食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
荒潮「……はあ」
電車に揺られながら、姉さん達とやりとりした手紙を見る
これによれば、姉さん達は海辺の小さな家で暮らせているらしい
…何もなく、平和だと
でもそれが嘘なら、もう居ないのなら
どうして?どうしてこんな手紙を…
荒潮(…生きているなら、それは最高だけど、亡くなってるなら…
おそらく、コレは私を誘き寄せる何か)
元はあのアパートに4人で住んでいた
ギリギリの生活だったけど、半年ほど経って、1人がそこを出ることでお金がもらえることになった
1番上の姉さんが出ていった
そこから、3ヶ月ほどして、荷物が届くようになった
…法律の外側のものを、自転車に詰めて、自転車を貸し出す
そんな日々が始まった
3人で暮らすのには十分すぎる取り分もあった
そんななか、最初に出た姉さんから、電話がかかってきた
「1人だけ、私のところに来られる」と
…2番目の姉さんが、出て行った
2人になったけど、何も変わらず暮らせていた
そして、また3ヶ月ほど経って、電話がかかってきた
「また、1人だけ来て欲しい」と
…今度は揉めた
私も行きたかったから
でも、3番目の姉さんは、私を行かせてくれなかった
最近になって、電話がかかってきた
「2億円を貯めれば、外の世界で自由に暮らせるよ」と
…造作もなかった
やってる事は、明らかに法律の外側だったけど
もう、気にならなかった
溜まって、しばらく経った頃、電話が来た
お金が貯まったのかという電話
驚かせたくて、「まだ」と答えた時、すこし姉さんの声が上擦ったような気がして、本当のことを言えなくなった
……住所の書かれた手紙が届いた
貯まったら、来いと書かれていた
行くか迷ってるうちに、青葉さんが来るようになった
毎日毎日、律儀に千円だけを置いていく
自転車に乗らない日すらも
久しぶりに、温かい人に触れた感じがして、私は…少しだけ、あの街に止まった
ある日、催促の連絡が来た
パソコンで打ち込んだような書体だった
…私は…手紙の住所に向かうことにした
姉さん達は、生きているのだろうか?
荒潮(…確かめる、確かめなきゃ、私は…“生きて”ない)
荒潮「…あ…」
とうとう、駅に着いた
…新幹線や在来線を乗り継いでやっと着いた駅
目的の駅に着いて、すぐに感じるものがあった
荒潮「……ここじゃ、逃げられないわね」
ふと携帯で住所を打ち込む
海辺の家…?…倉庫街のすぐそば…
荒潮(……嫌な考え方だけど
死体の処理には、適してるのかしら…)
手荷物を漁る
来る途中に百均で買った刃物
…使わず済めばいいけれど
荒潮「…姉さん…」
目的地にまっすぐ進む気にはならなかった
何となく、遠回りをしながら、のらりくらりと歩いていた
いろんな場所を歩いた
大きな川の上の橋の手すりに座ってみたり
散歩中の犬を撫でたり
コンビニでお昼を買い食いしたり
…最期かもしれない
何となく、嫌な感じだった
荒潮「…あ」
……艤装の、山?
錆びついて、使い物にならなくなってるけど…
いつの間にか、海辺の倉庫街に来ていた
大量に積まれた艤装は、いろんな種類があって…
荒潮「……コレで、何かあれば…なんて」
…手に取ってはみたけど
もう動かない
荒潮「…あれ」
何処かから、戦うような音が…
荒潮「…何あれ、誰か…深海棲艦と…?」
戦ってる?深海棲艦に噛みついてるようにも見える
荒潮「…あれ…大井…さん?……いや、違う…」
みたこともない人だ
だけど強い、圧倒している
何も持っていないのに、複数の深海棲艦をたった1人で
最後には深海棲艦の死体を使って撃ち込んでた
…まるで、怨みのような
そんな何かを感じた
すごく、強かった
…私も、ああならよかったのに
どうか、どうか姉さん達が生きていますように
私の嫌な考えが、ただの思い過ごしでありますように
荒潮(お願い、もう、これ以上私から奪わないで
もう、失いたくないから…)
いつの間にか
目的の場所に辿り着いていた
人気のない、静かな、石造りのビル
荒潮(…聞いてた話とは、違う…!でも、住所はここで…)
…窓に誰かいた?
荒潮(…もう、逃げ隠れも、できないわね)
私も、あの人みたいな強い人になろう
そうすれば…私は、悔いなく生きて、死ねるから