食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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人質

のどかな昼下がり、海岸でのゆったりとした釣りの時間…

 

曙「……何もかからないわね」

 

阿武隈「折角骨針用意したのに…」

 

本日の釣果0

そしてかなり身体も冷えてきた…

 

阿武隈「北上さん達出かけちゃったし…」

 

曙「やる事ないわね…また火でも起こす?」

 

阿武隈「冷えてきましたし…そうしますか」

 

曙「アタシ焚き火に突っ込める木持ってくるわ」

 

阿武隈「はーい」

 

防寒具もまともなものがないため、焚き火だけが唯一暖を取れる手段

もし、着火できなかったら寒さから逃げ帰るしかない

 

阿武隈(…でも、流石に話し相手もいないと寂しいなー…)

 

阿武隈「…あ…?!」

 

…海面から、黒い筒が…

 

 

 

曙「…何の音?…砲撃…?戻らなきゃ!」

 

 

 

阿武隈「あっ…あわ、あわわ…」

 

足元の岩場が砲撃で砕けた…

そのせいで、引き摺り下ろされた…深海棲艦の前に

 

ヲ級「…コイツカ?」

 

チ級「トテモソウハ見エン、ダガ、人質グライニハナル」

 

阿武隈(人質!?……そっか!この深海棲艦、北上さんに復讐に…!)

 

ヲ級「暴レルナヨ」

 

ヲ級の手がこちらへ伸びる

 

阿武隈(…この感じ、2回目だ…)

 

…生きてるか死んでるかわからないまま、ゴムボートに乗せられてた時のことを思い出す

あのときは、北上さんが来てくれた

だから助かった

 

では、今は?

…助けに来てくれる“誰か”は、今ここにいない

 

阿武隈(やるしか…ない!)

 

ヲ級の手を掴み、抱き寄せ、ガッチリとホールドする

 

ヲ級「ヲッ!?」

 

チ級「ナ、ナニヲ…!」

 

ヲ級の首筋に釣り針を突きつける

 

阿武隈「…余計な事をしたら、首を裂きます…これだけ太ければ十分痛いですよ…!」

 

ヲ級「艦娘ガ…!グ…ナンテ力ダ…!」

 

阿武隈(今まで押さえ込むなんてした事なかったけど…できる!…でも、この後どうしたら…!?)

 

正直取り押さえられるなんて思ってなかったし、後のことなんて…

 

曙「居た!阿武隈!」

 

阿武隈「あ!ちょ、ちょっと助けて欲しいんですけど!」

 

曙「わかってる、すぐに応援が来る!」

 

チ級「分ガ悪イカ…!スマンナ恨ムナヨ!」

 

ヲ級「チ級!?ヲイ!」

 

深海棲艦が片方逃げ出す

 

阿武隈「……」

 

阿武隈(どうしよう…)

 

曙「…さっさと上がってきなさいよ、ソイツ連れて」

 

阿武隈「…はい」

 

曙(で、捕まえてどうするのかしら)

 

 

 

 

阿武隈「…と言うわけで、その…この人…」

 

艤装や装備を全部剥がして、正座中のヲ級を突き出す

 

暁「…連れてきちゃったの!?」

 

阿武隈「はい…」

 

暁「え、どうするの…?」

 

阿武隈「…いや、あの…あはは」

 

曙「…もしかして、何も考えてなかったの?」

 

阿武隈「…死にたくない一心で…」

 

ヲ級(ヲ……)

 

暁「連れてきたはいいけど、北上さんも夕張さんも出かけてていないのよ?」

 

阿武隈「…帰した方がいいですかね…?」

 

曙「1匹逃してるし、取り返しにこられたら面倒だけど」

 

暁「…どうしよう」

 

阿武隈「…こういう時は、北上さんのやり方に(なら)って……」

 

阿武隈(あれ…?素手で死ぬまで殴り倒してる姿しか思い浮かばない…)

 

曙(確実に息の根は止めるわね)

 

暁(…絶対に殺しちゃうわ…)

 

ヲ級(ナンデ急ニ怯エタ様ナ顔ニ…?イヤ…マルデ屠殺場ノ豚ヲ見ルミタイニ憐レム様ナ目ヲ…!?)

 

阿武隈「…やめときましょうか」

 

暁「うん」

 

曙「賛成」

 

ヲ級(ホ…)

 

阿武隈「…とりあえず、どうしますか?」

 

暁「武器も全部取り上げたし、監視をつけて放置しかないんじゃない?」

 

曙「仲間が助けに来たらどうするのよ」

 

早霜「来ませんよ」

 

阿武隈「わぁっ!?」

 

暁「どういう事?」

 

早霜「深海棲艦は仲間意識が弱い、そもそもが力で捩じ伏せて従わせることでヒエラルキーを作る生物ですから…

まず、この深海棲艦は見捨てられるでしょうね」

 

阿武隈「…そういえば、このヲ級も見捨てられてました!」

 

ヲ級「フグッ…」

 

曙「目の前で見捨てて逃げてたわね」

 

ヲ級「ヴッ…」

 

暁「見捨てられたなんて…可哀想よね…」

 

早霜「それほどに仲間意識が弱いんです、復讐や取り戻しは警戒しなくて良いかと」

 

ヲ級(…私ハ…見捨テラレタノカ……?)

 

阿武隈「…なんか、涙目になってますよ」

 

早霜「深海棲艦が泣くなんて初めて見ました…

貴重ですし、写真にでも撮りましょうか?」

 

暁「やめなさい」

 

曙「なんか虐めてるみたいになるじゃない」

 

ヲ級「……帰リタイ」

 

暁「あー、よしよし、多分すぐに還れるから」

 

曙(間違いなく無事には帰れないけどね)

 

阿武隈「…ところで、北上さんはどこにいったんですか?」

 

暁「……多分…山雲達のところかしら」

 

阿武隈「誰なんですか…?その人達」

 

曙「ここを辞めた奴ら…いや、首輪付きになった奴らよ」

 

暁「…はあ……何ともないといいけど」

 

阿武隈(え、え、どういう…?)

 

早霜「夕張さんもついていって…ストレスを溜めることになりそうですね」

 

暁「…北上さんが帰ってくるまで、大人しくできる?」

 

ヲ級「エ…アノ」

 

暁「何?」

 

ヲ級「…北上サンッテ人ガ…ソノ…私タチノ仲間ヲ…ソノ…滅茶苦茶惨タラシク殺スッテ…艦娘…?」

 

曙「そうだけど」

 

早霜「その人がここで1番偉いので、処遇はその人に決めてもらいます」

 

ヲ級(…死ンダンダナ、私)

 

ヲ級「…イヤ…!イヤ!死ニタクナイ!ヲ願イシマス!何デモ言ウ通リニスルカラ助ケテ!」

 

暁「…うーん…?」

 

阿武隈(どうしよう…?)

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