食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
朝霜「よぉし!コレでどーだい!?」
朝霜ちゃんがドンとテーブルに鍋を置く
青葉「わ…美味しそう!」
朝霜「アタイ特製のキーマカレー!そしてフライパンで炊いた炊き立ての白飯!
これを皿に盛り付けて…!」
青葉「料理の腕、すっかり朝霜ちゃんに追い越されちゃったなぁ…」
朝霜(それは一回でもまともに作ってからいうセリフだと思うな、あたいは)
青葉「いただきます!」
朝霜「いっただきまーす…あぐっ!…うん!うま〜!」
青葉「ほんとに美味しい…!こんなに美味しいご飯が食べれるなんて…」
朝霜「これで家のことは安心してアタイに任せておくれよ?」
青葉「ありがとう…!」
朝霜(あとは、休みなしで働き詰めの青葉さんをどうにかしたいとこだけどなぁ…
コレばっかりは、アタイじゃなんとも)
青葉「あったかくて美味しいご飯が食べられるなんて…幸せ…」
朝霜「…確かに、そうかも」
青葉「あむっ…んー…おいひぃ…」
朝霜(にしても、ウマそうに食ってくれるよなぁ…)
朝霜「明日も頑張って作るからさ!」
青葉「ありがとう…」
朝霜「……ところで、青葉サン…あの、なんだ…チョットいいか?」
青葉「え?」
朝霜「…実はさ、アタイも働こうと…思ってさ、色々調べてみたんだ」
青葉「…え?朝霜ちゃんが?」
…でも、こんなに小さい子が働けるような場所なんて…
朝霜「ウン、でさ…新聞配達…やろうと思って」
青葉「新聞配達……待って、あれ中学生以上じゃなきゃできないんじゃ?」
朝霜「だから、あたい、中学に行こうかと…ほら、大淀さん言ってたろ?首輪付きなら学費はどうにかなるって…」
青葉「…なら、それはダメ」
朝霜「なんでだよ!」
青葉「そもそも、朝霜ちゃん…10歳にもなってないでしょ」
朝霜「そ、そんなことねーよ」
青葉「9×12は」
朝霜「え?」
青葉「さーん、にー…」
朝霜「えっ、あ…9と18!!」
青葉「答えは108、落ち着いてなら掛け算もできそうだけど、朝霜ちゃん、艦娘の年齢の基準は?」
朝霜「……知力と、体格」
青葉「そう、実は朝霜ちゃんの本当の歳が高校生でも、問題は無いけど…
でも、今の朝霜ちゃんは、お箸をちゃんと持つ事もできてない、それに、小学校で習うような勉強は中学校じゃ当たり前にできなきゃ行けない
今のまま中学校に行くのは…朝霜ちゃんが辛いだけ」
朝霜「で、でも、それじゃ働けない…」
青葉「そもそも、それ、それが良くないの、学校は働きたいから行く所じゃない…
朝霜ちゃんに苦しい思いをさせてる私が言える立場じゃないんだけど…お金は、なんとかするから…」
朝霜(…そうじゃないんだよ……毎日、休まず働いてる青葉さんをなんとかしたいんだよ…)
朝霜「……わかった」
青葉「…もし、小学校から行きたいなら、構わないから」
朝霜(…青葉さんを納得させなきゃ、たとえお金を稼いでも、休んではくれないだろうしなぁ…)
朝霜「…ダメ元で学校行かないまま働いて良いか聞いてきても良いか?」
青葉「…そんなに働きたいなら、それまでダメとは言わないけど…」
朝霜「え………あー、無理矢理中学行くのに怒ってたのか」
青葉「そりゃあ、うん…お金で苦労させてるのは間違い無いし…」
青葉(お小遣いが欲しかったってことなら…今の私には無理だし、自分で稼いでもらうしか…うーん…でも、学校に行ってもらうのも、うーん)
朝霜「頼んできた!」
青葉「…それで?」
朝霜「ダメだった!!」
青葉(やっぱり…)
朝霜ちゃんが新聞を差し出してくる
青葉「それは?」
朝霜「持って帰れって、契約しろって言われたけど断ったら、役立たずの疫病神どもって投げつけられた」
青葉「子供相手に何て事を…」
朝霜「それに書いてる通り、艦娘は疫病神だとさ」
青葉「……」
新聞を手に取り、読む
青葉「…何これ…岐阜で車両爆発事故に艦娘関与?…山形では艦娘が民家を砲撃…?
な、なにこれ…!なんなの…!?」
朝霜「よその艦娘が無茶したんだとー、勘弁してほしいよな、たく」
青葉「…なんで、こんな酷いことを…」
朝霜「生活厳しいんじゃない?」
青葉「だったら強盗とかしそうなものだけど…」
…こんな、蛮族みたいなことをする理由ってなんだろう
青葉(これじゃどんどん生きにくくなる…)
朝霜「はー、働くアテもないし、どうしたもんかなァ…」
青葉「ぅ…」
青葉(…そうだ、朝霜ちゃんを幸せにするんだ…
もっと、稼がなきゃ…お金を、手に入れる方法……)
大井「それで私のところに?人選間違えてるわよ」
青葉「…まあ、自覚はあります……ところで、ここに来た私もなんなんですけど…未だに野宿なんですね…」
大井「ああ、前当てた券の話?あんなもの、次の元手に全部使ったわ」
青葉「えっ」
…じゃあ、今焚き火に放り込まれた紙束は…
大井「これ?その時買った馬券宝くじ舟券その他もろもろ…ぜーんぶ、ハズれたけどね、おかげでまたしばらくは収入無し」
青葉(…この人、やっぱり相当おかしい…)
大井「ヒかないでくれる?コジキになるつもりもないし、私は私の生き方をするの
中途半端なお金じゃ生きていけない、それなら一生分の財産を作る為にどこまでも勝負するわ
途中で真面目な思いをするなんてまっぴらごめん」
青葉「…なかなか、その…ハードというか…」
大井「…ずっとヒリついた戦場で生きてきたのよ、安心して寝転がれる自分のベッドも、すでに戦いで焼けこげた…
中途半端な安心じゃなくて、完全に、終わった安心が欲しい…」
青葉(…大井さんも、ずっと不安なんだ…)
大井「とりあえず、5000万、可能なら3億貯めて、それでサラリーマンの生涯収入を上回ったくらい…それで自由に暮らす!
…そしたら、きっと…余裕を持って、生きてられる…不安な夢を見なくても済む」
青葉「夢、ですか」
大井「未だに見るのよ、みんなそう、きっとみんなが、あの頃の夢を見る…
気づけば隣にいた仲間が居なくなってる、昨日までいた子達がいなくなってる…夜の闇に消えて、海に呑まれていく…
あんな不安な夜なんて、もういらない」
大井さんがポケットから小さいマシュマロの包みを取り出し、木の枝に刺して炙る
大井「海に出なければ、不安を感じなくて良いんだから、私は幸せなのよ…
でも…最近はそうもいかないみたいだけど」
青葉「ああ…あの艦娘が暴れてるって…」
大井「それデマよ」
青葉「え?」
大井「暴れてるのは深海棲艦の方、水面下での交渉中だから、表向きは責任を艦娘に押し付けてるだけ」
青葉「な、なんでそんなことを?」
大井「さあ?」
大井さんが焼きマシュマロを頬張る
大井「
青葉「誰が…?」
大井「ネット、スマホ持ってるでしょ?
ほら、掲示板とかあるじゃない、その辺のニュースより面白いわよ」
青葉(陰謀論…)
大井「…ま、艦娘があんな事件起こす理由は私には見当もつかないし、深海棲艦が暴れてるって話の方が、私は信じたい」
青葉(…確かに、それは私もそうだけど…)
大井「ところで、なんでそんなにお金が欲しいのよ」
青葉「……朝霜ちゃんが、どうやらお金が欲しいみたいで…」
大井「子供にお金を持たせるとロクな事ないらしいわよ」
青葉「って言われても…私は…」
大井「…納得するとは思ってないわよ、アンタみたいなのは…というか、あんた出身は?」
青葉「え?……神戸ですけど…」
大井「…ふーん…?」
青葉「急にどうしたんですか?」
大井「……いや、なんとなくね」
青葉「大井さんこそ、どちらから?」
大井「…あー……と…かなり、遠いところよ」
青葉「遠い?…ここからだと…南より……あ、北の方ですか?」
大井「そうかもね」
青葉「だとしたら、
大湊とかですか?」
大井「…そうね、大湊よ」
青葉「へー!…でも、あんな遠くから、どうしてここに…?」
大井「…なんでかしらね、たまたまよ」
青葉「へー…」
大井「…お金を稼ぎたいなら、仕事を紹介しても良いけど」
青葉「えっ!?」
大井「もう少し身なりを整えてからよね、まあ良いわ…また会った時に話しましょう」
青葉「いいんですか!?」
大井「特別よ」
青葉「や、やった…!」
パシャリとケータイのシャッター音
青葉「…なんで私を撮るんですか」
大井「紹介に必要だからよ、でもまあ、良い笑顔じゃない」
青葉「…というか、大井さん、仕事あるんですね…」
大井「じゃなきゃパチンコも競馬も宝くじも、なーんにもできないわよ」