食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
未だ拘束を解いてもらえてない北上様だよ
まあ、そろそろキツイかな、これも…
北上(動きたいなぁ……ん?この匂いは…)
川内「ご飯持ってきたよ」
川内が扉を開けて入ってくる
北上「ねえ、ここどこなの?」
川内「司令部の一室借りてるんだ」
北上(…じゃあ、この辺りは人気がない、となると匂いの元は…川内しかないか…)
北上「はぁ……ねえ、川内」
川内「ん?」
北上「タバコ、吸ってるでしょ」
川内(げ、バレた…)
北上「禁煙はどうしたのさ」
川内「いやー…その、仕事が始まって、今より余裕できるんなら、良いのかなって…」
北上(…ったく)
北上「……ところでさ、これ解いてくれない?」
川内「それは無理」
北上「もうバカな考えは起こさないとしても?」
川内「夕張さんが説得したって話?
あれアタシ信じてないんだ、だって北上ってそういう所狡猾そうだし」
北上(……)
北上「仲間の骨を拾いに行くのが、そんなに悪い事?」
川内「良いや、むしろアタシは好きだね、そういう奴の方が好感持てるよ」
北上「でも出してくれないんだ?」
川内「出しても良い、でも…どこだっけ、山形?…横須賀から?無理じゃない?」
北上「……」
川内「法に触れる手段を使わないと、今の北上には到底辿り着けない場所だよね?」
北上「だったら何?」
川内「…ほんとに何でもやるつもりなんだ」
川内が目を丸くする
北上「だとしたら、なんなのさ」
川内「夕張さんに嘘ついて、みんなをほっぽり出して行く?そんなの…おかしいんじゃない?ねえ、北上、考え直しなよ」
北上(……待って)
北上「盗聴器あんの?どこ…椅子の下?」
川内「…あー、正解、よくわかるね」
北上「川内はエスパーじゃないから、あたしの心なんて誰かにわかってたまるか」
川内「…はあ…その目、敵を見る目だよ……アタシらに向ける目なの?それは」
北上「……」
川内「これ以上は不味いかな、しゃーない」
川内が両手の拘束を解く
北上「…いいの?」
川内「アタシ的には、北上を無理に引き留めても仕方ないし…もしここで、心の底からお互いに納得しなかったら…多分、アタシ達はバラバラになるよ
それは避けたいからね」
…拘束が、全部外れて…
川内「流石に素手でやり合うつもりもないでしょ?」
北上「………まあね」
川内(うっそでしょ…)
川内「はあ……あと、はいこれ」
封筒を渡される
北上(…お札…?…しかも、2万も…!?)
川内「演習の分の給料ね、コレで行ってきなよ、帰りは遅くても良いからさ」
北上「……本当に、良いの?」
川内「骨を拾うでも、祈るでも、花を手向けるでも何でも良い、でも死体は増やさないで」
北上「わかった」
夕張「やっぱ物分かりが良いワケなかったかぁ…」
川内「そりゃね」
加賀「…どうするの?他の子たちは不安がるわよ」
夕張「それは私が何とかする、とりあえずは、北上を…勝手に、無断で、何の相談もなく野に放った川内の処罰」
川内「えー?むしろ感謝してよ、あのままだと北上が死ぬかアタシらが死ぬかだよ、ちゃんと考えた上で解放してるんだからさぁ」
加賀「どういう思考回路なのか聞かせて欲しいモノだけど」
川内「まず、事件から二日、コレだけ経てば犯人は現地にはいないよ、捕まってるか逃げてるじゃん?
で、言っちゃ悪いけど被害にあった子も確保されてるか死んでるか、北上にできるのは…ほんとに、骨を拾うくらいだよ」
夕張「…そっか、今なら、何も起きない可能性が高いから…」
川内「これ以上北上を縛りつけてたら?警察が死体を引き取っても身元引受人なんて居ないよ?
…みんな、葬式もあげてもらえずに、忘れられるんだよ?」
加賀「……そうね、その辛さは、痛いほどよく知ってる…」
夕張(加賀も、北上に出会った時、仲間の遺体を追いかけてたんだっけ)
夕張「警察に殴り込まなきゃ良いけど」
川内「今なら、何かは拾えるかもしれない…だから、今送り出したんだよ」
加賀「……考えがあるなら、いいわ」
川内「北上も、折り合いをつけて帰ってくるよ」
夕張「だといいけど」
「…っ…あ…ぐ…ぅ…!」
何が起きたんだろう?
車が、ひっくり返って…体が、痛くて…
何とか、車の下から這い出す…も
リ級「キキキッ!」
「ひっ!?」
…まだ、追ってきていた
私一人を、食べるために?
そんな、まさか…
リ級「逃ゲラレタト思ッタカ?艦娘!」
深海棲艦の手から生えた、黒い怪物が大口を開けて迫る
目を閉じ、歯を食いしばり、逃れられない死を、待つしか…
リ級「ソウダ!恐レロ!死ヌノヲ怖ガレ!!…ッ!」
金属音が響く
「っ…?」
…誰かが、私を庇ってくれて…
「オイオイオイ、恐怖だと?恐がるのはお前だ深海ゾンビ、オレが相手してやるよ!」
リ級「…貴様モ艦娘カ」
天龍「そうよ!オレこそ泣く子も黙る天龍様よ!」
名乗りをあげたかと思ったら刀を振り上げて飛びかかり、深海棲艦の艤装を切り裂く
リ級「ッ!!」
天龍「その引き攣った面!怯えたなァ!?」
怒涛の攻め、単純に振り下ろされる刀を艤装を盾にする様に深海棲艦が受け続ける
リ級(ウ、動ケナイ!…崩レル!)
体勢を崩した所に更に何度も何度も刀が振り下ろされる
天龍「ッラア!!オラオラオラ!どうしたぁ!!」
振り下ろされる刀が深海棲艦の艤装をどんどん削る
リ級「クッ…ウ…!?…シ、死ヌノカ…!?チ、違ウ!コンナ!」
(す、凄い…)
天龍「っしゃあ!!!」
リ級「ヒ─」
深海棲艦の頭が、刀で割られる
天龍「…ふんっ、相変わらず…大した事ねえな
リ級「…ガ……カン、娘ナ、ラ…食べ……」
天龍「おい、お前、大丈夫か?…怪我は?立てるか?」
「…はい…」
手を借りて、立ち上がる
天龍「首輪…艦娘か?お前も…名前は」
「……わか、らなくて…」
天龍「わからない?どういう意味だよ」
「気がついたら、追われてて…」
天龍「…待て、首輪…確か何かしら……うわ、焼けこげててIDが見えねぇ…
あ、これ名前か…?……だめだ、前半が削れてる…雲?」
「…くも」
天龍「なんかわからないか?…雲…艦娘…なんだ?
…あー…こっちローマ字がある……ヤマ、クモ…山雲か?お前の名前は」
山雲「…見えません…」
天龍「じゃあとりあえず良いや、山雲よ、お前、帰るとこは?」
山雲「……」
天龍「だよな、とりあえず、来い…多分、そろそろ警察が来ちまう」
山雲「は、はい」
天龍「…あー、流石に家に入れるわけには…悪いけど、庭の納屋に入っててくれるか?
…オレ、なんか食い物持ってくる、後救急箱と着替えか…」
山雲「いえ…そんな事まで…」
天龍「気にすんなよ、オレが好きでやってんだから」
言われるがままに納屋に入る
…すごく大きい…ここだけで住めるくらいの広さが…
天龍「おーい、山雲」
山雲「は、はい」
天龍「カップ麺とおにぎりしかなかったけど、良いよな?」
二人分のカップ麺とおにぎりが置かれる
山雲「ありがとうございます…」
天龍「ほら、できるまでに…傷口見せて」
山雲「っ…いたっ」
消毒液が染みる
天龍「ちょっとの我慢だからな…よしよし、よーし、よく我慢できた
ほら、ガーゼと包帯で…よし、よく我慢したな」
山雲「……あの…」
天龍「ん?」
山雲「ここは、どこですか?」
天龍「岐阜だよ、南の方だけどな」
山雲「岐阜……」
天龍「さて、ラーメンもそろそろ良いかな…ほら、食べよう、いただきますだ」
山雲「いただきます…」
ラーメンをすする
山雲(…あったかい…あったかいご飯だ…)
お腹が空いていたせいか、ついつい箸が止まらなくて、気がついたら食べ終わってしまった…
天龍「よっぽど食べてなかったんだな」
山雲「……あれ」
お腹がいっぱいになって安心したせいか、涙が溢れてくる
天龍「…辛かったな、苦労したんだろ、何もわからないまま追われてたのか?
…もう大丈夫、もう怖くないから」
山雲「っ…うぅ…!…なんで、なんで…私…!」
天龍「大丈夫、よしよし……好きなだけ泣いていい、そばにいるから」