食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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たこ焼き

龍驤「ほー…そらええ事したな、いや、言わんかったウチが良くなかったんやけども」

 

青葉「はあ…」

 

…昨日の自転車の件は、どうやらお金を入れるのが正解だったらしい

 

青葉(…中にいるのは、どんな人なんだろう?)

 

龍驤「あー、あと悪いんやけどな、今日は現場ないねん」

 

青葉「……へ……へぇっ!?」

 

仕事が、ない…?

 

龍驤「そんな白けたツラせんといてな、やから悪いと思ってちゃ〜んと、別の仕事考えたんやで?」

 

青葉「別の仕事…?」

 

龍驤「昼からここで働いてくれん?」

 

青葉「こ、ここでですか!?私たこ焼きの焼き方なんて…」

 

龍驤「ちゃんと教えるから、安心し」

 

青葉「は、はい…」

 

龍驤「ほな、昼まで遊んでき、11時ごろには来てや?」

 

青葉「わかりました」

 

青葉(って言っても、遊ぶ…何もする事もないし…)

 

青葉「…あ、そうだ、自転車の人」

 

 

 

 

いつも通り、アパートの前で扉を3回叩く

 

「…自転車?今日は乗るの?」

 

青葉「あ、いえ…その…今日は遠出しないので…」

 

「……そう」

 

扉の隙間から、お札を捩じ込み、立ち去る

 

「…変な人、よねぇ…」

 

 

 

青葉(…で、公園…と)

 

そういえば、大井さんは宿すらないと言っていたけど

果たして何処で寝泊まりを…

 

青葉「あ、花…」

 

一面緑の原っぱの中に、一輪の黄色い花…

 

青葉(…うわ)

 

そして、その先に、地面に這いつくばってる人影…

 

青葉(もしかして……)

 

大井「シロツメクサがこんなに手に入るなんて、やっぱりここはアタリね…これとあとはザリガニでも…」

 

青葉(やっぱり…)

 

…声をかけるのは、少し…

なんというか…(はばか)られる

 

青葉(あー、そろそろ時間かもしれない、戻らなきゃー)

 

大井(…今、誰かいたような…)

 

 

 

 

青葉「戻りました!」

 

龍驤「おお、30分前に来るとは…早すぎるけどまあ、悪くない心掛けやな、次からは5分前にしとき、迷惑がる人もおるからな

ほな、早速やけど、教えたるわ」

 

青葉「お願いします!」

 

 

 

 

龍驤「ほなまずは、熱くなった鉄板に油を塗る、百均に売ってるような専用の道具で全部の穴に油をつけて、次は上のプレートにも塗る

ほんで、容器に入れた生地を流し入れる」

 

青葉「は、はい」

 

ジュージューと音が鳴り、出汁のいい香りがふわっと広がる…

 

青葉(美味しそう…)

 

龍驤「で、先ずはタコ、天かす、紅生姜、あとネギやな」

 

具材を渡される

 

青葉(あれ、タコ、思ってたより小さい…)

 

龍驤「不景気やねん、なんか言いたいことあるか?」

 

青葉「いいえ!!…ええと…タコ、天かす、紅生姜、ネギ…」

 

龍驤「ええか、タコとネギは穴の位置に一つずつ落として、天かすと紅生姜は鉄板全体に広げるんや」

 

青葉(穴の位置…?…生地で見えない…)

 

龍驤「わからんが、まあ、やってれば体で覚えるから、とりあえずやってみ?」

 

言われた通り、穴の上であろう位置にタコとネギを落とす

 

龍驤「アカン、もうちょい左やなぁ…そっちは左に行き過ぎ、それは二つ入っとる」

 

青葉「ひえぇぇ…」

 

龍驤「落ち着き、穴の数は何個かよう考えて、この鉄板一つで60個焼ける、この鉄板60等分すればわかるわ」

 

青葉(あ、一列10個で…)

 

龍驤「そうそう、その調子、それで次は天かす、コレはたくさん入れたり、その方が美味いからな

あと紅生姜はアクセントやから、汁気を軽く手で切って、振りかけるように…」

 

青葉「はい…これで」

 

龍驤「そうや、そんじゃ、ひっくり返してこか」

 

青葉「ええと…この、道具で…」

 

龍驤「キリって言うねん、まず、それで穴の周りをなぞって、何処が穴か分かりやすくする

次に、生地の外側からキリを入れて、一周させて鉄板からはなしてからひっくり返す」

 

青葉「…えいっ…あ、潰れちゃった…?」

 

龍驤「まあ、最初はムズいやろうから、ゆっくりやってええよ」

 

キリを外側から入れ込み、剥がして…

 

青葉(あ、破けた…)

 

龍驤「油の塗り方が足りんかったな」

 

今度は剥がれたけど…

 

青葉「半分に割れて…」

 

龍驤「力が強すぎや」

 

力を入れ過ぎず、綺麗に剥がして…

 

青葉「…よし、できた」

 

龍驤「そうや、それをあと56個やるんやで」

 

青葉(…多い…)

 

とは言っても、何度か失敗しながらも、大体のコツは掴めてきて…

 

龍驤「そうそう、うまいうまい、そんなら、次は鉄板に残った生地を穴に詰めるんや」

 

青葉「…この、外側の生地ですか?」

 

龍驤「もともとの生地だけじゃ丸くするには量が足りへんから、その生地でかさまさしたるんや

上半分持ち上げて、下に入れ込み、そしたらふわふわで丸いたこ焼きになる」

 

青葉「わけりました、ええと…」

 

龍驤「で、そのあとはしばらく待ちの時間や」

 

青葉(…焦げる前に…!)

 

 

 

龍驤「おし、ええやろ、完成や」

 

青葉「や、やった…」

 

なかなか大変だったけど、60個ものたこ焼きができた…

 

龍驤「青葉、ひとつ味見してみ?」

 

青葉「え、いいんですか?売り物なのに…」

 

龍驤「まあ、食いや」

 

青葉「…はむ……あれ…?」

 

…なんだか、いつもより…ソースがかかってないせい…?

 

龍驤「コレは売り物にはならん、火が弱いせいで時間かかり過ぎたからアカンねん」

 

青葉「な、なんでですか!?」

 

龍驤「出汁の香りが飛ぶんや、蒸気と一緒にな

最初に生地流した時、ええ匂いしたやろ?ああやって飛んでってまう、やから時間はかけたあかん、もっと強い火で手早く焼かなあかん」

 

龍驤さんがたこ焼きを全て取り除く

 

龍驤「青葉は中火で焼いたったけど、ウチが普段やってる火力は…こんくらいや」

 

青葉(暑っ…!?)

 

龍驤「この熱さやったら蒸発して匂いが消える前に焦げ付く、焦げる前に焼き上げぇや!」

 

青葉「は、はい!」

 

龍驤「ええ返事や、青葉のええとこはちゃんと返事するとこやな!」

 

青葉「ありがとうございます…で、では…!」

 

さっさと油を塗る

 

龍驤「そうや、そんくらいたっぷり塗りや、そんで生地を手早く流す」

 

青葉(具材を入れて、天かすと紅生姜を振りかけて…キリでなぞる)

 

龍驤「いい手際やな、でも、今回は火が強いけど青葉が早すぎるわ」

 

青葉「え?」

 

龍驤「今はまだ表面が焼けてへんねん、やから、生地の外側をしっかり焼くまではひっくり返したらあかん、崩れてまうからな」

 

青葉「はい!」

 

龍驤「……よし、端がええ色になってきた!」

 

一つずつひっくり返し始める

 

龍驤「失敗してもええわ、ドンドンやり!」

 

青葉(よし…よし…!)

 

 

 

 

青葉「できた!」

 

龍驤「おーし、じゃあ焼けたやつは隣の鉄板に移して次や」

 

青葉「隣?」

 

龍驤「弱火で保温するねん、すぐに売れるようにすんねん

たくさん作ってたくさん売る、じゃなきゃ利益出せんで!」

 

青葉「は、はい!」

 

龍驤「っと、わすれとった」

 

首にタオルを巻かれる

 

龍驤「コレ巻いとけばなんも思われんやろ」

 

青葉(首輪を隠すために…?)

 

龍驤「さ、気張りぃや、青葉!」

 

青葉「わかりました!」

 

 

 

 

龍驤「2時か…一旦休憩やな」

 

青葉「お、お疲れ様です……疲れた…」

 

龍驤「よう頑張ったで!ご褒美用意したから、食べて休憩しとき!」

 

青葉「ご褒美…?」

 

 

 

青葉(…うどんに、たこ焼きが…入ってる…)

 

たこ焼きうどんに、私の作った大量のたこ焼き…

つまりコレが(まかな)いというわけか

 

青葉「いただきます…ずるる……おいしい!」

 

美味しいかけうどん…

だけど、たこ焼きの香ばしい香りもして…

 

青葉(そういえば関西ではたこ焼きうどんポピュラーなんだっけ…はむ)

 

青葉「あ、あれ!?美味しい…!」

 

このたこ焼きも私が作ったものだと思ったのに…

 

青葉(うどんの出汁に浸かってるから、美味しいのかな…)

 

皿に置かれた失敗作を口に含む

やっぱり同じものだ、香りを外から足して、補っている

 

青葉(…足りない物を、補う…か)

 

龍驤「青葉ぁ!ちょっち忙しいになって来た!手伝ってや!」

 

青葉「は、はい!!」

 

 

 

 

青葉「お疲れ様でした!」

 

龍驤「おー、お疲れ!青葉も一日であそこまでできるんやったら休みたい日は代わってもらうわ!」

 

青葉「えっ」

 

龍驤「ウソやウソ!でも気に入ったわ、今度からたまにウチで働いてもらうで?」

 

青葉「…わかりました!」

 

龍驤「おっしゃ、今日の給料、特別に大盤振る舞いや!」

 

青葉(さ、3,000円も…!)

 

龍驤「ところで、それ…ほんまに持ってくんか?」

 

青葉「はい、どうしても渡したくて」

 

 

 

 

 

青葉「あ、いた!」

 

公園のベンチに座っていたのは…

 

大井「ん…?ああ」

 

大井さんに駆け寄り、ビニール袋を差し出す

 

青葉「コレ!よかったら食べてください、この間のお礼です!」

 

大井「お礼?…別に良いのに……あら、たこ焼き?」

 

青葉「はい、私が焼いたんです」

 

大井(…ま、食べても問題ないか)

 

大井「ありがとう、いただくわ」

 

青葉「ところで…大井さんは、なんでこんなところで暮らしてるんですか?」

 

大井「…ま、別に隠してないから良いか…

青葉、私はお金もないし、住所も持ってないけど、それは今だけの話よ」

 

青葉「へ…?」

 

大井「基本的には稼いで、贅沢してるの、この公園で暮らしてるのは、散財して、お金が今はないってだけ」

 

青葉(昨日毎日いるって言ってた様な…

いや、同情されたくないとも言ってた…)

 

大井「私は今、好きでこうしてるの

食べてみたい物を食べて、試してみたいことを試してる

だから、私は今、幸せなの」

 

青葉「…幸せ…」

 

大井「そう、わかった?」

 

青葉「はい、大井さんが幸せなら邪魔はしません、すみませんでした」

 

大井「…そう、わかったなら良いんだけど」

 

青葉「それじゃあ、失礼します!」

 

大井「はいはい」

 

青葉「あ、あと、改めてこの前のエビの串焼き美味しかったです!それでは!」

 

大井「……え?…アレ、バッタ…おーい……悪い事した気分ね」

 

 

 

 

自分の家の玄関に飛び込み、荷物を投げ出しベッドに飛び込む

 

青葉「ただいま!!」

 

青葉(幸せ…!大井さんにとってはあれが幸せなんだ…!凄い、艦娘でもほんとに幸せに生きられるんだ!)

 

喜びが抑えきれない、足をバタバタと暴れさせながら、溢れる感情を発散する

 

青葉「…よし!私も幸せになるぞ…!」

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