食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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閑話 北上の足取り

夕張「だ、脱走!?」

 

大淀「はい、しっかり監視するように言いつけていたのですが、部下が相手を舐めてかかったようで」

 

夕張「…北上は舐めちゃダメでしょ…」

 

大淀「事前に入念な教育もしたんですが…」

 

加賀「これだから五航戦は…」

 

瑞鶴「すみません…ホントにすみません…」

 

大淀「差し当たって、捜索隊は出していますが、(おおやけ)には動けないものでして」

 

夕張「…早く帰らないといけないのに、そういえばみんなはどうしてるの?」

 

大淀「…引っ越していただくことになります、勿論、“首輪付き”になってもらうわけではありません

大湊の周りにいることはもうリスクを避けられないだろう、というこちらからの配慮のつもりです」

 

夕張「引っ越すって、どこに…?」

 

大淀「…今はお答えできません、私も守秘義務を守らないと…」

 

大淀が自分の首を刎ねるジェスチャーをする

 

大淀「なにぶん、私も危うい立ち位置でして」

 

夕張「そうよね…ごめん、それで?」

 

大淀「とりあえず、先輩を捕まえられるまでの間、私たちの目の届く範囲にいることを約束してくれれば好きにしてくれて構いませんので」

 

夕張「…向こうにいるみんなの食事は?」

 

大淀「レトルト食を届けさせていただきました、味はどうかわかりませんが、2週間分ほどは持つかと」

 

夕張(…心配するべきことは…色々あるけど…)

 

夕張「とりあえず、私も街を散策しながら北上を探してみる…」

 

大淀「気をつけてください、一年前、首輪無しの艦娘はこの東京のひと区画、私達が把握しているだけで70人は居ました

しかし、現在は5人しか居ません、何故かわかりますか?」

 

夕張「…よその街に行った、って話じゃなさそうですね」

 

大淀「不審死、誘拐、自殺…経緯はどうあれ、いろいろな形で、この世のものでなくなったり、そうでなくても凄惨(せいさん)な末路を辿る事を避けられなかった人がたくさん居ます

…この街で艦娘であると知られるリスクは、非常に大きい」

 

夕張(故の、首輪…か…守る意味もちゃんとあるのね)

 

夕張「わかった、気をつける」

 

…大きい街、それはそれだけ活発で、常に何かが起きている街

だから、何が起きてもおかしくは無い…

 

 

 

 

 

 

 

夕張(と言っても…)

 

東京の街から北上1人を見つけ出すのは骨が折れる…

 

夕張「昨日1日探して収穫ゼロよ?」

 

加賀「無理そうですね」

 

夕張「よね〜」

 

…北上は一体どこに行ったのやら…

 

夕張(まあ、多分簡単に死にはしないだろうけど…それでも、何かが起きてからじゃ遅いわけだし)

 

夕張「まあ、見つからないとどうにもならないか…さて、と…今日はいるかな?」

 

加賀(また地下アイドルのライブ…そもそも、艦娘じゃライブハウスなんて使えないでしょうけど)

 

夕張「あ、やってるー…ん?」

 

那珂ちゃん、こっちに気づいたみたいだけど、なんか様子が…

 

夕張「…こっちに…来るな?」

 

加賀「何を言って…」

 

神通「抵抗せず、そのまま進んでください」

 

夕張「っ…?」

 

いつの間に後ろに…

 

川内「はいそこ右に曲がって、大丈夫大丈夫、今んとこなんもする予定ないから、そっちの態度次第だから」

 

夕張(しかも2人かぁ…首輪無しだから?…いや、まあ色々考えられるけど)

 

人気のない空間に押しやられる

 

川内「アンタら何者?」

 

夕張「…そっちこそ、そろそろ振り返っていい?私達だって騒ぎにはしたくないけど、危険ならやりあうくらいの覚悟はあるわけだし」

 

川内「なんのためにこの街に来たの、首輪もつけないで」

 

…人攫いというよりは、自分たちに害になるのを恐れてる?

なら、言葉を選ぶとしたら…

 

夕張「私は…なりゆきっていうか、ここに来たくて来たわけじゃない、そのうち帰るよ」

 

川内「帰る?…首輪もないのに、帰る家があるんだ」

 

夕張「…仲間がいる、私だって早く会いたいし帰りたい」

 

神通「…どうやら思っていたよりは普通な様ですね」

 

川内「だね……いきなりごめん、もういいや、こっち向いて」

 

…首輪付きか

 

夕張「なるほど、艦娘なわけだ、じゃあ2人が那珂ちゃんのお姉ちゃん?」

 

川内「そ、私は川内、元呉の退役艦娘」

 

神通「同じく神通です、手荒な真似をしてすみませんでした」

 

夕張「私は…聞いてるかもしれないけど夕張、在籍時は佐世保に居たんだ」

 

川内「知ってる知ってる、マッドサイエンティストの夕張でしょ?」

 

夕張「…なんで悪い方に名前が通ってるのかな、私は人の助けになるための実験をしてたんだけど」

 

神通「そうだったんですか?」

 

夕張(那珂ちゃんは勤勉だったんだなぁ…)

 

加賀「それより、あの子、心配してるんじゃないかしら」

 

川内「かもね、戻ろうか」

 

 

 

 

那珂「ホントに!なんで!そんな事するの!」

 

川内「いやもう謝ったって」

 

那珂「そういう問題じゃないの!!那珂ちゃんのファンなんだよ!?」

 

神通「ごめんね、那珂ちゃん」

 

夕張(微笑ましいなぁ…姉妹ってああいう感じなんだ)

 

夕張「あ、ところでさぁ、私達今人を探してて…知らないと思うんだけど、北上って艦娘を…」

 

川内「北上?大湊の?」

 

夕張「そう!知ってる?…やっぱ強いと名前は知られてるのかなぁ」

 

川内「いや、会ったよ、昨日の夜遅くに」

 

夕張「嘘!?」

 

加賀「はい、加賀です、目撃証言がありました、ええ…はい、会った場所は?」

 

川内「青葉台の公園…何?あいつ悪い奴とか?」

 

夕張「いや、そうじゃないっていうかむしろ恩人なんだけど…その、勝手に病院抜け出しちゃって…」

 

川内「あーじっとしてられないタイプか、わかるなぁ…」

 

神通「姉さん…」

 

加賀「青葉台で…はい、ええ…東京タワーで見失ったのが12時前後なので、はい…青葉区ではなく、渋谷の青葉台?」

 

川内「そうそう」

 

那珂「うちのすぐそばじゃん…」

 

夕張「へー、いいとこ住んでる…って、家賃高くないの?」

 

那珂「築25年のマンションだから、しかもワンルーム、お風呂とトイレは別だけど、エレベーターとかないんだよ!」

 

神通「那珂ちゃん、恥ずかしいからやめて…」

 

夕張(家賃いくら位なんだろう…)

 

加賀「はい、ええ…捜索範囲はかなり絞れそうです、助かりました」

 

川内「いいよ別に、お弁当もらったみたいだし、こっちこそありがとう

ところでさ、北上ってやっぱ強いの?」

 

夕張「…まあ強いっていうか…うん、めちゃくちゃね…

素手で深海棲艦襲ったり…」

 

川内「どっちが悪者なのそれ、ていうか獣じゃん」

 

神通「そんな人にあってよく無事でしたね」

 

夕張「普段は理性的なのよ?…というか、深海棲艦を異常に憎んでるだけ…

普段は普通の優しい子よ」

 

川内「…ところでさ、話変わるんだけど」

 

夕張「何?」

 

川内「なんで佐世保の夕張が北上を探してんの?」

 

夕張「…色々あって、私も大湊に置いてもらってるの」

 

川内「じゃあさ、なんで虫食べて凌ぐほど困窮してる大湊の人が那珂にご飯奢る余裕があるわけ?」

 

夕張「いや、私達は虫食べてないし…っていうか、そこはちょっと難しい事情があって…

そもそも、大湊にいた時は最近までお金なんてあっても使えなかったの

無人島サバイバルしてる感じだったから」

 

川内「ふーん…じゃあなんでこっちに来たの?」

 

夕張「…言っていい?」

 

加賀「ダメです」

 

夕張「ごめん、言えないみたい」

 

神通(…権力はそっちが上か)

 

川内「ま、訳アリなのはなんとなくわかってたけど…思ったより根深そうだね」

 

夕張「ごめん、巻き込んだりはしないから…と?」

 

着信音…

 

夕張「あれ、このケータイ…」

 

加賀「北上が忘れていったものです」

 

夕張「はい、もしもし?」

 

大淀『夕張さんですか?丁度良かった、先輩の足取りはまだですが、例の件、掴めました』

 

夕張「ホントに?で、何処なの?」

 

大淀『アイオワさんをはじめとした、外国からの艦娘の受け入れは横須賀で行われていたそうです、しかし何故そんなことを?』

 

夕張「気になることがあって、とにかく助かったわ」

 

大淀『…記憶を取り戻すのは難しいですよ』

 

夕張「わかってる」

 

夕張(アイオワのこともそうだけど、他に確かめたい事あるし…

でも、まず今は北上か…早く捕まえなきゃ)

 

夕張「那珂ちゃん、また来るから」

 

那珂「うん!待ってるね!」

 

川内「じゃ、またね」

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