樹海が開けるところまで出迎える。
商業ギルドはサイラスさんと、アリスタさん、カリナさん、それに商業ギルド職員二名。
ああこの人また公私混同してるよ。
そして馬車がもう一台あり若者が乗っているので、おそらく依頼していた商人の手伝いをしてもらえる人材だろう。
冒険者ギルドはケヴィンギルド長と職員四名だ。
結局初めての訪問客は何時もの見知ったメンバーになったのだ。
そして当たり前だが、目が点になり呆けているから返事はない。
ガンツに長年住んで居れば魔の大樹海ともなればどういうイメージかすっかり身にしみこんでいる。
それが立派な街道の先にガンツと並ぶような城壁があり、その上にドラゴンが鎮座しているのだ。
今までのメンバーの反応を見ればわかるので、とりあえず落ち着くまで気長に待つ。
....
...
..
.
「ア、ア、アラン!なんだありゃ!」
最初に復帰したのはサイラスさんだった。
「お父様! 言葉遣い!」
アリスタさんは何時もの事で我に返ったらしい。
他のメンバーはまだ立ち直っていない。
「申し訳ありませんでした しかし一体これはどういうことですか……」
「まあご覧の通りですよ 住居は確保しているって言ったじゃないですか」
「それにしたって、普通はこんな街になっているとは思わないじゃないか
街って言うか都市でもおかしくないぞだろ、これは! 」
「お父様!」
アリスタさんちょっとキレ気味になってます。
「アリスタさん かまわないですよ
それにもう誰もかれも驚いてくれるので慣れてしまいました」
「…アラン様 …それはそうですよ
ガンツの人間ならば誰もが魔の大樹海が開拓されたと聞けば信じられません
開拓と言っても森を少し切り開いて柵を作って粗末な小屋を想像します
それが開拓されたというのが、実は街ができているなど誰も想像できるわけありません!!!!!」
アリスタさんに常識ってものを考えてください、ってキレられています。
「アリスタ様、あれ見てください ドラゴンが街を城壁の上で座ってます…」
カリナさんがグローリアに気付いた。
「グローリアですよ 普段はああやって街の警備をしてくれています
実はこの街を作るのにも色々手伝ってくれまして非常に頼りにしています」
実際グローリアがいるとワイバーンとかは近寄ってこないそうだ。
「ドラゴンが守っている街なんてこの大陸どこにもないぞ…」
最近もどこかで聞いたような言葉だった。
この世界で旅行が一般的なら一大観光名物にできそうだが、残念ながら王都でも観光がごく近くに限られるそうだ。
「そうですね、観光名物になればいいのですが、観光旅行が一般的でないそうだし残念です」
「王都から近ければなぁ…いやそんな問題じゃない!」
「まぁ何時までもここではあれなので、街のほうへ行きましょう」
ここは華麗にスルーして移動を促す。
「カール 行こう」
「…あ、あぁ…」
返事はあったが、二回目のカールでもこれではまだダメそうだな。
◇◇◇◇◇◇
「アリスタ 俺は夢でも見てるのか?」
「私も夢かと思いましたが夢ではありません」
「アラン様は控えめな方ですがこれはとびっきりです
開拓が終わっているなんて言ってましたが、森を切り開いた荒れ地に小屋がある程度かと思ったら、
街ができているじゃないですか…控えめすぎます」
馬車の中でみんな呆然として、口々に思いをしゃべっている。
「ケヴィンの奴らなんて声も出てなかったじゃないか、だらしない奴め!って言いたいが俺も同じだな」
「それにしてもガンツの誰もが知らないうちにどうやってこれだけの街と街道を作ったのでしょうか?」
「アラン様は『俺を支援してくれるもの』だとか『俺の協力者』みたいな言い回しが多かった気がします
実際にアラン様が王都に行っている間も開拓されていたなら、指示を受けて作業をした方たちが居ると言う事になります
またドラゴンが手伝ってくれたと言ってますので、アラン様以外もドラゴンと話せると考えたほうが自然です」
「カリナ そうだな アランは決して自分たちで開拓したのではなく、やってもらったということだ」
整理すると
・アランには正体不明の支援者/協力者が居る
・一年で大樹海を切り開き、街を作れる力がある
・ガンツに知られず物資を調達できる
・ドラゴンと意思疎通できる
意味が分からなかった。
「何をどう言っても無理だな、俺には理解できないが、しかし現実にはこうだ
見たものを信じるとして、他はどうだ?」
「街の広さはガンツと変わらなさそうなので、アラン様が言っていた一万五千人が住むのには問題なさそうです」
「そうだな、背の高い建物は少ないが、確かに居住できると思える建物は多そうだ」
「食料に関しては、農地が見えないのが気になりますね
城壁の中かも知れませんが、その人数を養うのは難しいかもしれません」
「ふーむ、最近ガンツで穀物の値段が上がっているのはそのせいだろう
今の開拓民じゃ畑まで手が回るとも思えない」
得意の分野の話になり、ようやく元の思考状態に戻ってきたようだ。
「それと最近こんな事が低レベルの冒険者や下町で噂されているようです」
『シャイニングスターのパーティーは魔の大樹海の奥で遺跡を見つけて攻略し、仲間にしたドラゴンと見つけたアーティファクトを使って街を開拓したが、それでアーティファクトは使い切ったらしい』
「出所は不明ですが、ほとんどの者は信じているようです」
「ちょっと眉唾だがそれが本当ならこの街の説明はつくが…」
「…サイラスさん 正門に着きました」
御者を務めるギルド職員から震える声がかかったので一度馬車を降りる。
改めて門を見るが装飾がないだけで、規模はガンツの門に負けてはいない。
装飾がないから単に素っ気なく見えるだけで、機能も不十分な粗末な物ではない。
改めて技術レベルが読めない。
◇◇◇◇◇◇
「ようこそ『セレスティアル』の街へ 正式な来賓を迎えるのは初めてです」
ようやく決まった街の名前を告げる。
「はぁ、これはまたとびっきりだな」
広場からの風景に呆然としながらサイラスさんが言う。
「サイラスさん、アリスタさん、カリナさん、遠路はるばるようこそ」
「ケヴィンさんもようこそ」
冒険者ギルドのメンバーは圧倒的に影が薄い。
シャロンとクレリアが出迎えに来たところで、歩いて街を案内しましょうと申し出る。
「広場を越えるとメインロードにつながります
その先の左側に冒険者ギルド、右側に商業ギルドになっています
あの建物がそうですね、まず冒険者ギルドから行きましょうか」
三階建ての街でも屈指の建物だ。
「建物はこれですが石を積み上げた箱になっているだけで、外装までは手が回ってません
そのあたりは職人と相談して好みに仕上げてもらってください」
「アラン様 驚きましたというか本当に言葉になりません」
ケヴィンさんがようやく発言した。
「しかしこれだけの建物、賃貸料や作業費はどれくらい想定しておけばいいでしょうか?」
「え、いえ無料ですよ、自由に使ってください」
「え?え?…アラン様 これだけの建物を自由に使わせてもらえるのですか?」
「そうですね それに建物の内外装や家具について職人と素材も領地から出します
ここにある素材の範囲なら、無茶しない限りは費用は不要です
ガンツで買ったり、他所の街から仕入れてくる場合は出してください」
「むう、そんな景気のいい話が…」
「領地に対する先行投資ですよ、俺たちはここで快適に暮らしたいので」
「アラン様の考えはぶっ飛んでますな」
サイラスさん、もう丁寧にしようとするのと素とが交じり合ってる。
「間取りは一応ガンツのギルドを参考に考えてありますが、問題があればおっしゃってください」
持ち込まれた素材の解体とか処理については裏の方にある建物を利用することも可能です。
「水については上水道と下水道に分けています
下流でまだ使うこともあるので、絶対に上水道は汚さないでください」
「あ、あぁ」
「下水道はトイレの汚物とか料理で出るごみを流す感じですので、解体した魔物とかはダメですよ」
笑いをとれるように言ってみたけどギルド長は顔を引きつらして返事はなかった。
「こちらの方に冷蔵の倉庫、その隣は冷凍の倉庫を準備しています
まだ全然魔法陣が間に合ってませんので、今はまだただの倉庫です」
「まさかそこまで準備していただけるのですか?」
「ええ、まだちょっと何時出来るかは判りませんが、予定はしています」
「冒険者ギルドの支部開設は検討していただけそうですか?」
「そりゃもちろん、いえ失礼しました…
コリント卿 是非とも開設させていただけますようお願いします」
「分かりました 誠実で真摯な運営をお願いします
細かいことはシャロンかクレリアに確認・連絡してください」
「はい、承知いたしました」
ケヴィンさん、もう知らない人のようなしゃべり方だった。
「じゃあ次は商業ギルドですね
門からの距離が近いことろにしてあり道をはさんで向かい合わせです」
「と言っても冒険者ギルドと基本的には同じです
石を積み上げた箱になっているだけで、外装は好みで仕上げて下さい
懇意の職人が居ればガンツから招いてもらっても大丈夫です、費用は出せませんけど」
「職人は王都から来られた方ですよね?」
カリナさんは流石に立ち直っている。
「そうですね、出来ることは色々だとはお思います
安心なのはいつも任せている職人でしょうね」
「分かりました」
「裏も対称になってますが、同じ作りです」
「水回りは非常に助かります」
「ああ、建物の中にトイレはあります」
「ほんとですか?でも溜まった後が大変では?」
「水洗と言って出したものは水で流してしまう仕組みですので、トイレ室内は水洗いしてもらえれば大丈夫ですよ」
「まさか、なんという仕組み!」
そこに一番反応するんですか?
「さて、このメインストリートの一番奥に領主館があります 向かいましょうか」
「この辺が東西南北が交わる一等地ですね 角の一つはタルス商会で決まっています
今のところ二つ目はサイラス商会で交渉しています」
「アラン様 ありがたい話です」
「少し進み右側に曲がると教会があります」
あれから二週間、足場が組まれ工事が始まっている。
「ここですね 今まさに整備中です」
「アラン様 これはまた素晴らしい教会なのですが…これほどの物を」
「そうですね、ゲルトナー大司教の采配にお礼をしないといけませんしね」
そうじゃないだろという気配は無視する。
「最後、ここが領主館です ここはちょっと私の祖国のテイストを加えてあります」
「これはまた素晴らしい建物だ 異国の意匠が素晴らしい、華美で無いのもマッチしています」
「ありがとうございます」
「アラン ここで紹介しておく 依頼されてたメンバーだ
順にロバート、ベンジャミン、エドワード、ジョセフ、スティーブンだ」
「ありがとうございます、見ての通りまだまだこれからだからやりがいあるぞ よろしく頼む」
「「「はい」」」
「カトル、連れて行って説明を頼む」
なかなか良さそうな青年たちだ。カトルに任せて説明を続ける。
「今夜宿泊していただく場所もここです 入りましょうか」
「アラン様 もしかしてこれはガラスの一枚板なのですか?」
「そうです、領主館だけは内装まで仕上げてましたので」
「これほどのガラス板、どうやって作るのですか? この大陸では両手分のサイズでも難しいというのに」
「ちょっとした秘密がありましてね」
はぐらかしておくが、商人は食いついて来るだろうなぁ。
「一階のホールはかなりの高さがあり、それなりに装飾してあります」
はぁぁ~とえぇぇ~みたいな声が聞こえる。
「一階はこのホールと両側に会議室や会食のための食堂などが並んでいます」
「二階は公務用の執務室、それから訪問者のための応接室や宿泊ルームとなっています
皆様方はこちらにお泊り頂きます」
「カールはどうする?苦手なら外の別なところを割り当てれるぞ」
「アラン様 それなら外でお願いします」
「分かった 食事は食べて行けよ」
「じゃぁ各自お部屋に案内します、荷物は後で入れてください」
「会議をするのであれば、こことここ、それにここをどうぞ
ギルド毎にするか、集まってするかで人数違うので」
「来客用のトイレとお風呂がこちらですね、男女別になっています」
「…………」
「シャロン、リア、お風呂とトイレの使い方説明してあげて」
「分かりました」
「行きましょう アリスタさん カリナさん」
「男性はこちらへどうぞ」
お風呂でシャワーの使い方を見せ、トイレの方も使い方を説明する。
サイラスさんが唸っていたが、女性側も大興奮だったようだ。
揃ったところで、説明を続ける。
「ここから上、三階がプライベートスペースになっていて、我々はこちらで寝泊まりしています」
「と、まぁこんな感じになっています」
「…アラン様 斬新な感じの領主館ですね」
「ほぼ公務のためのエリアですからね」
「いや、そうじゃなくて意匠といい、設備といい、斬新だが素晴らしい!
これからの流行になるぞ」
「それはさすがに無いんじゃないですかね」
「アラン様 素晴らしいとしか言いようがありません
それにしても一年も経たずになぜこれほどの街を作れたのか…
しかもガンツではだれも気付いていませんでした…」
ケヴィンさんが、挙動不審になりながら疑問を聞いてくる。
「陰で私を支援してくれている勢力がいるのですが、契約によりこの街を作った時点で去っていきました
彼らは非常に有能でしたので、、あとドラゴンも随分と街づくりに協力してくれたのですよ」
「え、にわかに信じられない話ですが、でもこの街を見るとそうなのでしょうね
ガンツで流れている噂も荒唐無稽ではなさそうだ」
「ははは、耳にしたことはあるけど、それだとすると使い切るのは勿体ない気もしますけどね」
「さて、この後は一度自由時間にしましょう」
評価、誤字、脱字、御指摘、感想 等ありがとうございます。
次回は二日後に更新の予定です。