食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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最期の願い

青葉「うう…結局何も食べられなかった…」

 

大井さんは手を尽くしてくれたけど、入れるお店はなくて

私達は、諦めて帰ってくるしかなかった

 

朝霜「スーパーも、入店断られちまったなぁ…いっそのこと、引っ越すってのは?」

 

青葉「…多分、コレがある限り…」

 

首輪を撫でる

…薄い、ラバーで電子基盤を包んだ首輪

自分で外せばどうなるかわからない

 

…コレは、私たちの“地位”を保証し、“自由”を保証し、“無害”を保証する

でも、それは…地に落ちた

 

今となっては、言葉通りの“枷”でしかない

 

朝霜「…大淀サンは?」

 

青葉「わからない…」

 

朝霜「クッソ…!そもそも、なんで大淀さんは首輪つけてねぇンだよ!自分だけいい思いしてんのか?腹たってきた!」

 

青葉「…そもそも、艦娘かどうかもわからないから…」

 

朝霜「艦娘に決まってんじゃんか!」

 

青葉「……」

 

つけるか、つけないか

この、“外の世界”にいる以上は、つける義務がある筈だ

そして、塀の中ならついてなくてもいい

 

青葉(…明日から、どうしよう…)

 

大井さんは、私に仕事を紹介すると言った

でも、私は…首輪付きだ

 

働けたとして、どう食事を手に入れればいいのか

 

朝霜(…青葉さんの顔が、どうしても…どうしても、龍田さんとダブる…

ダメだ、コレじゃ同じだ、青葉さんが、潰れる…)

 

青葉「…?…朝霜ちゃん?」

 

朝霜「んっ!?…あ、な、なに」

 

青葉「どうかした…?考え込んでたみたいで…」

 

朝霜「……眠いなって、思っただけ…アタイ、今日はもう寝るや…」

 

青葉「…うん…」

 

朝霜(…青葉さんは、多分、明日もまだ仕事がある…いつ、打ち切られるかわからないけど、仕事に出てる間に…)

 

青葉(そうだ、明日、朝どうしよう…

外に出なかったら不審に思われるよね…仕事クビになったの、言いたくないなぁ…)

 

朝霜(青葉さんが居ない間に、アタイはここを出る

1人なら、青葉さんは…多分なんとか生きてける)

 

青葉(仕事に行くフリだけはしないと…

後、どうにか食事を取れる様にしないと…)

 

青葉「…はぁ…」

 

朝霜(……ごめんな、青葉さん

何もできなくて…でも、大井さんも、大淀さんだって…居るもんな、きっと、幸せになってくれるよな…?)

 

青葉(…どうすれば、朝霜ちゃんを…

私は、朝霜ちゃんを幸せにするって、決めたのに…)

 

 

 

 

青葉「それじゃあ、行ってきます…」

 

朝霜「ン、頑張って…いってらっしゃい」

 

…バタンと扉が閉まる

 

朝霜「……さよなら、青葉さん」

 

 

 

青葉「大井さん」

 

大井「おはよう、昨日は災難だったわね?」

 

青葉「…それは、もういいです、それより…」

 

大井「はいはい、ゆっくり話しましょう、まあ、座りなさいよ」

 

青葉「……色々、聞きたいことも増えました」

 

大井「なんで艤装を隠し持ってるのかって?」

 

青葉「それも…そうですね」

 

大井「前に話したでしょ?

夢を見るのよ、あの頃の、戦争してた時の夢

だから、武器が無いと、死ぬ気がして、怖くて怖くてたまらなくて、隠し持ってるのよ」

 

青葉「…言ってましたね

でも、だとしたらおかしいですよ」

 

大井「何がよ」

 

青葉「…普段、どこで寝てるんですか」

 

大井「この公園だけど」

 

青葉「…あの時、どこから持ってきました?

さっきの話の通りなら、すぐ使える様に手元に置いてある、もしくは…携行してると思います」

 

大井「……驚いた、たまには鋭いのね…ホントはね、私は今の時代に期待してないのよ」

 

青葉「時代?」

 

大井「…そのうち、また戦いが始まるわ

わかるのよ、戦争は絶対起こる、だから、私は、殺されるより殺す側に回るのよ

いざ襲われた時に、なにもできないなんてことがない様にね」

 

青葉「……ホント、肌身離さず持ってた方が…あれ」  

 

警官の人…?

 

大井「今日多いのよね、昨日の天龍とのやり合い、調べてるみたいで」

 

青葉「…あの、なんかこっち来ますけど…」

 

大井(…そりゃ、現場に艦娘いたらね)

 

警官「すいません、少しお時間よろしいですか?」

 

青葉「へぁっ!?わ、私ですか!?」

 

警官「はい、昨日ここで起きた事についてお伺いしたくて…」

 

大井(…撃った犯人私なんだけどね)

 

大井「ソイツ関係無いわよ、私といろんな店回って締め出し食らってるもの」

 

青葉「お、大井さん…」

 

警官「…そうは言われましても、ここで発砲事件、しかも、艤装と思われるものですので…

艦娘の方に何も聞かないわけにはいかないので」

 

大井「だとしても、なにも出てこないわよ

ずーっと私と一緒に、何軒回ったと思ってるのよ、誰も艦娘入れたくないとかふざけたこと言い出すし

ソイツはあんたら警察も、自衛隊ですら手を上げる相手と戦ってくれてたのよ?

そんな相手に向ける目なの?その目は」

 

警官「…失礼ですが、身分証をお見せいただけますか」

 

大井「無いわよ?私ホームレスだし、免許もなーにも無いけど?」

 

警官「……」

 

大井「なによ、その見下した目は…

アンタ、私に何か文句でもあるの?」

 

警官「いいえ、失礼しました、それでは」

 

青葉「……ありがとうございます、助かりました…」

 

大井「なに言ってんの、逃げるわよ」

 

青葉「へ?」

 

大井「あの警官、目の前で応援呼ぶか考えてたのよ…さっさとしないと囲まれるわよ!

それに、アンタは昨日何もしてないけど、その槍…艤装の所持も法律違反だから手荷物検査で艤装とわかれば1発アウトよ?」

 

青葉「そんなぁ…」

 

大井「わかったらさっさと逃げる!」

 

 

 

 

大井「ふう…とりあえずこの辺まで来ればいいでしょ…もうあの公園とはおさらばね、また探さないと」

 

青葉「…そう言えば大井さん、実はお金持ってますよね…?」

 

大井「そりゃあ、勿論…先が見えない不安はみんな一緒よ」

 

青葉「……大井さんなら、無理に今稼ごうとしなくても、十分やっていけるんじゃ」

 

大井「その気になれば、多分ね」

 

青葉「じゃあ…」

 

大井「でもそれじゃだめよ、私はバカになるの」

 

青葉「ば、ばか?」

 

大井「……過去の仲間も、トラウマも、全部忘れるのよ?

正気な人間で居たらダメなのよ、何もかも捨て去った、馬鹿にならなきゃ、忘れられない…」

 

…それが、大井さんがわざわざリスクを犯したり、確実じゃ無い手段でお金を稼ぐ理由…

 

天龍「なら今のオマエこそ、バカヤロウだな」

 

青葉「て、天龍さん?」

 

大井「あら、いきなりご挨拶ね」

 

天龍さんが大井さんを指差す

 

天龍「オマエ、神戸の大井だな、思い出した」

 

大井「っ…!…余計な事、言わないでくれる?」

 

青葉「……大井さんが、神戸?…大湊じゃ…」

 

青葉(ウソをつかれた?

どうして…?でも、私は…あれ……?…私って…?)

 

天龍「昔に衣笠に見せられた集合写真に居た、間違いない、そうだろ?」

 

大井さんが天龍さんに詰め寄る

 

大井「何の用事なのよ!それと、その名前は口にしないで!」

 

天龍「…なんだよ、昨日の事は悪かったが…」

 

青葉(…変、だな…なんでだろ…

そうだ、大井さんは私がウソをついたのを知ってたんだ、私が神戸の艦娘じゃ無いのに、神戸だなんて言ったから…)

 

天龍「…オイ、そっちの…青葉だったか、どうかしたのか?」

 

大井「青葉の前で、衣笠の話はダメなのよ…!

わからないけど、おかしいのよ…青葉は、おかしくなる…」

 

天龍「…どう言う意味だ?オイ、オーイ」

 

青葉「…?」

 

ゆっくりと天龍さんの方に近づく

 

天龍(…なんだ?…雰囲気が、違う…)

 

大井(また、あの時の、目…)

 

青葉「……あれ…?大井さんに、天龍?2人とも、知り合いだっけ?」

 

大井「…は…?」

 

天龍「オイ、どうしたんだオマエ」

 

青葉「どうしたって、何が?」

 

首を(かし)げる

 

青葉「なんでまた2人が一緒に居るの?

…そういえば、今何してたんだっけ…ああ…待って、ちょっと待ってね…今思い出してるから…」

 

大井「…あ…青葉…?」

 

青葉「青葉?…青葉って、青葉の事?なんで2人が青葉の話してるの?」

 

天龍「オマエ、何言ってるんだ…?」

 

大井「青葉、大丈夫なの…?」

 

青葉「いや、私は衣笠さんなんだけどー…?」

 

大井「…どういう…」

 

天龍「……」

 

天龍に平手で頬を叩かれる

 

青葉「っ…?」

 

大井「ちょっと!」

 

天龍「死人で笑えねえ冗談言うヤツなんざ、殴られて突然だろ」

 

青葉「…死人…?…誰が」

 

大井(…待って、青葉はこんな冗談言う様なタイプじゃ…)

 

青葉「……」

 

ふと、着ている服や自身の体をペタペタと触る

 

青葉「…あ…れー……なんか、違う?」

 

天龍「オイ、何ヘラヘラして…」

 

大井「待って!」

 

大井さんが天龍との間に入る

 

大井「神戸基地の管理者PCの最後のパスワードは?」

 

青葉「へ?それは機密情報っていうか…」

 

天龍「おい、オマエまで何を」

 

大井「いいから!答えて!」

 

青葉「…EOS1DXMk2…」

 

大井「……そんな…」

 

大井さんが崩れ落ちる

 

天龍「今のは…なんだ?」

 

大井「言ったでしょ…パスワードよ…神戸基地に所属してても、衣笠と私、後数人しか知らない…」

 

天龍「……オマエ、オレの好きなゲーム言えるか」

 

青葉「天龍ってゲームなんかしたっけ?

それなら体使っての遊びの方が好きでしょ?」

 

天龍「…コイツ…ホントに…?」

 

大井(衣笠だ…)

 

天龍(コイツ、間違いなく、衣笠なのか…)

 

青葉「…どーしたの?2人とも」

 

大井「…アンタは、私を…私たちを庇って死んだ筈でしょう…?なんで…」

 

青葉「違う…」

 

大井「違うって、何が…」

 

青葉「勝手に、殺さないでよ……私は生きてる、生きてるよ…!」

 

天龍「どういう意味だ」

 

青葉「どういう意味も何も、ほら…!死んでない…!」

 

大井「……その身体は、青葉のものでしょう…?」

 

青葉「……青葉…の…?」

 

…また、体を触る

 

青葉「あ、れ……そうか、だから変だったんだ…」

 

天龍「どうやって意識だけ蘇ったのか知らねえけど…」

 

青葉「食べてくれたんだね、青葉」

 

天龍「あ?」

 

青葉「…よかったぁ、ちゃんと、最期のお願い聞いてくれたんだ!

ホントに青葉の中で生きてる!アハハ!」

 

大井「……待って、あなた、青葉に会ったの?」

 

青葉「うん…ああ、ちゃ〜んと全部思い出したよ、全部、ね」

 

大井「……貴方は、自分を青葉に食べさせたのね」

 

青葉「そう、青葉に頼んだんだ

そして青葉は食べてくれた…だから私は…衣笠さんは、整体ユニットとして、生きてるんだよ」

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