食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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二十七食目

やほ、北上様だよ〜

マクドナルドのバリューセットならチキンチーズバーガーが好きだよ

テイクアウトするときはサイドをナゲットにするのがおすすめ、冷めても美味しいよ

 

北上「んー、いいなー、美味しそう、お金あれば入れたかもなのに…

で、ここどこ?」

 

ついつい外に出てきちゃったけど…まさかこんな都会にいるとは思わなかったな…

目の前のマクドナルドに入ることもできないし…

 

北上「どこだろうなぁ…ここ…地名地名…あ、青看板…東京?マジ?」

 

…なんでこんなとこに来てるのか

そもそも病院にいた理由もはっきりしないし…

 

北上「……お、ライターめっけ…しかもまだ点く…って、とりあえず帰る手段だよねぇ」

 

…東京から青森の端っこまでどのくらいかかる?

1週間は歩くのだろうか

 

北上(とりあえずお腹減ったな…もうすぐお昼だし、病院食食べとけば良かった)

 

適当にぶらぶらと歩きながら考える

 

北上(帰るには?徒歩でなんてアホらしいのは無しにして、そのへんの自転車でも盗る?

いや、そもそもあの病院、大淀の差し金だろうし…とりあえず見つからないようにしないと、動くなら夜か…)

 

…それにしても、大きな街だ

多分、見渡す限り街があるんだろう…それが当たり前

でも、あたしにとっては…違う

 

北上「……お腹減ったな…」

 

やはり病院食が悔やまれる、先日食べたものはそこそこ美味しかった

というか…今みんなはどうしてるんだろう

昨日来た暁に、なぜか同じ部屋で寝てた夕張さんに…

 

北上「…あの鳩、捕まえたらダメかな…ダメか…」

 

ぶらぶらと歩いていたらいつの間にか眼前に…

 

北上「おお…これが東京タワーってやつ?スカイツリーじゃなくて…」

 

…流石にこの辺りは人が多い

というか、甘い匂いもしてくるし、ちょっと食欲そそられ過ぎ

 

北上「はぁ…とりあえず、どうしようかなぁ…」

 

すぐそばの公園のベンチに腰掛け、足元の土をいじる

 

北上(…まだかなぁ……そろそろかな?……まだか…いや)

 

北上「…いい匂いするよね、甘〜い匂い、クレープかな?」

 

背後から後ずさる音

 

北上(やっぱ尾けられてたか)

 

瑞鶴「…動かないで、一応、発砲許可はもらってるから」

 

北上「こんな人前で?…まあ、撃ってきても良いんだけどさ、大騒ぎになるよ」

 

瑞鶴「だとしても…」

 

土の中から指先ほどの石を摘み上げる

 

北上「無理だね、どうせアンタも艦娘でしょ?

大騒ぎはしたくないだろうしさ…そもそも国家権力の犬なんだからさっさと実力行使すれば良いのにそれもしないし…

向いてないと思うよ」

 

立ち上がるタイミングで小石を肩越しに投げる

 

瑞鶴「あだっ!!は、鼻に…!」

 

北上「そんじゃね、間抜けさん」

 

瑞鶴「えっ!?あ!もうあんな遠く…」

 

人混みに紛れてさっさと逃げる

 

でも、このまんまじゃ自由はなさそうかなぁ…

 

北上(多分、戻る先は良くて病院だし、帰るなら自力だよね)

 

はてさて、どうしたものか

 

 

 

 

 

北上「…だいぶん歩いたのに、全然帰れない…」

 

まあ、それは当然なんだけど

 

北上(もう夜じゃん…公園とか回ってみたけど、池もないからザリガニすら取れないし)

 

ゴミ箱を漁ろうと思ったけど、流石に人目があるところでやると通報されかねない

どうしたものか

 

北上(あたし1人なら、正直何しようと良いんだけどさぁ…

阿武隈達、うまくやってるかなぁ…?)

 

北上「…東京の街中は飲みかけのタピオカ落ちてるんじゃなかったのかよ〜…って、それは数年前の話か…」

 

ちょっとおかしくなってきたかも…

 

北上「…あのデカい公園で一休みするかぁ…」

 

そう言って真っ先にゴミ箱を漁る

もう迷いがないあたり、我ながら悲しくなる

 

北上(ちぇっ…食べ物はなさそうだなぁ…)

 

川内「何してんの、そんなとこで」

 

急に背後から声をかけられる

 

北上「見てわかんない?食べ物探してるんだよ、なさそうだけど…」

 

川内「…なんでそんなホームレスみたいな…」

 

北上「一時的にホームレスになってんの、用がないならほっといてよ」

 

川内「……」

 

ゴミ箱に頭突っ込んでるせいで顔も見てないけど、渋い顔されてるだろうな

 

北上「アンタ艦娘でしょ?こんなとこいると悪目立ちするよ」

 

川内「振り返りもせずによくわかるね、一度だってこっち向いてないのに」

 

北上「…匂いでわかるよ、ヤバそうな匂いするから」

 

川内「…同類だったか」

 

思わずゴミ箱より声の主に興味が行く

 

北上「…へえ、首輪付きか」

 

川内「そういうそっちは首輪無し…逃亡中?」

 

北上「色々あったみたいでね」

 

川内「…少し話さない?」

 

北上「……いいけど」

 

 

 

 

川内「へえ、じゃあ大湊の警備隊が出身なんだ」

 

北上「そっちは呉のエース様ねぇ…呉も佐世保も、戦力は十分にあるだろうに、なんで軽巡がエース張ってんだか…」

 

川内「それだけ私が強かった!…なぁんてね……

他の強い人はみんな死んじゃったから、逃げ足が取り柄の私の隊がいつの間にか出撃数も撃破数もトップ、その上轟沈もほとんどなかったから」

 

北上「そりゃ凄い」

 

川内「そっちは?」

 

北上「魚雷の物量で押してたら出撃停止くらったことあるくらいかな」

 

川内「なにそれ!やっぱ面白いなぁ、声かけてよかった」

 

北上「そいつはどーも」

 

川内「…“飼われてない”のってどう?自由は幸せ?」

 

北上「見た通り、飢えて辛いこともあるよ、それに…思ってるほど自由じゃない

何もないってことは、なんでもできるってわけじゃないんだから

生きるしかできない、それ以外を望むと…全部壊れる…」

 

川内「……首輪の有る生活の方が辛いよ、だっていつも人間に差別され続ける、この首輪がついてるだけでかかる費用がある

毎月1人5万円の支給が入るけど、4万円はこの首輪の維持費として取られるんだよ?意味わかんないよ」

 

北上「ああ、あるんだっけ」

 

川内「退役艦娘に対して、ちゃんとお金を払ってるって証明だよ、そのためにやってるだけで、結局入ってくるのは1人1万円

家賃や食費、光熱費なんか払ったら…とても足りないからバイトしてるのに艦娘だからって時給も下がるし」

 

北上「へぇ、やっぱ都会暮らしは大変だねぇ」

 

北上(山雲たちの事思い出すなぁ…何かしてあげたいけど…)

 

川内「ホントに、人間みんないなくなればいいのに」

 

北上「…なんでさ、あたしらだって元人間だよ?」

 

川内「だってそうじゃん!人間がいるせいで差別されるんだよ、どうせ艦娘への差別を規制したって根底から覆らなきゃ無理!

というかそもそも国は規制する気無いし!

…私達が何かするたびに嫌味を言うような奴ら、いなくなればいいんだ」

 

北上「まあ…嫌な思いする気持ちはわからなくも無いけど

別にいいじゃん、みんなお腹が減ってるだけなんだから」

 

川内「何それ」

 

北上「お腹減るとイライラするでしょ、そういう事

まあ、先が見えなかったり、明日が不安だったり、みんな何かしらイライラする理由があるんだよ

あたしからすれば、あたしらだって人間だし、イライラしてる奴らはお腹すいてるんだなぁって感じ

別に相手を理解する必要なんてない、受け流せば平和に暮らせるよう」

 

川内「…そううまくいかないっての…こっちがどんだけ苦労してるか」

 

川内がタバコを取り出して咥える

 

北上「えっ、成人なの?」

 

川内「艦娘の年齢なんて学力と見た目で決められた数字でしょ?そんなのにこだわんないでよ…チッ…ライターつかないし…」

 

北上「……タバコなんて買えるんだ…」

 

アルコール、ジュース、タバコ

こんなのは、どう足掻いても手に入らない贅沢品…

でも、首輪さえつければそれを手にして生活できる…

 

北上(ちょっと裕福に暮らせる時点で羨ましいな…)

 

川内「…あー、もう!…ん?」

 

ライターの火をつけ、差し出す

 

北上「火、あげる」

 

川内「…ありがと」

 

北上「さっき、こっちがどれだけ苦労して…って言ってたよね」

 

川内「…何」

 

北上「みんな辛いんだよ、みんな大変なんだよ

そこに順番なんてないと思う、あたしなんて虫食べて生きてるけどさ、川内たちも大変だなって思うし」

 

川内「虫……ま、まあ…確かに私もそこまで困窮してないけど…」

 

北上「…自分が1番辛い…みんなそう思ってるよ、でもそれは誰も間違ってないと思う

川内が1番辛いと思ってるなら、それは正しいよ、あたしもそうだし」

 

川内「……ちょっと待ってて」

 

北上「あ、うん」

 

川内がタバコを消して公園の出口へと歩いていく

 

北上(…あったか〜い缶コーヒーでももらえたら幸せかなぁ…)

 

少しして、川内が走って戻ってくる

 

川内「はい、これ!」

 

北上「…え、うわ…いいの?」

 

…おにぎりだ…白ごはんだけの、シンプルな…

って、これ…

 

北上(自分で握ってきたの?ラップ巻いてるし…家近いんだ)

 

川内「…北上は、優しいよ…虫食べて暮らさなきゃいけないくらい大変なのに、他人に気を遣うなんて私には無理だし」

 

北上(虫は別に嫌々じゃないんだけど)

 

川内「それに…私にとって1番大変なのは、妹達だった!

だから、ちょっと考えも改める!」

 

川内のふところからタバコをくすねとる

 

北上「じゃーこれは没収だね、節約しなよ」

 

川内「…うん、いいよ、預かっといて」

 

北上「任された」

 

川内「じゃあね、また」

 

北上「うん、いつか、ま……た…」

 

…川内を見送りはしたけど…この頭に浮かぶ気持ちの悪さ…

一体、今は…

 

北上(…何、さっきの感覚…いや、ダメだ、空腹でおかしくなってるんだ、早く食べよう!)

 

おすむびを頬張る

 

北上「…おいしい…!」

 

塩味のよく効いたおにぎり

噛めば噛むほどお米の甘さがあって…

 

北上「幸せ…はぁ…お米って日本人の心だよ…」

 

具は無いけど、ずっと食べてられる…

気がつけばあっという間になくなってしまった…

 

北上「…ごちそう様でした、おいしかった」

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