食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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三十八食目

夕張「え、服務の宣誓?」

 

加賀「そうよ、北上以外の、18以上のメンバー…今回は、特別に16歳の阿武隈と17歳の神通にもしてもらうわ」

 

川内「なにそれ、あたし聞いたことないよ、夕張さん知ってるの?」

 

夕張「…自衛官になる人間が違う文書よ、公の為に、自身の危険を顧みずに尽くすって」

 

川内「うげぇ…アタシたちを除け者にした世間に尽くすの?」

 

加賀「悪い話じゃないはずだけど」

 

…確かに

 

夕張「私は良い、むしろありがたいわ、これは前回の演習の評価も悪くないって認識でいいのよね?」

 

加賀「勿論よ、管理も私たち独自でできる、独立部隊のようなものとして、受け入れる、上も認めてる話よ」

 

川内「え、マジで?」

 

加賀「嘘なんかつかないわ」

 

夕張「これで晴れて公務員に再就職かぁ」

 

夕張「で、待遇は?」

 

加賀「最初から初任海士(かいし)扱いよ、お給料も同じね

候補生とかそういうのは抜きだけど、ちゃんと公務員らしく働いてもらうわ」

 

夕張「まあ、公務員らしくは置いておいて…えーと、確か手取りで13万くらいかな…?」

 

川内が手を挙げる

 

川内「なんで急にそんなにちゃんとした制度に?」

 

加賀「理由は複数あるけど、メインなのは…あなた達の力が必要になる場面が、増えるだろうから、でしょうね」

 

夕張「やっぱ黒い仕事か」

 

川内「黒い仕事?…殺しって事?」

 

加賀「人はやらないわ、低知能の、ルールを逸脱した深海棲艦を人として狩るのよ」

 

夕張「へぇ、漂白剤もびっくりなくらい真っ白」

 

川内がポンと手を叩く

 

川内「艦娘を雇うのが条約で不味いから、普通の人間のフリをして、ヤバい深海棲艦だけを倒せば良いのか」

 

加賀「そういう事」

 

夕張「艦娘であることがバレないのが第一条件なわけね…」

 

加賀「だから北上は外したわ」

 

夕張「え?なんで?」

 

加賀「彼女だけ全国放送に顔が載ってるもの、阿武隈も一緒に載ってるけど、そっちは誤魔化せるレベルよ」

 

夕張「…なに?北上って有名人?」

 

川内「いや、知らない」

 

加賀「別に表彰された訳じゃないし、調べなきゃわからないでしょうけど、ニュースに映ったのよ、あなた達を助けるときにね」

 

夕張「私たちを?……いつの話?」

 

加賀「忘れたの?あなた明石と一緒に…」

 

夕張「明石?…明石って、誰?」

 

加賀「……なんの冗談なの?」

 

夕張「いや、こっちのセリフ…なんの話?」

 

川内「ねえ、加賀…明石って誰?」

 

加賀「…夕張の…佐世保の仲間でしょう…?」

 

夕張「いや…え?誰の話してるの…名前間違えてない?」

 

加賀(…何これは…私は、何と話しているの?

…意味がわからない…)

 

夕張「…ねえ…?」

 

加賀「…もう良いわ、明日、採寸してもらうから、それと、基地内では作業服を着るようにして」

 

夕張「はいはい…変な加賀」

 

川内(いや、あの感じ…おかしいのは夕張さんなんじゃ?)

 

加賀「…それと、深海棲艦が各地で暴れてるのは知ってる?」

 

夕張「だから北上が出て行ったんじゃん」

 

加賀「警戒のために不寝番(ねずばん)を立てて

それから司令部の武器庫で管理されてる小銃も、代わりをあなた達に移すことになったから」

 

川内「…ライフルって、アタシ達艦娘だよ?本気で自衛官になれって言ってる?」

 

加賀「この就職で普通の人間としての戸籍が手に入るのよ、何か問題があるの?」

 

夕張「いや、全く無いわ…むしろ良すぎるせいで疑いたくもなるのよ」

 

川内(…たしかに、所有物じゃなくて雇われになるのは良いんだろうけどさ…)

 

加賀「川内がどうしても嫌というなら、それはそれで構わないわ、4人分で名簿を出すから」

 

夕張「4人?…北上は外すんでしょ?」

 

加賀「アイオワよ、歩けない人は本当は雇えないけど、アメリカの都合でね」

 

夕張「あー……偉い人も大変ね、それで?何させるつもり?」

 

加賀「あなた達で考えなさい」

 

夕張(…薄々感づいてたけど、これていの良い丸投げだ…)

 

川内「というか、北上はどうするの?」

 

加賀「アレは宣誓をしても、守るタイプじゃ無いわ、それこそ首輪をかけなきゃいけないレベルね」

 

夕張「させないの?」

 

加賀「させるわ、させなきゃいけないから…頭が痛いのよ」

 

夕張「…心中お察しするわ」 

 

 

 

 

 

 

天龍「山雲…どうしたんだ?今日はえらくべったりだな」

 

山雲「…ようやく、わかったんです、山雲は今、記憶を、ゆっくりと思い出してて…頭の中で、順々に…思い出して…」

 

天龍「…泣いてるのか?」

 

山雲「…死んじゃったんです…多摩さん…北上さんも大淀さんも、みんな落ち込んでて…」

 

天龍「…別れってのはいつ来るかわからないから、タチが悪いよな……そうだ、山雲、気分転換に出ないか?」

 

山雲「気分転換?」

 

天龍「USJ行こう、オモシレーから!ちょっと遠いけど、車で行けばすぐだし…辛い時は、楽しい事で…忘れるしか無いし」

 

山雲「ゆーえす…?」

 

天龍「なんだ知らないか、大阪の遊園地だよ」

 

山雲「……良いんですか?」

 

天龍「ああ…せっかくだし、会いたい奴も居てな、そうだ、山雲って確か夕雲型だろ、曇ってつくし」

 

山雲「朝潮型です…」

 

天龍「あー…まあ、その、なんだ!駆逐艦の知り合いがいるんだよ、あと軽巡…」

 

山雲「そうなんですか〜…」

 

天龍「…気分転換になるだろ、オレも久々に会いたいしさ…」

 

山雲「どんな方なんですか…?」

 

天龍「龍田と朝霜、2人とも大事な仲間だな…

最後まで軍属だったけど、終戦した時にさ、留置所に行きたく無いって大阪に逃げたんだ」

 

山雲「…佐世保から、大阪まで…」

 

天龍「勿論、オレも手伝ったけどな…でも、それ以上の迷惑はかけたく無いって、2人で自立してるさ」

 

山雲「……会ってみたいです」

 

天龍「おっしゃ!…とりあえず、そうなると…」

 

天龍さんが私の首輪に手をかける

 

山雲「なにを…?」

 

天龍「コイツは邪魔だな、この焼けこげは中まで行ってる、正直…いつでも外せた、山雲も問題なさそうだって分かったし」

 

首が、自由に…

 

天龍「…これで、お揃いだな、よーし、晴れて首輪無しだ」

 

山雲「…息が、しやすい…」

 

天龍「首輪無しにした後で言うのも悪いけど、メリットばっかじゃ無いから注意しろよ」

 

山雲「え?」

 

天龍「やっぱわかんないか、場合によっては危険人物扱いで済まずに撃たれる事もあるからな」

 

山雲「撃た…え?何に?」

 

天龍「警察だよ、艦娘は特殊訓練を受けたテロリスト並みに危険だって、何年か前はニュースが賑わってたよ」

 

山雲「…そんな」

 

天龍「首輪付きは撃たれない、服従の意思を示してるからな、でも首輪無しは…場合によっては、テロリストと変わらない

それも、身体構造すらも人間を凌駕してて、戦闘訓練も受けてる…暴れたら被害は甚大だろ?」

 

山雲「そんな事…」

 

天龍「する奴がいたんだよ、昔、表に出さないような騒ぎが起きたこともあった

気持ちはわかる、みんな同じ気持ちだ、「なんでこんな仕打ちを、守ってやった恩を忘れたのか?」ってな

…でも、世界はもう、オレ達を拒んでるんだ」

 

山雲「なら、どうして首輪をしてないんですか…?」

 

天龍「オレは、首輪もらう前に辞めてたしな、それに手術痕さえ隠せばバレようも無いしな

今の所は不自由してない、でも…まあ、いつかは、バレるだろうけど」

 

山雲「…怖く無いんですか?」

 

天龍「怖いさ、でもな、ずっと怖がってたら…短い人生が、つまんないまま終わっちまうだろ?」

 

山雲「…短い?」

 

天龍「オレらはどうか、戦いで生きてきた、戦争屋だ…ロクな死に方もしねぇし、長生きもしない

コレがオレなりの結論だ、だから、オレは楽しく、できるだけ、納得して生きるって…決めたんだ

感情に流されて生きて、後から理由つけて納得して、お前を助けたのもこんなんだからだよ」

 

山雲「…楽しく…」

 

 

 

 

 

 

夕張「うわー!新しい服!!」

 

川内「結局あたしもこれ着るのかぁ」

 

青色の作業服に袖を通す

 

暁「似合ってるじゃない、海兵っぽくて」

 

夕張「…あー…暁ちゃ…さ…ちゃんは、宣誓しなかったのね」

 

暁「…あの、夕張さん、私を幾つだと思ってるの…?」

 

夕張(わかりません…本当に、わかりません…

でも、18歳以下なのは確定で良いのかしら)

 

アイオワ「ねえ…その、コレ、ホントに上だけで良いの?」

 

川内「脚が動かないなら仕方ないでしょ」

 

神通(…コレを着てるだけで、一月で13万円…)

 

夕張「ねえ、あなたの妹目が欲望にまみれてるけど」

 

阿武隈「すみませーん!やっと着れました!」

 

夕張「よし、コレで5人揃ったわね」

 

暁「じゃあ、食事の受領よろしくね」

 

夕張「了解!」

 

…いきなり、ちゃんと再就職して、お給料が出るだけじゃなく、食事もちゃんと人数分用意されてる…

 

川内「コレが幸せかぁ…幸せなのコレ?」

 

夕張「少なくとも環境改善って観点では成功してる

生きて行くのに困らないのは…もう、充分幸せだと思うけどね」

 

アイオワ「…Me()は行かなくて良いの?」

 

川内「車椅子じゃあねぇ…」

 

夕張「後でちゃんと仕事はしてもらうから、暁ちゃん、書類の書き方教えてあげてね」

 

暁「はいはい」

 

川内「じゃ、神通は台車よろしく」

 

神通(こくり)

 

 

 

 

暁「あ、帰ってきた…ずいぶん遅かったのね?」

 

夕張「こりゃキツイわ」

 

川内「…5キロは歩いたよね、片道」

 

暁「そんなに遠いの!?」

 

夕張「まあ、ね…とりあえずはい、これ、お弁当」

 

順々に配って行く

 

夕張「コレで全員分か…」

 

暁「…野菜炒めに、お漬物、後白米とお味噌汁…」

 

川内「いただきまーす…うん?…うん、普通だ、美味しい」

 

夕張「食べながらで良いから聞いて、コレからの方針を話すわ」

 

阿武隈「方針?」

 

夕張「資材は申請して工面してもらうから、コレから私たちは本格的に生体ユニットを使わない艤装の製作に着手する」

 

川内「艤装なんているの?」

 

夕張「…64式小銃なんかで深海棲艦に勝てると思う?」

 

神通(ふるふる)

 

アイオワ「やっぱり、深海棲艦と戦うのね…」

 

夕張「…必要になるなら、よ…だから、艤装は…抑止力っていうか」

 

川内「それで済めば良いけど」

 

夕張「備えあればなんとやら…よ」

 

川内「(うれい)しかないよ」

 

夕張「…はぁ…そうかもね」

 

夕張(北上が居ない理由も、そろそろ説明しなきゃいけないし…嫌なことばっかね)

 

…冷え切った米をお味噌汁でほぐしながら口に含む

 

夕張「…さあ、仕事しましょうか」

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