航宙軍士官、貴族になる   作:あんさん

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110.覚悟

 入植してから十日目の夜、魔法陣を描いている時だった。

 

[艦長 オフレコでの提案があります]

 

(……オフレコの提案を許可する)

 

 あの時以来こうやって偶にオフレコの話がある。

 もちろんあの話の続きだ。

 

[クレリアの明確な立場について進捗を確認したいのですが]

 

 普段のまじめな表情ではなくちょっとニヤっとした表情で言ってくるのが腹立たしい。

 

(そういえばオフレコなのに何故話がつながるんだ?)

 

[オフレコの話は秘匿領域に暗号化されて格納されています

 外部のアクセスは無理ですし、私以外には暗号解除不可です

 これはオフレコで同じ話を繰り返さないための措置でもあります]

 

(そうなのか…)

 

[あれから一カ月近くは経過していますがどうなされるつもりで?]

 

(知っての通り領地の運営で一杯一杯で何も進んでないよ)

 

[先送りするだけ難しくなるので一度話をした方がいいと思いますけど]

 

(いや、それは判っているが話をするタイミングもないし、どう切り出すかも思いつかない)

 

 帝国式のプロポーズとか知ってる話やドラマを思い出してみたが、今回のようなシチュエーションで使えるネタは無かった。

 当たり前だ、普通のドラマでは複数を相手にするこんな設定は無い。

 あるのはせいぜい女性をだまして悪いことをする男だ。

 

 とか思ってたら自分が情けなくなってきたので投げ出したのも事実だ。

 

(そもそもセリーナシャロンとクレリアはお互いに俺が話をしたことを知らないんだろ?

 それを知らせる時点で修羅場しか思いつかないのだが…)

 

[無自覚すぎましたからね]

 

(それを言われると辛いんだが)

 

 戦艦のAIなのに何故プライベートなネタにそこまで食いつくんだよ。

 

[一つアドバイスをするなら、この先の目標をどこに置いているか考えるとはっきりしませんか?]

 

(目標?)

 

[整理してみましょう、アランの最終目標は?]

 

(バグスの襲来からアレスの人類を守ることだな)

 

[ではそのための最後に行うことは?]

 

(イーリスからFTL通信で帝国に連絡をとりこの星を帝国の加盟とする)

 

[そのために取る必要なことは?]

 

(俺たちの子孫のテクノロジーを引き上げ、軌道上でリアクターを作成する)

 

[そのために取る行動は?]

 

(惑星を統一し帝国のテクノロジーを教育する、か)

 

 ようやく話が判ってきた。

 

[そうやって整理するとまず行動をとるべき相手は判りますよね]

 

(セリーナとシャロンだな)

 

[ちなみにアランは女性相手に嘘は難しいですから、変に言い訳せず素直になった方がいいですよ]

 

(ぐ…)

 

 アドバイスに反論できない

 

「先日の領地視察の時にクレリアの不安は聞いているわけですから、二人の方を決着付けてフォローする必要があります」

 

(…分かった)

 

[本日は以上です 今の会話は記録されません]

 

(…サインアウト)

 

 オフレコ通信は精神的に追い詰められる感がすごい…

 ん?気が付くとさらっとアラン呼びになってないか??いいんだけど。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 仕方がない、腹をくくるか。…と幾ら決断してもしかし気が重い。

 暫く逡巡して通話を始めた。

 

(セリーナ、シャロン …あー二人に話したいことがあるの…だけど、何処かで時間を作ってくれないか?)

 

 すぐさま返答があった。良かった、まだプライベート設定ではなかったようだ。

 

(私は魔法陣を書いているので今からでも大丈夫です)とセリーナ

 

(私も同じです)とシャロン

 

(そうか、…すまないが、ARモードの通信でも良いし、部屋に来てくれてもいいので頼む)

 

 む、そういや夜中に異性の部下を私室に呼び出すのは隊律違反だったかな?

 ってすでにそういうレベルでないことに気づき苦笑する。

 

(では切りのいいところで向かいます)セリーナ

 

(私は今から向かいます)シャロン

 

 暫くしてノックがありシャロンが入ってきた。

 

「アラン お疲れ様です どうしました?」

 

 む、ちょっとラフな私服なので妙に意識するな。

 

「いや、ちょっとな…今後の方針について話をしておきたくてな」

 

「珍しいわね?」

 

「まあ、領地に来てからそこそこ経ったし」

 

 そしてセリーナもやってきた。

 

「アラン どうしたんですか?

 

「いや、ちょっとな…今後の方針について話をしておきたくてな」

 

「なるほど」

 

「いや実はね」

 

 切り出しづらい。

 ....

 

 ...

 

 ..

 

 .

 

「アラン?」

 

 ...

 

「…すまない、ちょっと話しづらいんだ… あ~…ゴタニアの街の宿で今後の帝国軍の話した時のことなんだが」

 

 ...

 

「『我々帝国軍は人類銀河帝国の名において、この惑星アレスを占領し、帝国の領土とする』ってやつですね」

 

「よく覚えているな…、その時の話だ…」

 

「アラン 歯切れが悪いですが?」セリーナ

 

「目が泳いでるような…」シャロン

 

 突っ込まないでくれ。

 

「ごほん…あの時に言った『()()()()()()()()()は、きっと帝国軍を引っ張っていく人材になるに違いない』についてだな…」

 

 自覚して言うとキツイ、無自覚でよく言ったな俺は…

 

「あれですか」

 

「なるほど」

 

 二人とも顔を赤らめながら目をそらす。

 やはりイーリスの言うことは間違ってないのだ。

 

「いきなりの話が直接表現すぎて申し訳なかった」全力で謝る

 

「アラン 大丈夫ですよ、この半年でアランがどれだけ無自覚でヘタレか分かっていますから」

 

 ぐぅ、いきなりのストレートでぶっ飛ばされる。

 

「ほんとですよ、半年も気付かないなんてびっくりですけどね」

 

 今度は反対にカウンターを食らう。

 

「申し訳ない、無自覚にも君たちに困らせる発言をしてしまってた」

 

「はぁ… まだここまで来てそんな話ですか」

 

「謝るだけなら要らないですけど」

 

 やばい、かなり怒っている。

 

「いやいや、待ってくれ それでな…」

 

「それで?」怖いからセリーナ

 

「その件は前向きに進める所存である、もちろん君たちが良ければ」

 

 あぁ言ってしまった。しかもなぜそんな事務的な口調で…

 

「いや、すまん 言い直させて欲しい」

 

「こんな事は帝国ではあり得ない状況で都合のいい話なのだけど…

 二人に言ったことについては責任取って関係を進めたいと思っている

 君たちさえ良ければ」

 

 照れながら少し焦ったようにようやくはっきりと言った。

 ちょっと複雑な表情をして二人でこそこそ会話している。

 

「…アラン もう少しロマンチックに言ってほしいのだけど」

 

「でも自覚なしからヘタレてもきちんと言えただけ進歩です」

 

「どうせコンラート大尉に教えてもらったんでしょ」

 

「それならいっそ気の利いたセリフまで聞いておけばいいのに」

 

 ぼろくそ言われるがぐぅの音もでない。

 

「もちろん二人とも(ノー)は無いですよ、アラン」

 

「心優しい私たちに感謝しなさい」

 

 これは流石に照れ隠しであるのは表情を見れば俺でも判る。

 

「すまない、本当にありがとう、よろしく頼む」

 

 ものすごく肩の荷が下りた気するが、反対にクレリアの件が重くのしかかる。

 

「…しかしまだ俺はちょっとやからしているようなんだ」

 

 深呼吸して

 

「クレリアにも共同統治者としてと言ってしまってた」

 

「分かっているわよ」

 

「それだけ無自覚に口説いてるのだから、ほんとに人たらしよね」

 

「それよねどれだけ手を広げるのかしら」

 

「流石にもう出てこないわよね?」

 

 散々言われているが、もう居ないよな!?

 

「エルナは大丈夫として怪しいのはカリナさんあたりだけど、変な約束してないでしょうね?」

 

「いやいや事務的に丁寧に話しているだけだよ」

 

「アラン……それで私たちもクレリアにもやっちゃったのでしょ?」

 

「…いやそうだな、ごめん しかしカリナさんに約束は無いぞ」

 

「本当かしら?」

 

「まぁそれはいいわ、クレリアには早いうちにきちんと言いなさいよ」

 

「アランは嘘とか下手なんだから妙に隠し事したりしたら駄目よ!」

 

 散々注意されたが仕方ない、既にイーリスにも言われてて自覚はあるのだ。

 そしてその後二人と少し話をして、二人を絶対に間違えないこと、平等に扱うこと、etc...大事なことを約束した。

 

「じゃあ 夜にありがとう、本当にこれからもよろしく」

 

 握手して別れようとした時、二人共一歩前に出かけたところで目を合わせて会話し始めた。

 

「シャロン あの時の賭けの権利を使うわ」

 

「くっ、覚えていたのね あと一回よ」

 

 何のことだ?

 

 と思ったらセリーナが近寄って来てハグをされた。

 驚いていると耳元でささやかれる。

 

「アラン これからもよろしくね ヘタレてないでリードしてくださいよ」

 

 紳士だからやることは分かっている。背中に手をまわしてハグを完成させるのだ。

 難しかった、なんとか腰に手をまわすのが精いっぱいだった。もうヘタレている。

 

「あ、ああ」

 

 次はシャロン。同じようにハグをしてくる。

 

「アラン 私たちの子供たちは世界を統べて帝国に戻るのよ 忘れないでくださいね」

 

「もちろん」

 

 そして二人を部屋から送り出そうとしたした時、とっさに体が動き二人を抱き寄せていた。

 これには二人とも驚いていたが、一番驚いたのは自分だった。

 

「セリーナ、シャロン この先帝国軍としてもパートナとしても長い関係が続くがよろしく頼む」

 

「「はい」」

 

 そして二人は顔を赤らめながら部屋に戻っていった。

 

 

 その後イーリスからオフレコで通信があり、ちょっとあれだったけど最後はよく出来ましたと評価された。

 何で知っているんだよと聞くとイーリスはあっさり『艦長はテンパってプライベートモードに設定し忘れてましたよ』と言われ相当に落ち込んだ。

 誰かにこのシーン見られたらどうするんだよ、と思ったがどうにもならない。

 

 後年、この時の映像を元に再現したシーンはドラマの中でも屈指の名シーンになったのはアランには与り知らぬ話であった。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 翌日、クレリアに話があると声をかけておいた。

 夕食後に部屋にやってくる。

 

 やはりちょっとラフな私服なので妙に意識してしまう。

 

「いや、ちょっとな…今後の方針について話をしておきたくてな」

 

「珍しいわね?」

 

 ああ、既視感がひどい。

 

「いや実はね」

 

 切り出しづらい。

 ....

 

 ...

 

 ..

 

 .

 

「アラン?」

 

「クレリア 俺が作る国はクレリアとの共同統治の話なのだが」

 

「あ、ああ」

 

 顔が赤くなりもじもじしている、やはりそうだよな。

 

「あの時は無自覚で話してしまい申し訳ない、配偶者になるということに思い至ってなかった」

 

「…やっぱりそうなのね」

 

 すごく辛そうな顔に変わった。

 

「あの後も何も態度が変わらないし、一体アランは何を考えているのか、さっぱりわからなかったわ」

 

「すまない、そういう約束だと思わなくて気の利いた言葉一つ掛けれてなかった」

 

「そうだろうと思った、だから私は心の底では不安だったの」

 

 先日の夜の話が思い返される。

 

「不安な思いをさせてしまって本当にすまない」

 

「…そして、実はセリーナとシャロンにも似たことをやらかしていて昨夜話し合いをしたんだ」

 

「それでどうなったの?」

 

「二人には改めて了承してもらったよ」

 

「そう良かった」

 

「それで…もの凄く都合のいい話になってしまうが、クレリアには改めて共同統治者になって欲しいとお願いしたい」

 

「…それはどちらの意味で?」不安そうに聞かれる。

 

「勿論、配偶者としてだ、その…クレリアが嫌でなければだけれども」

 

「…アラン!…やっとはっきりしてくれたのね」

 

 嬉しさとやれやれと今頃か?みたいな感情が入り混じった表情でクレリアが返事をする。

 そして真面目な顔になり。

 

「アラン・コリント男爵、先程の御話、御受けしたいと思う しかし、三つの条件がある

 

 一つ目、三人は平等に妻として扱うこと 今後女性関係については一切を私たちに任せること もしやらかした場合は速やかに話すこと

 二つ目、これから作る国は話にあった通り、私との共同統治とし、民の教育と大陸統一以外の事柄については私との合意の上、統治していく事とする

 三つ目、仮に国がアロイス王国を手中に収めた場合、その領地の扱いは私に全面的に任せて頂きたい

 

 これら三つの条件を守って頂く限り、私は全てを捧げてアラン殿に全面的に協力することを約束しよう」

 

 一つ目の条件が大幅に書き換わっていた。

 

「クレリア・スターヴァイン殿、全ては君の言う通り私はその三つの条件を守る事を約束しよう」

 

 ふたりで笑いあった。

 

「クレリアすまない、今後は…あー努力する」

 

「アランだからな、もう大分わかっている 荒事と違ってこっちはさっぱりよね」

 

「すまない、慣れないんだ なので君たちに迷惑をかけた」

 

「アラン それはもういいわ でも女性関係については今後一切を私たちに任せること!

 無自覚に約束しないこと、いいわね?」

 

「…ああ、わかった 約束しよう」

 

 暫く他愛もない会話をし、明日は四人で話し合うことを決めた。

 何とかハグまでこぎつけ送り出す。

 

 ふう、ようやく少し肩の荷が下りた。

 何気なく普段の様に声を掛ける。

 

(イーリス ミッションコンプリートだ)

 

[艦長 お疲れ様です、素晴らしかったですよ]

 

(ああ、ありがと…う?)

 

 そして気が付く あああ!! またプライベートモードに切り替えるのを忘れていた!

 その場で悶絶したのは言うまでもない。 

 

 

 




評価、誤字、脱字、御指摘、感想 等ありがとうございます。

ラブコメ?は苦手です。
いや、得意なものは無いのだけど、その中でも特にと言うことで…
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