食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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閑話 接待

大井「ふぁ〜あ……疲れた、これでしばらく仕事もないし、今夜は新聞買って明日の予想ね

…って、お給料振り込みまでは後2週間…電車も使わなきゃだし…ん?」

 

誰かこっちに…

 

大井「って…」

 

大淀「どうも」

 

大井「……なんの様?」

 

大淀「少し歩きませんか?」

 

 

 

 

大淀「良いところですよね、神戸」

 

大井「…私の職場まで知ってるなんて、貴方、いったい…」

 

大淀「情報通でしょう?」

 

大井「……」

 

…もう夜遅いのに、なんでこんなところまで来て私に会いに…

 

大淀「昼は西宮のメイドカフェ、夜は神戸のキャバクラ…どちらも人気キャストですか」

 

大井「なっ…なんで知ってるのよ!?」

 

大淀「言ったじゃないですか、情報通だって」

 

大井「……虫が食べたくて会いに来たわけじゃないみたいね」

 

大淀「それよりは、お酒を飲みたい気分ですね」

 

大井「お酒?なんで私なのよ」

 

大淀「未成年を保護する監督者をこんな時間に連れ出すわけにもいきませんから」

 

大井「なんで仕事でもないのに…って、なにそれ」

 

何か封筒を差し出されて…

 

大淀「とりあえず、大井さんのお店の料金システムで言うと、大井さんの指名料が3000円ですか」

 

大井「えっ」

 

大淀「40分制で1セット5000円ですよね?4セット分、160分で20000円、サービス料で合わせて24000円

合わせて27000円ですが、時間外なのも考慮してとりあえず5万円入ってます

飲み代はこちら持ちでどうですか?」

 

大井「い、いや、え?」

 

大淀「延長料金もサービス料も、必要になれば渡しますよ、おひねりもね」

 

大井(ありがたい話だけど、何これ、怖いんだけど…)

 

大淀「さあ、行きましょう」

 

大井「あ、ちょっ……」

 

大淀「ああ、良いところ見つけた、この店にしましょうか」

 

大井「…キャバ嬢に接待させようとして選ぶ店が安い居酒屋って…」

 

大淀「ちゃんとした店は悪目立ちするんですよ、個室もあるしここが1番適してます」

 

大井「……はあ」

 

店舗に入り、大淀がメニュー表を広げる

 

大淀「すみません、とりあえず巨峰サワーとこの串焼き盛り合わせでお願いします」

 

店員「年齢確認のできるものは御座いますか?」

 

大淀「これで」

 

店員「…はい、承知しました」

 

大井(今のカード何?免許証とは違うみたいだけど)

 

大淀「何飲みますか?」

 

大井「私は…ハイボールと唐揚げと…お造りの盛り合わせと…」

 

 

 

 

大淀「では」

 

大井「かんぱ〜い」

 

大井(……顔見知りに営業するの…キッツ…なんの拷問?)

 

大淀「…不味いですね、ここのサワー」

 

大井「大体こういう店のはアルコールの割合が多いのよ、飲み慣れてないのね?」

 

大淀「普段は高いお店ですから」

 

大井「…なに、この不愉快な感情」

 

大淀「すみませんね、さて…先に言っておきますが、ここでするお話は、お酒の席でする作り話です

ですが他言無用ですよ」

 

大井「えっ、何急に」

 

大淀「外務省勤めも大変なんですよ」

 

大井(外務省ォ!?…な、何それ…あ、いや、営業営業…!)

 

大井「大変なのね?まあ、私には愚痴聞くくらいしかできないけど」

 

大淀「…深海棲艦が今、かなりの数、この日本の国土に居ます、もう誰も街中の深海棲艦に驚きません」

 

大井「そうね、外国人を見るくらいの感覚じゃない?

アレがまともな服を買うせいで後ろ姿じゃ髪の毛染めてるのか、深海棲艦なのかもわからないし」

 

大淀「…毎日毎日、私は深海棲艦と交渉しなきゃいけないし、報道の関係で手を回さなきゃいけないし…」

 

大井(え?この人なんの仕事してるの?

…というか、外務省勤めってのも、よくわからないし…)

 

大井「そんなに嫌ならなんで外務省なんかに入ったのよ?」

 

大淀「異動させられたんですよ、防衛省から…」

 

大井(…あ、わかった、これホントにお酒の席の作り話だ…

なるほどね…)

 

大井「よっぽど優秀なのねぇ」

 

大淀「…はあ……私、頼りにしてる先輩がいたんです、1人でなんでも解決するような」

 

大井「凄い人なんだ?」

 

大淀「戦闘、整備、勉強も料理も、なんでもできるタイプでした」

 

大淀「会ったらきっと気が合うと思います、同じ球磨型ですから」

 

大井(今度は実際の話か…)

 

大淀「……私は…はあ…」

 

大淀が串焼きを頬張り、サワーで流し込む

 

大淀「…こんな筈じゃなかったのに…私は、あそこに居たかっただけなのに」

 

大井「…あなたの先輩の事は知らないけど、寄り添う事ならできるわ」

 

大淀「ええ…お願いします」

 

お造りを口に含む

…生臭い

やはり、安いだけあって、良いものではない

 

大井「…悩み多そうだけど、仕事辛いの?」

 

大淀「ええ…当たり前じゃないですか…毎日毎日高知能個体の深海棲艦と話にならない話し合いをしてるんですから…」

 

大井「そうなんだ…それは、大変ね…」

 

大淀「なんで自分たちの同種がやったことに対して何の責任も負わず、こちらで国民への対処を丸投げされ

そして私が各方面に立ち会って対応しなくてはならないんですか…」

 

大井「よしよし…」

 

大淀「…はあ…」

 

大井(話のスケールが大きすぎて、ほとんど信用できてないけど…もしかしたらこれはもしかするのかしら)

 

大淀「深海棲艦は戸籍がありません、ビザも発行できません、ですが、家や土地を買いたいと言ってきました

その対応全て投げられて、1週間缶詰にされて、今日ようやく終わったんです」

 

大井「へえ、どうなったの?」

 

大淀「白紙で突き返しです、そんなの認められるわけありませんから」

 

大井(それに1週間かかるの…?)

 

大淀「……深海棲艦の脅威性を理解してない人が多過ぎるんです、土地や家を与えたら、行方不明の度に探しに行くことになりますよ」

 

大井「…そうかもね」

 

席の端末で大淀の酒を注文して、唐揚げをハイボールで流しこむ

 

大井(もし、大淀が私に明かしてる話が真実なら、大淀の事は…私次第で利用できる

…理由はわからないけど、弱りきってるみたいだし、懐柔するのは簡単…私は、私の為に)

 

大淀「……あれ、新しいお酒が…」

 

大井「できるだけ甘いやつを頼んでおいたわ、これなら飲みやすいでしょ?」

 

大淀「ありがとうございます…んくっ…」

 

大井(…それにしても一回しか顔を合わせたことのない私を頼るなんて、随分とおめでたいわね

そういう印象じゃなかったのに)

 

大淀「……あと…これは、特別にする話なんですけど」

 

大井「何?」

 

大淀「…今回、白紙でつき返せたのは、すでに問題を起こした深海棲艦がいるからなんです」

 

大井「…え?」

 

大淀「廃屋に入った人間を食べる深海棲艦がいるんです、警察も追い払われて、特殊部隊も痛手を負いました

…青葉さんと、約束したのになぁ…」

 

大井「…何を」

 

大淀「戦争しなくて良い様にするって…

でも…これじゃ、いつ戦争になっても…おかしくない…」

 

大井「……そう、なの…」

 

大淀「……先輩は消えるし……春雨ちゃんには連絡つかないし…!

なんで、こううまくいかないんですかぁ…!」

 

大井「あー、あー!ほら、落ち着いて…もう、良い大人でしょう?」

 

大淀「まだ16です!!」

 

大井「…え?……は!?」

 

大淀「…はぁぁ…!」

 

大井(歳…し、た…?……え、嘘でしょ

16歳?二つも、下…?え?…ええ???)

 

大井「ちょ、アンタねぇ!?」

 

大淀「……なんですか、16じゃダメなんですか」

 

大井(色々ダメに決まってるでしょうが!?)

 

大淀「…先輩〜…眠いです〜…」

 

大井「誰が先輩よ!あーこら!寝ないの!…私野宿だから寝る場所なんてないわよ…!?

お金もほとんど…」

 

大淀「…くぅ…すぅ……」

 

大井(ね、寝た…!?)

 

大井「……ああもう!!やりたくなかったけど、取れる手段は一つよね…!」

 

 

 

 

 

大淀「ん……んぅ…?ここは…」

 

…布団の上で目が覚めるなんて

 

青葉「あ…おはようございます!」

 

大淀「青葉さん…?」

 

朝霜「よー、大淀サン、起きたか、朝メシできてんぜ!」

 

青葉「食べていきますよね?」

 

大淀(…どうしてここに?)

 

 

 

大淀「凄いですね、朝霜ちゃんが全部?」

 

焼き魚にお味噌汁、お米…

 

青葉「はい…その…そんな目で見ないでください…」

 

大淀「…大井さんは?」

 

青葉「大淀さんを置いて帰りました…」

 

大淀(またお礼を言わなければなりませんね)

 

朝霜「なー、なんであんなグデングデンになってたんだ?」

 

大淀「大人は大変なんですよ」

 

青葉(16歳……)

 

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