食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
やっほ、文明の明かりを手に入れることが確定した北上様だよ
…夕張さんって身体の中身まで弄ってるみたいだけど、平気なのかね…?
夕張「…ふぁあ…よく寝たー!…って、アレ…」
北上「……」
大淀「ふふ、おはようございます」
夕張(…一晩中睨み合ってたの…?かたや不機嫌、かたや張り付けたような笑顔…)
北上「くぁ…あ…」
夕張「…あ、あのー…」
大淀「なんでしょう?」
夕張「…お二人って、その…何か、因縁とか…」
大淀「んー……そういうつもりではないのですが…」
北上「……」
夕張(これは…本人達に聞くのはやめといたほうが良さそうね)
夕張「あっ!そーだ!これ!見てよ、さっきの船で拾ったの」
夕張が袋入りのスナック菓子を取り出す
ポテトチップスなんていつぶりに見ただろう、しかもコンソメ味
北上「どこに隠し持ってたのさ」
夕張「シャツの中!いいでしょ?」
北上「別にどうでもいいけど、手癖悪いのは良くないよ
というか駆逐達に悪影響だしやっぱ良くないわ」
夕張「そんなお母さんみたいな事言わないで、それに…こういうスナックは久々じゃない?」
北上「……まあ」
大淀「お好みでしたら用意しましょうか?」
北上「要らない」
夕張(大淀さんの施しを受けるのがとことん嫌な感じか…
先輩って呼ばれてたし、後輩からものをもらうのはプライドが許さない的な…?
いや、そんなあっさりした関係じゃなさそうだけど)
大淀「さて、そろそろ着きますよ」
夕張「やば、コレみんなに見せたら一瞬で無くなっちゃう…」
北上(まあ、霞あたりが一瞬で食糧庫に放り込むだろうね)
大淀「夕張さん、素直に差し出したほうが印象が良いと思いますよ、今度発電機を持っていくときに差し入れますから」
夕張「ホントに!?ならコーラもお願いしていい?」
大淀「ええ、それと、明石さんですが、近いうちに面会できる時間をお作りします」
夕張「やった!」
北上(…夕張さんも、大淀に取られたかぁ…)
大淀(……)
霞「ふーん…ポテトチップスねぇ…」
夕張「な、何かの足しになれば…」
霞「なると思う?曙」
曙「調味料代わりにはなるんじゃない?」
夕張(ああ…私のポテチ……)
北上「塩振るだけじゃ飽きるもんねぇ…魚とかにつけてみる?阿武隈は今釣り?」
早霜「はい、それと、睦月ちゃん達は野草摘みと洗濯に」
北上「川に洗濯か…んじゃ、あたしは山に狩りにでも」
夕張「いやいやいや、寝ないの!?」
北上「だって食糧ないし」
早霜「今日の分はなんとかなります、明日も」
夕張「ほら!」
北上「……動いてないと不安なんだよ」
夕張「不安…?」
北上「良いから、あたしにやらせて」
夕張「…なら、あたしも連れてって?」
北上「……」
夕張「たとえ熊が出ても、私なら仕留められるし?」
北上(ホントにできそうなのが怖いけど、艤装も無しにやれるの?…だとしたら、危険も減るし、すごいありがたいけど…)
霞「ホントに?ホントに熊倒せるの?」
夕張「も、勿論!」
曙「じゃあ食料問題もしばらく解決できるんじゃない?」
北上「…じゃあ、お願いしようかな」
夕張(…ヤバ、一人で行かせるのはまずいからって熊倒せるなんて言うんじゃなかった…期待の目が痛い…)
北上「……」
夕張「さ、さあ!初の山…!……何からすれば良いの!?」
北上「……じゃあ、熊探す?」
夕張「う…」
北上「嘘だよ、アレは艤装でもなきゃ喰われて死ぬだけだからね、帰ったらちゃんと訂正しといてよ」
夕張「…嘘だって気づいてたの?」
北上「そりゃあ、まあいくら夕張さんが艤装の扱いに長けてるとしてもね、熊まで倒せたら怖いよ」
夕張「…なら、そっちの素手で海賊を倒したって話も怖いけど?」
北上「……あれは、向こうがあたしの気持ちを理解してくれたからだよ、話し合いで解決できただけ…」
夕張(…やっぱ、読めないっていうか…わからない…
大淀さんにあんな態度を取ったり、躊躇いなく撃ったり、時には飛び掛かったり…
“殺す技術”にあんなに長けてるのに…優しさって言うか、悪く言えば、“甘さ”みたいなものを感じる…)
北上「どしたのさ」
夕張「ねえ、その…そう言えば、なんて呼んだら良い?」
北上「へ?」
夕張「実は、ずっと迷っててさ、その…なんで呼びかけたら良いかわかんなくて…
他の子みたいに北上“さん”って呼ぼうと思ったけど、私をさん付けで呼んでくるし…?」
北上「いや…あたし今17だよ」
夕張「…あー…こりゃ、北上“ちゃん”だ…」
北上「…そっちはいくつなのさ、“おねーさん”」
夕張「…最近
北上「あ、なんだ、ババアか」
夕張「なんだとー!?」
北上「あはは、歳下とわかった瞬間強気だね〜?」
夕張(…あたしより3つも下で、あんなにたくさんの子を守ってるなんて…)
夕張に頭をくしゃくしゃと撫でられる
北上「…くすぐったいんだけど」
夕張「……よし、見てて!今日は私が大物取って見せるから!」
北上「え、何急に気合い入ってんの、怖」
夕張「いいからいいから!」
北上(……)
北上「ちなみに大淀は16だよ」
夕張「嘘ぉッ!?」
北上「まあ、艦娘になった時点で人間の記憶とかなくなってるから、実年齢とか言われてもピンとこないけどね」
夕張「い、いや、そりゃそうだけども…」
北上(…面白いな、この人)
夕張「はー…だいぶん登ったわね」
北上「なんで登山なんかするのさ…疲れたよ…」
夕張「まあまあ、この辺になると……あ、いた!!」
北上「へ?……うわ、鳥!?」
地面が保護色になってるから気づくの遅れたけど
茶色の…尾が長い…何あの鳥…
夕張「あれはね、山鳥って言うの、アレを捕まえる!」
北上「…どうやって?」
夕張「拳銃、持ってるんでしょ?」
北上「バレてた?」
夕張「あの深海棲艦の前で大淀さんから支給された拳銃捨てた時にね?
いくら私が艤装を操れるって言っても、それでも信用せずに次の手は隠し持ってるタイプだって思って」
北上「意地悪言わないでよ、念の為だよ」
ヘラヘラと笑いながら隠し持っていた拳銃を取り出し、鳥の頭に狙いをつける
夕張「安全装置」
北上「あ、ホントだ…っし…」
よく狙い、頭を撃ち抜く
夕張(…胴体に当ててくれれば充分なのに…
拳銃でこの距離を、あんなに小さい頭に正確に…?)
北上「おー……あれ?思ったより…小さいね」
夕張「まあ、それでも十分食べられる量よ、それにお野菜も魚も取ってきてくれるんでしょ?」
北上(雑草だけどね)
北上「ま、足りるか」
夕張「…ん…?ね、ねえ!コレ見て!」
…なんかの木の実…?
皮が3つに割れて、中に黒い実が…
夕張「これ!椿!」
北上「椿?…ああ、紅い花咲くやつ?」
夕張「コレの種…ほら、この黒いやつ!沢山集めたら椿油にできるの!」
北上「…保湿に使うやつだっけ?」
夕張「それもそうだけど、料理にも使えるの!」
北上「え、まじ?」
夕張「油の生成は難しいけど、やり方はわかる!うん!きっとこの辺りに群生してるし…よし、明日みんなで収穫に来ない?」
北上「熊いるし危ないと思うけど」
夕張「じゃあ阿武隈ちゃんは?」
北上「まあ、阿武隈なら」
夕張「決まりね!」
夕張「と言うわけで、山鳥を料理するわけだけど」
北上「はいはい、捌きますよ…」
羽をむしった山鳥の首を落とし、さっさと腹を開き、内臓を取り出す
ここまではカラスと一緒だけど…
夕張「あ、ちょっと待って、それと、これは肝臓と心臓だから、焼いて食べましょ?」
北上「え、イケんの?」
夕張「火を通せばね」
北上「やりぃ!じゃあ肉はどうする?」
夕張「塩して、丸焼きにしない?出てきた油はチー油にしちゃいましょ」
北上「ちーゆ?」
夕張「料理用の鳥油のこと、中華なんかでよく使うの
見た感じ脂身も多いし…あー!美味しそう!」
北上「じゃ、丸焼きは確定として…折角ならコレも行っちゃおうか」
夕張「え?…あっ…私のポテチ…」
北上「元々盗んだものじゃん…袋を開いて……うっ…」
…なんで、刺激的な匂い…
夕張「…コンソメ味ってなんでこんなに美味しそうな匂いなの…?耐えられない…!」
北上「ええい!あたしは誘惑に負けない…!のり塩派の意地…!」
袋の口を絞り、空気を抜く
刺激的な香りは息を止めることで防ぎ、袋の中で一気に砕く
夕張「ああぁぁぁっ!?そんな、そんな事しちゃ…
パリパリして美味しいポテトチップスが…フレーク状に…」
北上「大袈裟だよ、後で食べるんだから一緒だって」
北上(確かにそのまま食べたかったけど…)
如月「北上さーん」
北上「おっ、来た来た、野草はどう?」
暁「たくさん採れたわよ♪」
北上「おー…美味しそう……コレを、ある程度千切って、鳥の腹に入れる…と」
夕張「あとはこのまま焼き上げれば完成…ね…」
火にかけて直ぐに良い匂いが立ち込めてくる
鳥を固定する棒から滴る油すら美味しそうだ
阿武隈「わ…良い匂い…」
北上「お、遅かったじゃん、成果はどうよ」
阿武隈「……あはは」
夕張「
阿武隈「はい…」
北上「じゃ、この鳥が今日の全部かぁ…」
夕張「…9人食べるには、到底足りないわね…」
北上「阿武隈、いくらか缶詰開けられないか霞に聞いてきてよ」
阿武隈「わかりました、多分良いって言ってくれますよ」
夕張「……」
北上「どうかした?」
夕張「…んー、なんでもない」
夕張(こうしてみてると…姉妹みたいだなぁ…)
北上「…はあ…長かった…ようやくありつける…」
夕張「はい、ここの部位のお肉美味しいから、あとで感想聞かせてね?」
暁「ありがと、夕張さん」
阿武隈「わあ…凄い…ローストチキンなんて、夢みたい…」
北上「いただきます…ん!」
美味しい…野鳥だから臭いかと思って野草も入れたけど
全然そんな心配がないくらい臭みがない…
お肉がすごく美味しい…
北上(これなら態々こんなことしなくて良かったなぁ…)
夕張「…あれ?なんでポテチの袋持ってるの?」
北上「こうする為だよ」
肉を袋に突っ込み、砕いたポテチを纏わせる
霞「あー!?そんな事に使って!」
北上「…これはさ、絶対美味しいって…」
口に運ぶ段階でいい匂いがすごい…
噛めばパリッと、ジワジワ広がる肉の油と旨み…
そしてコンソメの旨みもやってきて…
北上「ん〜〜!!…うっま……化学調味料最高だわ…」
早霜「……私も良いですか?」
阿武隈「あ、ずるい!私も!」
夕張「ちょっ…私のポテチだからね!?」
さて、みんながポテチに集中してる間に、余分に取っておいた砕いたポテチを心臓の串焼きにかける
北上「あーむ……はぁ…コリッコリパリッパリ…」
暁「あ!ずるいわ!北上さん1人で!」
北上「げ…レバーならあげるよ」
暁「……レバーは嫌いよ」
北上「ふっ…お子ちゃまめ…」
暁「……」
無言で暁がレバーの串を奪い取り、食べる
暁「…!…やっぱり、嫌いじゃないかも…」
意外と美味しかったらしい
北上(骨は煮込んで出汁が取れるんだっけ…それで明日も何とか野草を煮込めば…んや、まあ…それは明日考えればいいか)
カシュッ
北上「ん?!今缶詰開けた落としたけど!?誰!独り占めを許すな!」
阿武隈「串焼き食べてた人に言われたくないですよ!」
夕張「あ!しかもそれ私が目をつけてた秋刀魚缶!?」
霞「みんな、子供よね」
早霜「ええ、そうですね…」