食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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殴り込み

夕張「…なんでここに居るの?」

 

大淀「私も存在価値を示さなくてはなりませんので」

 

夕張(…やっぱ、キツイ立場はお互い様なのね)

 

大淀「北上さんがギリギリで目覚めたのはわかりますが、今回の作戦要項を読み込む時間はありませんからね

指揮官は貴方です」

 

夕張「…了解」

 

…指揮官か

嫌な脂汗が肥大に滲む

 

川内も、北上も、みんな自覚してないだけで誰かを失ってる

私も、きっと…由良以外にも……

 

夕張「大丈夫、責任を果たす覚悟はある…」

 

大淀「では、ヘリに乗ってください」

 

…夜襲の為、移動は素早く、そして必要に応じて静かに移動できるステルスヘリを使う

ここに結局7人も乗る、予定より2人も多い

 

 

 

 

北上「…アンタは武器持ってるんだ」

 

大淀「ええ、といっても拳銃しかありませんけど」

 

加賀「目的地まで残りはおおよそ30分ほどです」

 

夕張「…再確認しましょうか、とりあえず、現地の情報は何も無い…ってのが1番にくる訳だけど」

 

…目的地は、伊豆諸島の三宅島

ただ、敵拠点がここにあるという確証もない

 

結局ある情報は、この周辺海域での海賊行為を行うなら…?という憶測から出てきた話

 

北上「ターゲットは深海棲艦がメインでいいんだよね」

 

夕張「そう、手引きしてる深海棲艦さえ倒せば、明朝(みょうちょう)に部隊が上陸して制圧してくれる」

 

川内「…“深海棲艦”が…“居れば”ね」

 

神通「……」

 

大淀「大丈夫です、その時は深海棲艦“しか”居なかった事になるので」

 

瑞鶴「うげぇ…」

 

北上「…お役人さんは慣れてそうだよね、ほんと全く」

 

夕張「北上、そういうのはナシ」

 

大淀「気にしてないですから、良いですよ」

 

夕張(……でも、良く見たら…瑞鶴は何も持ってないのか)

 

加賀「……」

 

夕張(加賀の方は、ライフル…?

そういえば、北上が最初に出会(でくわ)した時、狙撃で殺されかけたとか…)

 

夕張「…対して、こっちが持ってるのは…」

 

急速整備でなんとか使えるようにした単装砲3つ、そして対空砲3つ

 

夕張(…アレだけの短期間で、ロクな設備もなく、コレだけ整備できたのを褒めて欲しい)

 

でも、コレだけあるのに弾薬はほんの少し

確実に弾切れするレベルの量

 

夕張(犠牲は出さない、出るとしても私1人で抑える…

なんて、思ってたけど…そんな余裕もなさそうな)

 

加賀「…レーダー反応あり、ドアを開けます、全員、安全帯(あんぜんたい)をつけてください」

 

夕張「え?」

 

言われるがままに腰ベルトを装着する

加賀がハッチを開いた瞬間、冷気が流れ込んでくる

 

加賀「パイロット、アンチコリジョン消灯、コレよりステルスモードに」

 

パイロット「了解」

 

ヘリの音が消え、辺りが真っ暗になる

 

加賀「……攻撃用意」

 

加賀がライフルを構えてハッチから体を乗り出す

支えは安全帯のみ…

 

夕張(めっちゃ危なそう…)

 

加賀「…敵、哨戒部隊発見、3名、全て人間です、発砲許可を」

 

夕張「えっ」

 

大淀「許可します」

 

夕張「に、人間に!?」

 

加賀「非殺傷弾よ、アウトレンジ攻撃開始します」

 

銃声が響く

そしてまた、また…

 

加賀「…海上哨戒部隊を撃破、上陸のため、陸地に接近」

 

大淀「ロープ降下用意」

 

ハッチからロープが垂れる

安全帯を付け替え、グローブをはめた手でそれを握る

 

夕張(…ビビったら失敗するって分かってるのに、怖い…!)

 

加賀「この高さで砂浜に降りるだけだから、落ちても骨折で済むわ」

 

大淀「必要に応じて各自修復材を投与してください

降下開始、降下降下」

 

北上「よっ」

 

川内「お先」

 

夕張(2人とも躊躇いなさすぎない…!?)

 

神通「……」

 

夕張「え、神通?なんで手を…あ、瑞鶴、後ろに立たないで…!?」

 

瑞鶴「早く行くよ!」

 

夕張「ひっ」

 

ロープを握っているのに、どんどん滑り落ちて…!

 

夕張「っ!……は…な、なんともない…」

 

…着地できたけど…こ、怖すぎる…

 

大淀「叫ばなかっただけ上出来でしょう、さあ、散会しますよ」

 

北上(加賀は上空からの支援か…さっきもそうだけど、ホバリングしてるとはいえヘリからああも正確に…)

 

夕張「…い、行こう!」

 

音を立てず前進する

小さな島だって話だったけど、一周するにはそれなりの時間がかかる

 

だから、ブリーフィング通り、要点になりそうな場所だけを叩く

 

夕張「…!」

 

前方に明かり、しかも、あれは

 

北上(艤装持ちか、1人だけなら…まあ、夕張さんの腕の見せ所かな)

 

夕張(……神通!)

 

艤装をハッキングして、ロックする

そして、音もなく現れた神通が…

 

神通「!」

 

一撃で仕留める

鮮やかな蹴りで、ノックアウト

 

北上(うわぁ…ヤバ…死んでないよね?)

 

川内「さっすが神通!」

 

夕張「一瞬で目の前に出てきて即座に蹴り…やられたらたまったもんじゃないわね…」

 

大淀「見惚れてないで行きますよ、おそらくもう異変に気づいているかと」

 

夕張(そのつもりで行くしかないか、なら…)

 

夕張「予定通りにね、大淀、川内、無線は?」

 

大淀「問題ありません、行きましょう」

 

川内「こっちも問題なし」

 

ここからは、私と北上、川内と神通、大淀と瑞鶴に別れて動く…

 

 

 

 

川内「…発見、町だね」

 

神通(…特に騒ぎは無し、(あか)りもついてる…)

 

川内「深海棲艦の影も形もないか、それならそれで良いんだけどさ」

 

神通(でも、ここが海賊の拠点…?)

 

川内「悪い子達は、お仕置きしとかないとね」

 

 

 

 

 

夕張「あった、ここが拠点だ」

 

北上「こんなとこに本当に山小屋あるなんてね」

 

夕張「……待って、向こうから人が来る」

 

北上「巡察?…ここ、守るような施設なんだ」

 

夕張「そうなるけど…何を守って……あれ」

 

北上「どうしたの」

 

夕張「……中にも人がいる、しかも、多分艦娘少ないんじゃない…?

巡察も、普通の人だ、生体ユニットの感じがない…?」

 

 

 

 

大淀「……やはり、予想通りですか」

 

瑞鶴「あれ、受け入れ途中ですよね……あ、あの荷物!」

 

大淀「襲われた貨物線の物資と同じマークです、確定して良いでしょう」

 

瑞鶴「つまり、ここは……」

 

大淀「島ぐるみです、ここは海賊の島になってしまった」

 

瑞鶴「…ってことは…」

 

大淀「大掃除になりそうですね」

 

 

 

 

北上「ふっ!」

 

北上が巡察の背中を蹴り飛ばし、首の付け根を踏みつける

 

夕張「いきなりでごめんね?ちょっとお話聞かせてもらえる?」

 

巡察「な、なんなんですか!?あなた達!」

 

夕張「この中には何があるの?」

 

巡察「…て、敵…ふぐぅっ!?」

 

北上「コイツ叫びそうだね」

 

夕張「仕方ないか、おやすみなさい」

 

巡察を気絶させる

 

北上「1人で見回りしてる辺りがうーんって感じだよね」

 

夕張「ま、そうかもね」

 

そして…懐の警棒を手に入れる…か

 

北上「リターンが無さすぎるね」

 

夕張「せめて情報が欲しかったけど…」

 

…この島が本当に敵地なのかすらわかってないのに…

 

夕張(既に撃った以上、私達は敵として見做される

…ほんとにここにいる人たちは…)

 

山小屋の扉に手をかけ、主砲の安全装置を解除する

 

夕張(中にいるのは人間…艦娘ですらない…

当たったら殺しちゃう、殺すのはダメ…私に取れる手段をよく考えて…)

 

夕張「北上、突入用意、行くよ」

 

北上「…3…2…1…」

 

扉を開けると同時に中の幾つかの艤装が発砲する

 

夕張「右!」

 

北上「あいよ!」

 

入り口から左右の敵を攻撃し、残った人間を蹴り飛ばす

そして、主砲を向ける

 

夕張「制圧完了…よね?」

 

北上「3人か」

 

夕張「海賊の仲間、で良いのよね?」

 

…誰も何も言わない

 

夕張「否定しないってことは、ダメね、どうする?」

 

北上「何も喋らないつもりなら巡察と同じ様にやっちゃうしかないんじゃない?」

 

1人が怯えたのを見て、北上と目線が合う

 

北上「ふっ」

 

夕張「ほいっ」

 

怯えた奴以外を気絶させ、拘束して

 

夕張「尋問タ〜イム」

 

北上「さあ、夜は長いよ」

 

 

 

 

川内「…手応えないね、コレどこの艦娘だろ」

 

神通(深海棲艦の気配は全くない…か)

 

川内「…お、無線?」

 

夕張『こちら夕張、山中の山小屋で交戦して情報を得た

いい?よく聞いて、この島、もう深海棲艦の物よ、ここにいる人たちみんな、あいつらの食糧なの、もうここは深海棲艦に支配された島よ』

 

川内「…なんて?」

 

神通(一体、どうなって…)

 

夕張『敵の本丸の位置はおそらく島南東の洞窟、だけど情報の確実性は低いわ

東西の街にも頭役がいるみたいだから、そいつらを捕まえて』

 

大淀『ざっくりとしすぎですね、街に深海棲艦がいるという認識で構いませんか?』

 

夕張『いや、そいつらは艦娘、戦艦級の艤装をつけててー』

 

川内「戦艦級…?……あ、ごめん…」

 

夕張『何?』

 

足元の艤装を確認する

 

川内「コイツかも」

 

大淀『こちらも撃破済みです、瑞鶴、拘束して拷問しなさい』

 

夕張『……嘘でしょ?』

 

川内「だって弱いんだもん」

 

夕張『…情報収集よろしく』

 

川内「うん、“情報収集”するよ」

 

神通が気絶した艦娘を羽交締めにして立たせる

 

川内「多少心が痛む手段だけどね」

 

お腹に拳を当て、引き絞り…

 

夕張『…こ、殺さないでね!?』

 

大淀『保証しかねます』

 

川内「まあでも目覚めは強烈じゃなきゃ」

 

 

 

 

 

夕張「……ヤバすぎる…死体の山ができちゃうわ…」

 

北上「向こうも殺すつもりなんだから、こっちもその気で行かなきゃ」

 

無線から聞こえてくる嗚咽に思わず電源を切る

 

夕張「…次、行きましょうか」

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