食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
はーい、伊豆諸島から北上様だよ
丁度今一仕事終えたところでさ、その成果物がすぐそばにあるんだよね
北上「コレ、中にいる奴らは生き埋めで死ぬのかな?」
夕張「さあ…多分その辺の小さい穴とか、出口になりそうなところから出てくるでしょ」
アジトらしい洞窟の真上まで来たんだけど、中にそこそこの艤装の反応があるみたいだし、2人で攻略するのは現実的に無理じゃん?
だから砲弾をほとんど使って、入り口の真上を爆破、崩落させましたとさ
北上「にしても、非人道的な作戦だよね、下手したら潰されるし、一生出られないかもだし」
夕張(発案者がそれ言うか…)
北上「……さて、深海棲艦はどこにいるのかなぁ」
夕張「電探でもあれば、創作範囲は広げられるけど…待って、通信」
加賀『こちらホテル、島へ移動する海上部隊を発見…深海棲艦です』
夕張「なるほどね、元々深海棲艦は出払ってたわけだ」
大淀『どの辺りですか』
加賀『北東の…すみません、気づかれた様です、撤退します』
無線から砲音が入る
そして、こっちでも聞こえる
北上「どうする?」
夕張「助けに行く、か…元々目的はそいつらだし…山道を突っ走りましょ」
北上「そうこなきゃね」
手元の主砲3つ、うち2つはあたし、1つが夕張さん
武器はこれと警棒だけ
弾薬も残りわずか
夕張(せめて艦娘と交戦してればなぁ…奪うなり、なんなりしたのに…砂浜で襲った子のやつ奪っとけば…いや、後の祭りか)
北上「こっちでいいの?」
夕張「大丈夫、だけど…ヘリはどこ?」
北上「わからない、無事なのかな?」
戦闘音の方に向かってはいるけど、加賀はどうなったかな
夕張「聞こえる?こっちはヘリを探しながら敵部隊に接近してる、可能なら増援に来られる?」
大淀『向かっています』
川内『こっちも、夕張、近づいたら教えて』
夕張「了解」
北上(生体ユニット感知できるの便利だなー…)
北上「っ?」
夕張「あ…!」
爆発音、そして、火の塊となって落ちていくヘリ…
夕張「間に合わなかった…!?嘘でしょ…」
北上「いや、“中身”まではいってないかも!」
走って火の塊を追う
木々を薙ぎ倒しながら、山に突っ込み、吹き飛ぶ…
夕張(中にいたら間違いなく死んでる、脱出できてなかったら…!)
北上(そんなあっさり死ぬタマじゃないでしょ、加賀…!)
夕張「待って!!」
夕張さんに
北上「な…むぐ」
口を抑えられる…黙ってろってことらしいけど……
北上「!」
…深海棲艦、しかも、一体や二体じゃ…
北上(もう上陸した?…いや、この辺にアジトがあるって事か…!)
夕張「…北上、やるわよ」
頷き、武器を構え直す
…どうやら、やり過ごそうとしない辺り…最悪の事態に近いらしい
夕張「…北上!5秒で!」
北上「あいよ」
飛び起き、目に映る敵を順々に撃ち抜く
反撃はない、全て夕張さんのジャックで抑えられている
そして…
北上「ラスト…!」
ガチッ
北上「あり、弾切れ?…じゃあ…こっちも!?」
夕張「任せて!」
最後の一匹を夕張さんが仕留めた事で、状況は落ち着いた
夕張「…こっちも弾切れ…って、それより!」
夕張さんが茂みをかき分け、誰かを抱き起こす
北上「…加賀…」
夕張「……脈はある、死んではないわ」
でも、意識を失ってる
いや、それよりも…
北上「脱出せず、中で戦ってたって事?…そんな大火傷して」
顔の半分が焼け爛れてる
服も焼けこげてるし、半身大火傷…
装具品も全部壊れてるか…
夕張「…効くといいけど」
夕張さんが修復剤の入った注射器のキャップを外す
北上「待って、それ使うの?」
夕張「…何、反対するの?」
北上「それは1人1つしかないんだよ?それに…加賀は死ぬ様な怪我をしてるわけじゃないでしょ?
それを使う事で夕張さんが…」
言い終わる前に加賀に修復剤を投与する
夕張「私が怪我しなければ良いんでしょ?早く連れていきましょ、手を貸して」
北上「っ……あーもう、嘘でしょ?どのみち意識がないんじゃただの足手纏いだよ?」
夕張「だったら私が背負う」
北上「それが足手纏いなんだって!!わかんないかなぁ…!」
…こんな命懸けの状況、こうなった以上加賀はただの荷物…
別に見捨てたいわけじゃないけど、死なせない様に隠すくらいで済ませても…
夕張「北上、ごめん、多分今の切羽詰まった状況なら北上が間違い無く正しいわ、加賀は安全な場所に隠せば良いかもしれない
修復材だって必要なかったかもしれない、でも、私は、こうしないと気が済まないの」
北上「…連れてはいけないよ」
夕張「……この辺りに多分敵のアジトがある」
…否が応でも連れていくつもり…か
北上「何にこだわってんのさ」
夕張「…今は、言えない」
夕張(だって、どうせ…北上も川内も、忘れるから…もしかしたら瑞鶴が1番ショックを受けるかもしれない
…だから、すこしでも傷を減らし、少しでも死なない様にする)
大淀「おや」
夕張「合流できてよかった、そっちは無事?」
大淀「ええ、しかし…瑞鶴」
瑞鶴「は、はい…」
瑞鶴が加賀を背負う
大淀「この傷の残り方、修復材を使いましたね?本人の物ですか?」
北上「夕張さんのやつ、装備品は全部破損してた」
夕張「小言は要らないからね」
大淀「いえ、ありがとうございます、部下を助けていただきまして」
…大淀が人にお礼を言うところなんていつぶりに見たっけ
夕張「…やりたい様にしただけ、それで、ここからどうする?」
大淀「指揮官はあなたですよ」
夕張「……そうね」
北上「深海棲艦を潰す、それだけじゃないの?」
夕張「それが、そうもいかなさそうよ」
北上「え?」
夕張「…ここに来るまでに、川内から無線が入ったのよ…」
北上「…つまり、この島全部、海賊に手を貸してる…海賊の島って事?」
夕張「そう、ここに住んでる民間人も、生活の為とはいえ海賊に手を貸して、銃を撃つことくらいは躊躇いなくしてくるみたいなの
川内も大怪我はしてないけど…」
北上「…撃たれたか」
大淀「この島の人達や艦娘は老後の人生を捨て、今を生きることを選びました、年寄りになれば食われる代わりに若いうちは食料が自動的に補給され続ける」
夕張「その手段が、海賊行為…深海棲艦、ホント、ふざけてる…!」
瑞鶴「…その、それが…」
北上「…なんか違うんだ?」
大淀「元々、この島を実効支配していたのは行き場を失った艦娘です
食料や寝床を求めてやってきた彼女たちに生活を圧迫され、苦しんでいた島民を救った形になるのが…」
北上「……チッ」
みんな苦しい、苦しんでる
だからって、もがいた結果、よその仲間を苦しめて…
北上「気に入らないなぁ…」
夕張「…迎えは呼べる?」
大淀「必要なら今すぐにでも」
夕張「なら呼んで」
北上「…引き上げんの?」
夕張「目的は海賊討伐、海賊が居なくなればいい、なら…深海棲艦だけ殺しても、艦娘の海賊を始末しても、この島は何も変わらないわ
野蛮な生き方を知ってるせいで、それに頼ってもっと多くの人を不幸にし続けるしか無くなる」
北上「…だから、手を引く?」
夕張「深海棲艦だけ全部始末してからね…そしてその後は、大淀、そっちの仕事でいいのよね?」
大淀「ええ、ここの現状を取り上げてすぐに補給ができる様にします
残りの艦娘も全員留置所送りにします」
北上「その方がまだマシか…」
夕張「…あと、一仕事ね」
北上「……」
…でも、生きるために足掻いて、なんとか今を食い繋いでる相手を否定するのは
どこか、辛いものがあるな
加賀「…っ…」
瑞鶴「あ、加賀さん…大丈夫ですか?」
北上「意識戻ったか」
加賀「…ごめんなさいね、遅れをとってしまって」
…火傷した方の目が、開いてない
夕張(流石に、そこまでは治らなかったか)
加賀「…パイロットは直撃を受けて死んだわ」
大淀「そうですか」
加賀「対空砲火を自分が喰らうのは初めてだったけど、怖いものね」
北上「撃ってきた奴らは全員ちゃーんと殺すから、安心してよ」
加賀「……あ…」
加賀がポケットから何かを取り出して、残念そうな顔をする
瑞鶴「…どうかしたんですか?」
加賀が取り出したものを、大淀が手に取り、こちらに差し出す
北上「…何コレ、焦げてるけど…あ」
夕張「カロリーメイト?」
加賀「せっかくだから、用意しておいたんだけれど…ダメになってしまったみたいね」
北上「……」
手に取り、口に運ぶ
北上「…フルーツ味?」
加賀「チョコレート味よ」
北上「焦げてて苦いからてっきり」
1つ夕張さんの口に押し込み、口の中身を飲み込む
北上「…補給完了、さて、やりますか」
夕張「大淀、ヘリの到着時間は」
大淀「1時間後を予定しています」
夕張「…それまでに、制圧を終わらせる…!」
北上「了解」