食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

32 / 157
閑話 夕張の聞き込み②

ヲ級をどうするかの話し合いをまだしていた頃…

この基地唯一の携帯電話、それの電話のコール音が、暗い小部屋に響く

こういう時のこの音は、小さいはずなのにやけに響く

心臓が悪い意味で高鳴る

 

大淀『はい、どうしましたか?』

 

電話の相手は、大淀ちゃん

私は、どうしても確かめたくて1番確信に近い人に…疑問をぶつけることにした

 

夕張「あ、私!夕張、急に電話してごめんなさい?」

 

大淀『なんだ、夕張さんでしたか』

 

夕張「…その、今、大丈夫?」

 

大淀『ええ、明石さんの事ですか?もうそろそろ…』

 

夕張「明石のことはいいの、問題は北上とあなたの関係」

 

大淀『…また、ですか』

 

夕張「そ、また…まあ、今回は確認がメインだけど…」

 

大淀『確認?』

 

夕張「…今日の昼、寝てる北上がすごくうなされてて、何事かと思って寝言に聞き耳をたててたの、そしたら…ね?」

 

大淀『…へえ…なんと言っていましたか?』

 

夕張「大淀、何で2回も殺したのとか、…なんとか言え、大淀、こんな感じ?」

 

大淀『そうですか、まだあの夢を見るなんて…』

 

夕張「そこに、前に本人から聞いたお姉さんの話を付合して考えてみたら…割と理解できた気になれてね」

 

大淀『お姉さんの…?北上さんの?』

 

夕張「大湊で出会った時に聞いたの、後からウソだって言われたけど、よくよく考えるとソレを真実で進めると辻褄が合う気がして

となると到底ウソと思えなくてね」

 

大淀『…それで?』

 

夕張「で、なんで殺したのかなって」

 

大淀『……』

 

夕張「言いたくない?」

 

大淀『ええ』

 

夕張「…そりゃそうよね、何も思わない訳ないわよね」

 

…確か、まだ16だったか

そんな子が、いや、当時はおそらく今よりも…

 

夕張「ごめん、思い出させて…でも、ひとつだけ聞かせて」

 

大淀『……』

 

夕張「まだ、手は震える?」

 

大淀『…ええ』

 

夕張「ごめん、あなたに聞くのは、あまりにも配慮が無かった…でも、知れてよかった」

 

大淀『いえ』

 

…苦しんでるのは1人じゃ無かった

北上はそれを知ってる?…いや、おそらく知らない…

でも、多分ソレを伝えようにも聞く耳を持つとは思えない…

 

夕張「ありがとう、それじゃあ」

 

電話を切り、思案する

…正直、色々と想像できてきた

 

…北上の姉を討つことになった大淀ちゃんも、姉を奪われた北上も

おそらく、そうなった理由は…

 

夕張「深海棲艦化…か……」

 

噂にだけは聞いてたけど、いや、もはやソレは噂と言うより、与太話(よたばなし)やら、夢想(むそう)の話の域だ

それに元々、それは…希望の話だ

 

死人が深海棲艦として帰ってくる

愛した人との再会…そう言う希望を込めた話が…

 

夕張「2人を引き裂いた…?…でも、そんなの…あり得るの?」

 

夕張(……あ…)

 

…そう言えば、知るために簡単な方法があった

 

 

 

 

夕張「北上」

 

北上「っ…夕張さん」

 

…なるほど、反応でわかった

みんなはあの深海棲艦をここに置くことに賛成した訳だ

 

…他ならぬ、北上自身も、それを受け入れてる

 

夕張「北上、私はあくまでも反対、絶対にね」

 

きっと、北上の辛い記憶を常に思い出させかねないから

 

北上「理由は、あたしやみんなの為…だよね、理解はしてるから…」

 

夕張「…ホントは違う、北上1人の為」

 

北上「……え?」

 

意外そうに目を丸める

…まあ、自分のことを二の次で生きて来た北上からしたら、そうなるのかな

 

夕張「……でも、もう止めない」

 

北上「ちょっと待ってよ、何?どういう事?」

 

夕張「絶対に反対だけど、一緒に暮らすって言ってるの」

 

北上「…なんで?」

 

夕張「北上もそのつもりになってるんなら、もう止めない」

 

…代わりに、利用する

 

夕張「ただし、何かあったら私が独断で始末をつけるから」

 

利用価値が無くなったら、適当な理由で殺す

…だから、あの深海棲艦をコントロールしなきゃならない

 

北上「…わかった」

 

夕張(…ごめん、私は…北上の過去に、勝手に触れる)

 

北上(なんか、様子おかしいような…)

 

夕張「で、そのヲ級は?」

 

北上「向こうの部屋…」

 

北上が指した方向へとさっさと消える

 

 

 

 

ヲ級「…ヲ…?」

 

夕張「……」

 

ヲ級「…ナンダ?」

 

夕張「質問、死んだ艦娘が深海棲艦になる事例について教えて」

 

ヲ級「……」

 

夕張「知らないなら知らないでも良い、でも知ってて答えないつもりなら…」

 

ヲ級「待テ、教エテ何ニナル」

 

夕張「…とりあえず、死なずに済むわ、貴方は」

 

ヲ級「……死者蘇生…擬似的ナ命ダ、ダガ、アクマデ似非(エセ)デシカナイ」

 

夕張「…実在、するのね…意識は」

 

ヲ級「一定デハナイ、記憶ヲ保持シナイノガ大半ダ、ダガ、言葉ヲ話セル」

 

夕張「……つまり、貴方も?」

 

ヲ級「…多分」

 

夕張(記憶は保持してない…か、だから人への関心を持った?)

 

ヲ級「…ソレト、コレハ進化ノ過程ダ」

 

夕張「進化?」

 

ヲ級「生存ニ有利ニナル為ニ、ナ」

 

夕張(まさか、それで…人を…?)

 

その記憶を利用して、見知った顔で近づいて…油断した艦娘や人間を…それを、食べる…?

 

ヲ級はこちらの考えを見透かしたように頷く

 

ヲ級「言語能力及ビ高度ナ知能ノ獲得、ソシテ生体装備ノ性能ノ上昇…マサシク、進化ダ」

 

夕張「っ……そんな、まるで、人魚伝説ね…」

 

…人魚の歌を聞いた船乗りは、廃人のように人魚の元へと自ら近づき…

昔からある、海の伝承…

 

そして、北上は人魚に魅入られて…いや、呪われて生還してしまった

これが、結論…

 

夕張「…とりあえず、教えてくれてありがとう」

 

ヲ級「気ニシナクテイイ」

 

夕張「…何か、他に知ってることがあったらまた教えて」

 

ヲ級「…ワカッタ」

 

夕張(…私に、呪いは解けるのかしら?)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。