
貝の蓋に布を当て、ぶんぶんと振り回す
早霜「…何を?」
北上「サザエとかはコレで取れやすくなるんだよね…よし、外れたかな?」
端でクルクルと巻いた身を取り出し、齧り付く
北上「んー…コリッコリ…コレ安全に食べれるんなら最高だよね…」
早霜「肝の方は念のため食べないようにしてほしいそうです」
北上「はいはい…あー…ここが美味しいのに…」
暁「はい、これ、スズキの串焼きだって!美味しいわよ!」
北上「おー…ありがと」
こっちは皮がパリパリでしっかり身が締まってて
北上(ちょっとクセのある風味だけど、うん、美味しい…)
淡白でちょっと塩かけすぎだけど、この味は…
北上(ご飯食べたくなるなぁ…)
北上「…ん?」
携帯にメールが入る
北上「……「海賊について」…?」