晩餐会までの間に幾つかの用事を済ませるべく、セリーナ、シャロンと連れ立ってでかけた。
目的の一つである魔術ギルドへ向かう。
貴族なら本来呼び出すものかもしれないが面倒なので自分で行く。
ガンツの魔術ギルドもやはり冒険者ギルドや商業ギルドよりもかなり小さい施設だった。
魔術ギルドの不遇さうかがえる切なさだ。
「こんにちは ギルド長はいらっしゃいますか? シャイニングスターのアランと言います」
「コ・コ・コリント卿でしょうか!? こちらへどうぞ 少々お待ちください」
横からまた貴族風の挨拶になってないとつつかれる。
受付の子が応接室に案内してくれたあと、奥にすっ飛んでいく。
ゴタニアのギルドの受付みたいだな、とちょっと可笑しい。
少しして初老の男性がやって来て挨拶をされる。
「コリント卿 ようこそいらっしゃいました ギルド長のカーリンと申します」
「よろしく アラン・コリントだ、こちらはセリーナ、こちらはシャロンだ」
「早速だがこの二人を魔術ギルドに登録してもらいたい
魔法の腕前は中々のものだぞ
それからもう一つは魔導液を入手したいので、準備してくれないか?」
「はは、承知致しました
失礼ですがコリント卿は魔術ギルドの登録は?」
ああ、そう言えばガンツでは立ち寄ってなかったなぁと思い出した。
ギルドカードを差し出しAランクだと告げる。
「こ、これは大変失礼しました」
平身低頭してるギルド長を見ると申し訳なくなってきた。
「お二方には魔法の実技で確認させて頂きます、こちらへどうぞ」
裏庭で二人が魔法の実演をしたところ軽く腰を抜かしてた。
ついでに俺の分もやらせてもらうと声が無くなってた。
応接室戻り、しばらくするとギルド長が戻りギルドカードが渡される。
確認すると二人はAランク登録、俺はなんとSランクになってた。
「皆様方の実力からすると全員Sでもおかしくないのですが、新規登録の手続き上いきなりとは行きませんので申し訳ありません
お二方には次回ギルドに立ち寄って頂ければSランクで更新いたします」
「ああ、配慮感謝する」
「とんでもございません
それと魔導液は如何ほどご入用でしょうか?」
「そうだな、それぞれ十は欲しいところだ」
「承知致しました、まとまった量になりますので後程お届けします
シャイニングスターのクランのホームでよろしいでしょうか?
代金もその時で結構です」
お、いたれりつくせりだな。
「分かった、受け取るときに支払うよう手配しておく
ああ、あと今後も継続的に購入するつもりだ、切らさない様に頼むぞ」
「はは、ありがとうございます」
魔術ギルドを後にしてホームへ戻る。
「しかしこれで魔術師Sランクとかいいのかね?」
「アランの実力なら当然すぎるでしょう」
「そうそう、SSとかSSSでもいいと思うわよ、有るならだけど」
「そんなもんかね、まあ王都で見た魔術師もそれ程の使い手も居なかったからそんなものなのかな?」
「そうですよ」
まぁそうしとくか。
「そういや冒険者ギルドの挨拶してないけど、まあいいか」
「良いんじゃないですかね、行っても特に変わらないし」
今行ったらSランクにしてくれそうな気はしたがもういいや。
◇◇◇◇◇
サイラスさんに招かれた晩餐会は以前と同じ形で行われた。
衣装は王都でしつらえた物もあったが、あえて前回と同じ制服にしている。
クレリアたちも同様であのゴスロリ衣装と帝国のドレスだった。
「では改めてアラン様 叙爵おめでとうございます 乾杯!」
「ありがとうございます でも今は身内だけなので今まで通りアランでお願いします」
「そうか、じゃぁ遠慮はしないぞ」
「ええ、そのほうが嬉しいです」
「アラン様 『お願いします』というのは気を付けたほうが良いですよ」とアリスタさんの指摘が入った。
「慣れないもので、注意してくれるのはありがたいです」
「……そういうところですよ、
「やはり貴族様は柄じゃないな」
と愚痴る。
クレリアはくすくす笑っている。
幼いころから貴族として育てられたクレリアやエルナならともかく軍、しかも航宙軍が長い自分にはやはり居心地が悪い。
「それで王都はどうでした?」
アリスタさんに聞かれ話し始める。
「まず王都に着く前に盗賊に待ち伏せされる所から始まりました」
「盗賊狩りを盗賊が待ち伏せてたのか?傑作だ!」
「混成のよく解らない集団でしてので、誰かに雇われたのでしょうけど、まぁ賞金に化けました」
「アラン様にかかると盗賊も荒くれも関係なしですね」
「次に宰相に会ったのですが、いきなりちょっとあれな対応でしてね」
「そうか、あまりいい噂は聞かないし、ユルゲン様と懇意なようだからな」
「そして儀典官にはいきなり紋章を明日までに決めろと言われまして、
まあ紋章は決めていたの問題なかったのですけど」
「わはは それであの話か」
すごく嬉しそうな顔なので、かなり受けている。
「そうです、工房に持って行くと『こんな奇天烈な紋章は初めてだぜ』からのアランですって自己紹介はさすがにあたふたしてましたけどね」
ちょっと話を盛っておこう。
「そりゃあちょっと見たかったな」
「まあ、男爵を名乗るよりもシャイニングスターのアランだって言うほうが話早かったですね」
やれやれって雰囲気で話をする。
「そりゃあシャイニングスターと言えば王都にまでその名を響かせているからな」
「あと服もこの服ではダメだったらしく特急で仕上げる羽目になりましてなかなか大変でしたよ」
「まぁ貴族社会ってのはそんなもんだ、格式は中身でなく見た目でしかつけられないからな」
おっと、サイラスさんなかなか辛らつだ。
「俺は仲間に恵まれましたから切り抜けられましたが、ただの冒険者だと難しいですね」
服を手配してくれたカトルや、マナーを教え込んでくれたクレリアとエルナが居なければ途方に暮れていたというのは間違いない。
「貴族の世界は伏魔殿だからな」
「それでもまぁバタバタでも何とか叙爵式まで来て、国王に謁見して、徐爵してもらってやっと終わった
後は引き揚げるだけだ!と思ったときに国王から突然声をかけられましてね」
「『盗賊狩りと呼ばれているのか?』と突然言われて予定にない事だったので大層慌てましたよ
何せ全部事前に決まっててそのとおりに進むと聞いてましたから、
さらに『王都でどれだけ狩れる?』と、聞かれたことから見栄を張って『五百以上捕まえて見せます」って言ってしまい大変でした」
「そりゃ凄いな」
「そしたら宰相からは護国卿を与えてはどうかという話が出まして」
「護国卿だと!国で三名しか任命されないのに良くもなぁ!」
流石のサイラスさんも呆れてた。
「宰相が何を企んでたのか分からないですけど、事前に決めている感じじゃなかったのは確かですね
でまぁ盗賊退治にのみ限ることで任命されました
そのおかげで守備隊を自由に使えましてスムーズに進みましたのでラッキーでした
さらに賊から奪った金品は守備隊と山分けする事にしたら、みんな張り切りまくりで捕まえる捕まえる
王都だけで五百名くらいとっ捕えられましたよ」
「アランたちに目をつけられた盗賊に同情するぜ」
ニヤリと全然同情してなさそうな笑い方である。
「その辺りまでやったところで、流石に賊も逃げ出して王都の南に避難してるのがわかりましてね
部隊を率いて急襲したら、洞窟の入り口を塞いで立て籠もってました」
「ほう、それでどうしたんだ?」
「魔法部隊で攻撃して入り口を壊し乗り込んだのですが、人質を盾に取って引き上げろと迫ってきました
埒があかないので『…… 俺との一騎討ちで決めるっていうのはどうだ? そっちが勝ったら全員逃がしてやろう』って言ったのですが乗ってきませんでした」
「そりゃアランの噂を知っていたら誰もが受けないだろ」
「そうですね、そこでセリーナの出番ですよ」
「彼女に勝ったらと言う事で話がまとまり、決闘が始まりました
もちろん奴らはセリーナの実力を知らないわけですからね
可愛い小娘くらいに思ったんじゃないですか、そんなわけ無いのにね」
「ア・ラ・ン!」 セリーナ怖いから
「相手もかなりの実力者でした、神剣流道場の師範代って言ってましたね」とエルナ
「そうですね、殺し過ぎて破門になったと言ってたから元だけど」とセリーナ
「お互い魔法剣を使いましたらギャラリーになった兵士と冒険者は大騒ぎです
まあ何れにしてもセリーナの敵ではなくて、何合か切りあったあとにセリーナの剣が一閃して決着が着きました」
「それはコリント流が凄いのよ、剣神流同士なら苦戦してたわ」
それは恥ずかしいから止めてほしい。
「その時のセリーナの姿は、眩しいくらいにかっこ良かったですね」
「アラン やめてください」
コリント流のお返しだ。
「それはさぞ見栄えしそうだな、見れなかったのが残念だよ」
「セリーナ様の勇姿見たかったですね」
え?アリスタさん流血沙汰大丈夫なの??
「それはもう それで結局追加で三百名、合計八百名を捕まえまして依頼は達成です
王様からお褒めの言葉と報償をいただきました」
「アラン様の話を聞いているとまるで物語のようですね」
「おう、劇にすると大ヒット間違いなしだな 今度うちで今度舞台化を考えるか」
「いやいや、それだけはやめてくださいよ」
もしそんなことになったら恥ずかしさに悶え死ぬのは確実だ。
「それとアレだ、ドラゴンはどうだったんだ?
「あれはここに現れたグローリアでしてね、王都を通りかかったところ自分の気配があったんでちょっと寄ってみたようでした」
まぁ誰も信じないだろうけど対外的にはこうしておく。
「ドラゴンにとってはちょっと立ち寄ったぐらいでも、城は大混乱ですよ
守備隊には手を出すなって止めたのですが、効きもしないバリスタ持ち出しできたものだからグローリアが焼き払いましてね」
「おかげでお城に若干被害が出まして、少し顔が青ざめました」
「まぁ怒っているわけではなかったので、話をして帰ってもらいましたが城の被害を弁償しろって言われないかヒヤヒヤしてました」
「……アラン 問題はそこじゃないぞ」かぶりを振ってやれやれという雰囲気だ。
料理が運ばれてくる。
そしてしばらくドラゴンの話を披露した。
「ふーむ、それで領民のほうはどうしたんだ?」
「盗賊退治の合間に職人ギルドに行きまして、ギルドに依頼して五百人とその家族を雇いました
この前話したように雇用期間は五年でその後独立するなら工房を世話するという条件です」
「何度聞いても太っ腹だな」
「後はゲルトナー司教と懇意になれたことですかね
領地への派遣をお願いしたところ一度は無理だと断られましてね
諦めずもう一度伺ったときに丁度大司教に選ばれまして、
一存で司祭とシスター五人の派遣を決めていただけました」
「何だと!! まさか教会が開拓できるかどうかも分からない領地へ司祭を派遣してくれただと!」
「アラン様 何という事でしょう 素晴らしいです!」
「アラン様 流石です」
三人ともかなり驚いているが、やはりこれが普通の反応なのか。
「そうなのですね、無理を押してお願いした甲斐がありました」
「はああー軽く言っているがお前はこの重大さに気付いてないな
司祭が派遣されると言う事は教会が開拓にお墨付きを出したのだぞ!
教会が有るか無いかで開拓地の領民募集でどれほど違いがあるか」
「ありがたいことです、ただ引き換えに大司教が支援している孤児院出身の孤児五百人を面倒見ることになりましてね
これでちょっと運営の予算が一気に厳しくなりましたので頭を抱えています」
「そりゃ五百人を食わそうと思えばとんでもなく費用が掛かるよな」
「しかし大司教様から『彼らは孤児という生まれから、まともな職には就けないのです
彼らの大多数は、犯罪者か娼婦になるしか選択肢がないのですよ
是非、連れていっていただきたい
少しくらいひもじい思い、つらい思いをさせても構いません
この王都にいるよりも辺境に行ったほうが、ずっとマシな人生を送れるでしょう』とまで言われると断れませんでした」
「なるほどな、大司教様は素晴らしい方のようだな
それを断れるなんてとんでもない不信心者にならなくて良かったな
しかしまぁ王都に行っていきなり大司教様に面会出来て、そこまで言ってもらえる奴は他には居らんぞ
本当に大したやつだ」
「ほんとに驚きです」
まぁ使徒を装うとかお布施だとか細工したおかげでなのだが。
「それとあとはクランメンバーの家族や仲間たちが集まりまして、かなりの大所帯になりました」
「それも含めてお前の人望だろう」
「ありがたいことです」
お酒が運ばれてくる。
「それにしてもお酒の方も順調そうですね」
「ああ、引く手数多だよ
それになあれから少し工夫していい具合のブレンドがわかったんだ
今日のは自信作だ」
「確かに以前のものより、香りがよくてなおかつすっきりしてますね」
「まったくアラン様様だよ」
「そういえばガンツにいる間はあのホームに泊まるのか?」
「ええ、そうですね あそこが俺たちのホームですから当面変える予定はないです」
「そうか、しかしあそこは男爵様が使うにはちょっと合わないな
良ければこちらでガンツの滞在場所を探してやるぜ
いやぜひ我々で場所を準備させて下さい、だな」
「いや、流石にそれは悪いですよ」
「いいや、アランたちへの恩義は返しきれないくらいある
そしてドラゴンの件や酒でも随分といい思いさせてもらったしな 遠慮するな」
「そこまで言われると断れないですね、ありがとうございます」
料理とお酒を堪能したあと、サイラスさんの見送りを受けながら後にした。
◇◇◇◇◇◇
「お父様 アラン様の話は本当に物語のようで信じられない内容でした」
「ああ、あいつ以外が言うとただの大法螺吹きだ
しかしここでやったことを考えれば、あれでもかなり控えめな話かも知れんな」
「アラン様は決して誇張されるタイプでないのでその通りだと思います」
「商業ギルドとしてはアランの領地は無視できなくなるな
今はガンツの商業ギルドを頼るしかないが、いずれ自前で商業ギルドを構えるだろう
ここは賭けるタイミングかも知れん」
「何を?」
「カリナ 明日ギルドに行ってアランの領地に支店を出すプランを作ってくれ」
「ええ?」
「普段ならそんな無茶が通るわけはねぇ、しかし教会の司祭が派遣されてくるなら別だ」
「確かにそれなら」
「うるさいやつらは教会のお墨付きが出てるって黙らせてしまえ、頼んだぞ」
「はい、分かりました」
「まずは最低限でもいいので運用ができるようにな
次に可能な限り支店もしくは本部としてと言いたいが最短で出せるよう建物も費用も見積もってくれ」
テキパキとカリナさんに指示を出し話を進めていく。
そして考え込んでからふとつぶやいた。
「……それに引き伸ばしてるアリスタの件も考える時だろうな」
「お父様……それは無理だと思いますよ、彼女たちがいる限り」
「それでもこのチャンスは逃すわけにいかんだろ
俺はまだワンチャンスあるとみている
お前が嫌でなければ動いては見るさ」
「嫌はありませんが…………」
「…………」
カリナが悲しそうに目を伏せるのはアリスタも気付いていた。
評価、誤字、脱字、御指摘、感想 等ありがとうございます。
前回この後書き溜めていますと書いたのに、気が付けば何故かラスト3話を書き終えてて、続きはほとんど進んでません。_(┐「ε:)_
代わりに今後もしどこかで更新が止まっても一年後にはラスト3話が自動公開されます。