食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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家族と仲間

…今日、私は血のつながった家族…であろう相手に会う

正直気が重い

 

夕張「…所謂、実の家族…かぁ…」

 

“実の”家族?…では、一緒に過ごし、生き抜いた仲間は?

 

 

 

川内「え?…那珂と神通?…何言ってんの?姉妹だよ」

 

夕張「…家族だと思う?」

 

川内「当たり前じゃん…」

 

夕張「…そうよね、私だってそう思う」

 

生死の境を共に乗り越えてきた仲間と寝食を共にして生きている

これが私にとっての家族

 

夕張(その概念を根底からひっくり返さないといけないの…?)

 

川内「そんなに不安そうなのに、なんで会うわけ?

…打算無し…って訳じゃなさそうだけど」

 

夕張「まあ…ひとつは、人間と艦娘の関係改善のため、その下調べ的な部分もある…

あと、もう一つは…こっちは本当に卑しい部分だけど、食糧を手に入れたいから…」

 

川内(思ってたよりも打算しかないのでは…?)

 

川内「まあ頑張ってよ、家族ってのは厄介だけど良いもんだからさ」

 

夕張「わかってる……って、そういえば、神通は?」

 

川内「…小さな声なら出せる、普通に喋るのは無理ね」

 

夕張「…首輪が外せるって話に釣られたんだっけ?」

 

川内「そう、実験的なものだから、タダでいい…なんて話を鵜呑みにしてね、「私だけで済んで良かった」なんて言ったから思わず殴っちゃった」

 

夕張「容赦ないなぁ…」

 

川内「…わかってるよ、正直同じエサがぶら下げられたら…あたしも自分の身くらい捧げるかもしれない

だから、その戒めの分も含めて強くね」

 

夕張(心が痛い罰って訳ね)

 

川内「……それより、あの響と朧って子達」

 

夕張「…2人とも、私が行く前の大湊のメンツらしいわ、その…戦闘で…」

 

川内「生体ユニットの破損って事…だよね?傷が治らないなんて…」

 

夕張「たまに見られる事例だけど、視覚を失ったり、臓器の損傷が修復できないなんてのは初めて

朧ちゃんの方は特にひどかった…その…大淀に記録をもらったら…生きてて不思議なくらい」

 

…内臓が、食い荒らされたのを…なんとか生命を維持できるレベルまで修復したとあった

まあ…今の状態なら命に別状無いはず…

 

夕張「知ってる…?野生のクマって、やわらかくて食べやすい内臓を1番最初に食べるんだって」

 

川内「…それ、死ねないって事…?」

 

夕張「そう、意識のあるまま、内臓だけを食べられる…地獄の苦しみだそうよ」

 

川内「……朧もそれに近い事をされたワケだ」

 

夕張「みたいね…おかげで、ずっと誰かと一緒にいるし」

 

川内「そんな子が2人でなんであんなところに…?」

 

夕張「薬代で食べるものも買えず、止むを得ずね…

…山雲ちゃん達の所に行けばよかったと思ってたけど…田舎じゃ中々必要な薬が手に入らないだろうし」

 

川内「…苦しいね」

 

夕張「そうね…」

 

川内「夕張、逃げ場がなければ那珂のところに行っても良いから」

 

夕張「那珂ちゃんの…って、そう言うつもりで外に…?」

 

川内「そうじゃないけど…夕張やここの皆なら、那珂の側にいても安心だと思って」

 

夕張「…ありがとう」

 

川内「辛くなったら逃げて、とにかく逃げる事だけを考えて

逃げた先が辛いとか、逃げたらみんながどうとか、そんなの後回しで、逃げて

あたし達でできる限り、サポートはするから」

 

夕張「…ありがとね」

 

夕張(…色々理由は並べたけど…1番不安なのは、気になるのは…もし受け入れてもらえて、私も受け入れられた時

…私だけ…幸せになっても良いの?)

 

 

 

 

 

夕張「…ええと…」

 

母親「ほら、遠慮せず食べて!どうせちゃんと食べられてないんでしょ?」

 

父親「すみません、店員さん、こっちに瓶ビールもう一本!」

 

夕張(…会うの、1人だと思ってた…帰りたい…)

 

事前に伝えられてた場所に行ったら家族連れが待機してて…

そして出会ってすぐに車に乗車

その後寿司屋に連れ込まれ、今に至る…

 

隊員「もう3年になるか…ホントに、生きててよかった…」

 

夕張「3年…もうそんなになるんだ…」

 

自分が艦娘になってから…なんて、考えた事なかったな

艦娘としての力が与えられたのが最初の記憶で、次が使命だったから

 

母親「ホント、毎日生きた心地がしなかったけど…生きてて良かった…」

 

夕張「……」

 

私が、ただ生きていたと言うだけでこんなに喜んでくれる…

それだけで、私を否定しないでいてくれるだけで、こんなにも安心できる

 

母親「“夕張”ちゃんを(ないがし)ろにはしない、元々の名前なんか知りたくなってから知ったら良い

一緒に暮らそうなんて事も言わない」

 

夕張「…いいんですか?」

 

父親「色々調べた、元が実の家族だったからと言って、不用意に、相手の気持ちに無関心になりすぎたせいで

そんな失敗がたくさんあったと聞いた」

 

母親「元が家族だからって…何も覚えてないのに、今覚えてるお友達を蔑ろにするような真似…そりゃ、嫌よね」

 

父親「もう一度娘を失うよりはずっと良い」

 

夕張「…そう言ってもらえて、本当にありがたいです」

 

隊員「…他人行儀な事言われると、なんか変な感じだ」

 

夕張「ちなみに…その、そちらの2人が両親であることはわかってるんですが、あなたは…」

 

弟「そっか、俺が弟なのも忘れてるのか」

 

夕張「おとっ……」

 

自衛官やってるくらい大きな弟がいるって…私ってホントに…

 

夕張「…つかぬ事を伺いますが…私って、幾つでしたか…?」

 

母親「今年二十歳だっけ?」

 

父親「そうだなぁ…成人前に再会できて本当に嬉しいよ」

 

夕張(まだハタチじゃないんだ…って事は…?)

 

弟「ああ、俺の歳?19だよ、でも一個下ね、去年自衛隊に入ったばっか」

 

夕張「へー…凄いね、その…戦時下に入るなんて」

 

弟「…まあ、正直敵討ち的な…?」

 

夕張「意外とシスコンさんなのね?」

 

母親「そうなの、昔っからべったりでね…」

 

夕張「へー…」

 

…なんだか、意外と楽しくなってきた…かも

 

 

 

 

 

夕張「…はー…楽しんじゃったな…1人だけ」

 

…帰りは敢えて徒歩で、1人で帰りたいと頼んだけど

良い余韻に浸れて正解だった

 

夕張「…ホントは、この余韻に浸ったまま寝むりたいところ…なんだけど、何か用事?

そこの…深海棲艦さん」

 

物陰から、人間と同じ洋服を着た、そして艤装をつけていない深海棲艦が顔を出す

 

ツ級「…夕張」

 

夕張「私を知ってる…?」

 

ツ級「ウン…アナタガ、艦娘ニナル、モット前カラ知ッテル、艦娘ニナッテカラモ一緒ダッタ…私ノ事、覚エテナイ…?」

 

夕張「…なに、何言ってるの、貴方」

 

ツ級「…東京ッテ、イイトコロダヨネ、凄ク…ダッテ、深海棲艦デモ害意サエナケレバ無関心、私達モ過ゴセル…

勿論危険ハアルケド…ネッ?」

 

夕張「…誰?ちょっと待って、誰なの…?貴方、私の何を知って…」

 

ツ級「…ソッカ、覚エテナインダ…ユニットノ所為?

…アンナニ一緒ニ居タノニ、明石サントモゴ飯食べニ行ッタリ…ホラ、佐世保デサ…」

 

夕張「や、やめてよ…わ、私は、私は誰も忘れてない!誰も忘れてなんかないの!死んだ子も!みんな…!

目の前で死んだ子の事も未だに忘れられないの!いや、忘れちゃいけない…!私は誰1人…」

 

ツ級「…仕方ナイヨ、ダッテ、許容値ヲ超エタ感情ハ危険、ソレヲ制御スル為ノ記憶ノデリート…

ソレニ、アンナ事故……夕張ノ所為ジャナイケド…」

 

夕張「事故…?」

 

私のせいじゃないって何…?

 

ツ級「…試作艤装ノ事故、夕張、思イ出シテ…ネ?」

 

深海棲艦に手を向けられる

 

夕張「な、何を……っ!?…頭の中に…何か…?」

 

…そうだ、そうだそうだそうだ…

私が、殺した…

 

夕張「……由良」

 

ツ級「思イダシテクレタノネ?」

 

夕張「…ごめん…なさ、い…」

 

あの時、私があんなものを作ろうとしなければ…

私が…生体ユニットの実験をしなければ

 

ツ級「…デモ、夕張ハ成功シタノネ、生体ユニットノ強化改造」

 

夕張「っ……」

 

そうだ、私が、成功した

私の体は、成功作、夕張は成功した…

 

でも、由良は失敗した

 

ツ級「私ノデータヲ役立テテクレテ、アリガトウ」

 

夕張「…なんで、なんで怒らないの、怒ってるでしょ?憎いでしょ…?殺したいんでしょ…?」

 

ツ級「ソンナ事ナイ、夕張…マタ会エテ、嬉シイ」

 

夕張「…由良」

 

 

 

 

 

夕張「…あ、れ…?」

 

…寝てた?私…

でも、ここ…横須賀の…帰ってきてる?

 

北上「あ、起きた、大丈夫?」

 

夕張「北上…?あれ、私……」

 

…夢なんかじゃない、ハッキリ覚えてる

昨日のこと全て

 

北上「…どうだった?楽しめた?」

 

夕張「…うん、楽しかった…」

 

北上「ホントに?良かったね、帰ってくるなり倒れるみたいに寝ちゃったからみんな心配してたんだよ」

 

夕張「そうなの…ごめん」

 

…私

 

北上「…夕張さん?」

 

夕張「…なんでもない、ちょっと1人にして」

 

私、ここに居て良いのかな…

あんな事をして、こんな事になって…

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