食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
北上様だよ
目覚めが悪いんだよね、最近…
なんかの栄養不足の症状かなんかかな…
北上「帰ってきたー…往復合わせて2日もかかった…?」
夕張「久々に運転すると疲れるわ…」
北上(…あれ?…なんか誰もいないっていうか…)
北上「磯臭いような…」
北上「…なるほど?」
ヲ級「……」
暁「どうすればいいかわからなくて…」
阿武隈「その…どうします?」
北上「丁度情報が欲しかったところだから助かるよ、コイツから根掘り葉掘り聞き出そうか、喋れるみたいだし?」
ヲ級「ヒェッ…」
阿武隈「…その、お手柔らかに…」
暁「私たち、よそで待ってるから…」
北上(…なんで2人が怯えてんの?)
ヲ級の前に椅子を逆向きに置いて、背もたれを掴む形で逆向きに座る
北上「アンタさ、あたしに知ってること全部話す?」
ヲ級「…殺サナイナラ」
北上「それは難しいな」
ヲ級「……ナラヤダ」
北上「じゃあ今死ぬか、拷問にかかられるとしたら?」
ヲ級「………拷問」
北上「なんでそんな生きたがってんの?」
…深海棲艦にここまで生存意欲があるとは思ってなかったな
ヲ級「…生キ物ハ皆一様ニ生ヲ望ムモノダロウ」
北上「それは生き物ならね、アンタら生き物なの?…違うでしょ」
ヲ級「深海棲艦デモ無イノニ何故否定デキル」
…脳がスーッと冷めていく…
北上「…できるよ、よ〜く知ってるから…
うん、本当に良く知ってる…あたしさ、わかってるんだ、アンタらが生きてないって」
ヲ級(ナ、ナンダコイツ、イキナリ雰囲気ガ…!?)
北上「多少知恵つけたからって…感情や本能を頭で再現して、人間のフリしてさ…あんたらのせいであたしらが今どんだけ苦しんでると思う…?
いや…そもそもアンタらが居なかったらあたしらは人間として生きてられたのに…!」
ヲ級「マ、待テ!…何故怒ル?私ハ深海棲艦トイウ存在ノ全部デハナイ、何モワカラナイ!」
北上「だとしても深海棲艦だ、深海棲艦は悪だ、みんな奪っていく」
ヲ級「ナラオ前達モ私達ノ仲間ヲ殺ス!ソレハ悪デハナイノカ!?」
北上「そうだよ、悪じゃない、だって、アンタらが人を襲うんだから」
ヲ級「…ソレガワカラナイ、何故人ヲ襲ウ事ガ悪ナノカ?」
北上「…は?」
ヲ級「我々ハ食ベル為ニ襲ウ、意味モ無ク殺スノデハナイ、ソレハ人間ガ家畜ヲ殺ス行為ト何ガ違ウ?何故人間ガ特別ナノカ?」
北上「…それは…」
ヲ級「殺シテモ食ワナイノニ何故殺ス、身ヲ守ル為カ?…私達モ同ジ様ニシテモイイノカ?ソレトモ、存在シテハナラナイノカ?」
北上「……だって、アンタら、死体じゃん」
ヲ級「私ハ生キテイル」
北上「死体だよ」
ヲ級「ダッタラ何故血ヲ流ス?感情ヲ再現シ、本能ノ有ル生物ノヨウニ振ル舞ウ?
北上「…どうでもいい、そんなの…アンタらは人間を食べる、だから停戦のフリしてまた攻める準備をしてる、だからあたしらは少しでも数を減らす」
ヲ級「ソウダ、ソレハ確カニ事実ダ、ダガ、ダトシタラ何ガ悪イノカ?
コレハ戦略ダロウ?」
…認めた…
認めた、こいつ…
北上「最低なクソ以下の、ね」
ヲ級「人間モ取ル手段ダ」
北上「……アンタらがそうしようとしてるってわかって良かったよ、対策も立てやすいし、助かる」
ヲ級「ソウカ」
…ムカつく
こいつは何なのか、何でこんなに鼻につくんだろう
ヲ級「…ヤハリ、人間ハワカラナイ、特ニ艦娘ハ」
北上「わからなくていいよ、アンタらは全部殺すから」
ヲ級「…何故深海棲艦ト手ヲ組モウトシナイ?」
北上「……は?」
ヲ級「艦娘ノ扱イクライ、深海棲艦ノ間デモ知レテイル、艦娘ト手ヲ組ミ、次代ノ世界ヲ共ニ統治スル、深海棲艦ハソウ決メタ。
イロンナ艦娘ガコレニ賛同シテイル」
北上(…そうか、アイオワ達と居た深海棲艦……納得できた)
ヲ級「ソレ程ノ強サナラ声ガカカッテイルハズダ」
北上「いや、そんな覚え…」
…待てよ、前のヲ級潰した時になんか言おうとしてたな
北上「……まあ、誘われても殺すよ、実際殺したし」
ヲ級「…何故ソレ程私達ヲ憎ム」
北上「さあね、でも、知りたい事は知れたし、アンタを生かしとく理由はもうないかな」
ヲ級「……」
北上「何だ、もう命乞いしないんだ、静かで良いけど」
ヲ級「…イヤ、考エテイタ…誰カニ言ワレテナ、深海棲艦ハ仲間意識ガ低イト…
事実、ソウナノダロウ」
北上「で?」
ヲ級「艦娘ト人間ヲ統治シテ、人間ヲ食イ尽クセバ…次ハ艦娘ヲモ食ウダロウナ」
…よくも声色を全く変えずにそんな事を
北上「やっぱ最低じゃん」
ヲ級「……喩エ、手ヲ組ンダ所デ、マタ殺シ合イ…カ…
…タクサン死ヌノカ?私モ所詮死ヌ運命ナノカ?
ナンダカ疲レタナ、私モ…」
ヲ級がごろんと寝転がり、目を閉じる
ヲ級「…死ニタクナイ、デモ殺シ合ウ以上、常ニソレニ怯エル…嫌ナモノダナ…ナラ、今ココデ終ワル方ガ楽カモシレナイ」
北上(…死にたくないとか言ってたくせに、今度は殺してくれ、か)
…何だろうな、この感覚
ヲ級「…ヲ…?」
北上「…もういいや…」
ヲ級の拘束を解く
北上「次会った時は殺すけど、もう帰っていいよ…殺す気失せた」
ヲ級「…ドウイウ心境ノ変化ダ?」
北上「…あたしらはアンタらを食う気はないし、自衛と使命のために殺す、でも…今日は疲れたから休みってだけ」
ヲ級「……イイノカ?」
北上「でも、あたし達の敵である事は変わらない、次あったら殺す」
ヲ級「…待ッテクレ、折角ダ、提案サセテホシイ、私ヲココニ置イテクレナイカ?」
…置く?
北上「まさか、住ませろって…?敵を?あたしらの本拠地に?」
ヲ級「ソウダ、代価ハナンデモ払ウ、頼ム」
北上「なんであたしらがそんな事しなきゃいけないわけ?」
ヲ級「…艦娘ヲ…人間ヲ知リタイト思ッタカラ」
北上「あんたらにとっての餌じゃないの」
ヲ級「少ナクトモ、私ニハソウ思エナクナッタ。
ソレニ、仲間意識…トイウ物モ、知リタイ、私ハ、仲間トイウ物ヲ理解デキテナイラシイ、ダカラ、知リタイ」
北上「……相談させて」
まさか、こんなことになるとは思わなかった…
あたしもおかしいとは思ってる
わからない、わかんない、どうしたらいいのか
夕張「私は…反対、北上に…この基地の子達に良い影響とは思わないし、そもそもアイオワを受け入れたばかりでしょ…?」
…そうだ、確かにアイオワが来てまだ時間が経ってない
暁「良いんじゃない?…その…北上さんが良いなら、私は賛成」
……意外な反応だった
阿武隈「意外ですけど、そういう事なら賛成です」
北上(…どうしよう、みんなに聞いたけど…反対派は結局夕張さん1人か…)
…困ったな、全員納得した上で話を進めたいけど、流石に1人を囲んで話すわけにも…
夕張「北上」
北上「っ…夕張さん」
夕張「北上、私はあくまでも反対、絶対にね」
…譲る気のなさそうな険しい顔つき…
北上「理由は、あたしやみんなの為…だよね、理解はしてるから…」
夕張「…ホントは違う、北上1人の為」
北上「……え?」
夕張「……でも、もう止めない」
北上「ちょっと待ってよ、何?どういう事?」
夕張「絶対に反対だけど、一緒に暮らすって言ってるの」
北上「…なんで?」
夕張「北上もそのつもりになってるんなら、もう止めない」
…あたしが?
夕張「ただし、何かあったら私が独断で始末をつけるから」
北上「…わかった」
夕張(……)
北上(なんか、様子おかしいような…)
夕張「で、そのヲ級は?」
北上「向こうの部屋…」
…行っちゃったけど、大丈夫かなぁ…
北上「お…暁…ご飯の用意?」
暁「そう!北上さん達がもらってきたお野菜で今日はお鍋!」
睦月「久々の普通のご飯にゃしぃ!」
曙「
北上「茹でる?」
曙が袋から麺を取り出す
…こんなんだっけ?
霞「粉を練って、切ったものをそのままくれたのね、生うどん…でも、太すぎるし…さらに半分にする?」
北上(確かに、中まで火が通ってなかったもんなー)
霞「太さを半分にした物を、大量の湯で茹でる…大体10分ね」
暁「その間にこっちは、猪の脂を入れた鍋を火にかけて…暖かくなって来たら、人参、キャベツ、玉ねぎ、ごぼうを入れて…しんなりしたらお水をたっぷり入れる…
そして、お塩をして、白菜と椎茸、ネギを入れる」
北上「…肉は?」
暁「もう少し待って、野菜に少し火が通った頃に、薄めに切ったお肉を並べて、表面がふつふつしないくらいの熱さでゆっくり火を通すの」
北上(鍋奉行…?)
霞「その間にこっちが茹で上がったわ、うどんはザルにあけて、氷と真水で冷やす…うん、ちゃんと火が通ってる」
北上「おお…」
暁「こっちも準備万端!追加のお肉とお野菜を用意して…これでいつでも食べれるわ!
北上さん、みんなを呼んできてくれない?」
北上「おー…いいよ」
阿武隈「わあ…お鍋…凄いですね!」
北上「さっさと食べよう、煮えすぎるからさ」
暁がパッパと具材を皿に取り分けていく
北上(やっぱ鍋奉行…)
アイオワ「|Thanks(ありがとう)……はぐ…wow…」
夕張「ん…このお肉、こんなにクセなかったっけ…?」
北上「むぐ?」
…言われてみれば、全然臭くない…
阿武隈「煮方でこんなに変わるんですね…」
暁「部位や、下処理の差もあると思うけどね」
霞「でも格段に味は良くなってる…やるじゃない」
北上(…お、白菜と椎茸……椎茸なー…山に生えてると思うんだけど…)
考えなしに取ると碌な目に合わないのは学習済み…
とはいえ、この柔らかくて、風味豊かなキノコをみすみす逃すのも…
北上(今度挑戦しよう…)
夕張「意外とごぼうと人参がイケる…」
阿武隈「あふっ…おネギが…口の中で…」
暁「長ネギの中身が飛び出したの?あるあるよね!」
北上(めっちゃ嬉しそう…)
北上「…食べないの?」
ヲ級「…イイノカ?」
北上「良いから聞いてるんだけど」
ヲ級「……ムグ…モシャ……ムシャ…ゴクン…」
北上「どうよ」
ヲ級「…良イモノダナ」
北上(…これで人間食べなくなってくれたらなぁ…いや、魚が絶滅するかな…?)
霞「うどん入れるわよ」
阿武隈「待ってました!」
曙「炭水化物なんていつぶりに食べるかしら」
ヲ級「…幸セソウダ」
北上「良いもんでしょ」
ヲ級「胸ガ一杯ニナッタ」