食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
朝霜「……はぐっ」
白米と塩だけのおにぎりを口に含む
…おにぎり3つ…これだけ持ってきた
あとは何一つ持たなかった
朝霜(…冷蔵庫の中に、一応作り置きも入れた
多分大丈夫、青葉さん…料理ヘタクソだからなぁ〜…)
…どうしてだろう、どうしてこんなに心が重たいんだろう
どうして、泣きたくなってるんだろう
辛くて、帰りたいのは、なぜだろう…
朝霜「……1人で生きるのって…大変なんだなぁ…」
大井「…衣笠、青葉の意識を戻す事はできないの?」
青葉「えー…?……って言われても、私もなんでこうなってるかわかんないしなぁ〜」
天龍「…身体を返す気はあんのか?」
青葉「んー……無いって言ったら?」
大井「いくら元仲間とは言え、許さないわよ」
青葉「元?それっておかしくない?
だってさ、私は身を挺して大井さん達を逃したんだよ?なのに元??衣笠さんは生きてますよー?
…なんで私が戻ったことを喜んでくれないの?」
大井「…それは…」
青葉「そんなに青葉がいいんだー!
…妬ましくなるくらいだ、凄いなぁ!」
天龍「……そもそも、オマエと青葉はどういう仲なんだよ、基地も違ったんだろ、現役時代に話聞いたことねえぞ」
青葉「いいよ?…教えてあげる、1人取り残された衣笠さんが、どうなったか、そして、なんで青葉が私を食べたのか」
大井「……」
青葉「…そもそもは、あの作戦が原因だったよね、大井さん」
…その日の作戦は、瀬戸内海へと侵入しようとした敵の排除だった
深海棲艦は神出鬼没で、レーダーも確実に探知できるわけでも無い、その時は急に大阪湾に現れ、明石海峡を越えようとしているときた
私達は、呉艦隊が四国の西から出撃すはのを援護するため、淡路島の東で迎撃する…
葛城「神戸!第三艦隊!出撃用意!」
大井「装具点検!」
衣笠「異常なし!」
朝潮「大潮、満潮、問題は?」
大潮「ありません!アゲて行きましょう!」
満潮「こっちも問題無し、っていっても…私はこれが初実戦だけど」
朝潮「大丈夫、私がついてます
至らなければ大潮も、衣笠さんに大井さん、葛城さんまでいます」
満潮「そうね…」
葛城「艦載機出すわよ!用意!」
衣笠「あ、大潮ちゃん、ホラ、ちゃんと握って」
朝潮「高速航行用意!」
葛城「発艦!ワイヤーの
先行する艦載機に引っ張られ、発進する
大井「報告では敵は駆逐と巡洋艦の水雷戦隊よ、すでに8体目撃されてるわ
数は向こうが多い、でも役割を間違えなければ問題ないわ」
朝潮「ホントに明石海峡から来るんでしょうか?
淡路島の南から回ってくる可能性は?」
葛城「ほぼゼロでしょ、いくら深海棲艦とはいえ、
大井「…それにしても、この作戦…敵の狙いは、四国で良いのよね?
だとしたら、橋の手前で戦うのはリスクがある」
衣笠「確かに、狙われるなら橋だと思うけど、上の指示には従わないと…多分、最悪、橋は…」
葛城「もしそうなったら、淡路島に住んでる人たちはどうするつもりなのよ…!」
大井「一度四国まで行って、大回りで別の橋を渡るしか無いわ」
朝潮「だとすると、かなり遠回りです、交通面は壊滅的な打撃ですね
そうならない様にしましょう!」
葛城「…会敵予想海域に到達!艦載機を着艦させるわ!」
衣笠「大潮!満潮!ネットの用意!」
大潮「準備オーケーです!」
満潮「装填完了!」
衣笠「よし!そのまま!」
葛城「偵察隊、発艦はじめ!」
大井「甲標的、潜航させるわ!」
葛城「…視認!…国際空港付近…!?四国に向かうんじゃなかったの!」
衣笠「マジか…これじゃ場所作る意味もない…ネット外して!通常弾装填!
進路東に変更!…まだ見えない!?」
葛城「15キロ先!視認範囲には入ってない!
大井!今、何匹か潜航した…!甲標的に何か…!
大井「5…6…8…12!?…報告はどうなってるのよ!12体!敵は12!!」
朝潮「12…!?」
大井「司令部!応答して司令部!提督!!」
衣笠「とりあえず、できることしないとダメだよね…葛城!」
葛城「攻撃隊!発艦はじめ!」
朝潮「前方!!」
大潮「あ!て、敵!」
衣笠(伏兵…!!)
青葉「司令部とは話が通じないし、艦載機があらかた離れたところで襲撃されるし
嫌なタイミングもあって、散々だったー…」
大井「…そうね」
青葉「その伏兵は倒せた、でも作戦目標は国際空港の駐留部隊の援護となり、私達は続行を命じられた
それ自体は…成功でいいのかなぁ、とにかく、
問題は帰り道だった」
天龍「帰り、か」
青葉「そう、消耗し切ってたから」
衣笠「…高速航行できない?」
葛城「うーん…この量の燃料じゃ無理かな…引っ張るのもキツそうだし…」
大井「…ねえ、衣笠」
衣笠「うん?」
朝潮「やはり、なにか電探に引っ掛かりますか」
大井「朝潮も?」
衣笠「……追手がいるの?」
葛城「だとしたらマズイわ、もう武装はほとんど残って…」
衣笠「大潮、満潮、ネットの用意、それと砲弾、共通規格のやつだけ分けて!」
大井「ちょっと…!」
衣笠「葛城!偵察機!一つでいいから出して!もし追撃して来るやつが居たら、このままじゃ逃げきれない…!」
葛城「あとで始末書書く身にもなってよね!!」
衣笠「ゴメン、生きて帰れたら衣笠さんが書いてあげるから!」
葛城が飛ばした艦載機が、見えなくなる前に撃ち落とされる
大井「…近い!」
衣笠「大井!葛城!3人を頼んだから!」
大井「何言って…!」
衣笠「足止めが必要!…それに、耐えれば応援が来てくれる筈!大丈夫だって!」
葛城「……呉も、さっさと来なさいよ…!」
衣笠「とにかく!みんなは早く撤退して!」
大井「だったら私も…」
衣笠「揺動は1人で充分足りる!
…衣笠さんにお任せ!…いつもみたいにね」
大井「っ……」
衣笠「お願い…!」
大井「…そんなの…」
葛城「せめて司令部に…」
衣笠「…っ…そんなの待ってられないって!」
1人だけ進路を大きくズラす
そして後方へ、デタラメに砲撃
大井「っ…衣笠!!」
葛城「追っちゃダメ!…無駄にしちゃ、ダメよ…!」
大井「……そんなの…」
青葉「ここまでは、大井さんの知っての通り
そして私は呆気なくやられた…」
大井「…やられた?」
青葉「そう、30分も持ってないと思う
助けも来ずに、死んだ」
天龍「待て、それじゃ話が繋がらない
青菜とオマエの関係性はわからねえままだろ」
青葉「そりゃそうだ、死んだ後に会ったんだもん」
大井「死んだ…あと?」
青葉「深海棲艦には2つ、有名なお伽話があるよね?」
大井「…人魚姫と…」
天龍「蘇り…?ウソだろ、そんなもん…!」
青葉「私が証明だよ」
大井「…そんな、こと…!」
天龍「信じられるか…!ふざけるな!」
青葉「“私”を否定するの?」
大井「……」
青葉「それに、まだお話は終わってない、まあ最後まで、聞いてよ?」
天龍「これ以上、何を聞けっていうんだよ…」
青葉「深海棲艦になれば、過去の記憶が戻る」
大井「…え?」
青葉「私は…自分の生年月日も名前、幼少期に過ごした場所、好きだった人、好きだったもの、嫌いな食べ物、嫌いな場所、苦手な物も…
そして、家族も…
全部、全部思い出した」
天龍「…んだよ、それ」
青葉「聞きたくなった、でしょ?」
大井「それが、青葉と関係するの」
青葉「するよぉ?だって、実の姉妹だったんだもん」
天龍「な…!?」
青葉「噂話で聞いたことない?
血の繋がった姉妹は、適性が似通う事があるって…つまり、そういうことだと思う
衣笠さんと青葉は実の姉妹でした!…なーんて、出来すぎてると思うけど、ホントに起こったからタチが悪い」
天龍「…会ったのか」
青葉「もちろん、すぐに探し出した
…でも、それは、食べるためだけどね」
大井「…どうして」
青葉「簡単だと思ったから、それに…
内地での、安全な広報官勤務なんて、ムカついたから」
大井(広報官…だから、基地を聞かれた時に濁した?)
天龍「そのくせ、失敗した、と」
青葉「…うん…会ってみたらさ、ダメだった…
最初に会った時に、ウソみたいな私を信じたんだもん」
大井「青葉…」
青葉「何度も何度も密会して、私は…もう、わからなくなってたんだ、青葉を殺して、食べないと…深海棲艦としては生きられないと思った
だから殺す判断をした…でも…
食べられなかった…路地に連れ込んで、襲いかかって、ひたすら痛めつけて、ようやくトドメって時に、手が動かなくなった」
大井「肉親は、殺さなかったのね」
青葉「違う…!そんなのじゃない…
青葉は、私が何をしても、目を逸らさずに私を見てくれてた…最後の最後まで、私の事を、信じてくれてた…最後まで人間として扱ってくれた、だから、私は…
深海棲艦である事をやめた」
天龍「…だから、食わせたのか?」
首を振る
青葉「食べてもらったのはもっと後
でも、それのおかげで…私は極力人間を食べるのを避ける様にした、死なない為に食べてたけどね…流れて来る水死体とかは」
大井「自分では、襲わなかったの」
青葉「……やった事も、勿論ある…
私だって生きたかったから…後悔は、してるけど」
天龍「…まさかお前が人殺しになってるとはな」
大井「アンタ、言い方ってものを知らないの?」
青葉「いいよ、大井さん…事実だし」
天龍「それで、何があってお前はそうなった」
青葉「…青葉も、いつの間にか出撃する様になってたの、ある日、海で出会った
全員、広報担当だったのか…すごく弱かった
私の他にいた深海棲艦たちが、あっという間に全滅させてた…青葉も、殺されるところだった
……私は、私を人間に戻してくれた青葉が死ぬのが許せなかった、だから…」
大井「深海棲艦同士で、戦ったって事…?」
青葉「ガラ空きの背中を撃つのは、すごく簡単だった…でも、私も強い方じゃない、最終的に全滅させられたけど、私も死にかけだった
青葉を、陸地まで連れて行って…もう動けなくなって…」
…鼓動が、早い、心臓がうるさい
頭が熱くて、ドクドクして…
青葉「…死にたくなかった、でも…私は…私、深海棲艦だったから…
なら、私はせめて…青葉の中で、生きたかったから…」
大井「衣笠、落ち着いて、息が荒いわ」
青葉「……大丈夫大丈夫…すぅ…はぁ…
タナトフォビアって知ってる…?死ぬのが怖かなりやすい病気みたいなものなんだけど…
ま、2回も死んでるとね…死ぬ事への感覚が鮮明すぎて…多分、そんな感じ…」
大井「…そう」
天龍「……」
青葉「…青葉、今、どうしてるの?」
大井「相変わらず、お人よしよ」
天龍「オマエと似た様なやつだと思う」
青葉「…そっか、流石、私のお姉ちゃんだ!」
大井「あなたは、どうするつもりなの」
青葉「…わかんないよ
身体の返し方も、私自身の、今後もね」