いよいよ明日には領地に入植者が来るのに、前回脱線して決められなかった街の名前はそのままだ。
事前にメンバーは各自それぞれ案を持ち寄るということにしておき、集まったのだが…
どうしてもこれだと言う名前が無く、各自も自分の案を推すほど自信のあるものは無かったであった。
全くアラン面倒な事を投げて来てとか愚痴を言うとまた脱線しそうになるのを何とか踏みとどまる。
結局明日は領地への移動のため、朝が早いからもう寝ようとお開きになった。
まさかの街の名前が決まらずに入植となったので、皆しょんぼりすることになってしまった。
◇◇◇◇◇
入植一日目
前日からガンツに到着していた職人とその家族が正門前に集まりつつある。
カールや冒険者ギルドにもお願いして警備と隊列の整理を手伝ってもらっている。
「アラン様 王都に行って男爵になったかと思えば、いきなりこれだけの入植者を引き連れてを帰ってくるとは思いませんでした
さすがドラゴンスレイヤー様は違いますね」
「カール そうだな、俺もここまでとんとん拍子で進むと思わなかったよ
あと、この冒険者装備の時だけでも今まで通りにしゃべってくれないか?」
冒険者ギルドを通じてカールには別に正門の警備と護衛依頼を出してあった。
「人目がある時はそうは行きませんのでご勘弁ください」
「世知辛い……」
男爵の地位と引き換えに失ったものも多い……これは考えてなかったなぁ。
そこへ守備隊のギード隊長がやってきた。
「アラン様 おはようございます
今のところは問題ありません」
「ありがとう ギード隊長
これから三日間はこんな感じになるがよろしく頼む」
「は!お任せください」
「カールもよろしく頼むよ」
「任せてください」
先導するサテライト一班も定位置についているので、そろそろか。
今回も挨拶することになっていた。
「皆の者、アラン・コリント卿より御言葉がある。傾聴せよ!」
ダルシム副官の言葉で皆が跪く。
「シャイニングスターのアランだ
みんなよく無事にガンツまで来てくれたことに感謝する
あと一息でわが領地に到着する
最後まで気を抜かず進んでくれ
くれぐれも遅れないように頼むぞ
これよりわが領地に向かう 出発!」
隊列を組んで職人たちを連れて行く。
出発を促すサテライトのチームにはこの先の注意点をしつこく説明するように頼んだ。
・トイレとかによるために森に近づかない事
・遅れそうなら後ろを先に行かす事
・一日の移動距離はかなりになるので無理をしない事
・ドラゴンがいるが街の護り竜なので騒がない事
最後の件は森を抜けた所でも再度伝えるように人を配置した。
逃げる所はないが、パニックになっても後ろにまで伝わると大変なことになる。
俺たちは先頭で進み危険そうな魔物を狩って行く。
とは言っても街道に近寄った魔物は夜のうちにグローリアやドローンが始末していたので、魔の大樹海とは思えないくらい少ない。
峠で一度休憩し、サテライトのメンバーにこの先の注意点を説明するように伝えた。
さらに森の開けたあたりでもサテライトのメンバーに残って移民に声をかけるように指示しておく。
一つ失敗していたのが別途日程を取って主要なメンバーを領地に案内しなかったことだ。
日程で余裕が無かったのもあり省略したのまずかった。
案内するサテライトのメンバーでさえクレリアやエルナ同様になるのは仕方がなかった。
昼から正門を開けて第一陣の到着を待つ。
グローリアもワクワクして持ち望んでいるので、来る人が混乱しない様に隣に立って声をかけることにした。
「ドラゴンだ、ほんとにドラゴンがいるぞ」
「なんてことだ……なんてことだ……」
「そこ、馬車を止めるな、進め!!」
森を抜け、街が見えだしたあたりで混乱が起こっている。
サテライトのメンバーが必死に整理しているが、混乱は収まりそうにない。
「お前ら、コリント卿に念押しされただろう!
恥をかかせるのか?王都に送り返されるぞ」
さすがにその言葉で我に返った職人たちはのろのろと進み始める。
それでも一度前がつかえてしまうと後ろは渋滞する。
あれだけ声をかけておいても、結局町のすぐそばで旅程で最大のトラブルになっていたのは辛いなぁ。
門を入って広場でもまだ混乱しており、門をふさぐことになっている。
結局この日は日没までに門の中に誘導するだけで精一杯であった。
そのため多数の職人たちは建物の割り振りが間に合わず、広場で野宿したのであった。
係りの者たちは頑張って案内してくれたが、結局翌日までこの混乱は続いた。
かろうじて司祭とシスターは教会に案内し野宿することは避けられた。
あと文官候補も何とか集めることができたので、夜にクランの主なメンバーを集めて、今日の反省と明日の段取りを決めたのだった。
日がとっぷり暮れたころ、クランのメンバーすら部屋に案内できなかったことに気付いた。
ああ、食事の配給もまだだったよ、と思ったらカトルがウィリー、ペーター、ユリウスなどに指示して配るところだった。
さすがよく気が付く。
◇◇◇◇◇
二日目
朝から昨日来た職人に指示を与えていく。
まず、昨日到着遅れの混乱でできなかった住居の割り振りを行う。
一旦荷物を置いてきてもらい、職人のみ再集合するように指示を出したところで昼近かった。
人数が五百名ともなればかなり混乱しているが、王都の職人ギルドが仕事をしていたのである程度組織化されていた。
また移動中にも自然とグループ化されていのが、救いだった。
王都で購入した本も届いたので領主館に設置した図書室に入れるように指示する。
本棚もまだなのでこれも職人に依頼しないといけない。
準備が出来た木工職人には窓や扉の製作から取り掛かってもらった。
金属を扱えるものはとりあえず釘や蝶番、鍵の製作だった。
今日もやることが多い。
午後になって次の孤児たちの一団が到着しだしたた。
「ドラゴンだよ、見ろよほんとにドラゴンがいるぞ」
「スゲーカッコいい」
「怖いよう」
「そこ、馬車を止めるな、進め!!」
あぁ、これ昨日見た光景だ。
まったく同じように街が見えだしたあたりで混乱が起こっている。
サテライトのメンバーが必死に整理しているが、混乱は収まりそうにない。
ようやく街に入った孤児たちへ、四つのパターンで割り振った住居を文官が伝えている。
・男子同士
・女子同士
・兄弟姉妹
・パートナーあり
この世界では当たり前だけど十五歳ともなれば成人扱いされるのでパートナーがいることは多い。
この辺りの知識の教育も喫緊の課題だよな……
孤児たちは出身の教会によりグループ化されて各リーダーが居るので彼らを集めてもらう。
その後今後町で暮らすためのルールや注意点を伝える。
共同浴場やトイレの使い方から、学校の場所や毎日鐘が鳴るまでに集まることなどを指示する。
この子たちはのちの航宙軍候補なのでセリーナとシャロンは張り切っている。
王都で保護した四人姉弟と話をしている。
俺としては子供らしくのびのび育ってほしいが、この世界はそう優しくないんだよな。
◇◇◇◇◇◇
三日目
ロベルトの率いていた辺境伯軍の人々はさすがに統制が取れている。
ドラゴンを見て驚愕しているけれども、歩みを止めずに進んできた。
ようやく想定通りに進み、心底ほっとした瞬間だった。
初日からの混乱が続く正門前の広場であったが、辺境伯軍はてきぱきと手続きを進めていた。
「ロベルト さすが辺境伯軍はよく訓練されているな」
「アラン様 お褒めの言葉ありがとうございます」
数名の者がロベルトに気付き、駆け寄ってきた。
「セリオ様 我ら無事合流できましたことを報告します」
「その報告を私にする前に先にこちらのコリント卿へ挨拶をしなさい!」
それまでロベルトに会えて興奮していたのだろう、ロベルトの一喝でようやく俺に気付いたようだ。
「コリント卿 申し訳ございません 我ら元辺境伯軍、全員無事到着いたしました」
最敬礼で報告されるので、慣れない貴族ロールで応答する。
「よくぞ無事到着してくれたことをうれしく思う
この後まずは住居に荷物を置いて来るように
その後文官と女官について、あちらで手続きをしている者に声をかけるよう伝えてくれ
騎士たちはヴァルターかダルシムに従ってほしい」
「は!承知しました」
「よろしく頼みますぞ」
ロベルトが声をかけたところで彼らは戻っていった。
「アラン様 無作法で申し訳ありません」
「いやいや、まだ来たばかりだから混乱してて仕方ない 気にしなくていいよ」
「それでは示しがつきませぬぞ、われらはアラン様の実力を知っておりますが侮られるようでは困りますゆえ」
「そこは仕方ないな 人間急には変われなくてね」
「それでも上に立つ者の宿命ですから」
「まあそう言うのはリアに任せるよ、近いうちに声をかける場を設けよう」
「ご配慮ありがとうございます」
クレリアの立場も考えておく必要があるのだが、一先ずは元スターヴェークの民に挨拶する場を設けることが必要だ。
「そういえば残りの者たちはどうなっている?」
「ここに来る前に連絡がついた者たちには、可能な限り速やかにこちらに合流するよう伝えろとは指示しております」
「わかった」
「アラン様 お願いなのですが、領地が少し落ち着いたら私はもう一度旧ルドヴィークと旧スターヴェークを回り民を集めてこようと思います
何分普通の領民では移動もままなりませぬゆえ」
「確かにそうだな、ダルシムやヴァルターと相談して希望者を募り百名ほど率いて行くといい」
「ありがとうございます」
「野に散った者たちはそれで集められるかもしれないが、住み着いている者たちは移動は難しいのではないか?」
「はい、屋敷や畑を持っている者の中には棄民となるのは難しい者も居りますでしょう、今は雌伏する時だと伝えてはおります」
「ふむ、少し資金を持って行き陰ながら支援して欲しい」
「はは」
「そうだ、半分は商人に変装して商売の品として魔の大樹海の素材を持って行くのがいいな
セシリオやアロイスで換金し、旅とここに呼び寄せる資金の足しにしてくれ」
「ご配慮感謝します」
その後実に三カ月をかけて、ロベルトは元辺境伯軍の者たちと野に散っていた者達を集めてきてくれたのだった。
◇◇◇◇◇◇
四日目
王都で雇った冒険者の一部は、魔の大樹海で冒険者を続ける自信が無いという事で帰ることになり見送りに出る。
ゲルトナー大司教への手紙を託して別れを告げた。
職人は急ピッチで住居を整備している。
何分住居の数が多いのでまだまだ終わる時期が見えないが、皆張り切っているのは伝わってきた。
商人組は更に忙しい。
ガンツから必要な物資を購入し、輸送し、販売しているのだから休まる暇はない。
ガンツとの定期便の話も出ている。うーん、輸送専用の馬車もどこかで手配するか。
そして久々にクレリアと話をしながらお昼を取っていた。
「アラン忙しそうだけどきちんと寝ているの?」
「ああ、何とかね」
実は日付が変わる頃まではAR会議と魔法陣を描く事に追われている。
こればっかりは他に代われる人が居ないから仕方ない。
「リアと用事以外で話すのも久しぶりだよな」
「まったく、アランが居ないと進まない話なのだから、体を壊さないでよ」
「そう言うリアも忙しいだろ、文官組はメンバー少ないからな」
「ロベルトが連れてきた人達も増えたけどまだ混乱してるのよね」
「まだまだ戸惑うところばかりだからなぁ」
「それでもここに賑わいが出来てきたのよ、私はすごく嬉しいわ」
「そうだな、建国の第一歩だからね
そういえば元スターヴェークの民に声を掛ける場を設けたいのだが、どうだろうか?」
「それは勿論お願いしたいけど、どうしたらいいのか…」
「あのスタジアムを使うかな、ちょっと落ち着いたら皆集めて挨拶しよう」
「ああ、それはいい考えだ、是非そうしよう」
嬉しそうなクレリアを見ると、この間の事を思い出して少し胸が痛むのであった。
◇◇◇◇◇◇
最初の混乱が収まった頃、三度目の街の名前を決める集まりを行った。
ようやく決まった街の名前は「セレスティアル」となった。
しかしその頃には『コリントの街』『樹海の街』などの呼び方が広まっており、この名前が定着するのは少しの時間が必要だった。
ようやく領地に到着しました。
混乱しているところを書きたかったけど、力足りずです…
あとアクセスが急に増えたと思ったら日間ランキングに載ってたようですね。
ありがたいです。
評価、誤字、脱字、御指摘、感想 等ありがとうございます。
次回は明後日更新の予定です。