食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
北上様だよ…
…割と絶望的な話をしてもいい?
今は冬、ここは東北の最北端、そして外には雪が降り始めました
それはどういう意味かわかるよね?
北上(…冷たい地獄が降って来た…)
如月「そんなに強い降り方じゃないけど…」
睦月「積もる気がするにゃしぃ…」
北上「仕方ない、出てくるよ」
如月「えっ!?ダメですよ…!」
北上「降らないのに甘えて楽観視してたのが悪いんだ、コレが50センチも積もってみなよ、一巻の終わりさね」
如月「それは…そうかもしれませんけど…」
睦月「帰って来れる…?」
北上「流石に迷いはしないけど、寒さに耐えれるかかな」
北上(獲物が出てくるまでは耐えなきゃいけない…しかも海は絶望的…大物じゃないと長期間は
阿武隈「あの、北上さん…」
北上「阿武隈?大人しく待っててよ、ちゃんと帰ってくるから」
阿武隈「で、でも…ここ、雪が積もったら外は危険だって…」
北上「危険っていうか、まず獲物が居ない、釣りも冷える、移動が大変って理由で食糧確保が大変なの、わかる?」
阿武隈「なら私も行きます!」
北上「いや、いいって、雪慣れてないでしょ」
阿武隈「それはそうですけど…!」
北上「あたしならなんとかなるって、さっと行ってささっと帰ってくるよ」
とは言ったものの…
北上「このタイミングで吹雪はひどいな…」
山に入ってしばらく
まだ獲物も見つけてないのに一気に雪も風も強くなった
北上(どうするかな、流石に帰るか…ここで欲張ってもうまくいくわけないしね)
だが、この視界の悪さのせいだろうか?
慣れという油断のせいか?それとも別の何かか?
北上(…方向感覚が、狂う…登ってる…みたいに錯覚する…山を降ってるはずなのに…長丁場になると本当に迷う…)
しかし、このまま戻るといよいよ不味い
食べるものは明日にも尽きるだろうし、どうするべきか
北上「……お…居るじゃん、獲物」
…目の前の
北上「…あっちの方が美味しいかも…」
最早寒さで妥協したくなったが、できるだけ良い朽木をいくつか選び、ここは撤退
…ん?
ちゃんと木を食べるんじゃなくて、中の食材を食べるから安心してね
北上(でも、もっと持って帰らないと足りない…さっさと止んでくれなきゃこまる…)
北上「ふぃー…ただいま、何とか帰って来れたよ」
ゴトゴトと朽木を落とす
阿武隈(本当にあっさり帰ってきた…)
阿武隈「って、木?食べ物じゃなく火種を取りに行ってたんですか?」
暁「……逃げなきゃ」
早霜「ですね」
阿武隈「え?」
北上「ちぇっ…勘がいいなぁ…」
阿武隈「え?え?」
北上「阿武隈ぁ、解体用のナイフ、取って?」
阿武隈「は、はい…」
北上「いやー、実はコレが美味しいんだよね、また」
阿武隈(まさか、木を…?……いや、わかった…逃げなきゃ…)
北上「逃げちゃダメだよ、阿武隈」
阿武隈「わ、私は虫は…!」
北上「でもさ、この中で生きてる虫は死なない限り腐らないし、いつ止むかわからない雪に対して完璧な保存食じゃない?」
阿武隈「うっ…!?」
阿武隈(ホントにそうなら保存食にはなるかもしれないですけど…!)
北上「それにおいしいんだって!」
阿武隈(どうしよう、絶対に嫌…!)
阿武隈「な、ナイフ!置いときますね!」
北上「あ、逃げんな!……はぁ…いつかは食べなきゃいけない時が来るだろうに」
去年は確か、まだ保存の缶詰が残ってたんだっけ
…思えばあの頃はまだもっと頭数もいたな…ずいぶん減ったもんだ
北上「…ぶぇっくし!!…寒」
やはり、暖房なしでは越冬は厳しいか…
北上(風がないだけマシだね…さて、一つやるか)
大型ナイフを握り、朽木に振り下ろす
歪な形に割れた断面から覗いてる、白い幼虫
北上「いたいた、コレが美味しいんだよね〜…じゅるり」
さて、大量に居るのを選別してきたから、コレ一つでかなりの量が取れる
そして外側の木は火をつけて熱源にできる
何で効率的な食糧だろうか?
北上「……よし、かなり取れた」
ちなみに、この木、かなりふかふかしてるから、その気になれば手でも砕ける(艦娘基準)
こういう朽木を選ぶと意外とたくさん見つかるんだよね
ただ、こういう
北上「…うわー、並べるとキモいな…全部焼いて食べるんだけど」
かなりデカい朽木をとってきたこともあり、いろんな虫が取れたけど
特に多いのは…
北上(このカミキリムシの幼虫、コレがメイン…
よし、これを…前にフライパンに乗せたら烈火の如くキレられたから、木の枝を削った串に刺して、塩を振る)
そして焼き上げる
北上「完成!…全部コレだけ取れるなら、1人15匹は毎日食べれるんじゃない…?!」
焼き上がった幼虫を口に運ぶ…
夕張「ただいま!」
北上「あ」
面会から帰ってきた夕張さんと鉢合わせ…
っていうかあの吹雪の中よく帰ってきたね…
夕張「…え、なにやってるの…?」
北上「ご飯食べようと思ってるんだけど…?」
夕張「……虫!?」
北上(いや、気づくの遅っ)
夕張「ま、まだ食べ物あったんじゃ…!?」
北上「だって雪で明日から狩りにも釣りにも行けないし」
夕張「…あー……なるほど」
北上「食べる?」
夕張「……」
お互い、笑顔で止まる
夕張「……あー……やめ、とこうかな…」
北上「なんで?」
夕張「…その、見た目が」
北上「見た目じゃお腹は膨れないんだよ」
夕張「……あー!そうだ!大淀ちゃ…が!発電機今日中に設置してくれるように手配するって!」
北上「え、この雪の中で?」
夕張「そ、そう…一応すぐにでも動くって」
北上「……マジ?」
夕張「マジマジ、ほんとにほんと」
北上(…エアコン掃除してないけど、もしかして使えるように…!?いや、それよりも冷蔵庫、夏場の食糧事情がマシになる!それとアレもソレも、全部電気で解決が…!)
夕張「でも、問題なのは…家電も修理しなきゃってとこよね」
北上「…へ?」
夕張「だって、どれだけ放置してたかわからないけど…冷蔵庫なんて表面は掃除されてたけど裏側苔むしてたでしょ?」
北上「……まあ…」
夕張「ほとんどの家電は…っていうか、全部もう使えないと思っていいと思うわ、とりあえず電気配線は生きてるか確かめとくから」
北上「…そっか、ありがと…」
夕張「それじゃね」
北上「……まだ文明の温かさは手に入らないか…」
カミキリムシを口に運ぶ
北上「…美味しいのになぁ…」
甘味もあって、香ばしくて、とろっとクリーミー
スナックのように食べられて非常に美味しいのに
北上「…ふー…ふー…はぐ…んー…うま」
北上(パンが欲しいな、パンに乗っけて食べたい…)
いつの間にか今日の分を食べ切り、身体もだいぶん温まった
北上「明日はどうするかなー、蜂の巣でも取れたら良かったのに……ん?…なんか、騒がしい…」
娯楽室…?
みんな集まって何かしてるのかな…
北上「おーす…うわ」
夕張「……あちゃー…」
大淀からもらったスマホで映画の観賞会
そして…
北上「あー、確かに大淀に要求してたよね、ポテチとコーラ」
夕張「…そ、そうなの!ちらっと見た限り、配線はまだ使えそうだったし、待ってる間暇だなーって思って…!」
北上「みんなあたし抜きで楽しんでた訳だ…?
そこ!暁、早霜、逃げない」
早霜「…すみません」
北上「ってか、映画観れるくらい回線良かったっけ?……ああ、ダウンロードしてあるんだ…へぇ…色々あるね〜」
スマホを操作し、ホラー映画を流す
北上「暁、早霜、膝の上においで、一緒に観よう」
暁「えっ」
早霜「…はい」
北上「夕張さん、のりしおとコーラ」
夕張「は、はいこれ…」
北上「…みんな何でそんな離れてんの?寒いよ?映画観れないよ?」
阿武隈(怖いんですよ!映画も、怒ってる北上さんも!)
北上「阿武隈、ちゃんと観ないと寝てる時に口の中に虫突っ込むからね」
阿武隈「…はい」
北上「…はー…面白かった!」
暁「…」
早霜「…」
阿武隈「…」
夕張「…みんなグロッキーね…」
北上「今後は誘ってね?」
夕張「はい…ごめんなさい」