食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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逃亡者

やっほー、療養中の最終兵器、北上様だよ

ちなみに、あたしが次解き放たれたら深海棲艦絶滅するよ…嘘だけど

するといいなぁ…

…でも、正直、深海棲艦倒してどうなるのかわかんなくなってきたよ

 

北上「……ふぁ〜あ…暇だな、ここ…こういう時って嫌な考えにだけよく頭が回るし、最悪だよ」

 

明石「すみません、でもまだ治ってないので、変に動かないでください」

 

春雨「もう少しの辛抱です、はい」

 

北上(…相変わらずゼリーしか食べられないし、このままじゃ(しぼ)んじゃうよ…)

 

北上「せめてご飯は食べられないの?食感あるもの食べたいんだけど」

 

明石「……」

 

北上「…ねえ」

 

明石「すみません、ご希望にはお応えできません」

 

北上(…まあ、ある程度読めてたけどさ)

 

…やっぱり、ここってある種の牢屋みたいな感じなのかな

とうとう捕まった、という考え方もあながち間違いでは無いのか

 

北上「……修復材の使用許可は?」

 

明石「出ましたが、使わせるわけには行きません」

 

北上「っていうと、明石さんが止めてんの?なんで?」

 

明石「修復材を使い続けるのは危険なんです」

 

北上「え、なにその今更すぎる情報」

 

明石「北上さんが上位者と戦った時に焼け落ちていたあの建物、覚えてますか?」

 

北上「……ああ」

 

明石「あそこを調査した部隊が焼け跡から回収したものの中に、炭化した生体ユニットの機材が散らばっていました

それも、3名分」

 

北上「炭化?焼け死んだって事?」

 

明石「違います、修復材による再生を繰り返し続けたせいで、オーバーヒート状態になった様です」

 

北上「オーバー…?

どういうこと?全然話が見えないんだけど」

 

明石「あの建物は、深海棲艦の食糧保管庫だった様です」

 

北上「食糧…?」

 

明石「艦娘ですよ」

 

北上「……まさか」

 

明石「深海棲艦が食べた部位を無理矢理修復材で復活させて、できる限り食用利用していたと」

 

北上「なにそれ…ふざけてるね」

 

春雨「…う……」

 

春雨が口元を抑えてうずくまる

 

明石「臓器売買に利用された形跡も認められたそうです」

 

北上「それ、大丈夫なの?あたしたちの内臓って体内に入っても…」

 

明石「もちろん、なんらかの異常はあるでしょう、でも、それ以上のお金になってしまう」

 

北上「……」

 

明石「さらに記録を読むと、修復材を過剰使用した艦娘の末路を知りました…使用限界を超えていた場合、廃人になる…

それだけじゃない、身体の再生にも限度があります、高頻度に使えば身体スポンジの様に脆く…」

 

北上「…もういい」

 

明石「……」

 

北上「春雨、無理に居なくていいよ」

 

春雨「すみません…」

 

明石「少し、春雨ちゃんには辛い話だったでしょうか?」

 

北上「かもね、でも…アイツらって、なんなの…」

 

明石「人を食べる獣ですよ」

 

北上「それが…人と同じふりをして…」

 

明石「そんなにおかしい事ですか?

…人が家畜を愛でる様なものだと、私は思います」

 

北上「あたしらは家畜って事?」

 

明石「敗者である限りは」

 

北上「……勝つには、もう一度戦争を起こすしかない」

 

明石「世間は許さないでしょう

物流も(とどこお)り、死人も大量に出る…平和な今を変えたくないでしょうから」

 

北上「平和?…平和、今、この、深海棲艦が暴れ回ってる世界が…」

 

明石「深海棲艦は、狙いを首輪付きの艦娘のみに絞って襲撃を繰り返している様です

決して他の人間や、首輪なしには手を出さない」

 

北上「なんでさ」

 

明石「人間が黙認するからですよ

艦娘ならいいか、艦娘なら、自分達じゃないから

これが仮初の平和のカラクリですよ…自分の身が保障されれば、その人たちにとっては平和なんですよ」

 

北上「……人間もみんなクソだね」

 

明石「絶滅戦争、という言葉があります」

 

北上「いなくなるまで、潰し合えって?」

 

明石「そうしなくては、おそらく深海棲艦がいなくなる事はないですよ

そして、私は政府の要請を受けてその用意をしています」

 

北上「…詳しく聞かせて」

 

明石「ご存知の通り、生体ユニットは、適性がないと扱えませんでした

しかし、その点を改良すれば、より多くの戦略を容易に確保し、人類の優位性を作ることができます」

 

北上「……艦娘を無尽蔵に増やすって事?」

 

明石「その認識でも構いません、老若男女問わない、誰もが兵士になれる装備を作るんです」

 

北上(…それは……)

 

明石「春雨ちゃんの義足、金属に生体ユニットを使って作った特殊金属製です、しかも、脳波でコントロールできます」

 

北上「……春雨は実験台ってわけ」

 

明石「気を悪くしないでください、アレのおかげで春雨ちゃんは普通に生活できてるんです」

 

北上「……」

 

明石「加賀さんにも同じ様な義眼を提供しました

もともと生体ユニットを搭載してるだけだってなじみも良い様で、この調子なら数年のうちに完成し、10年以内に開戦できます」

 

北上「…そう」

 

明石「気に入りませんか」

 

北上「…いや、合理的なんだろうね、あたしにはわかんないだけで」

 

明石「……」

 

北上「…ご飯になったら起こして」

 

明石「わかりました」

 

 

 

春雨「北上さん、ご飯ですよ」

 

北上(またゼリー食…)

 

春雨「きっともう少しの辛抱ですから…」

 

北上「んー…春雨は、いつまでここにいるの?」

 

春雨「へ?」

 

北上「いつまでここで大人しく待ってるの?」

 

春雨「……それは…その、帰る場所もなくて…」

 

北上「あるよ、横須賀に行けばいい

きっとみんな迎え入れてくれる」

 

春雨「そんな…私なんか…」

 

北上「……春雨、来る?」

 

じっと目を見る

 

春雨「……」

 

春雨は、少し目を閉じて悩むそぶりを見せる

けど、今度はあたしの目を見て…

 

春雨「わかりました、行きます」

 

北上「おっけー、ナビは?」

 

春雨「私も動けるのは限られた範囲だけなので…」

 

北上「まあ、仕方ないか」

 

ベッドから出て、伸びる

 

北上「んっ…ん〜……行くよ」

 

春雨「はい!」

 

部屋を出て、ゆっくり慎重に屋内を進む

 

北上(…廊下長いし入り組んでるし

しかも窓がないっていうか…まさか、ここ…)

 

春雨「どこなのかはわかりません…でも、もしかしたら…地下の可能性も…」

 

北上「…だよねぇ…」

 

春雨「はい…私も窓の外の景色は久しく見てません…」

 

北上「うーん……いや、丁度いいや、外まで案内してくれる?」

 

前方の十字路から、明石が出てくる

 

明石「…今ならまだ、散歩で済みますよ」

 

北上「無理、そーいうのもう要らないよ」

 

明石「っ……ああもう!…やるしかないか…!」

 

明石が構えをとって近づいてくる

 

北上(…素手?…せめて警棒くらい…いや)

 

北上「間合いがおかしい」

 

明らかに当たらない位置から突き出された拳を回し蹴りで弾く

 

明石「いっ…たぁ…!」

 

北上(ど素人だ…?…整備ばっかしてるから、戦いを知らない?ならなんで前に…まさか)

 

踏み込み、明石に掴みかかる

 

明石「ひっ」

 

北上「この距離なら、どう」

 

明石「!」

 

お互いが掴み合った状態で動きを止める

 

明石「…このまま真っ直ぐ行けば、1番警備員の少ない出入り口です、でも、武装してます…!」

 

北上「逃がしてくれるんだ…」

 

明石「私も、カゴの中の鳥なので…ってか、力強いですよ…!」

 

北上「本気でやらなきゃ、わざわざ偽装する意味ないしさ…!」

 

明石を投げ飛ばす

 

明石「うぁっ!?…った…!ああもう!

なんでこんな目に…」

 

北上「運が悪かったと思ってよ…」

 

明石「…何が、不満なんですか、私の研究の」

 

北上(…これは、ホントに聞いてるのか…

深海棲艦を絶滅させるために本当に必要だと思ってる?…でも、それじゃダメなんだよ)

 

北上「明石の研究が完成したら、それこそ艦娘は人間じゃなくなる、兵器として“存在”する事しかできなくなるよ

人間として生きられなくなるのは、ごめんだ」

 

明石「…!」

 

北上「人が扱うから艤装は兵器なんだ、あたしたちが兵器になるわけにはいかないよ」

 

明石「…まだ、自分を人間だと思ってるんですか」

 

北上「そうだよ?…あたしは、人間だ」

 

明石を横目に、先に進む

 

春雨「ごめんなさい…ありがとうございました」

 

明石「……」

 

明石(誰より、人間性を失っているあなたが…人間を語るなんて…

なんて酷い冗談…)

 

 

 

 

北上「ねえ」

 

警備兵A「ん?うぐっ」

 

警備兵B「なんだキサ…」

 

北上「2人だけか、余裕だね」

 

春雨(…相変わらず、やる事がめちゃくちゃですね…はい…)

 

北上「何してんの?さっさと行くよ」

 

春雨「は、はい!」

 

北上(…でも、このまま横須賀に帰るのは無理か

春雨だけでも送り届けなきゃ)

 

北上「お、なるほど、やっぱ地下だったのか」

 

駐車場に出た、奥の方には出口も…

 

北上「さてと、車で追いかけられたら困るなぁ…

でも流石に盗んでもなぁ…」

 

春雨「あ、あの…北上さん」

 

北上「ん?」

 

春雨「…ポケット…」

 

北上「ポケットが何?」

 

ポケットに手を突っ込む

何か、金属が…

 

春雨「さっき、明石さんが入れてました…」

 

北上「…キー?…バイクか…!」

 

確かに一台だけ…

 

北上「……(げん)チャじゃん…こういう時は大型のかっこいいやつをさぁ…」

 

春雨「は、早く行きませんか?」

 

 

 

 

 

 

北上「うわぁ…すっごい街中…」

 

春雨「都会ですよね…」

 

北上「何処だろここ」

 

春雨「……東京とか…?」

 

北上「かなぁ…あ、春雨は普段何食べてたの」

 

春雨「え…あのー…普通のご飯と言いますか…」

 

北上「ならはい」

 

ゼリーチューブを渡す

 

春雨「へ?あ、あの」

 

北上「お昼前に出たし、お腹減ってるでしょ、補給しときなよね

 

春雨「…いいんですか?北上さんは…」

 

北上「食べた気しないからいいよ」

 

でも、バイクで逃げるにしても…

 

北上(…あれ、今の看板…)

 

北上「見えた!?今!」

 

春雨「は、はい!新宿ってありました!」

 

北上「やっぱ東京じゃん!…うまく行けば明日には横須賀に着くねこれは…!」

 

春雨「はい!」

 

北上(…まあ、合流してからが、問題だけども…)

 

北上「とりあえず、今は横須賀に向かう…!」

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