食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
夕張「さて、いよいよ演習かぁ…」
北上「どうする?本気でやってみる?元々ただの予想でしかないし」
川内「でも3人で決めたでしょ?この分の悪い賭けに乗るって」
夕張「みんな怒るかなぁ… バレたらそりゃ怒るよねぇ…」
川内「賭けに勝ってもホントに勝ったか負けたか分からないのが怖いとこだよね」
そう、私たちがこの賭けに勝っても負けても、おそらく手に入るのは現状維持…
しかも、運悪く向こうの求める基準を下回れば…クビ…かもしれない
北上「どうする?…夕張さんが決めてもいいよ」
夕張「冗談…って言いたいけど、みんな決める気ないみたいだし…」
こういう時最年長は損をする
だけど、私はもう、決めてる
夕張「上手くやれば、少なくとも損はしない…生きてれば丸儲け…良いわよね!?」
川内「はいはい」
北上「リーダーだねぇ…」
夕張(おかしい、リーダーは北上だったはず…
いつの間に私にすり替えられてるの?
…まあ、責任を負うのが年上の役目…か)
まあ、もう遅いけど
夕張「さて、じゃあ、負けますか!」
思いっきりの負け戦
良くて現状維持、悪ければ…お仕事は無くなる
夕張(大丈夫、これはチームとしての練度を上げるための訓練だから、問題ない、動きの確認をするだけ)
夕張「もう一度装備品の再確認、それと─」
夕張「さて、神通ちゃん、阿武隈ちゃん、2人ともイケる!?」
神通(こくり)
阿武隈「オッケーです!」
北上「んじゃ、やりますか」
北上が拳銃の中に弾をこめる
北上(ペイント弾か、ただのサバゲーだな、コレじゃ)
川内(サマになってるなぁ、こうして見ると殺し屋みたい)
北上「今失礼なこと考えたでしょ」
川内「いやー、流石エスパー」
夕張「遊んでないで、開始時刻5分前、攻め入る用意は?」
川内「モチ」
北上「オッケー」
神通ちゃんと川内が煙玉を握り、突撃の用意
阿武隈ちゃんは後方に位置取り援護
北上と私が中間からメインの撃破を担う
北上「…信号弾が上がった」
夕張「開始!進んで!」
川内と神通ちゃんが2人して敵のいそうな位置に煙玉を投げまくる、10秒すれば一部屋煙まみれでまともな視界が取れない程の量の煙が出る、私特製の煙玉…
そして、視界が悪くなったところに…
川内「神通!」
神通「!」
2人が突っ込む
適当に撃ってくる弾が当たるほど、2人とも迂闊じゃない
近づいて確実に仕留める、煙から出てきたのは私達が…
夕張「2人目!」
北上「いいねぇ、出てくる奴みんな倒しちゃえ」
阿武隈(…私、何すれば…?)
川内「ふう、ひと段落?」
北上「呉のやり方、極悪だけどコレを海の上でやるの?それはそれで弱くない?」
川内「ちゃんと上手く行くように手を変えてるんだよ」
夕張「今で10人くらいか、向こうは50人くらいで防衛してるみたいだし、2割削れた?」
北上「上々じゃん、次は…と?」
足元に棒が転がって…
川内(…発煙筒…って)
夕張「ごほっ!?な、何この煙の量…!」
北上「向こうも煙幕?」
神通(視界が悪くて不利なのは向こうも…)
北上「……あー、マズイ、ガチじゃん、相手」
川内「っ!」
夕張(撃ってきてる!しかも正確に…)
北上「サーモカメラって奴?…煙越しに見えんの?あれって…」
川内「そんなのどうでもいいって!神通、行くよ!」
夕張(…でも、この追い込まれよう…今なら自然に負けられる…)
北上が正面を向きながら背後に銃を向け、阿武隈ちゃんを撃つ
阿武隈「あぅっ!?やられました!」
夕張(…北上もここで終わらせる気だ…
っていうか、見えてないはずなのに良く当たる…)
川内「そっちか!」
夕張(そして向こうは良く当たらないなぁ…)
北上(っと…危ない、あ…見えた)
バシュッ
神通「っ!」
川内(…あ、忘れてた!)
北上「ヒットー、当たった当たった」
夕張「あ、私も」
川内「えっあたしだけ!?あ!当たった!被弾しましたー!」
夕張(…それにしても、これは…)
夕張「はあ、やっと解放された」
北上「掃除押し付けてくるとはね、でもまあ、正解だったんじゃない?」
川内「そう思う?」
夕張「勿論!だってわざわざ最新機材投入した上でこっちの戦術コピーして発展型で仕掛けてきてるのよ?
ちゃーんと、この演習が重要だって認識してる証拠」
北上「いざとなったら簡単に制圧できる証明、か」
川内(…そう考えると…嫌な気分だね)
夕張「でも、これで…合ってるのよね?私達、ここでこうやって生きて…いい、のよね?」
北上「なんにしても今は他に選択肢がないよ」
川内「だね」
夕張「……北上の言う通り、詰め将棋ね」
川内「え?」
夕張「このままじゃ飼い殺しよ、今日を生きるのに精一杯で、明日明後日を見る余裕ができた途端…
先の見えない未来が不安になってきた」
北上「今日を生きるのがいっぱいいっぱいの時は、それがしんどかったのにね」
川内「…ま、先行きが不安なのはずっと一緒だよ」
…携帯のバイブ音が響く
北上「あれ、誰だろ、この番号に電話してくるなんて…」
夕張「至急品のスマホでしょ?加賀か大淀じゃない?」
北上「かな?…もしもし?……あれ、良くこの番号知って……え?…何?……何それ、どう言うこと?」
北上の表情が険しくなる
川内(誰?)
夕張「…何かあった?」
北上はこちらに手のひらを向け、少し待ってくれと言わんばかりに電話に集中する
北上「…うん、うん、今どこ?……わからない?近くには何が……」
電話口から、小さく聞こえる声
それは、おそらく…悲鳴
北上「春雨?…春雨!春雨!返事して!……なんで…!」
春雨ちゃんって言えば、あの山雲ちゃん達と畑を営んで暮らしてる…?
夕張「何があったの」
北上「…襲われたって、言ってた…みんなバラバラに逃げたけど、助かったかは、わからないって…」
夕張「何、それ…なんで!?誰に!」
北上「…わからない、あたしが、聞きたいよ…!!」
北上が泣きそうな声で叫ぶ
夕張「…どうなってるの、何が起きてるの?」
川内「…先の事なんて、考える余裕はなさそうだね」