食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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三食目

やっほー、今日もお腹ぺこぺこ、北上様だよ

サメの干物はどうしたのかって?霞の言う通り、塩を沢山つけて干してる、今のところはまだ腐ってないよ、臭いけど

 

まあ、それより今は…ちょっと抱えてる問題に対して真剣に向き合わないといけないかな

 

北上(大淀がきたってことは、近いうちに何か起きる可能性が高いんだよねぇ…飼い犬をお使いに出すくらいの用事ができたって意味だし?)

 

考えられる可能性…

艤装を使ったか?いや、もっとストレートな部分…

 

北上「海賊、か…」

 

艤装を装備して、タンカーや漁船を襲う海賊行為

…考えられない話じゃない、苦しい思いをしてる艦娘は沢山いる、首輪付きになったってマトモに生きていくのがどれだけ難しいか?

まあ、深海棲艦の輸送部隊を襲ったあたしが言う事じゃないけど…

 

何処か適当なねぐらに腰を下ろして、暗い仕事を始める連中も出てきても、なんら不思議じゃない

その対象が、たとえ人間でも

 

北上(でも、それじゃ……深海棲艦と何も変わんないよ…)

 

 

 

 

阿武隈「へ…?わ、私の話…ですか?」

 

北上「そう、一回抱えてる火種を全部確認しとかないとさ」

 

阿武隈「ひ、火種って……あ!?…い、いや、アレは一夜の過ちというか、不可抗力というか─」

 

阿武隈がぶつぶつ言いながら顔色をどんどん赤くする

 

北上(おもしろいなコイツ…)

 

阿武隈「というか、女の子同士なんてふ、ふふ普通あり得ないかもですけど─」

 

北上「いや、アンタが何考えてるかは知らないけど、問題視してるのは深海棲艦の事だから」

 

阿武隈「ほぇ…?…あ!あー!そうですよね!アハハ、てっきり私は…口移しを…」

 

北上「…あのさ、キスの一つや二つで何言ってんの?子供ができるわけでもないんだし」

 

阿武隈「ま、まあそうですよね!艦娘は子供作れないって聞いたことありますし…」

 

北上「…マジか」

 

誰か暫定同い年の新入りに、人体の神秘を教えてあげて…

と言うかここまでピュアピュアだとこっちが間違ってる気がしてくるよ、不思議だよねぇ?

 

北上「えーとさ、それより、アンタあの時食われかけてた自覚ある?」

 

阿武隈「…へ?」

 

北上「多分、深海棲艦は、アンタらを裁くって名目で食べようとしてたんだけど、わかってる?」

 

阿武隈の顔色がみるみる青くなる

 

北上「まあ、すぐにってわけじゃ無かったのかもね、缶詰のボートもあったのを含めて考えると、家畜として飼われてた可能性もある」

 

阿武隈「かちっ…!?」

 

北上「…わかる?深海棲艦はね、人間と和平しておきながら、あたしらを食いものにしようとしてたんだよ、言葉通りに」

 

阿武隈「……じゃあ」

 

北上「……」

 

阿武隈「あの戦争は、私達(艦娘)の…敗け、なんですね…」

 

阿武隈が俯き、情けなさそうに泣き出す

でも、泣いてる場合なのだろうか?

 

北上「……そもそも、終わったと思う?」

 

阿武隈「え…?」

 

今の“深海棲艦側”の状況を整理しよう

向こうは全世界と和平をしたものの、高知能の個体のみとした

つまり、低知能な個体が人を襲ってもそれは野生動物と同じ扱い

敵対的な戦争行為ではないとしている

 

その代わり、人類の深海探査の手伝いや、海産資源の提供を約束した

そして、艦娘の排除を求めた

 

何故か?

 

北上(…やっぱり、どう考えても終わってないんだよねぇ…

戦力を削いで削いで、削ぎ落として攻める…人間だってわかってるはずなのに、何故それを見過ごすのか…)

 

北上「阿武隈、あたしはね、深海棲艦は戦争を辞めたつもりはないと思ってるよ、艦娘を少しずつ少しずつ減らして、そこから攻めてくるって確信してる」

 

阿武隈「…それじゃあ、今、私達みんな深海棲艦の手のひらで踊らされてるって事ですか…!?」

 

北上「そうとも取れるけど、そんな見え見えな話なのかな?これは」

 

…まだわからないけど、そうなると

 

北上「どっちにせよ、今は耐える時だよ」

 

死なない、生き残る事が今の1番の役目

潮目が変わるのを待つ

 

北上(っていうか…そんな時に“海賊”…さっきの考えから、あたしらが放逐されてんのはそういう観点もあるんだろうけど…

あんまりやりすぎたら流石に消されるだろうね)

 

北上「…はあ、ハンバーガー食べたいなぁ…」

 

阿武隈「ハンバーガー?」

 

北上「少し前まで簡単に買えたのに、今はお金を持って行っても店にすら入れてもらえないからね」

 

阿武隈「そんなに…?」

 

北上「あ、そっかぁ、留置所とかにいたらわからないんだ……じゃあ新聞やニュースも見る機会ないよね、今じゃこっちも見る手段無くしたけどさ」

 

阿武隈「……あの…今の外の世界って…」

 

北上「…そのうち見せたげるよ、でも、見捨てちゃダメだからね」

 

阿武隈「……」

 

北上「さて、阿武隈、ウチの食糧の備蓄は?」

 

阿武隈「えっ…あー……干しザメ…だけ?」

 

北上「そうだね、だから今日、あたしと阿武隈は選ばなくてはなりません」

 

阿武隈「え…選ぶ?」

 

北上「虫食べる?それともお腹空かせたまま一晩過ごす?」

 

阿武隈「……むし…?……虫!?」

 

北上(やっぱ阿武隈は否定派かぁ…)

 

北上「いや、仕方ないじゃん、食べるもの他にないんだよ?」

 

阿武隈「嫌!絶対に嫌です!それなら食べません!!」

 

北上「…まあ別にそれでも良いけど…夏はセミの幼虫とかで凌ぐんだよ?」

 

阿武隈「……留置所のご飯が恋しくなってきたんですけど…」

 

北上(どうしようかなあ…サメの干し肉に手を出したら霞はブチギレ間違い無いよねぇ…)

 

北上「お…」

 

阿武隈「?…うわっ」

 

たまたま壁にいたそれを捕まえる

 

北上「コレはどう?焼けば食べる?」

 

阿武隈「…絶対に嫌です…」

 

北上「悪くないと思うんだけどな…イモリの黒焼き」

 

阿武隈「…あの、私イモリ飼ってた事あるから知ってるんですけど…イモリって毒持ってるのであんまり食べない方が…」

 

北上「うぇっ!?そうなの!?…あ…あー……今日のご飯…」

 

驚いて落としたせいでイモリは何処かの隙間に消えちゃった

 

北上「前食べた時は平気だったんだけどな…」

 

阿武隈「種類が違ったのかも…?ま、まあ私の知識も曖昧ですけど」

 

北上「くぅ……お腹減った…いや、ここで負けるな北上…!ちゃんとご飯食べるんだから!」

 

阿武隈「…サメ、焼いちゃいませんか?」

 

北上「いや……ダメでしょ」

 

阿武隈「でも、美味しいですよ?」

 

北上「……ダメ」

 

阿武隈「だって、もし失敗したら腐っちゃうんですよ?もしかしたら既に腐ってるかも…だから、少し確認しませんか…?」

 

北上「…そんなこと言ったって…ええい!ダメなものはダメだって!」

 

阿武隈「でも北上さん、涎垂れてますよ?」

 

北上「……」

 

く…やるな阿武隈め…

確かにあのサメの身は脂は少なくて、噛みごたえがあって、旨みが滲み出てきて美味しいけど…

 

阿武隈「干したお魚って、旨みがギュッ…とつまって、美味しいらしいですよ?」

 

…おととい食べた時よりも…美味しい?

 

北上「……ふ、ふーん…?」

 

阿武隈「北上さん、一緒に食べませんか?」

 

北上「………まあ?阿武隈を飢えさせるわけには…ねえ?」

 

阿武隈「私は我慢できますけど、北上さん?

気を遣わなくて良いんですよ?ねえ、北上さん?」

 

……

 

北上「……くッ…負けたよ…!」

 

 

 

焚き火で干した魚を炙る…独特なこの匂いだけで…

 

阿武隈「美味しそうな匂いですね…」

 

北上「…もう、いいかな…?」

 

阿武隈「ちゃんと火通りましたかね…?」

 

北上「うん、いける…よし…!」

 

脂がないし、淡白だったのに更に水分が抜けてどれだけ硬いかと思ってたら…

 

阿武隈「ん〜〜!!柔らかいですね!」

 

北上「…やば、なにこの汁、何が溢れてきてんの?」

 

濃い塩味も、ギュッと詰まった旨みも…

煮て食べた時の数倍は濃い、だからすごく…

 

北上「…うま…」

 

でも、これはサメだけの味じゃない…

 

北上(…ギンバイ(盗み食い)の味を覚えてしまった……)

 

北上「…ああぁぁ…背徳の味ヤバいぃ……」

 

阿武隈「幸せ…」

 

霞「……」

 

北上「…ハッ!?」

 

阿武隈「……あ」

 

…見つかってはならない姿を見つかってしまった…

 

霞「…アンタ達……大事な食糧を…!」

 

霞が拳骨を振り上げる

 

北上「…阿武隈がそそのかしました」

 

阿武隈「あっ!?…き、北上さんも食べたいって!」

 

霞「両成敗!!」

 

阿武隈「きゅ〜…」

 

北上「…来世は…ちゃんとご飯食べられる人生がいいな……ばたり」

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