食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
天龍「山雲ー」
山雲「はい」
天龍「ほら、朝食…菓子パンしかないけど」
山雲「ありがとうございます」
天龍「…なんか思い出せたか?」
山雲「少しだけ…私、元々大湊警備府に居たんです」
天龍「大湊?…聞いた事無いなぁ……それどこ」
山雲「青森の端っこの方です」
天龍(遠っ!?)
山雲「…私…可能なら、帰りたくて…」
天龍「帰るところがあるなら、そりゃ帰るべきだし…帰したいけど…青森かぁ…お小遣いがなぁ…」
山雲「お小遣い…?」
天龍「……実はさ、元々オレは佐世保で働いてたんだけど、親元に引き取られちゃってさ
おかげで金銭面も何も自由はかなり無いわけ」
山雲「なるほど…」
天龍「いまのこんな性格も、家ん中ではてーんでダメ、喋り方も“私”とか、“ですます”に直せって怒られるんだ、やってらんねーよな」
山雲「…嫌なのに、居るんですか?」
天龍「……母親だって人がな、壊れちまってんだ、どうか、“元の娘”として振る舞ってくれ
数年して、普通に自立する年になれば、干渉はしない…って言われたんだけど…ま、無理だろうな」
山雲「……」
天龍「…でも、ここは住み易いところで、平和だ、だから…まあ、戦いのない日々ってのも悪くないしよ…
まあ、昨日はとんでもない事が起きたけど」
山雲「…ごめんなさい」
天龍「山雲は悪くないって…たく、深海棲艦もこんなとこまで来なくて良いのになぁ…
まあ、近くに下呂温泉ってあるんだけど、そこに深海棲艦が浸かってるの見た時は入る気失せちったよ」
山雲「何で温泉に…」
天龍「意思疎通できるタイプだったから聞いたら慰安旅行だと、ふざけてやがるよ、全く…」
山雲「…旅行…?……そう、だ…私達も…」
天龍「旅行行こうとしてたって?下呂温泉に?」
首を振る
山雲「お金が貯まったら、会いに行きたかった人が居たんです…なんだっけ…なんだっけ…」
天龍「…ゆっくり思い出せば良い」
山雲「……はい」
北上「…こんなのってアリ?」
…遠路はるばる来たのに、コレは、酷い…
北上(この距離から見てもわかる、ただ焼かれたって感じじゃない…爆発の後っていうか…まるで……)
…立ち入り禁止のテープのせいで、これ以上近づけないけど…
でも、ここで何があったんだろう
なにがあって、こんな…
北上(……いや、わかった、本当にここを、誰かが砲撃したんだ…でも、何のために?)
…辺りを練り歩く
北上(…磯臭い匂い…深海棲艦の、匂い…?こんな、山に囲まれた村で?)
北上「!」
…深海棲艦の姿が、目に映る
誰だ?…なんで、なんで?
北上「っ…頭が…!いた、い…!」
…なんで、こんな…
頭が割れそうだ…何かわからないけど、何か…
北上「誰…!誰なの…!?」
…覚えてるのに…
目の前にいるのが、誰かわからない
“誰か”がくるりと身を翻して逃げ始める
北上「っ…!待て!」
誰か、確かめなきゃ
何で覚えてるのに、思い出せないのか
わからない事が、知りたいのに…!
北上「…消え、た…?……アレは、誰…」
いつの間にか、煙のように…消えていた
北上「……だめだ、なーんにもわからない…何の情報もない、後ついでにお金もない」
片道で大半を使い切ったし、この辺りは畑と民家ばかり
街灯もないから夜は暗いし…
北上(……あ、ここは入れそう)
警官も今はいない
焼かれた畑に入り、腰を下ろす
北上「…キャベツかぁ…美味しそうだ」
一つもぎ、そのままかじる
北上(…甘くて、よくできてるよ…美味しく育ってる)
一枚剥ぎ、むしゃむしゃとかじる
また一枚、もう一枚
北上(…ゔぇっ…芋虫……)
北上「…ふぅ…美味しかった……ん?」
…また、磯臭い匂い…
さっきの深海棲艦…いや
北上(ちょっと違う、気配が、強い…)
息を殺し、辺りを探る…
北上(…間違いない、居る…深海棲艦だ、それも…一匹じゃ…)
北上「っ!」
慌てて身を屈める
すぐそばに着弾し、土があたりに舞う
北上(
北上「先にやってきたのはそっちだからね…!」
飛び出し、一気に詰め寄る
砲撃の瞬間、一瞬だけ周囲が明るくなる
北上(ヒトガタ三匹!!)
懐に滑り込んで、一匹の主砲を下から押し上げ、外させる
北上「捉えた…!」
そして腹にパンチ1発、うずくまったところを盾にして、他の深海棲艦からの砲撃を受ける…が
北上(っ…!1発でミンチって…戦艦級?!)
盾にした深海棲艦が跡形もなく吹き飛び、あたしもダメージを負った…
でも、死体の分の艤装は、もらった
北上「っやぁ!!」
主砲を顔面に押し付け、ぶっ放す
そして、倒れていく身体を掴み、艤装のコントロールを奪って
北上(こいつは殺せない!)
4門の手法を同時にコントロールして四肢を撃ち抜く
…ようやく、静かになった
静かで、辛くて、冷たい夜
北上「…拷問にはピッタリだね」
深海棲艦の髪を掴んで森へと引きずる