食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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二食目

やあやあどうも、国内最高戦力の北上様だよ

…嘘じゃないよ?

艤装さえあれば深海棲艦10匹相手でも戦えるかもしれないからね

 

さて、それは置いといて

 

北上「…むむむ……」

 

目の前のウニョウニョとした物体に視線を落とす

のろのろと移動してるので、逃げられる心配はない…あたしが気にしてるのはもっと別なところ…

 

北上「……昆虫食…か…」

 

とうとう、缶詰などの新たに確保した食料が尽きそう…と言う点

ちなみにあたし自身はイナゴの佃煮とか蜂の子とか食べて育った関係上あんまり抵抗はない

その為この生活開始初期に一度手を出した事がある

 

…問題なのは、その時はあたしを除く年端もいかない少女達が生理的嫌悪感を隠しもせず、空腹を選んだと言うこと

 

また食べてくれないだろうな

そんでもって8人分の食料にするとなると、どうしても1人で取れる量に限りがある

絶対に足りない

 

本当なら魚を釣りたいけど、自作の釣り竿でも魚を釣れたことは一度もないときた

 

魚を食べる努力はしたけど、魚は食べられたくないらしいので今のところ断念している状態

正直素人には釣りもできなければ食べられる野草やら、毒のない虫、小動物の捕まえ方に捌き方なんてまるでわからない

 

北上「…そもそも、この身体じゃ激しくも動けないか」

 

ちなみにこの辺の海岸の貝は食べてみたら吐いたり痺れたりして大変な事になった

貝毒ってやつだと思う…

それ以来、食べられるのかな?と気にはしても食べようとは思わない

 

電気が止まる前にサバイバルの知識を仕入れるなりしておけば…とは思ったけど、時すでに遅し

さてさて、今度の調達はどうするかな……

この浜辺にあるものなんてたかが知れてるし…

 

こんな時ではあるけど、ここらで、人と艦娘の違いについて説明しておこうと思う

外見上の違いはほとんどないけど、艤装接続用に背中に手術痕がある

コレを確認された時点でアウト、働いたりする前に第三者が確認したりするところもあるらしい

隠しながら生きるのは相当に大変…。

 

次、内側。

コレは厄介だ、そもそも水の上を歩けるバケモノで、怪力

体力を始めとした身体能力もアスリート並み

そして1番危険視されている部分が、生体ユニット

イ級の亡骸を利用して砲撃した時、どうやったのか?

 

体内にある生体ユニットを接続して、イ級の身体をあたしの艤装として扱った

この生体ユニットを使えば、艤装はもちろん、一部の機械やインターネット、最新技術を謳った機械になら接続できる

 

だから、艤装を手脚のように動かし、戦える

 

北上「……おっ…!」

 

閑話休題(それはさておき)

 

北上「おお…!な、なんか流れ着いてる…!さ、魚?魚だ…!」

 

灰色の大きな魚、まだちょっと動いてるから生きてるみたいだし、新鮮ってことだ

焼いても炊いても、生でも良い!

まともな食材…

 

北上「って…これサメじゃん!…え?食えんの…?」

 

…せっかくの食材がサメ…

いや、贅沢は言えないし、案外美味しいかも知れないけど…

 

北上(どうやって食べればいいんだろ…?……いや、それより…)

 

足音…そして、このクセの強い香水の匂い…

 

北上「…チッ…折角良いもの見つけたのに…」

 

大淀「良いもの?それが?」

 

…昔、基地が正常だった頃、ウチにも大淀が居た

そいつは真っ先に政府に降って、今じゃ犬のように使われてる

 

北上「何の用さ、新聞宗教セールスは全部お断りだよ、あとついでに、投降しろ、もね」

 

大淀「そうですか、でも今日きたのはどれでもありません」

 

北上「…じゃあなにさ」

 

大淀「…あまり無茶をしない方がいいですよ、あなた達を泳がせているのは…保険の意味合いもある、でも、暴走するようなら始末はいつでもつけられる」

 

北上「意味わかんないね」

 

大淀「では、率直に聞きましょう、艤装を使いましたか?」

 

北上「いいや」

 

大淀「漁船やタンカーを襲った覚えは」

 

北上「無いね、人間襲うほど堕ちちゃいないよ」

 

大淀「…そうですか、それは良かった」

 

大淀が立ち上がり、踵を返す

 

北上「…なにさ、それだけのためにきたの?」

 

大淀「ええ、そうですよ、それと…サメは鮮度が落ちると臭くなります、生で食べたいなら新鮮な内に、ごま油なんかよく合いますよ、それでは」

 

北上(そんな高級品ないっての…!)

 

 

 

 

阿武隈「そ、それでサメ…?」

 

北上「そう、これもまあ、ご馳走でしょ、でもあたしこの手だからさぁ…」

 

阿武隈「え…わ、私!?お魚捌いたことなんて…」

 

北上「いや、阿武隈には頼むつもりないけど」

 

阿武隈「じゃあ誰が…ひゃっ!?」

 

霞「邪魔、さっさと退きなさいな」

 

北上「お、来た来た、頼んだよ、霞」

 

霞「ハイハイ」

 

自分の身長ほどあろうサメをサッサと処理する霞

そしてそれを呆然と見る阿武隈

 

北上(うーん…逆…)

 

霞「そこで暇してるなら…」

 

霞が大鍋を阿武隈の前に置く

 

霞「海水汲んできてくれる?…早く!」

 

阿武隈「は、はいっ!」

 

北上「あれ、もう真水無くなったの?」

 

霞「魚洗う為だけに使えないわよ…ったく…」

 

北上「まあ、水も貴重だもんねぇ…うわ、もう帰ってきた」

 

阿武隈「汲んで来ましたぁ!」

 

テキパキした手つきでどんどん切り身が量産され、あれほど大きかったサメも骨、皮、内臓、身と分かれてしまえばなんて事もない

 

北上「…さて、どうする?」

 

霞「…塩して、干すしかないでしょ…食べられるだけマシよ」

 

阿武隈「全部干しちゃうの…?」

 

霞は何も言わずに小さめの切り身を差し出してくる

 

北上(うっ…離れてたらわからないけど、近づくとちょっと匂いきついかも…)

 

阿武隈「はぐ………う…ちょっと臭い…」

 

霞「調理してる段階で生は無理だと思ったわ、だから骨と一緒に煮込む、ほんとは醤油とか味醂があれば最高なんだけど」

 

北上「じゃあ火がいるね、枯れ枝探ししてる駆逐達が帰ってくるの待ちますかー…」

 

霞「それまでに全部干物にするのよ、ほら早く、手伝いなさいな」

 

阿武隈「は、はい!」

 

 

 

北上「…お?」

 

暁「帰ったわよ!」

 

曙「…この匂い、また海水沸かしてるの?」

 

北上「おかえり、今日は魚が食べられるよ」

 

曙「魚…!?釣り?釣りが成功したって事?!」

 

北上「んや、打ち上げられたの拾ってきた、新鮮だったから」

 

暁「ふーん…あ」

 

如月「あ、戻りました」

 

睦月「これ…」

 

北上「ん?睦月…それは…大根?小さいみたいだけど…何処にあったの?」

 

睦月「生えてたから…持ってきたにゃしぃ」

 

如月「砂浜と土の境目あたりに沢山生えてて、その…私有地ではないと思います」

 

北上「…よし、じゃあいただこうか」

 

大根を海水で洗って切り、葉っぱ毎サメを煮ている鍋に放り込む

 

北上「ぶり大根ならぬサメ大根か…良いね、ご馳走だ」

 

暁「え、サメ?」

 

北上「そう、サメ」

 

 

 

 

霞「はあ……野菜なんて久々に食べたわ」

 

阿武隈「ゴワゴワしてちょっと硬いですけど、この大根の葉っぱ美味しいですね」

 

北上「身の方も芋みたいで美味しいけど、コレ本当に大根なのかな?

…ずずず…出汁は海の味だねぇ……サメの肉も思ったよりクセがなくて、噛んだらじゅわってして…」

 

臭みも火を通したことで薄まり、かなり食べやすく仕上がった

骨から取れた旨みがスープを美味しくしてくれてるし…

 

暁「ところで…あそこに吊るしてるのは…どれくらいで食べられるの?」

 

霞「さあ?」

 

曙「さあって…アンタ、貴重な食糧で遊んでるんじゃないわよ!!」

 

霞「うるさいわね、やり方わからないんだから仕方ないでしょ!?」

 

北上「はいはい、ダメになったらまた探せば良いんだし、気にしない気にしない」

 

とは言いつつも、腐って食べられなくなったらと思うと…

 

北上(この大根のある場所、調べないとな…野生化した野菜なら今後も調達したいし)

 

睦月「如月ちゃん、美味し?」

 

如月「うん、美味しいわ」

 

睦月「良かったにゃしぃ」

 

北上(……ま、焦ることないか)

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