食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
やっほー、北上様だよ
今日は
と言っても、この情報を仕入れたのはあたしじゃないんだけどね…
北上「阿武隈ー、浜に海水汲みに行くよ!」
まず、飲み水
あたし達は今、8人という、まあ大所帯
飲み水を確保するのも大変な訳ですよ
だからいろんな手を使って真水を作ってる
北上「……よいしょっと」
阿武隈「んぎぎ…重いぃ…」
北上「せめて台車とかリヤカーがあればね…いや、砂に捕まるだけかなぁ…」
さて、一つ目は海水を使って水を確保する方法
これは所謂蒸留ってやつだね
まず、海水を沸かす鍋を用意する
できるだけ広い奴がいいな、そこに海水を入れて、真ん中に容器を置く
この時、海水を入れすぎると容器が倒れて面倒なことになるから注意してね
北上「あ、それ入れ過ぎだよ」
阿武隈「えー…」
次にお鍋の蓋を逆さにして被せる、あ、間にタオルや布を挟んでね
あと、裏返した蓋の一番低くなる位置の下に容器があるのをちゃんと確認しとこう
そして最後に、蒸気を冷ますための海水を逆さにした蓋に入れる
ちなみに、蓋に穴が空いてる時は塞いでね
あとは火をつけて、塩と水が分かれるのを待つだけ
原理としては、海水を沸かしても水分以外は蒸発しないから、蒸気になった水だけを確保できるって事らしいよ
阿武隈「…あづい…」
北上「これ大変だよね〜」
ちなみに、ただの塩水でもできるから、
あ、ガラス製の蓋だと温度差で壊れるかもしれないから注意だよ
阿武隈「……え、これだけしか取れないんですか…?」
北上「継ぎ足し継ぎ足しでやっていこうか、じゃああたしは別の水回収してくるから」
さて、他にもいくつか方法はあるよ
木に袋を被せて、木から出てくる水分を確保したり、水分を多く含む木から頂いたりね
北上「ふぁー…疲れた……最近雨降らないなー…洗濯用に雨水貯めたいのに……あ…」
…ぐ〜ぎゅるる
お腹が空腹の信号を鳴らす
北上「…誰も居ない…か…聞かれなくてよかった…
うーん…駆逐達のご飯を獲りに行く前に、あたしの腹ごしらえ…しとこうかな」
さて、ここで出てきますは木を回る間に捕まえた…
北上「バッタに、カマキリ…と…」
拾った木の枝に串刺しになってる虫達に、煮沸でできた塩の結晶をのせる
そして、その辺の葉っぱにライターで火をつけ、よ〜く炙る
北上(…ちゃんと焼いて………もう少し?…あ、こっちはまだだ…)
丸コゲにするレベルでよく焼く
そして、焼き上がったのを…
北上「いただきます……あぐ…む……むぐ…」
食べてる時はできるだけ見ないようにしてるけど…
北上(…羽が歯に挟まるし、足のトゲトゲが痛いし…)
まあ、それにさえ目を瞑れば…海老のような風味…?
…なんか、こう…香りはエビなんだけど…味はまるで…
…薄味のかっぱえびせんみたいな…
カマキリの方は…なんか雑味が混ざってる、前食べた時はこんな感じじゃなかったんだけど…
北上「…ふう……5匹くらいしか捕まらなかったから、全然お腹膨れなかった…」
…動く分だけのカロリーは摂取したし、山に入りますか
北上「…やっぱキノコが狙い目かねぇ…でも、お腹痛いで済まなかったしなぁ……あっ…これ食べられそう…」
…逃げない分、山菜のほうがいいんだろうけど
でも、お肉も食べさせたいところ…
北上「んー……ちくしょー、こうなればタヌキでもキツネでもシカでもなんでもいいのにぃ…このままじゃイノシシとかクマに挑まなきゃいけなくなるよ……お?」
食べられそうな山菜発見
確か、これはこごみ
収穫のためにうずくまってゴソゴソやってると背中をさすられる
北上「もー、やめてよ阿武隈…」
肩に置かれた手を払いのけたけど、今度は少し強く押される
北上「だからさー、今忙しいの、見てわかるでしょ阿武隈…って…」
ところで、あたし…1人で山に入った気がするんだけど
北上「……まさか…」
…後ろに居たのは…
仔熊、ちっちゃくてふわふわの仔熊…
北上「…は、ははは、なんだー、お前可愛い奴だなー、名前つけるなら阿武“熊”だね、ははは」
北上(あー……よかった、死んだと思った…というか、コイツ食べれるかな……ぁ…?)
…まあ、そらそうだ
仔熊がいるという事は、親熊も近くにいる…
北上「…あー…待って、あたし無害だよ、ほら、ナニモシテナイヨー、この子食べようなんて思ってナイヨー」
あの親熊に言葉が通じるかわからないけど…
北上(もしかしなくても…めちゃくちゃ怒ってる……というか、これ目を逸らさずに逃げるとかそういう場合じゃ…)
熊がこちらに向かって走り出したと同時に背を向けて猛ダッシュで山の中を駆ける
北上「やっぱりこうなるんだね!予想はしてたけど!!!」
…艦娘の身体能力はアスリート以上
その事にこれほど感謝した事はない、多分一分ぐらい経ってるけどまだ追いつかれてない…
北上(でも距離は縮められてる…)
このままじゃ追いつかれて食われる、それだけは避けたい
生きたまま
岩に飛び乗り、木の隙間を通り、河を渡り、とにかく逃げる
もう後ろを見る事なく、死に物狂いで逃げ続け…
どれだけ経った頃だろう
北上「…つ…かれた…」
いつの間にか、山の麓まで出てきてしまった
そしてクマはもう追ってきてなかった
北上「……死ぬかと思った…もう山入りたくない…」
そしてあたりはすっかり夕暮れ時
そして回収したはずのコゴミはどっかいった
北上「…なんも獲れてないや…はは…やばい、黄昏てる場合じゃない…でも流石に夜は…うう…諦めるしかないか…
ゆーやーけ、こやーけーで、ひがーくれーてー…やーまーのおてらーのかねーがなるー…おーててつないで、みなかえろー…からすといっしょにかえりまーしょー……」
…ほんとはダメだけど、みんなには今日のご飯は我慢してもらうしかないか…
いや、虫食べてくれるならそれでも…いいや…
幼虫食べよう、幼虫…
もしだめなら今日の分も明日お腹いっぱいになろう…
北上(せめて釣りが上手くいけばな…でも釣具とか無かったし
ミシン糸とかでやったらかかっても魚に切られて釣れないし…
……ん?…なんか黒いのが…空から降りて……)
北上「…あ!?カラス!…よし、今日の晩ご飯は…お前だー!!」
良い子の
あたし?…すでに存在が法外だから…
まあ、それに…お腹減ってるんだもん
北上「…ただいまぁ……」
阿武隈「おかえりなさ…うわっ」
睦月「北上さん…す、すごい怪我してるにゃしぃ…」
北上「え?…あー…大丈夫、全然ヘーキだから」
熊に食べられてないから、全然オッケー
如月「…それ…カラス…?」
北上「そうだよ、これ食べよう、8人で食べるには少し少ないけど…」
…まあ、これで今日もご飯が食べられる
阿武隈「ところで北上さん、実はいいお知らせが…」
北上「…どしたの、ニヤついて」
阿武隈「じゃん!蟹です!」
阿武隈が見せてきたのはバケツに入った、小さな蟹…
20匹はいる…
北上「…え、どうしたのこれ」
阿武隈「海水汲んでるときに捕まえました!ちょっと岩場まで行ったらたくさん居ましたよ!」
北上「おお…よし、早速食べよう、あ、睦月、早霜に食べられそうな草取ってきて欲しいって伝えてくれない?」
睦月「了解にゃしぃ」
如月「待って、私も…!」
阿武隈「それで…どう食べます?やっぱり…スープにします?」
北上「そうしようか、蟹は殻から出汁が出るって聞いた事あるし」
カラスをぐらぐらと沸いたお湯に潜らせ、羽をむしる
そして次に嘴や目、食べられなさそうなところだけをできるだけ外して…
阿武隈「北上さんってカラス捌けるんですね…」
北上「んにゃ、昔鶏の捌き方の動画見たから真似してるだけだよ」
阿武隈(それでできるのはおかしい気がする…)
北上「お腹の開き方これでいいのかな……おっ、これが取らなきゃいけない内臓かな……
ねえ阿武隈、心臓とか肝臓って食べられるよね?誰かわかる?」
阿武隈「え、ええ…?」
北上「できるだけ食べたいんだ…!」
阿武隈「…カラスが何食べてるかわかりませんし、避けたほうがいいんじゃ…」
北上「…ぐぬぬ……と、とりあえず…内臓全部取り除けたし…これを細かくして鍋で煮ようか…」
阿武隈「蟹も入れちゃいましょう」
北上(っていうか…コイツでかい割に骨が多くて食べれるところ少なそう…)
北上「…まあ、いいや、ええとあとは…」
早霜「これで完成ね」
ひょっこりと現れた早霜が野草を鍋に入れる
北上「おっ…ありがとね」
カラスと野草と蟹の鍋…
……海と空と陸の味かぁ…
北上「いただきます」
阿武隈「ずずず……んー………美味しい…?」
如月「蟹…ちょっと硬いですね」
早霜「油で揚げたらもっと美味しいかもしれません」
北上「まあ、ないものねだりはしても仕方ないよ……ずーっ……ぷはっ…沁みる…」
野山を駆け回って必死に逃げ帰ってきた身としては…
生きてるって味だ…
蟹の匂いも鶏っぽい匂いもする、ちょっと混ざって変な感じだけど、十分おいしい
それにお肉…
北上「カラスうま…」
阿武隈「え、私入ってないんですけど!」
北上「蟹食べなよ、ほら」
阿武隈「固くて食べられないです!」
如月(私、無理やり食べたのに…)
早霜(口の中、痛い…)
北上「まだ鍋の中にお肉あるんじゃない?……ずずず…はー……早霜の野草もいい味出してる…」
味が出てるというか、野草なのに野菜みたいで癖がない
茹でたほうれん草みたいに柔らかくて、スープをよく吸って…
うーん…おいしい…
北上「…ごちそうさまでした」
…しばらく山には近づかないでおこう
熊の親子が私を忘れてくれるまでは