航宙軍士官、貴族になる   作:あんさん

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114.新城落成祭

 ギルドの視察の後残ってもらったサイラスさんを主要なメンバーたちに紹介する。

 ああ、でもその前に順番に話さないとな。

 

「諸君、領地のスタートに向けて忙しい中、集まってもらって感謝する」

 

 クランの主要メンバー、辺境伯軍の幹部、主な文官、職人の代表などが領主館のホールに揃っている。

 

「本日はいくつか重大な発表を行いたい」

 

「まず、この度ガンツのサイラス商会が我々を全面的に支援して頂けることになった

 今までシャイニングスターとは強い結びつきがあったが、コリント領ではより関係を強化する運びとなった

 この事は我々の基盤を盤石にするための大きな一歩として非常に嬉しく思う」

 

 おおぅと低い声が漏れ、拍手が起こる。

 

「知っての通りクランにはタルス商会のカトルが居るが、サイラス商会を加えてさらに領地の発展を目指すことになる」

 

 サイラスさんが挨拶をする。

 

「ガンツでサイラス商会を営んでいるサイラスです

 縁がありこれからはアラン様の領地の発展に尽力する所存です

 そのための資金については十分援助を行うつもりです

 知っている方は勿論、知らない方もよろしくお願いします」

 

 さらに拍手が巻き起こる。

 

「続いて、商業ギルドと冒険者ギルドがオープンして貰えることとなった

 街の規模を考えると極めて異例であるが、今後の街の発展を見越しての事なので、皆の働きに期待する」

 

 おー!とさらに声があがる。

 最後、照れくさそうになるのを必死で隠し、威厳を出そうと話を始める。

 

「…そしてシャイニングスターのパーティーメンバーであるセリーナ、シャロン、リアが正式に妻となることが決まった」

 

 おおおー!っと最大の歓声があがる。

 口々に「おめでとうございます」とか「めでたい」とか「素晴らしい」とか言う声が伝わってくる。

 

「今までもパーティーのメンバーとして支えてきてもらったが、これからも引き続き妻としての立場で支えてもらえることになり非常に嬉しく思っている

 三人ともよろしく」

 

 三人が前に出てきて挨拶をする。

 

「そしてだな、えーと、さらにこちらのアリスタさんが四人目の妻となることが昨夜決定した」

 

 流石に唐突だったのかおー!のなかにえ?って感じも含まれている声だった。

 

「唐突だと思うかも知れないが、全員で決定した事なのでよろしく頼む

 今の所は四人は婚約という形であるが、折りを見て結婚式を実施する」

 

 流石にちょっとがやがやしているが、まぁそうだろう。

 しかしさすがアラン様ならとかエルナ様はどうなったんだ、みたいな声が聞こえる…

 

「そしてもう判っているだろうがまた我が領地では女性であろうと有能なメンバーには相応の立場で活動をしてもらう予定だ

 知っている者もいるが、具体的には、セリーナは武官関係、シャロン、リア、アリスタは文官関係となる

 文官の方はシャロンは街の運営全般、リアは王国関係、アリスタには商売などを担当することになる」

 

 この辺りは最初に決めていたことにアリスタが追加されただけで大きな役割の変更はない。

 どちらかと言えば、新しく加わった辺境伯軍や職人向けの説明だ。

 

「領民に対しては正式に婚約を公表する場を設けようと考えている

 具体的には五日後くらいにスタジアムで挨拶しようと思うが、何か意見はないか?」

 

 五日に具体的な根拠はないが周知と準備を含めればそんなものだろうと考えただけだ。

 

「アラン様 素晴らしいと思います」

 

「それはいい考えですね」

 

 など口々に言ってくれるが、もっとこう建設的な意見はないかな?

 

「アラン様 それではその日を祝日にしてお祭りにするという案はどうでしょうか」

 

 ルドヴィーク辺境伯の屋敷で家令を務めて居たというトーマスからの提案であった。

 お、それは良いかも知れないな。

 

「いい考えだな、具体的には?」

 

「今回は領地を立ち上げ始めたばかりなので、派手なことは出来ませんがお祭りを決めるということで目標が出来ます

 領地の開墾を記念するアラン様のお話があれば十分でしょう

 あとは領民は領地がどうなっているか、これからどうなるかも分からない事があるので、今後の展望を示して主要なメンバーを紹介する場にしてはどうでしょうか?」

 

「なるほど、婚約発表だけでなくオープニングイベントにして、方針演説にするわけか」

 

「そうです、そして街の名前をまだ知らぬ者もいるでしょうから、改めて名前を公表するとともに、来年以降はお祭りとして行う事を周知させる感じです」

 

「分かった、では急ではあるが段取りと周知を行うためにこの後会議を行う、名前の候補があれば推薦してほしい

 以上、集まってくれたことに感謝する」

 

 

 その夜、主要なメンバーで集まり、名前は幾つかの候補の中から最終的に「新城落成祭」とした。

 

 提案した辺境伯軍の者曰く、

  新しい城が建てられると城主や住民たちは大きな祭りを開いて祝う。

  そのような祭りは、城の完成を祝うとともに、城主や住民たちの団結を象徴するものである。

  新しい街の完成式典も同じように、住民たちの団結と新しい街の未来を祝う場として捉えることができるため、"新城落成祭"という名がふさわしいと。

 

 理由には納得できたので異論はなかった。

 

 ようやく住み始めたばかりの街で、大きなイベントは出来ないために挨拶と、婚約発表それに、主要メンバーの紹介を行う場とすることで調整した。

 その場で来年は大きな祭りにすると宣言すると言う事に決まった。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「おい、お触れは見たか?」

 

「ああ、アラン様が記念式典を行うってやつな」

 

 職人同士が仕事の合間に会話をしている。

 

「なんでも余程の理由が無い限り出席するようにって事だ」

 

「来年以降はこの日を街上げてのお祭りにするらしいぞ」

 

「それは楽しみだな」

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 皆続々とスタジアムに集まってきている。

 

 スタジアムに入った瞬間にグローリアをみてぎょっとする。

 しかし流石に慣れてきたのか、それ程驚かずに中に入っている。

 暫くしてある程度集まった頃に挨拶が始まった。

 

 階段を上り急遽作られた朝礼台の上に上がる。

 その周りには片側十名程の近衛兵が整列し、敬礼を行った。

 まだ装備は揃っていないが、主にクランメンバーの近衛騎士だった者達で構成されており、練度は高いのでとても様になっている。

 

 既に定番の挨拶をおこなったのは近衛隊長のダルシムである。

 

「皆の者、傾聴せよ! アラン・コリント卿より御言葉がある!」 

 

 

「シャイニングスターのアランだ

 いや、今はコリント領の領主アランだ

 みんな集まってくれてありがとう

 今日は『新城落成祭』として街の始まりを迎えることが出来たことを宣言する

 

 みんなと共にこの新しい街を築くにあたり今後数年にわたって熱心に労働し、数多くの課題を乗り越えていく必要がある

 この街を通じて商業や文化の発展を促進し、私たちの領地をより繁栄させることができるように誓う

 

 『新城落成祭』は、私たちの労働の成果を祝うとともに、私たちの未来への希望を表すものでもある

 私たちは、この新しい街を通じて、より良い未来を築くために努力し、私たちの土地と人々を守り、繁栄させることを約束しよう

 今年より毎年この日を祭りとして祝っていこう」

 

 うおおお!と大歓声が上がる。

 

「そして、このタイミングでこの度妻となる予定の四人の者を紹介する」

 

 おおおお!と声と拍手が上がる。

 

「先ずセリーナ シャイニングスターの次席であり、この領の次席でもある

 もし自分に万が一のことがあった場合は彼女が後を引き継ぐ事になる

 また武官の代表として近衛兵と冒険者を束ねるものでもある」

 

 セリーナが挨拶をすると歓声が上がる!「セリーナ様万歳」まで聞こえる、うーん人気あるな。

 

「次にシャロンだ シャイニングスターの三席でもあり、同様にこの領の三席になる 文官の代表で街の運営全般を担当する」

 

 シャロンも挨拶をすると同じ程度歓声が上がる!「シャロン様万歳」まで同じだ。

 

「三人目はクレリアだ シャイニングスターのメンバーで文官の代表の一人で事務や外交を担当してもらう」

 

 クレリアの挨拶は流石で、スターヴェークの関係者から地鳴りのような歓声が上がる!一番の歓声だ。

 

「四人目はアリスタだ 文官の代表の一人で取引関係を担当してもらう」

 

 おぉぉとどよめいた感じで歓声が上がる。流石に知名度は少ないから仕方ないか。

 

「ここに四人を平等に扱うことを宣言する!」

 

 全員等しく扱うことを宣言し、挨拶は終了した。

 次は、領地運営の主たる者たちを紹介していく。

 最後にグローリアを紹介する。

 

「このドラゴン、彼女はグローリアといい私の部下で、街の護り竜になるものだ

 恐れることは無いが人の言葉は判るから丁寧な対応をするように」

 

 ドラゴン特有のグルグル、ガオガオという声でグローリアが挨拶すると会場がどよめいた。

 慌てふためく人が少し見られたが、嬉しそうな歓声も多かったのでグローリアも満足していた。

 

 最後に女性陣が気に入って準備していたランタンが飛ばされた。

 これにもまた領民は驚いて、大半の者達は初めて見る光景に見入っていた。

 

「そして先ほども話したように、毎年この日を祭りとして祝っていこうと思う」

 

 大歓声に包まれて、そして今回の式典は終了した。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「あーやっとここまで来たな、発表して肩の荷が下りたよ」

 

 式典の後、六人で取っていた食事の席で本音を少しだけ吐露した。

 

「まだ始まったばかりでしょ」

 

「そうよね、これでやっと領地としても一歩踏み出したところだから」

 

「スターヴェークからの民も少しずつ集まっているし」

 

「まだまだ混乱してるけどね」

 

「毎日大変ですからね」

 

 そう言われたらそうなのだけど、こう何というか俺的には大変だったのだ。

 まだこの領地に着いてから一カ月も経ってないのかと思えないほどイベント続きだったのだ。

 一週間で妻四人と側室が決まる何で冗談じゃないぞ…とは言えないので胸の内にしまう。

 

「そう言えば折角だから花火でもあげれば良かったかな?」

 

「花火とは何でしょう?」

 

「聞いた事ないです」

 

「それはどんなものですか?」

 

 あれ? 

 

「夜に打ち上げる色とりどりの火花がきれいな奴だけど?」

 

「知らないです」

 

「うーん」

 

(イーリス この世界では花火は無いのか?)

 

[ドローンが収集した情報の中にはありません 火薬自体が発明されていないようです]

 

(なんだって? そうか、考えたらこの世界は魔法が使えるから、必要が無かったのかも知れないな)

 

[おそらくその可能性が高いです]

 

(なるほど)

 

(セリーナ、シャロンは判るよな?)

 

(ええ知識ではあります)

 

(原始的な火薬で打ち上げて、いろんな色に光るやつですよね)

 

(そうだ 古式ゆかしい火薬で打ち上げる奴だよ)

 

 ホロで見た地球の映像ライブラリの注釈として、多くの人類惑星で花火は発明されていたが、その中でも地球の一部では特に技巧が凝らされていたと書いてあった。

 来年に向けて取り組んでみるのも悪くないかもしれない。

 

「余裕があれば今度作ってみるよ、楽しみにしといて」

 

「アランの作るものだから期待しておきますね」

 

 こうしてまた一つ領地の名物が増えるのであった。

 

 

 

 

 




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次回更新は近日予定です。
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