食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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六食目

…北上様だよ、多分…あたしって囮に使われたんだろうね

完全にしてやられたって感じでさ、すごく腹が立ってるよ

 

…帰りたいな

 

北上「…んがっ…?…寝ちゃってたか……変な夢、見た気がする」

 

…いつの間にか陸地見えてきた

死体の番人も終わりか…

 

北上(…いや、待ってよ)

 

アイツ…最後に加賀って名乗ったアイツは本当に海賊なの?

仲間の死体を取り返しにきた?…海賊やるくらい困窮してるのに?

わからない話じゃないけど、タンカーやら漁船やら、色々襲ってるなら…何か変なんじゃ

 

そもそも、なんで艤装をつけてないのかも…

 

北上(…加賀達って海賊じゃなかったんじゃ…?)

 

…じゃああたし達と同じように隠れて暮らしてたって事?

海賊の討伐が仕事の内容ってわけじゃない

だけど艦娘の存在を危ぶまれる理由になって、あんな艦娘を無力化する兵器まで作られて

 

北上(止めなきゃダメだ…絶対に)

 

考え事をしてる間に、船は目的地の港へとついた

 

北上(…ってか、ここどこ?…大淀、迎えは飛行機って言ってたし…まさか日本じゃない?)

 

北上「……どうしよ、このまま黙って待ってるわけにも…」

 

大淀「長旅お疲れ様でした」

 

北上「…先回りできるならコレ意味ないじゃん」

 

大淀「このコンテナ船で運ぶのに意味があったんですよ、さあ、そのコンテナから降りてください」

 

護衛対象から飛び降りる

 

大淀「中身の確認をします」

 

北上「えっ」

 

…死体だらけのコンテナを…ここで開ける?

 

大淀は止める間もなくコンテナの扉を開け放つ

思わず目を覆ってしまったけど…腐臭とか、死臭は来なかった

 

北上「……?…え?」

 

大淀「どうかしましたか?…中に何があると思っていたんですか?」

 

…コンテナの中身は、これは…

大量の、ケース?

 

北上「なにそれ…」

 

大淀「深海棲艦がもたらした、裏金と言うやつです」

 

北上「……資金洗浄(マネーロンダリング)…!じゃ、じゃあ…あたしは、そんなのの片棒を…!?」

 

…嘘だ

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ

 

大淀「さて、報酬がまだでしたね?これだけあるんです、一つ持って行っても構いませんよ」

 

北上「…要らないよ、そんなモノ…」

 

…大淀は、あたしのプライドを徹底的に砕くつもりなんだ?

深海棲艦と人間の汚い関係を助けさせるなんて

なんでこんな真似…

 

北上「さっさと帰らせて…もう、ここに居たくない」

 

大淀「おや…気分が悪そうですね」

 

北上「最悪だよ」

 

 

 

 

 

…正直、帰路のことは何も覚えてない

ただひたするぐるぐるしてた、頭の中ぐちゃぐちゃだった

駆逐達に、阿武隈に、合わせる顔がない

どうしてやれば良かったんだろう、加賀達は本当にあの中身が死体だと思ってたのか?

 

…もう、なにもわからない…

 

北上「……あ…」

 

…加賀にもらったカロリーメイト…踏み潰しちゃって…すっかり粉々だ

そういや大淀は2日したらまた来るとか言ってたな

報酬を渡したいとか…

 

北上(…どうしよう…本当に…疲れた)

 

 

 

 

北上「…ただいま…」

 

…返事がないけど、今は救われた気分だ

どんな顔をして会えば良いのかわからない

 

私は加賀達を殺したようなもんだ

でも、加賀達も金目当てだったのかもしれない

 

北上「……ダメだ、暗いことばっかし考えちゃう…もう、寝よう…」

 

…また、変な夢を見たんだ

その夢の中では、あたしは艦娘じゃなくて、深海棲艦なんか居なくて

普通に生きてた夢、人間として、生きて、喜んで、悲しんで…美味しい物も食べたけど、美味しいけど味がわからなかった

…本当に、変な夢…

 

北上「……むにゃ……ん…?」

 

…いつの間にか夜だ、真っ暗だ

みんな、帰ってきてるんだろうか?

…お腹が空いた…

 

北上「…あれ」

 

目の前にお皿があった

暗くてよく見えないけど、何か乗ってる

 

月や星の微かな灯りを頼りに、いつもの場所にある枯れ木とライターを手に取り火をつけ、灯りを確保する

そして皿の前に戻る

 

北上「…お肉…?」

 

焼いた、何?骨付きの…これ、何?

 

阿武隈「あー!やっと起きたんですか!?」

 

北上「阿武隈…」

 

阿武隈「おかえりなさい、北上さん!見てくださいよそれ!

頑張ってカエル捕まえたんです!」

 

北上「カエル…?……阿武隈が…?」

 

阿武隈「だって…北上さん、私達のためにお仕事に行ったんですよね…?

だからその…少しでも…」

 

北上「……ありがとう、いただきます」

 

…美味しい

炭の味しかしないけど、お肉だ

 

北上「焦がしすぎだね」

 

阿武隈「あ、アハハ…ごめんなさい」

 

なんでだろ、苦くて、固くて、もうお肉の味もわかんなくて…

絶対美味しくないのに…

 

北上「いや、このくらいのが好きかも…うん、ウェルダンってやつ?美味しいよ」

 

阿武隈「…北上さん…」

 

…やっぱ、こっちの方が私には合うんだろうな

あんな張り詰めた状況で…考え続けるより、目の前の幸せに身を委ねていたい

 

北上「…ごちそうさまでした」

 

お腹が膨れたわけじゃないけど、胸はいっぱい

 

北上「暁達はまだ起きてる?」

 

阿武隈「あー…もう寝ちゃいました」

 

北上「じゃあ、明日の朝ごはんは…じゃん」

 

阿武隈「わ…カロリーメイト!?……あれ、潰れてますけど…」

 

北上「まあまあ、それみんなでわけよ、あと3本入ってるからさ」

 

阿武隈「あ!1人で一本食べましたね!?」

 

北上「にへへ…」

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