食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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五枚目

青葉「…うぅ…頭痛い…グラグラする…」

 

ガンガンと脳の端が痛い、中心はズキズキする

起きたくない…

 

朝霜「青葉サン大丈夫か?」

 

青葉「…うん…行って来ます……」

 

朝霜「…缶チューハイ2本で二日酔いかよ…アタイでももう少し強いぞ…

ってか……今日くらい休んでも良いじゃん…」

 

 

 

 

青葉「おはようございます…」

 

龍驤「おお!おーきに、青葉…って、えらい調子悪そうやな」

 

青葉「あー…はい、まあ」

 

龍驤「あんま仕事に影響出ん様に気ぃつけや」

 

青葉「は、はい…」

 

龍驤「ほれ、たこ焼きと現場」

 

 

 

 

青葉(…西宮かあ…近くてよかった……)

 

公園でたこ焼きを頬張り、容器をゴミ箱に捨てて、1000円札を持っていつものアパートへ

そして3回叩いて、千円を捩じ込む

 

青葉「自転車、お借りします…」

 

「……大丈夫?」

 

青葉「ふえ?」

 

「…たまに、元気ないから…」

 

青葉「…大丈夫です、今元気になりました」

 

毎日繰り返してるうちに、自転車の持ち主とはいつの間にか…少しくらい、会話ができる仲になった

未だに顔も名前もわからないけど

 

「…頑張って、それと……自転車、もう返さなくても良いわ」

 

青葉「へ?」

 

「遠くに引っ越すつもりなの…だからあげる」

 

青葉「いいんですか…?」

 

「優しく使ってくれてるみたいだから」

 

青葉「…ありがとうございます!」

 

自転車を()いで約50分

 

青葉(…ついたぁ…頭ズキズキする…)

 

青葉「おはようございまーす…!」

 

 

 

 

 

青葉「ひぃ…ふぅ……まだ、お昼前かぁ…」

 

二日酔いは時間で多少マシになったけど…

 

青葉(今日は少し大変だなぁ…)

 

工員「こらァ!サボってんなよ艦娘がァ!!」

 

青葉「は、はい!!」

 

…一息つく間もない…

 

青葉(頑張らないと、今日のご飯が…)

 

青葉「うぐぐ…」

 

 

 

 

大井「…あら?…アレ、青葉?……こんなとこまで働きに来てるのね…」

 

遠目からでも一瞬でわかった

視線の通る位置にいたのもあったけど…

 

大井(一人だけヘルメットも無いのね…艦娘だから?)

 

青葉(あー…この部材重たい……ええと、これと、ナットが…ああ、工具も…)

 

大井(…昨日、あんなにべろべろだったのに大丈夫なのかしら…でもホントに、ずっと働いて…無理するんだから……って…?)

 

大井「…あ、この現場の仕切ってる会社…

あんまりにも安い給料の謎が解けたわね…」

 

青葉「…?…あれ、誰か…こっち見て…」

 

工員「ゴラァ!!サボんな!!」

 

青葉「ひぁ!す、すみません!」

 

大井(ヤクザの下請けで働いてるんじゃ、脚を洗うのも大変そうね…いや、水商売(こっち)も変わらないか)

 

大井「…明日お給料だし、それでなんか作ってあげようかしら………なんか、久しぶりね、自分のためじゃないお金の使い方するの…あら」

 

荒潮「あ…」

 

大井「荒潮じゃない、どうしたの?こんなところで」

 

荒潮「…大井さんのお店に挨拶に行こうと思って〜…その…」

 

大井「貯まったの?…よかったわね、ホントよかった」

 

荒潮に近づき、膝をついて、抱きしめる

 

荒潮「…人前じゃ恥ずかしいんですけど…」

 

大井「ごめんごめん、嬉しくって……でも、先を越されちゃったかー………って、どうしたの?」

 

荒潮「…あの自転車…」

 

大井「あれは…待って、あの自転車朝潮の?なんで?どうして…」

 

荒潮「…貸してるの、それでお金を稼いで…」

 

大井「青葉に?」

 

荒潮「青葉…?そう、そういう名前なのね…」

 

大井「…ほら、あそこ」

 

青葉の方を指差す

 

荒潮「……あんな顔、してたのね…」

 

大井(…何、その複雑そうな顔…

待って?…自転車を貸しただけで、大金が貯まる?)

 

大井「荒潮、貴方…どういう商売をしてるの?」

 

荒潮「…1日千円で、自転車を貸してるの…たくさん」

 

大井「千円…?1日で…?」

 

…確か、朝霜は日に千円しか稼げないと言ってた

おそらく青葉は自転車代を報告してない

 

大井「…貴方、その商売、大丈夫だと思ってやってるの?」

 

荒潮「……」

 

荒潮が目を伏せる

 

大井「…やめなさい、そんな商売…!

朝潮達も、喜ばないわ…」

 

荒潮「……でも、もう、この街に居たくないの…私、ようやく…」

 

大井「わかってる、気持ちはよくわかってるから…でもダメ、気づいてないなら教えてあげる

そのやり方は、搾取っていうのよ、自分は何もせず、ただ吸い上げるだけの行為は最低なのよ」

 

荒潮「…でも、だって…」

 

大井「誰に入知恵されたか知らないけど、それがどういう行為か、よくわかってるはずよね」

 

荒潮「……私は、もう、嫌なの」

 

大井「だからって青葉を食い物にして、それで生きていけば良いと思ってるの…?違うわよね、あの子が毎日休みなく働いてるの…自転車を貸してるなら知ってるでしょ?」

 

荒潮「毎日…?」

 

大井「…そうか、あの家から近くなら乗らないか…」

 

荒潮「…毎日、お金を払ってくれてるのは、知ってたけど…」

 

大井「待って、自転車に乗らない日も払ってたの?」

 

荒潮「…うん」

 

大井「……あんっのバカ…!自分がどれだけ苦しいかわかってるの…?朝霜にも無理させて…

結局自分のエゴなんて、そんなの…!!」

 

…きっと、自転車のお金を節約してれば、もっとちゃんと暮らせた筈なのに…

 

大井「荒潮…お金は返しなさい、そんなやり方、間違ってる」

 

荒潮「……でも…」

 

大井「わかってるなら、お願いだからやめて…

荒潮、青葉はほんの少しのお金でなんとか毎日生きてるの、荒潮に渡してる千円、今働いてる分の半分のお金なのよ」

 

荒潮「え…?半分って…」

 

大井「多分、日に2000円しか貰ってない」

 

荒潮「…そんな……」

 

大井「余裕の無い中で、拾った艦娘の子供も育ててる

荒潮、もちろんアンタも子供だけど…それでも、わかるでしょ」

 

荒潮「……」

 

大井「返すわよ、お金」

 

荒潮「…はい」

 

大井(なんとも言えない気分ね

荒潮と青葉を天秤にかけてしまったような…)

 

…そして、付き合いが短い方の青葉をとったような

そんな罪悪感を感じる…

 

荒潮「…ありがとう、大井さん」

 

大井「え?」

 

荒潮「私も、こんなお金の稼ぎ方、したくはなかったから…」

 

大井「……そっか」

 

 

 

 

青葉「あれ?」

 

現場の出口に、大井さんが…

 

大井「待ってたわよ、昨日はごめん」

 

青葉「え、あー…どうして?なんでここがわかったんですか?」

 

大井「昼の仕事の帰りに見かけてね、まさか18時まで待たされるとは思わなかったけど」

 

青葉「これでも早い方なんですよ…って、そちらの方は?」

 

女の子…中学生くらいの…?

 

荒潮「…あの」

 

…この声

 

青葉「もしかして、自転車の?」

 

荒潮「えっ」

 

青葉「初めまして!青葉です、いつも自転車ありがとうございます!」

 

荒潮「……荒潮です…その、こっちも、お金を貰ってるので…」

 

青葉「あ…そう言えば、引っ越すんですよね…その、今までお世話になりました」

 

荒潮「っ…」

 

大井「わかった?…こう言うやつなのよ、バカみたいだけど」

 

青葉「…なんの話ですか?」

 

荒潮ちゃんが口の開いた封筒を差し出してくる

 

荒潮「これ…かえします」

 

青葉「へ?」

 

封筒を手に取り、中身を見る

 

青葉「お、おかっ!?…い、いやいやいや!受け取れませんよ!」

 

…大量のお札…

 

大井「明らかに分厚いわよ、何年分?」

 

青葉「そ、そそ、そうですよ!…だってこれ、いちま…それも何枚も…まだ2ヶ月とたってないですよ…!?」

 

荒潮「……来てください」

 

大井「…あー」

 

荒潮ちゃんに連れられ、人気のない公園へと連れ込まれる

 

荒潮「…お金の出所は…これです」

 

私の乗ってきた自転車を指差す

 

大井「っ…そういうこと」

 

青葉「え?待ってください、私ホントに1日千円しか…」

 

大井「鈍いにも程があるわね」

 

荒潮ちゃんがハンドルのカバーを抜き取る

 

そこには、丸められたお札の束…

 

青葉「え…?そこに隠してたんですか?お金を?」

 

大井「違う、お金になる“何か”よ…!荒潮、アンタって子は…!」

 

荒潮「ごめん、なさい…」

 

青葉「…運び屋って事ですか」

 

大井「そうよ、それももちろん、違法な…ね」

 

青葉「……それで、お金を稼いでたんですね…」

 

荒潮「…80万円あります…これは、貴方が、関与した全部…」

 

荒潮ちゃんが改めて封筒を差し出す

 

大井「荒潮…!」

 

青葉「いいんです、荒潮ちゃん」

 

膝を降り、荒潮ちゃんと目線の高さを合わせる

…怯えた、不安な目、今にも泣きそうで…

 

青葉「なんで、お金が欲しかったのかだけ、教えて?」

 

荒潮「……姉さん達の、ところに行きたかった…

姉さん達は、遠くで、みんなで暮らしてる…だから、私も…」

 

青葉「…そっか」

 

荒潮ちゃんをそっと抱きしめる

 

ゆっくりと離れて、もう一度目を見る

少し、落ち着いた目

 

青葉「大丈夫、大丈夫だからそのお金は持っていって?」

 

荒潮「え…?」

 

青葉「荒潮ちゃんが幸せになるために貯めたお金だもん、誰にだって幸せになる権利はあるから…」

 

荒潮「そんな…」

 

大井「本気?良いの?犯罪の片棒担がせてたのよ?」

 

青葉「大井さんがそんなに心配してたら、責めようにも責められないですよ」

 

大井「んなっ…!」

 

青葉「…荒潮ちゃんは違うと思うかもしれないけど、荒潮ちゃんの幸せを願う人がここに二人います、頑張って」

 

荒潮「……」

 

荒潮ちゃんが大井さんをみる

 

大井「…元気にやりなさいよ」

 

青葉「ね」

 

荒潮「……ありがとう、ございます…!」

 

青葉「あ、そうだ」

 

大淀さんに貰ったカメラを取り出す

 

青葉「最後に一枚だけ、良いですか?」

 

大井「…大丈夫?」

 

荒潮「…はい!」

 

電子音と共にシャッターが切られる

 

 

 

青葉「…これ、私の電話番号と住所です、必要になったら連絡してください」

 

荒潮「わかりました」

 

大井「青葉に連絡すれば私にも連絡がつくわ

…何かあったらすぐ頼りなさい、それじゃあね」

 

青葉「また」

 

荒潮「はい…また」

 

 

 

 

 

 

 

 

荒潮(とりあえず、大阪駅までは来れた…

あとは、新大阪からこの切符で…)

 

「おい!荒潮!」

 

荒潮「!!…だ、誰…」

 

誰か、こっちに走って来て…

逃げないと…

 

「ま、待てよ!逃げるな!オイってば!」

 

腕を掴まれる

 

荒潮「や、やめ…!」

 

天龍「待てよ、オレだ、天龍だよ」

 

荒潮「ぁ…?…天龍、さん…?」

 

天龍「ひっさしぶりだなぁ…何年振りだ?

…どうしたんだよ、その荷物…」

 

荒潮「…ちょっと、遠くに…」

 

天龍「…急いでるなら、時間は取らねえ、だが一つだけ聞かせてくれ」

 

荒潮「は、はい?」

 

天龍「…なんで、朝潮達の葬式に来なかったんだ?」

 

荒潮「……え?」

 

姉さん達の、お葬式…?

 

天龍「3回とも、来なかったよな…

なんでだ?みんなそうだ、バラバラのタイミングで…誰も来なかった」

 

荒潮「ちょ、ちょっと待って?…姉さん達は、生きてる…わよ…?」

 

天龍「どこにいる」

 

荒潮「……遠くの…」

 

天龍「どこか言えるのか?姿は確認したのか?」

 

荒潮「……してない」

 

天龍「やっぱりか…!…クソッ!荒潮、よく聞け、絶対にそこに行くな!あー…後は…ええと…

…とにかく、そこにだけは行くな、お前の人生がかかってる」

 

荒潮「そん、な…」

 

…姉さん達は…?

 

天龍「行くあてが無いならオレと来い、だから…」

 

…ダメ、せめて、確かめなきゃ

 

荒潮「……」

 

天龍「お、おい、荒潮」

 

荒潮「…私は、行くところがあるので…“また”」

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