食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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元大湊

夕張「こちら夕張、川内、どこ?」

 

川内『町の最南端、民家に潜伏してるよ、向こうはしっかり殺しに来てる

接敵したらマズイかな、流石に』

 

…小高い崖から見下ろしてる小さな町

それの最南端の家…といっても、複数候補があるけど…

 

大淀「その時は構いません、貴方を失うくらいならやってください」

 

夕張「それ言い切るのもどうかと思うけど…まあ、正当防衛の範囲でよろしく、それと…街に深海棲艦が近づいてる」

 

川内『……マジ?…神通、周囲警戒怠らないでよ、取り敢えずどうすればいい?』

 

夕張「…数は7、ゲリラ戦に持ち込めばやりきれなくはない…

でも、こっちの武器は弱いし、何より…そこの警備の艦娘が多い、普通人間も含めたら…とてもまともに相手してられないわ」

 

川内『ホント、なんで人間と艦娘が深海棲艦に手を貸してるの…自分が何してるのか、たまにわかんなく…マズイ!』

 

銃声が響く

 

北上「あそこか」

 

大淀「瑞鶴、加賀を任せましたよ」

 

瑞鶴「はい」

 

加賀「…動けるわ、だから…」

 

瑞鶴「無理しないで、加賀さん」

 

夕張「今すぐ向かう、もう少し耐えて」

 

川内『死ぬ前に頼むよ!?』

 

夕張「わかってる!!…とはいったけど…!」

 

大淀「右前方から砲撃!」

 

北上「正面キてるよ!」

 

夕張(処理が追いつかない!…というか、この2人、やっぱヤバ…)

 

こちらに注意を促しながら、自分は被弾せずに近づいて敵を仕留める

とても私にはできない芸当を2人してこうもあっさりと…

 

夕張(茂みに艤装の…!)

 

手を向け、艤装をジャックする

 

夕張「北上!そこの茂み!」

 

北上「…みっけ」

 

悲鳴と鈍い打撃音

茂みから出てきた北上の手には新しい単装砲…

 

大淀「流石の探知能力ですね」

 

夕張「まあね!」

 

こうなればとことん強みを活かすしかない!

 

夕張(艤装なら抑え込める!)

 

そして、攻撃が止んだ瞬間

 

大淀(…あれか)

 

北上「よし」

 

2人が仕留める

 

夕張(こうなれば、艦娘は怖くない…でも、どこに銃を持った人が隠れてるかわからない…気をつけな…)

 

夕張「っ!」

 

反射的に後方に武器を向ける

 

ツ級「……」

 

夕張「…深海棲艦…!」

 

でも、一体だけ……いや、待って…

 

夕張「…何、この感じ…この、ザラつく様な…や、やめ…頭に、入って…!」

 

ツ級「夕張、ヤメテ」

 

夕張「…由良…!」

 

全身を深海棲艦の艤装で覆っているせいで気づかなかった…けど、由良…!

 

夕張「なんでここに…!」

 

ツ級「…ココハ、必要ナ場所ダカラ、オ願イ、退イテ」

 

夕張「必要って…!」

 

北上「夕張さん!何やってんの!?止まってたら死ぬよ!」

 

夕張「待っ……由良…」

 

…一瞬北上の方を向いたら、消えた…?

 

夕張「…ごめん!」

 

足元の単装砲を拾い上げて、再び戦闘に加わる

 

 

 

 

北上「…落ち着いたかな」

 

あらかた、制圧できたか

殆どの敵を倒し切れたはず…

 

夕張(…残りの艤装も全部、ロックしてる、危険はない…)

 

でも、川内の姿がない

 

大淀「川内さん!どこですか!」

 

返事もない、気配すらない…

 

北上「………磯臭い…」

 

夕張「え?」

 

北上が突如駆け出し、物陰へと消えたところで打撃音と銃声が響く

 

夕張「…何…?」

 

…執拗に殴りつける様な音が、しばらく鳴り止まない…

 

大淀「見に行かない方が賢明ですよ」

 

夕張「……」

 

物陰から深海棲艦の死体と気絶した艦娘数名が放り出される

 

北上「チッ……遅かった…」

 

夕張「えっ…?」

 

大淀「どういう意味ですか」

 

北上「…捕まったってさ、行くよ」

 

夕張「何処に!?」

 

北上「助けにだよ」

 

 

 

 

夕張「ねえ、さっきのって…」

 

北上「締め上げて吐かせた、川内達はフクロにされて、捕まったってさ」

 

大淀「……それで?何処に?」

 

北上「あっち」

 

北上が海を指す

 

大淀「なるほど、お互い逃げも隠れもできない場所に誘い出すと…?」

 

夕張「舐めたことしてくれちゃって…!」

 

北上(…むしろ、舐めてないからこうなるんだろうけどさぁ…)

 

大淀(こちらのゲリラ戦術を潰されましたか)

 

 

 

 

夕張「…艤装無しじゃ、海の上での機動性も悪い、か…」

 

確かに、生体ユニットのおかげで沈まないし、立てる、なんなら歩けるけど…

 

大淀「ようやく気づきましたか、ここがどれだけ不利か」

 

夕張「…で?敵は?」

 

北上「………待って、なんかいる…」

 

北上が主砲を構え、遠くを見つめる

 

夕張(…どこ、反応が薄い…遠い…?……いや、これは…!)

 

北上と大淀の首根っこを掴み、強く引っ張る

 

夕張「ッ!!」

 

足元から現れた深海棲艦に首を掴まれる

 

夕張(コ、コイツ…!!)

 

北上「…あ…!」

 

ネ級「ミツケタァ!!アハッ!アッハハハハ!!オマエ達ニ!会イタカッタァ!!」

 

夕張(前の海賊狩りの時の…!取り逃がしたって深海棲艦!!)

 

腰から生えた艤装が大口を開き、中から艦娘が出てくる

 

北上「…摩耶?」

 

摩耶「北上…?北上か…しかも、大淀までいんのか」

 

夕張(知り合い…?!)

 

北上「人質って訳じゃなさそうだ」

 

摩耶「そっちこそ、遊びに来たわけじゃないんだな?」

 

北上「…“アンタ”が、ここの頭って事でいいんだ?」

 

摩耶「“アンタ”じゃねぇだろうが、もっかい、礼儀を叩き込んでやろうか?」

 

北上「こんなトコで汚い仕事してるんだ、もう先輩だとか、思えないよ」

 

摩耶「そうかい!」

 

2人がお互いに主砲を向ける

 

大淀「…では、そちらはお任せします」

 

夕張(了解…!)

 

ネ級の艤装をジャックして振り回す

 

ネ級「ッ!?」

 

夕張「!」

 

手が一瞬緩んだ隙に、組み付く

全身を使い、片腕を締め上げ、海面に引き倒す

そして艤装をもう片方の腕に喰らい付かせる

 

夕張「前と同じじゃない!?どんな気分か!あとで感想…聞かせてね!」

 

ネ級「ギャァァァアッ!!」

 

両腕がダラリと垂れ下がったリ級がこちらを睨む

 

夕張「どう?…同じ手でボコボコにされて、悔しいでしょ?」

 

ネ級「殺スゥ!殺スッ!!」

 

夕張(…武器は全て奪った、あとは、確実に…!)

 

 

 

 

摩耶「チッ…やっぱアレは使えねえな」

 

北上「…前に聞かれたことがある」

 

摩耶「あ?」

 

北上「今、やってる事に後悔は無い?」

 

摩耶「なんだと?」

 

北上「コレからもそれを続ける事に迷いはない?」

 

摩耶「…無えな、なんだってんだよ」

 

北上「…今の姿を、あたし達に見られて、恥ずかしく無い?」

 

摩耶「……チッ…ムカつくな、誰だ?暁か?あの頭でっかちか?

はぁ〜…お前なら及第点だと思ってたのによ…仲間に誘ってもいいと思ってたんだ、なのに…」

 

北上「……」

 

引き金を引く

 

摩耶「…そうかい、やるんだな!?この摩耶様と!!」

 

走って距離を詰め、主砲で殴りかかる

 

摩耶「ハッ!どうした!お得意の遠距離戦じゃなくて良いのか!?」

 

北上(距離取って、砲撃が当たったら即戦闘不能だっての)

 

とはいっても、近接格闘は…

 

摩耶「捕まえた」

 

北上「っ…この!」

 

手首を掴まれ、逃げられない…

その状態で摩耶が自身の膝を胸元まで引き…

 

北上(あ、マズ…)

 

摩耶「っしゃあ!!」

 

突き刺すような前蹴りが腹部を捉える

 

北上「か……ごぼっ…!…ぁ…あぐっ…!」

 

気持ち悪い、痛い、気持ち悪い

吐きそうで、息ができない…

 

摩耶「相変わらず弱えな、それでよく摩耶様相手に…っ」

 

砲撃を紙一重でかわされる

 

北上「まだ、終わってないけど…」

 

お腹を抑えて立ち上がる

 

摩耶「上等じゃねえか!!」

 

今度は摩耶が近づき、拳を振り下ろすように…

 

北上(…ここ…!)

 

隠し持っていた警棒を振り上げるように振り抜く

 

…が

 

北上「え」

 

摩耶「はっ…どうした?」

 

拳にぶつかった警棒が、折れて…

 

北上(なんつー馬鹿力…っ)

 

頬にフックがクリーンヒットする

 

北上「ごほっ…がはっ…はっ…」

 

摩耶「まだやるか?まだ何か隠し持ってんのか?なぁオイ?」

 

北上(…は…こんな、ヤバかったっけ……流石に、予想外)

 

北上「でも……流れは、想定内だよ」

 

摩耶「ンだと?」

 

北上「…ふーっ……」

 

口の中が血まみれだ、奥歯も一本外れたかな

 

北上(…バン)

 

主砲を向けて撃つ

 

摩耶「無駄だっての!…っ!?」

 

北上「…主砲はかわされるの、わかってたよ」

 

摩耶の太腿から血が流れ落ちる

 

摩耶「な、なんだこれ…何が刺さって…」

 

摩耶が太腿から“ソレ”を取り外す

 

北上「どう、あたしの奥歯、痛いでしょ」

 

摩耶「…ふざけやがって!」

 

北上「何を隠し持ってる…だっけ?もう隠してなんかないよ、あたしの体、全部が武器だ」

 

摩耶「っ…笑わせんな!」

 

摩耶の砲撃をかわし、撃ち返す

砲撃戦が始まる

 

北上(…大丈夫…もう、ペースは掴んだ、あとはタイミングだ)

 

摩耶「この…クソッ!…まるで生き写しだな…!」

 

北上「っ…?…なんのさ」

 

摩耶「あぁ?!テメェは自分の姉貴のことすら覚えてねぇのか!」

 

北上「姉貴?」

 

思わず脚が止まる、そして直撃をもらう

 

摩耶「ハッ、ザマァねェな!…っ…!」

 

摩耶の顔が引き攣る

 

北上「…あたしに、姉妹は居ないよ」

 

摩耶「お、お前…何言っ…」

 

明らかに動揺してる

ラッキーだと思ったから…砲撃した

1発、2発、3発、全部当たる

 

北上「…弾切れ?まあいいや」

 

歩いて近づき、主砲を振りかぶる

 

摩耶「っ!?」

 

鈍い音が何度か響く

それに水音が混ざり、固いものが砕ける音も混ざる

 

北上「まだやる?やめとく?

終わりたければ武器捨ててね、それまでやめないから」

 

その言葉の通り、躊躇いなく、全力で振り下ろす

 

摩耶「やめ!やめてくれ!」

 

摩耶が武器を捨てたのを見て、もう1発だけ殴り、手を止める

 

北上「…制圧、完了かな」

 

摩耶「…っ…」

 

 

 

 

夕張「…っ…あ…が…!」

 

ネ級「ク…ハハッ…対策?

対策ハシテルサ!オ前ヲズット殺シタカッタ!!」

 

何も聞こえない、目の前の視界が歪む

脳が引き裂かれる

 

夕張「頭、が…!!割れる…!」

 

ツ級「夕張…夕張ガ、悪イノヨ」

 

夕張(ゆ…由良…!生体ユニットに、干渉して…!?)

 

生体ユニットの操作ができなくなったせいで、リ級がニヤニヤと笑いながら近寄ってくる

 

夕張(…っ…これ、は…)

 

両手で頭を抱え、倒れ込む

 

夕張「あ…ぁ…痛い…!あ、あぁぁぁぁっ!!!」

 

パチン

 

ツ級「ッ……!」

 

ネ級「…ア…?オイ…ドウシタ…?」

 

ゆっくりと立ち上がり、辺りを見渡す

 

…由良の姿はもうない

 

夕張「…やっちゃった、やっちゃったなら…仕方ないわよね…!」

 

ネ級「ナ、ナンデ、動ケル!?」

 

夕張「頭の中の生体ユニットを操作して、負荷をかけまくって、ショートさせたのよ

死ぬかもしれないけど、どうせなぶり殺しだったし…危ない賭けだったけど、勝ったみたいね?」

 

ネ級(イカレテル…!)

 

足元の主砲を拾い、即座に発砲する

 

ネ級「グッ!?」

 

夕張「さて…どう料理しようかしら?」

 

ネ級「…チッ!!」

 

ネ級が海に潜る

 

夕張「……逃げた、か…ふ…ふふ」

 

力が抜け、海面に倒れ込む

 

夕張(……ヤバかった…)

 

夕張「けど…これは、勝ち…よね」

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