食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
青葉「…はぐ…」
今日もたこ焼きを頬張りながら現場の位置を調べる
青葉(尼崎…あ、市はここだ、兵庫県尼崎市…私の今の住所…
位置も近いしこれなら徒歩でも行ける…)
徒歩で行ける、つまり、1000円が浮く…
コレは、すごく大きな…
青葉(い、いいよね?自転車を借りなくても…)
自転車代さえ節約できれば…
あ、でも…ドアの向こうの人は、気にしないかな…
青葉(…顔を合わせた事もないのに…いいかな…でも、時間あるし、声をかけるくらいは…)
青葉「あ」
考えてるうちに、着いてしまった
ドアをコンコンコンと3回叩く
「自転車なら好きにして」
いつも通りの声がする
青葉「す、すみません、今日は大丈夫です!」
「…そう」
青葉(…なんだか、凄く、残念そうな声…)
そういえば、この中にいる人は…どうやって生活してるのだろうか?
まさかとは思うが、私からのお金だけで暮らしていたら…?
青葉「…まあ、ないと思うけど…」
…分かってはいるんだけど、と…言いつつも、気になる
青葉(…まあ…うん)
1000円札をいつも通りに突っ込み、立ち去る
「……」
青葉「はぁ〜……今日はいつもより疲れた…」
いつもなら19時には終わるのに、今日は21時…
スーパーも閉店間際、急いで買い物を…
青葉「わ…半額!?」
遅い時間だからだろうか、いつも買うようなお弁当が半額に…
青葉(や、やった…!…あ、普段買えないトンカツ弁当も一つだけ半額…)
345円(税込)の幕の内弁当と623円(税込)のトンカツ弁当…
どちらも半額、ちなみにトンカツ弁当も半額になってるから、普段の幕の内弁当のお値段で買えてしまう…
青葉(…どうしよう、お肉食べたいなぁ…普段買えないし…でも、普段の半分の値段で抑えた方が貯金できる…)
青葉「あ…」
悩んでる間に、隣から伸びた手にトンカツ弁当を攫われ、止むを得ず残りの幕の内弁当を2つ買う
青葉(食べたかったなぁ…お肉…)
公園のベンチに腰を下ろして、お弁当の蓋を開ける
冷たく硬い米にほぐした焼き鮭を乗せて口に運ぶ
青葉(…毎日同じのばっかり…か)
小さい梅干し、黄色い漬物、ひじきと大豆の煮物
焼き鮭、ごぼうとにんじんのきんぴら、そして芋の煮物
青葉(家に電子レンジが欲しいなぁ…あのスーパー、レンジ無いし…留置所のご飯、柔らかくて美味しかったなぁ…)
…誰かが言った
外に出たとしても、艦娘は辛く苦しい思いをすることしかない
留置所の中で大人しくしているだけで温かいご飯が食べられるなら、その方がまだ幸せだ、と…
私もそれには納得していた
安全に過ごせるなら、それ以上を求めなければ、そう思って塀の中にいた
夢はあったけど、それを追いかけても幸せになれないと思ったから
…不意にスマホを取り出し、あの動画を眺める
コレを最初に知ったのは新聞
そして、その日にラジオのニュースで流れた
コレは東北の方で起きた事故で、艦娘がバイク事故を起こしたらしい
その時にバスを止めてまで助けに行った人がいる
…たったそれしか知らないけど、それが私にとっての生きる希望になった
青葉「…はぁ…美味しいもの食べたいなぁ………あれ?」
…なんか、香ばしい匂いが…
青葉「焚き火…?」
公園の端っこで、焚き火…?
しかも、火の上には鍋、周りには串焼きらしきもの…
だけど、火を見ている人は居ない…
青葉「……なんだろう、アレ…」
さっきご飯を食べたばっかりなのに、香ばしい匂いに空腹がそそられる
でも、こんなところで焚き火をしないといけないような人のご飯か…
青葉(…これ以上ここに居たら良くないかも…)
「ねぇ」
青葉「ぴっ!?」
いつの間にか、誰かが…
大井「お腹でも減ってるの?そんなにじっと見て」
青葉「ご、ごめんなさい!すぐに消えます!」
逃げ出そうとしたところ、腕を掴まれ、逃げられない
大井「別に怒ってないわよ、首輪は無いけど、私も艦娘だから、あなたの辛さは分かってる」
青葉「…へ…?」
抵抗をやめ、相手をじっと見る
…この人も、艦娘…
大井「私は大井、よろしく」
青葉「青葉です…」
大井「じゃあ青葉、コレ食べて」
串焼きを差し出される
…黒焦げてるけどこの匂い…間違いない
青葉(エビだ…!!)
青葉「い、いいんですか!?」
大井「良くなかったら渡さないわよ」
青葉「い、いただきます!はぐっ……んー…!!」
美味しい…!
こんなに小さいエビは初めて食べたけど、サクサクしてて凄く美味しい!
大井(…そうよ、もっと食べなさい…!)
青葉「はー…美味しかった…」
大井「喜んでくれて嬉しいわ」
青葉「……大井さんはなんでこんなところでバーベキューなんてしてるんですか?」
大井「宿無し金無しの貧乏人だからよ」
青葉(わ、私よりもヤバい生活してる人居た…)
大井「あ、別に何か要求したりはしないから、そこは安心して
あと、同情も要らないから」
青葉「…辛くないんですか?」
大井「そりゃ辛いけど、私は今生きてるわ、沢山の命の上にね、だから、私は長く…なんて贅沢は言わないけど、もう少し生きたい」
青葉「……」
大井「基本的に、毎日ここにいるわ、たまにならまた食べさせてあげる」
青葉「…わかりました、それじゃ」
大井(でも、バッタを初見で抵抗なく食べるなんて珍しい子よね)
青葉(あのエビ公園の川で取れたのかな…ちょっと汚かったりして…まあ、でも、新しいお友達もできて、よかった)