食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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悪い事

北上「おー…完成したんだ、車椅子」

 

夕張「ちょっと無骨だけどね、どう?」

 

アイオワ「Hmm(うーん)……良い、最高!so good夕張!」

 

夕張「それは良かった」

 

有り合わせの資材でまともに動く車椅子ができるなんて、正直驚きだ

でもおかげでアイオワも自分のタイミングで好きなように動くことができる

 

夕張「ちゃんとした設備が有れば、生体ユニットを使った姿勢制御装置とか、歩行補助器具も開発できるのに…」

 

アイオワ「Wow…夕張は凄いscientist(科学者)なのね」

 

夕張「うーん…まあ、使えそうな物はなんでも研究してたから」

 

北上「へー…」

 

夕張「ところで北上」

 

北上「なに?」

 

夕張「一仕事終わったし、街に行ってみない?今度は違う所!車で遠くまで…」

 

北上「…なんでまた?」

 

夕張「…まあ、私たちの生活をランクアップしてみたいなって言うのが一つの理由」

 

北上「ランクアップ?」

 

夕張「大淀ちゃんから発電機をもらって、電気が復活した、あとはガスと水道さえ帰って来れば、まずこの基地のライフラインは復活する、ok?」

 

北上「おーけー、で?」

 

夕張「…まず、海水を大量に濾過する装置…は、需要がないから基本的に買うのは難しいけど、一応買えるわ、これはアテがあるの

次にガスね、こっちはもっと簡単、ガスボンベなんてどこでも手に入るでしょ?まあ、定期的に補給が必要だけど」

 

北上「…え、何?つまり…」

 

夕張「それを買いに行きたい」

 

北上(…確かに、ライターもそろそろなくなるし、枯れ木だって集めに行くのはめんどくさい

それに前提として水を手に入れるには火がいる

火がないと蒸留ができないから真水が手に入らない…

人数が増えた事で、食料確保の効率化にも目を向けたくもなってたし…)

 

北上「でも、買うお金は?」

 

夕張「流石に、そこまでは余裕がない…から、今使えるのはまあ、お店も限られるけど…」

 

北上「え、あるの?」

 

夕張「ある、実はケータイのネットバンキングアプリに私の口座を追加したらまだ生きてたのよ、それで、電子決済でなら逃亡費用があるから」

 

北上「…いくらぐらい?」

 

夕張「70万円くらい?」

 

北上「……よくそんなに持ってるね」

 

夕張「むしろ、派手に使ったから少ない方よ?」

 

北上(…確かに、車中泊の逃亡生活してたんだし…なんだかお金遣い荒そうな気がしてきた)

 

夕張「で、相談なんだけど」

 

北上「え?」

 

夕張「…お金を使う為に、やりたい事があって」

 

北上「やりたい事って?」

 

夕張「生体ユニットの、無力化」

 

…思ったよりヘビーなところに足突っ込んできたな…

 

北上「…正気?あのさ、あたし技術員じゃないけど、それがどのくらい…」

 

夕張「わかってる、艦娘の体において生体ユニットの重要性は私が1番知ってる、でもね、これが成功すれば…

最高の結果なら日常生活に戻れるかもしれない」

 

北上「……」

 

みんな知ってる、そんな事

背中の手術痕と生体ユニット、その2つさえなくなれば、艦娘であったことはいくらでも隠蔽できるはずだ

 

夕張「…確かに、体内の生体ユニットを弄るのは危険

それこそ、確実に…まず間違いなく死者を出してしまうのはわかってる、だから、コーティングするの」

 

北上「コーティング…?」

 

夕張「忘れた?北上、自分でやったでしょ?」

 

夕張さんが手を何かで包むジェスチャーを見せる

 

北上(…ああ、コンビニでやった、手袋…)

 

夕張「あんな見え見えなコーティングじゃなくて、ごく薄いフィルムの様な物で接続を切る…

それこそ、コーティングに気づかれない様な薄さの物でね?」

 

北上「…できるの?」

 

夕張「理論上は可能だけど、私じゃ実験できない」

 

北上「なんで?」

 

夕張「生体ユニットを弄りすぎてて、人より強い反応を示すから、多分、接触する手だけ保護しても他の部分から触らずに接続しちゃうのよ」

 

北上「難儀な身体だね」

 

夕張「それが撃沈数トップと研究者両立の秘訣よ」

 

夕張さんが自嘲気味に笑ってみせる

 

夕張「で、それにあたって、アイオワさんに手を借りたい訳」

 

アイオワ「Me?」

 

北上「…てっきり、帰すタイミングないからこんな話聞かせてるのかと」

 

夕張「そう言う訳じゃないけど、あんまりやりたくない手段だったから…」

 

北上「…何するつもり?」

 

夕張「人の善意を利用するって事…まあ、その…言い方は悪いし、やる事も最低だけど、障がいを持った人相手にはみんな強く出ないでしょ」

 

北上「いやそれ…」

 

…善意を盾にしようって話だ…

 

夕張「それにアイオワの体なら、生体ユニットはもう死んでるはずなの」

 

北上「…っていうと?」

 

夕張「そもそも、生体ユニットって身体中に浸透してるけど…その…

生存のために欠損箇所の修復や、再構築を行うのよ」

 

北上(…まさか、脚の中の筋肉がない理由って)

 

夕張さんが頷く

…どうやら、ガワを作るのに生体ユニットを使いすぎて、筋肉までは再構築できなかった…という話らしい

 

北上(正直、そんな昨日初耳だし、信じられないけど…)

 

夕張「だから、脚を治すには…その、かなり難しい努力が必要」

 

北上「……」

 

アイオワ「北上、そんな風に見ないで?

no problem(心配なんてないん)だから」

 

北上(何だろう、この感覚…最近ずっと感じてる

わからない、わからないからこそイヤなこの感覚…)

 

夕張「…北上?」

 

北上「…少し、先送りにさせて」

 

夕張「わかった、明日にでもって訳じゃないし、待つ

でもね北上」

 

北上「……」

 

夕張「先に言っておくけど、今の状況ははっきり言って最悪よ、私が来た時よりもね…

山も海も、どんどん取れる獲物が減ってるんでしょ?春になればって…ほんとに持つ?ほんとに助かる?」

 

北上「…それは…わからないよ」

 

夕張「最悪の場合、私は取れる手段を取る、それを理解して」

 

北上「…どういう意味」

 

夕張「なんだってやるの、生きるために…生かすために」

 

北上「……」

 

否定するべきなのに、言葉が出てこない

…生きる為なら、生かす為ならなんでもする?

それを否定したら、何よりも否定されるのは…

あたし自身だ…

 

北上(…どうすれば、いいんだろう…)

 

 

 

夕張「…追い詰めすぎかなぁ…でも、ホントに…お腹減ったし…」

 

アイオワ「街に行けないのは困りものね…」

 

夕張「うん……うん?…いつの間にいたの?」

 

ヲ級「……」

 

アイオワ「Hey!Wo-chan(ヲーちゃん)!どうしたの?」

 

ヲ級「ソレハ、武器?」

 

夕張「…これは武器じゃない、車椅子、歩けない人を助ける道具」

 

ヲ級「フーン…」

 

夕張「こんなところまで何の用事?」

 

ヲ級「夕張、私ノコト、嫌イ?」

 

夕張「……」

 

アイオワ「…夕張?」

 

夕張「……深海棲艦は嫌い、貴方個人は…わかんない」

 

ヲ級「ソウ」

 

夕張「何、急に」

 

ヲ級「私ヲ街ニ連レテイッテ、大丈夫ダカラ」

 

アイオワ「 Are you serious(ちょっと、本気で言ってる)?深海棲艦が街になんて…」

 

夕張「アイオワ、多分、艦娘と深海棲艦、同時に街に行ったら…嫌われるのは私たちの方」

 

アイオワ「Why(なんで)!?」

 

夕張「深海棲艦の方が強くて、いつ暴れるかわからないし、有益だからよ

艦娘は人と同じ姿形だからこそ、人間に手を出さない、もしくは出せば罰せられるから」

 

ヲ級「…ソレヲ、利用シタイ」

 

アイオワ「…どういう意味?」

 

ヲ級「私ナラ、必要ナモノヲ買ウ事ダッテ容易、役ニ立テル」

 

夕張「どこまで信じていいのか」

 

ヲ級「…悪イ子ニナラズニ済ムヨ?」

 

夕張「っ……」

 

ヲ級「信ジテ」

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