航宙軍士官、貴族になる   作:あんさん

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115.特産品と技術開発

◇◇特産品その一◇◇

 

 特産品の一つについてようやく取り掛かることにした。

 貴族向けではなく庶民向けなので、値段は高くないが、消耗品でかつ、便利なので一度使うとやめられない奴だ。

 

(イーリス 職人名簿から細かい棒を作れる職人の候補を挙げてもらえるか?

 例の物を作ってもらおうと思う)

 

[了解です 候補はこの三名ですね]

 

 受け取った名前の人物を、通りかかったダニエルに伝えて誰かに呼びに行ってもらう。

 

(例のブツはどこだ?)

 

[すでに職人街西の倉庫にあります]

 

(よし)

 

 

「コリント卿 御用の命を受け参上いたしました」

 

「ああ、気楽でいいぞ 君たちに頼みたいものがある こんな感じの木の棒だ」

 

 紙に書いた実物大の指示書と、数本だけ作った長さ五センチメートル程度のサンプルを渡す。

 

「それとこっちは収納する箱だな、ちょっと厚みある固い紙で作って欲しい」

 

 こっちは紙に書いた実物大の指示書だけだ。

 

「材質は固すぎず柔らかすぎず、加工しやすいものを倉庫から探してほしい

 消耗品で将来的には量産する予定だから、専用の製作具を作ってくれてもいい

 金属加工の職人と相談して、足りない物があれば連絡してくれ」

 

「分かりました」

 

「まずは一箱とそれに収まる量であれば、どれくらいでできる?」

 

「今日明日で作れます」

 

「よし、ではそれで頼む」

 

 後日、連絡があった。

 

「アラン様 職人が依頼の物を持ってきました これです」

 

 小さな箱に収められた木の棒が届いていた。

 ふむ、具合は良さそうだな。

 試作のための薬品は汎用ボットがすでに作ってる。

 

 量産に向けて職人に試行錯誤してもらう必要はあるが、とりあえずこれで試作してみることにする。

 

 木の棒を薬品に浸し乾くのを待つ。

 割りとちまちました作業は辛いが、これなら予定していた様に子供たちでも出来そうだ。

 

 翌日乾いた木の棒に次の薬品を端っこだけに着けて乾かす。

 箱の側面には別な摩擦用の薬品を付けて乾かす。

 

 これでマッチの完成だ。

 

 以前タラス村で火をつけるのに、誰でも魔法を使える訳ではないと聞いていたのを思い出し作ったものだ。

 消耗品だし、嵩張らないし、軽いので大量に運べて、便利さを知ってしまえば手放せなくなる。

 簡単に真似できないのもポイントが高い点であった。

 

 魔道具とかは、分解して構造と魔法陣を解析されたらすぐに真似されるから、真似できないのがポイント高い。

 薬品の作り方も職人に依頼しないといけないが、当面は汎用ボットに作らせた物を使う形になる。

 

 カトルを呼んで早速自慢する。

 

「カトル 見てろよ」

 

 マッチ棒を持って、箱の横を擦り火をつける。

 

「わっ!火が付いた! アラン様、これは何ですか? 魔道具?」

 

「これはマッチというもので魔法ではないから誰でも火をつける事ができるぞ、やってみろよ」

 

「ちょっと試してみます、おお、ほんとだ!これは便利ですね」

 

「これが有れば火起こしがものすごく楽になるからな、特産品にするつもりだよ」

 

「確かにこれは他に無いものです すごいなアラン様は」

 

「まあ量産に乗せてからでないと話にならないが、小さいから子供達でも作れるのがポイントだ

 物が小さいから輸送も楽だし、貴族に高く売りつけるものではないが、普及するまでは高額の値付けでいけるだろ?任せるよ」

 

「承知しました」

 

 カトルは商売人としての顔でそろばんをはじいてるらしく既ににやにやしている。

 生産体制を作るにはまだ半年かかるのだが、これは酒と並んで今後数十年は利益の柱になるのだった。

 

 

◇◇魔道具製作◇◇

 

 

「セリーナ、子供たちの中から絵の上手い子を探せないか?」

 

「どうしたのですか」

 

「ああ、魔道具で使う魔方陣があるだろ? あれを描ける人材を育成したいんだよ

 何時迄も俺達3人で書いてばかりじゃ大変だからな」

 

「確かにそうですね、授業の一環で図形を書いてもらって上手い子を選びましょう」

 

「頼んだ、一千人から居るしそのなかで数名出来るようになればいいだろ」

 

「やるとすれば見込みありそうな子を選抜して、昼から訓練ですね」

 

「しかし将来的に魔導液の入手がネックになるな 今度またガンツの魔術ギルドから仕入れないと」

 

「アラン あの程度なら分析すれば自分たちで作れるのじゃないですか?」

 

「そうだな、無理じゃないが今はそれにかける時間が惜しいかな

 ナノムで分析できてイーリスから情報を引き出せるのは俺達だけだしな」

 

「それもそうですね」

 

「とりあえず今夜は冷蔵の魔方陣を仕上げてしまおう」

 

「了解です」

 

「冷凍の方も手付かずだからな、これが終わらないとゆっくりできない」

 

「その通りです…」

 

 当面夜なべ作業が続くのであった。

 

 

 その後学校で見込みのありそうな子を探すとやはり才能ある者は居るもので、一年後にはかなりのレベルに達したものが数名いた。

 そのため領地内で使う魔道具についてはかなりの物を作れるようになっていた。

 

 最終的には十八歳になり志願したものは帝国航宙軍宙兵隊として採用し、ナノムのトレースのサポートによりさらに技術を向上した。

 後年印刷技術を組み合わせ魔法陣の量産に尽力するのだった。

 

 

◇◇特産品その二◇◇

 

 

 入植してからの混乱が落ち着いたころ、カトルを交えて酒造りの準備に入る。

 

「カトル まだ忙しいだろうがそろそろ例の酒造りに取り掛かろうと思う」

 

「いよいよですか、楽しみですね」

 

「そういえばお酒の作り方は知っているか?」

 

「確か果実とか麦とかを発酵させていると聞いてますが」

 

「ああ、そうだなこの国ではエールだとかワインだとかがそうで発酵酒というんだ

 サイラスさんに教えたのはそのお酒を濃縮して酔う成分を高める方法だ」

 

「そうなのですね」

 

「ああ、なのでまずは普通にお酒を準備する必要がある」

 

「だけどもワインとかエールを購入してここまで運ぶのはガンツからの距離を考えても現実的でない

 なので原材料の穀物か芋を購入してエールや発酵酒を造ることが取り掛かりだな」

 

 そのために王都でお酒を造ったことがあるという職人も数名用意してもらっていた。

 

「実は今購入している食料に加えて、お酒用の分を手配しています」

 

「カトル、さすがだな」

 

 カトルはお酒を造ると言う事で早くから手をまわしていたらしい。

 確かにタルスさんが褒めるだけのことはあった。

 

「まずはこんな感じで建物をこんな感じで整備してくれ」

 

「では家具を作る職人やお酒を造る職人を集めて検討します」

 

「そうだな、準備が出来たら作り始めてくれ、その間に酔う成分を高める機械を準備しよう」

 

「分かりました、取り掛かります」

 

 カトルが出て行った後に、ぼんやりと考える。

 お酒を造るのにはアルコール発酵用の酵母菌の入手は必要だ。

 天然酵母でもいいが選別するのはあまり現実的でないだろうし、職人が種を持っていてくればいいが。

 後は銅板だよな、鉱石はあるから精錬して作るのでいいか、ガンツで手配したほうがいいか、悩むな。

 おっと肝心なことを忘れてた。

 

(イーリス 連続蒸留装置の設計図を起こしてくれ)

 

[了解しました]

 

 ここで作る蒸留器はちょっといいものにしよう。

 しかし、この判断を後程死ぬほど後悔することになるのだった。

 

 何故かって?以前書いた設計書が百五十ページもあったのに、それをより複雑な構造の連続蒸留方式にしたのだ。

 書き終わるまでのたうち回ることになり、自分を呪うしかなかった。

 

 

◇◇特産品その三◇◇

 

 

 金属加工を得意とする職人を呼び、新しいタイプの馬車のサスペンションの製作を指示する。

 現在の馬車に比べ圧倒的に乗り心地が良くなるものだ。王室に献上しても問題はない。

 これもまたイーリスに設計してもらい、設計図を起こすのに苦労したが、蒸留器ほどではなかったのが救いだ。

 

「アラン様 こんなもの見た事も聞いた事もありません」

 

「だろうな でも俺の故郷ではありふれたものだったぞ」

 

 嘘である。そもそも帝国で馬車なんて余程のリゾート惑星に行かないと無いものだった。

 

「ここの構造はこうして、ああして、でもこれだと金属でもすぐに折れてしまいそうなんですが」

 

「そこは金属の配合と焼き入れ方で粘りと強度を出すんだ」

 

 職人に加工の仕方を指示をするが、流石に一筋縄ではいかなかった。

 特にサスペンションになるバネ金属の加工がポイントで、現在広く知られている金属加工技術では耐久性に問題が出るのだ。

 しかしそのために構造は真似されても、複製は難しく模造されることが無い。

 素材の純度から、合金の配合比率、焼き入れの具合まで含めて、目途が立つまで1年近くかかったが、無事完成した馬車はサイラスさんに絶賛された。

 

 領地で作った車体にガンツで貴族用に装飾した車体を乗せ王都で売る。

 一度乗れば明らかに差があるので、通常の馬車の十倍でも納車待ちになるほどの人気になったのである。

 勿論形だけ真似たやつはすぐに壊れるため、コリント領製であればプレミアとなった。

 

 併せて考えていたベアリングの製作には構造の複雑さで、さらに時間を要するのであった。

 

 

◇◇技術開発その一◇◇

 

 

(イーリス 現時点でアレスで再現できそうかつ今後の発展に必要な技術を洗い出してくれないか)

 

[まず電気でしょう 化学の方も必要ですが、電気の基礎理論を利用する技術を確立しないといけません

 馬車で何カ月もかけて連絡していては、大陸の統治もままなりません」

 

(なるほど まずは無線通信の利用が大前提か)

 

[今はまだ通信機とドローンを介した通信も可能ですが、どちらももいずれ耐用年数を過ぎると運用できなくなります」

 

 そういう意味では通信機も有限だし、いずれイーリスとの通信が危うくなった時点で計画に大幅な支障が出る。

 

(分かった 電気工学を優先させよう)

 

 ふと思い出して通信機の数を確認する。

 

(そういえばセリーナとシャロンを降下させた時に通信機はいくつ持ってきた?)

 

[それぞれ五個ずつ計十個です 艦長とグローリアが一ずつ使っていますので残りは八個になります]

 

(今後帝国軍を拡充していくとなるとちょっと心もとないな、艦にある予備はいくつ集められそうだ?)

 

[脱出ポッドに装備されたものを集めて百程度程かと思います]

 

(降下させられるポッドは?)

 

[組み立て直す前提で三回分です]

 

(ポッド自体を通信機に使えるだろう しまったな、街を作るときに降下させとくべきだったか)

 

[街からの通信に関しては汎用ボットが使えますので心配いらないかと]

 

(ふむ、とすれば必要になるのは帝国軍のメンバーを増やした時だな 準備だけしといてくれ)

 

[了解]

 

 その後も技術開発についてはイーリスと色々会話を行ったが、人類の持つテクノロジーのほぼ全てを記録していることに驚いた。

 バグスとの戦闘で鹵獲され情報を盗まれる心配をしたところ、何重にもガードされた自爆シーケンスがあり情報が洩れそうになった段階で完全に破壊されるとのことだった。

 そこまでして情報を持っていたのは、何かの理由で探査用戦艦以外を残し人類が滅びたことを想定してるとのことだった。

 

 

◇◇技術開発その二◇◇

 

 

「そういえばこの世界に空を飛ぶ物ってないよな?」

 

 夕食を妻となる予定の四人で食べることに決めてからそれほど立ってない頃、ふと気が付いて聞いてみた。

 アーティファクト一覧にも載っていなかったはずだ。

 

「聞いた事ないです」アリスタ

 

「そうね、空を飛ぶのは虫か鳥か、大型ならワイバーン、それにドラゴンくらいかしら」

 

 虫は勘弁してほしい。しかしワイバーンとドラゴンは魔力で飛んでいるのは判っているので何時か魔法陣に出来ないか考えよう。

 

「気球とかもないのか」

 

「知らないわ、それって空を飛ぶ物なの?」

 

 イーリスの情報では割りとどこの人類も作っていたようだが、やはり魔法が使える関係だからか?

 クレリアも空を飛ばす物を知らないのなら、やはり発明されていないで無いのであろう。

 

「空に浮かぶ乗り物だよ、温めた空気を袋に溜めて浮かぶんだよ」

 

「何故それが空に浮かぶの?」

 

「うーん、空気は温まると軽くなって上昇するんだよ」

 

「???」

 

 クレリアもアリスタも理解できてなかった。やはりこの辺りは科学の基礎知識が無いのか。

 

 

(イーリス 簡単なランタンの構造を教えてくれないか)

 

[艦長 こんなので如何でしょう?]

 

(これなら簡単に作れそうだな)

 

 

「食事の後で見せてあげるよ」

 

 ありあわせの材料を準備してホールに集まる。

 十分ほどで紙製のランタンが出来た。

 

「まぁ見てて」

 

 と紙製の袋を逆さまにしたあと底面にランプの油を浸み込ませた紙をセットし、マッチで火をつける。

 少しして紙袋はふわりと浮き始め、天井まで浮き上がった。

 暖かい光がなかなか幻想的だな。

 

「ええ、何これ、凄い」クレリアはびっくりしながらはしゃいでる。

 

「何故こんなので浮くのですか?」アリスタも信じられない感じでいう。

 

「温まった空気は周りより軽くなって浮き上がるんだ これはただの自然現象だよ」

 

 理解はしてなさそうだけど、浮くところを見たことで納得はしてくれた。

 なおランタンは天井に着いたところで火が紙袋に燃え移り、燃えながら落ちてきたので、石造りでなければ火事になるところだった。

 

 しかしランタンを非常に気に入った女性陣は新城落成祭で披露し、翌年以降花火と共に祭りの名物となった。

 

 

 

 

 

 




評価、誤字脱字報告、御指摘、感想 等ありがとうございます。

次回更新は近日の予定です。
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