食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

91 / 157
家出

大井「…とりあえず今日はもう帰りなさい」

 

青葉「はーい…下宿まだある?」

 

天龍「んなわけねえだろ」

 

青葉「……家に案内してもらう事は?」

 

天龍「知らねえぞ」

 

大井「はいはい、私が案内してあげる」

 

青葉「ありがとう」

 

 

 

青葉「…ここが、青葉の家?」

 

大井「朝霜ー?朝霜ー!…居ないの?買い物かしら」

 

青葉「へぇー…同居人はどんな子?」

 

大井「クセはあるけど、悪い子じゃ無い、そういえばカメラ持ってたでしょ」

 

青葉「ああ、コレ?」

 

ポケットからカメラを取り出し、写真を見る

 

大井「たくさん撮ってたから

いろんな写真があるはずよ」

 

青葉「うん……ホントにたくさん…」

 

大井「……」

 

青葉「すっごいなぁ…青葉…毎日、楽しいんだろうなぁ…」

 

大井「衣笠、とりあえず朝霜が戻るまで私はここにいるけど、なにか不安とかある?」

 

青葉「そりゃあもう、何もかも不安だよ?」

 

大井「…まあ、そりゃそうよね」

 

青葉「〜♪」

 

大井(…これが不安なやつの顔かしら、ほんと…能天気なんだから…)

 

 

 

 

 

朝霜「……足痛え…歩くの疲れたな…休憩……ってダメだダメだ!さっきも休んだばっかだし…」

 

…朝、出てからずっと歩いた

ずっとずっと、ずっと歩いて、川を越えて街を越えて

 

朝霜(…京橋?…京ってついてるし、京都か…もう京都まで来たのか?意外と早く離れられたなぁ…)

 

…でも、ほんとに…疲れた

おにぎりは残り2つ、飲み物もないけど…

 

朝霜(どうやって生きてけばいいんだろう)

 

青葉さんとした約束は守らなきゃならない

悪いことはしない

 

アタイは、もう、悪事で生きたりはしない

 

朝霜(…大淀サンにでも頼めばよかったかな、寮付きの学校とか…)

 

…もう遅いか

全部全部ぜーんぶ、捨て去って、あたい一人で生きていく

もう誰かに迷惑をかけない様にする…そう決めた

 

朝霜(腹減った〜…でも、まだダメだ、これは明日の分…こっちは明後日の分…

もっと米貰っとくんだった…)

 

…休むために公園に入ろうものなら、親子連れが逃げていく

道を歩けばヒソヒソ何かを言われる

 

いつの間にか警察が後ろをついてきてるし、この酷い扱いはなんなんだろう

 

朝霜(ダメだ、イライラする…!

アタイはまだ何もしてないのに、なんでそんな目で見るんだよ…首輪がなんなんだよ、なんで艦娘が悪なんだよ…)

 

ストレスが溜まる

このままじゃ良くない…

 

朝霜(…どのみち明日もわからないんだ

イライラするのは、お腹が減ってるから…そうだ、晩御飯にしよう…)

 

公園のベンチに腰を下ろして、おにぎりを頬張る

 

…わからない

 

どうすればいいのか、どうやって生きていけばいいのか

また、帰りたくなる

 

足を止めちゃダメなのに止めたせいだ

嫌なことばっかり考える

 

…誰か教えてくれ

なんで街を平然と深海棲艦が歩いてるんだ?

なのに、アタイはあんな目で見られるんだ?

 

この首輪のせいなのか?

 

朝霜「……あン…?」

 

カ級「首輪付キダ…!首輪!首輪!」

 

朝霜(深海棲艦…?なんでこんなトコに…

いや、コイツ…アタイを…)

 

カ級が手を振り上げたかと思うと、手の皮膚が裂ける

 

朝霜「っ!?…ウソだろ!こんな街中で…!」

 

カ級「人気ナンテ、無イ!」

 

慌てて距離を取る

…流石に艤装は無いみたいだけど、手の爪だけで、肉まで斬り裂かれてる…

 

朝霜(クソッ!…やっぱ深海棲艦なんて…!)

 

カ級「久々ノ!食イ物!!」

 

朝霜「っ…!…ああ!もう!知るかぁぁ!!」

 

 

 

 

 

朝霜「っ…は…はぁ……う…ぐ…クソが…」

 

深海棲艦の死体を蹴り飛ばす

 

…全身ボロボロだ、現役の時でもここまで生傷だらけになることはなかった

 

朝霜「…クソッ!佐世保舐めんな…!!」

 

ボロボロだ…ボロボロな上に、残してたおにぎりも食えないほどぐちゃぐちゃだ

 

朝霜「……チクショウ…」

 

こんな奴らのせいで、なんで苦しまなきゃいけないのか…

 

朝霜「…あ…?…パトカーか…?」

 

…あんだけ派手に殴り合ってたんだ、そりゃ通報されててもおかしくない

 

朝霜「おーい…コッチ……は?」

 

…なんであたいが銃向けられてんだ…?

 

警官A「動くな!両手を上げろ!」

 

朝霜「ま、待てよ…?アタイは、襲われて…!」

 

警官B「動くなと言っている!!」

 

朝霜「っ…」

 

……なんで…?

 

朝霜「…なんで、だよ……」

 

警官A「さっさと手を上げろ!」

 

…震えを抑え、ゆっくりと手を上げる

 

朝霜(なんで…?なんで、なんでなんでなんで…!)

 

大淀「そこまでです」

 

朝霜「…大淀、さん…?」

 

警官A「なんだキサマ!」

 

大淀「こんばんは、外務省の者です、この艦娘は武器も何も持っておらず襲われた所を反撃しました

正当防衛ではありませんか?それが無抵抗な相手に取る態度ですか?」

 

警官B「なにを…!」

 

大淀「こんな小さな子相手に、殺しの道具を突きつけて尚、話を聞くことすら出来ないとは、それでも大人ですか?

そんなに怖いんですか?こんな小さな女の子が」

 

警官A「っ…だ、黙れ!」

 

大淀「そういえば、今現在、私も仕事中です

深海棲艦との関係を正常にする為、襲われたこの艦娘を、反撃の最中に深海棲艦を殺してしまったこの艦娘を事情聴取しなくては」

 

警官B「そんな出鱈目な話が通るか!」

 

大淀「おや、本当にそうですか?

…さっきから、肩の無線、鳴ってますよ?」

 

警官A「な…?」

 

警官が無線機の方に注意を向ける

…少しして、銃が降りる

 

大淀「ご理解いただけましたか?

…私は嘘はついていませんでしたよね?」

 

警官B「……後は、お願いします」

 

警官A「…くっ…」

 

大淀「一体、朝霜ちゃんの何が怖いのか

私にはわかりませんね」

 

朝霜「……あの…」

 

大淀「不幸でしたね」

 

朝霜「…なんで、ここに」

 

大淀「さあ?なんででしょう」

 

朝霜「……アンタ、何も信用できねえよ…

なんなんだよ!助けてくれたのはありがたいけどさ…!ずっと見てた様な口ぶりで…」

 

大淀「見てましたよ」

 

朝霜「ならなんですぐに助けてくれなかったんだよ!」

 

大淀「事情がありまして

それに…わざわざこんな遠出をする程の子を助けるのは、本人の意思を無視する行為なのではないか…と」

 

朝霜「っ…」

 

大淀「とはいえ、その怪我です、手当てくらいはさせてください」

 

朝霜「……」

 

 

 

 

朝霜「ここは?」

 

大淀「広報基地…まあ、いわゆる地本ってやつです」

 

…真っ暗で、机には埃もかぶってる

なのに大淀さんはなんでここにフリーで入れるんだ

 

大淀「見ての通り、今は使われてません

なので楽にしてください…ああ、そうそう、確か青葉さんも昔はここで働いてましたね」

 

朝霜「っ…そうなのか…」

 

大淀「…さて、手当です」

 

朝霜「ん……」

 

…全身傷だらけだから、包帯で固められた…

 

大淀「せっかくだし、そのボロボロのお洋服も変えましょうか、ほら」

 

艦娘用の制服…?

 

朝霜「…これ、何型の制服だ?」

 

大淀「青葉型です」

 

朝霜「重巡用なんて着れるわけ…」

 

大淀「これは宣伝用の試着品です、サイズもちょうどいいくらいですよ」

 

朝霜「……」

 

確かに、着てみればピッタリで…

 

大淀「よく似合ってますよ」

 

朝霜「なんの嫌がらせなんだよ…」

 

大淀「私は基本、人の自由意志を尊重します」

 

朝霜「…?」

 

大淀「でも、あえて尋ねましょう、戻る気はありませんか?」

 

朝霜「……無い」

 

大淀「そうですか」

 

朝霜「世話ンなった」

 

大淀「居なくなる前に、一つアドバイスを」

 

朝霜「…なんだよ」

 

大淀さんが包帯を差し出してくる

 

大淀「首輪をそれで隠せば…周りの対応は変わるでしょう…艦娘だとすぐにはバレませんから

…良かれと思って、あなたに首輪をつけた私が言うのも、変な話ですけどね」

 

朝霜「……」

 

確かに、首輪さえ隠せば…隠せば、周りの人間は…

 

朝霜「要らねェ…気持ち悪りィ」

 

大淀「そうですか」

 

朝霜「…アタイは悪く無い、おかしく無い…

変なのは、艦娘を差別する奴らだ……それをつけるのは、そいつらに負けたことになる」

 

大淀「かもしれませんが、あなたの身を守れます」

 

朝霜「アタイは負けねぇ!自分も曲げたくねえ!

今度こそ、あたいのせいで何かを失う道は歩みたくねぇ…!それをつけることは、アタイ1人の敗北じゃ無い!艦娘全員が、艦娘である事をを恥じたことの証明になる!」

 

大淀「……全員が、ですか」

 

朝霜「誰かの意思が折れて、負けた時点で…

それが露呈した時点で、全員がそうだと思われる…アタイは、アタイは負けねえ、一度だって、負けてねェ…!」

 

そう言って、部屋を出る

 

大淀「……行きましたか、仕方ない…

続けて尾行を、必要ならバレない程度に対処もお願いします」

 

瑞鶴「は〜い…はぁ…」

 

大淀「浮かない顔ですね」

 

瑞鶴「そりゃあ…左遷って名目で大淀さんについてった警護部隊に復帰できるって聞いてきたのに…

結局仕事は1人で尾行だし…?…後はよくわかんない調べ物ばっかりだし…」

 

大淀「……知ってるんですよ?串カツ、お好み焼き、たこ焼き、関西グルメを食べにここにきたの」

 

瑞鶴「えっ」

 

大淀「私がそのメールを送る様指示したので」

 

瑞鶴(手のひらの上だったか…)

 

大淀「…私は接待がありますので…あ、来ますか?美味しい物だらけですよ?」

 

瑞鶴「絶対遠慮します…」

 

 

 

 

 

大井「……いくらなんでも遅い」

 

青葉「そうだねぇ…」

 

大井「…私、探してくる、あお……衣笠はここで待ってて」

 

青葉「はいはい」

 

大井さんが部屋を飛び出す

…誰も居ない、1人になった部屋

 

クローゼットの前まで歩き、扉を開き、仏壇を見る

 

青葉「…ふふっ…あはは……青葉…もうしばらく、身体は借りるね…

だって、3回目の人生だもん…やりたい事、たっくさんあるんだぁ…いいよね!

…お人よしな青葉じゃ、きっと幸せになんか…なれっこないし」

 

代わりに幸せになってあげる

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。