領主館の一室で集まって街の名前を検討するはずだった。
お酒は少しだけで酔っぱらうほどではないのにいきなり話題がそれた。
◇◇シャロン視点◇◇
「まったくアランは鈍感すぎます!
リア様にあそこまで言わせるとは言語道断です!」
キレ気味のエルナの隣でクレリアがちょっと引きつった笑いをしている。
「あの様子だと王配になるって意味を絶対気づいてないわ!」
クレリアは恥ずかしいようなさみしい顔をしている。
「グローリア乗るときもリア様をないがしろにしてカリナさんと嬉しそうにしゃべっていたり、信じられる?」
さらにちょっと悲しい顔になった。
つい見てしまう。
それにしてもエルナはこういう系だったのね。
自身は恋愛とは関係はなさそうなのに、その手の話は普通どころがものすごく好きらしい。
「ところで王配とは何ですか?」とセリーナ。
そう、それ気になってた!
「王配ってのは女王の配偶者の事ね」
「つまり国を興したらアランが王なのだけど、スターヴェーク王国を取り戻したら時はリア様が女王で、アランが王配ね」
「「えっえ?」」セリーナとともに驚愕する。
帝国の風習に無いので全く思い至ってなかったのだ。
知識にある共同経営ならばビジネスパートナーでしかないので同じ様なイメージだった……
と言う事はアランとクレリアは婚約してるの???
「共同統治って形態は知らないので、王と女王なのか、王と王妃なのか、女王と王配なのかは判らないわ
でも普通は婚姻関係にある者同士だし、リア様はそれを意識しているのに、アランはそっけなさすぎやしない!?
アランは王家の政治的な地位が欲しいだけの様な人じゃないし、スターヴェークの民を国民にする引き換えにリア様と組んだのでしょうね」
エルナが鋭く食い込んでくる。
反対にクレリアは凄くシュンとしている。
「リア様、いったいアランになんと口説かれたのですか?」
「え?ここで話すの?」
流石にクレリアはもじもじしながら頬を染めている。
「秘密の約束でなければ是非聞かせてください」
エルナぐいぐい行くわね。
「……わかったわ、確かこう言われて
『俺が作る国はクレリアとの共同統治という形でもいい
そうだ、二人で力を合わせて国を治めていく。
しかし、予め言っておくが民に教育をする方針や方法、教育に関する法なんかは、全て俺に任せてもらう。
あと、可能な限り早く大陸を統一するという方針も譲れない。
これ以外の事柄であれば、クレリアが決めてもらって構わない』
幾つかの条件付きで受け入れたの」
「はぁぁ」エルナは盛大にため息をつく。
「この感じだとやっぱりリア様が共同統治になる事が王妃か女王になるって意味を絶対気づいてないわ!」
さらに落ち込むクレリア。
「ああリア様ごめんなさい
アランは好きでもない人にこんな事を言う人じゃないから、そこは心配しなくても大丈夫ですよ」
気付いたエルナがフォローしたら少しクレリアが立ち直る。
コロコロ表情が変わるのが可愛らしいが、自分も人の事は言え無さそうな気がしてた。
「ただ家族に対する好きであって、女性に対する好きじゃないのが問題よね
以前聞いたときには妹みたいだからと言ったのは嘘では無さそう」エルナは言う。
「……確かにアランは恋愛って要素がぽっかり抜け落ちているとは思うわ」とはセリーナ。
そうなのだ、あまりにも男性を感じないのだ。
他の男性からは露骨な視線を感じることはあるが、アランからはない。
そして私も暴露する。
「私たちの時は、何世代にもわたる統一作戦になるってことで増員をどうするか聞いたら
『個人的には、仮に私の息子や娘が出来たら軍に徴用するつもりだ。
彼らには親に勝手に人生を決められて気の毒だが、この作戦にはそんな事を言っていられないものが懸かっている。
これは、勿論強制は出来ないが、セリーナとシャロンにも出来たら同じことをお願いしたい。
でしたからね!」
「ええ!あなた達にもそんなことを言っていたの!?」クレリアが驚く。
◇◇クレリア視点◇◇
……そうか……そして二人ともそれを受け入れていたのね。
何時かの焦燥感がよみがえるが、それは以前とは違う感じだった。
「三人とも口説いておいて自覚がないとはどういうこと!
アランは一度きっちり詰めないといけませんね!」とエルナ
「「ホントですよ、きっちり説明して貰いましょう」」双子が同調する。
でもそんなところもアランらしくて憎めないのだ……とは思うが口にするのは恥ずかしかった。
「しかしアランがそんな無自覚じゃ、今後困ったことになりますね」
突然まじめなトーンでエルナが言いだした。
「まず男爵になった上に領地開拓成功のうわさが広まれば、姻戚関係を持ちたいという子爵や伯爵あたりが娘を嫁がせようとしてきますね
身分差はありますが、侯爵家あたりが狙ってきても不思議ではありません」
まって、エルナどうして貴族の婚姻関係にそんなに詳しいの??
後で聞いた話では騎士団の女性陣では割と定番の話題のようだ。
自分たちがその対象になるのだから話題が豊富で詳しくもなるものらしい。
「有力な平民ももちろん狙いますよ、男爵なら平民が嫁いでもおかしくないですからね
アリスタさんが婚約しているか判りませんが、貴族の教育を受けてますので貴族に嫁がせるつもりでしょう
そうだとすればこの開拓状況を見ればサイラスさんがごり押ししてきても不思議ではありません
もちろんカリナさんもつけて懐柔しようとするでしょうね」
それは何か嫌だ。何故かは言葉にならないけど嫌だった。
「そして開拓が王に認められて、辺境伯ともなるようであれば建前上降嫁することもできるようになります
王がそこまで認めているならと、さらに娘を嫁がせたい貴族は増えるでしょう」
それは良くない、建国を含めてこれからの段取りに支障が出るに決まってる。
どうすればいいか知恵を出し合うが、
・スキンシップを多めにする
・しかし色気で迫るとビビるはずだから、露骨にはやらずちょっと色っぽいくらいで迫る
・そもそも言質はとっているし既成事実化する
良い案は出なかった。
当たり前だ、皆あまりにそう言う経験が足りないのだから。
結局どこかのタイミングでアランに自覚させると言う話にしかならなかった。
「自覚させるにしても三人共とかは無理じゃない?」セリーナ
「私とセリーナはまぁ同じようなものだけど、リアの王配となるなら違うし」シャロン
え?二人とも三人前提でいいの??
「いえ、この大陸では四人迄は婚姻可能ですよ
もちろん全員平等に扱うことが大前提ですが、リア様が立場上特別なのは仕方ないとしても、アランなら誰か一人を贔屓することもないでしょう」
エルナが簡単にできますよ見たいに言う。
確かに珍しいがそうなのだ。大抵は家同士の関係などで問題になる事があり、実現はしないのだが。
「「え”!?」」セリーナとシャロンが声にならない声を出してる。
「「私たちの故郷は一夫一妻制なので思いもしなかった言葉が」」
「この大陸では男性のほうが数が少ないし、女性は出産で死ぬリスクが高いので複数の妻を娶るのは珍しく無いわね
さすがに四人とかはあまり聞かないけど、無かったわけではないわ」
と補足する。
「そもそも女好きなだけなら妻ではなく別に囲っていますから」と嫌そうにエルナ。
「ふーん、そうするとエルナも入れないと枠は埋まらないわけね」シャロンがニヤリとしながら言う。
「えぇぇ!無いです!無しです!私はリア様に忠誠を誓いましたから」
「いや、エルナ 一人だけ抜けようとするな」
あ、勢いでつい何か言ってしまった。
「ちょリア様、お酒飲みすぎてませんか??」
「ここまで来たら三人も四人も変わりませんから諦めたら?」
とシャロンがちょっと悟ったように言う。
「いえいえ、私は大丈夫ですから、三人で話し合ってください」
後ずさりしながら逃げるエルナ。
「まて、じゃあエルナは誰か想いの人が居るのだな?近衛の者か?」
今まで浮いた話を聞いたことが無いのでここぞとばかりに追求する。
「いえいえ、そんなの居ません」
「いや、詳しく聞かせてもらおうかしら」
「きゃーやめてください」
散々大騒ぎしてちょっと興奮が冷めてきたことで、少し気まずくなり顔を赤らめながらお開きにした。
そして本来の目的【街の名前の検討】は少しも進んでいなかった。
評価、誤字、脱字、御指摘、感想 等ありがとうございます。
この後書き溜めていますので、更新頻度は少し落ちます。