ライスター卿親子との打ち合わせが始まろうとしている時、ふと気付きクレリアに伝える。
「リア ライスター卿はスターヴァイン家に忠誠を誓ったわけだが、ライスターの名前のままでは何かの時に聞かれると問題が出る可能性あるな
暫定的に新しい名前と身分を与えることはできないか?」
「確かにそうだな、ライスター卿はどうだ?」とクレリア
「我々には悲願達成のためなら嫌はありません故、問題ありません」
「分かった…………それではひとまずマックスウェルを名乗られよ 仮の身分は準男爵としよう
個人名は自分で好きのものを名乗るがいい
もちろん悲願達成の時には名前は戻し、王家復興の際には相応しい身分を与えることを約束する」
「ありがとうございます、それでは私はこれより『ヴァーノン・マックスウェル』と名乗ります」
「……私は『アベリト・マックスウェル』とします」
これで迂闊に名前を呼ぶリスクも回避できそうだ。
「さてそれでは本題に入ろうか
領地を運営するにあたり組織を決める必要があるので、マックスウェル卿にはこの後の話を聞いて協力してほしい
まず前提となる状況を説明しておこうと思う
ロベルトも初耳の話があるはずなので聞いて欲しい
リア、打ち合わせ通りほとんどの内容は話していいのかな?」
「ああ、かまわないお願いする」
「さて、ではもうご存じだと思うが我々シャイニングスターは俺たちと旧スターヴェーク王国のメンバーが中核となっている
俺たちとは正確には自分とセリーナ、シャロンに加えてドラゴンのグローリアだけだ
領地を開拓してくれた支援者もいるがそちら開拓後は引き揚げてしまうので員数に入らないと思ってくれ」
「アラン エルヴィン達を忘れてるわよ」とセリーナ
声が冷たいのは仕方ない。
「そうだった、そう言えばエルヴィンの一族が最近配下になったなぁ」
あまり良い思い出ではないので旅してる間に忘れかけてた。
「アラン エルヴィンの一族というは初めて聞くのだけど……」とクレリア
「ああ、王国で暗部の仕事をしていた者たちだ
王都で宰相の指示を受けて俺を始末しに来たところを返り討ちにしたんだ
そしたら命乞いされ話を聞いたら今の宰相に一方的に契約を変更されて困ってると
是非主を変えたいからと懇願されてそのまま雇用したんだ、まぁ今はまだ試用期間だけどね
彼らについては俺よりマックスウェル卿が詳しいぞ」
あ、クレリアが口をパクパクしている。
「ほら、気前よく魔法剣をくれた人たちがいるといっただろ、彼らがそうだ
カトルのところに就けているユリアンが彼らの連絡係だ」
「アラン!! そんな大事なことを何故話してくれない!」
「アラン様 初耳です一体どう言うことですか!!」
「アラン どいうことなのですか!?」
みんな口々に叫びだした。あちゃ口が滑ったか。
「まあ終わったことだからいいじゃないか
セリーナシャロンが揃った俺たちを害することは、誰もできないと思うぞ」
「アラン 何度も言うがにあなたが居なくなればすべて瓦解するのだぞ」とクレリア
「終わったから良いとかそういう問題じゃありません!!」エルナ
セリーナとシャロンは顔をそらしてる、逃げるなおい……
「……まさかコリント卿はあの者たちを返り討ちにして、従わせるほどの実力者とは……」
マックスウェル卿、助かった!
「そうだな彼らは確かに手練れの者たちだった
とは言えたとえどれ程の大人数で俺を取り囲んでも、それくらいじゃ何の問題もないのはみんなは知っているだろ?」
「そうね、アランを殺すなら一気に首をハネるか、頭を潰すしかないわね」
セリーナ俺はバグじゃないんだぞ、物騒すぎないか!?
「毒も効かないし、剣なんてカスリもしないし、ドラゴンをもってしてもどうでしょうね」
シャロン、お前もか!
「君たちには後で話がある」
二人ともペロッと舌を出してごまかす……
「まぁその時に念のためマックスウェル卿の件にはかかわっていないか確認はしたら、関わってないと言われてな
それならと一族を村ごと召し抱えたが、問題あればなかったことにするぞ」
「いえ、確かにその通りで彼らを国外に送ったところを陥れられました
彼らは非常に優秀なものたちですので、間違いなくコリント卿の良い力となってくれるでしょう」
「判った、それでは彼らと約束しているものが叶えば厚遇しよう」
「彼らとの約束とは?」
「ああ、ギニーアルケミン あれを入手してもらう手筈になっている」
さすがのマックスウェル卿も目を見開いて絶句してる。
「…………あれは宰相だった私でも詳細を知らされていないものです
そうですか、しかし彼らであれば情報を引き出し、物を入手することは可能かもしれません」
「さすがに評価は高いな、期待しよう」
「しかしアラン様 そのようなことならあまり信頼の置ける者たちではないのではないですか!
今後は警護の者とは離れないでください」
「ダルシム副官 君たちのせいもあるのだぞ
街中で防御円陣をとったところを見られたせいで我々の正体がばれ、宰相に知られるところだった
あのまま味方にできなければ、彼らを始末するしかなかったのだ
俺は無駄に人を殺めたりはしたくない」
「……まさか……それは……申し訳ありません」
とりあえず責任転嫁してすり抜ける。すまないな。
「それに里の者たち全員領地に来るのだ、嫌な話だがそうなれば裏切りようはないさ
その話はここまでにして、話を戻そう
続いてクレリアの勢力だが、ダルシム副官をはじめもちろん元スターヴェーク王国の者たちだ
主には近衛の者たちとロベルト率いるルドヴィーク辺境伯ゆかりの者たちになる」
「これは予想しておりました」
「そして俺たちの目標はまずは領地の開拓だな、と言ってもすでに開拓は終わっているのだが」
「真ですか!?幾度となく失敗した魔の大樹海の開拓が終わっているとは、俄かに信じられません」
ああ、もの凄い既視感に襲われる。
「問題ない、条件が整わない場合はリアにも降りて構わないと言ってあるくらいだ
ベルタ国王からは領地の開拓に成功した暁には辺境伯にしてもらえる約束もある
先ずはその体制と生活の基盤を固めることがここ一~二年の目標だな」
「おお、そこまで約束されているのですか」
「ついでに言うとこれもあるぞ 盗賊限定だがな」
と護国卿の盾を見せると目を丸くして何度目かの絶句をしていた。
「その後は機を見てベルタ王国やセシリオ王国、それにアロイス王国を併合するつもりだ
スターヴェーク王国の復活とともにスターヴァイン、ルドヴィーク両家の復活がクレリアの悲願となる
マックスウェル卿やクレリアの悲願はこの段階で達成出来るだろう」
「ありがとうございます」
「俺の最終的な目標はこの大陸を統一し、民が十分な教育を受けることだ」
「アラン様 民に十分な教育を受けさせるためだけに大陸を統一なされるのですか?」
「ああ、そうだ 俺の目的は民の教育だな
民に自分の周りの事、この世の理を知ってもらい、幸せに生きて人生を全うしてもらう
俺が望むのはそれだけだ
たちまち新しい領地では十八歳までは原則学校に通ってもらう」
「それは、流石に私もすぐに理解が追いつきませんがアラン様が考えられてるのであれば間違いないのでしょう」
あれ、妙に評価高くないか?
クレリアでも結構否定的だったのに。
「目的はこれでいいかな?」
「はい」
「続いて領地の情報だが、
王都を出発する時点で余裕を見て一万五千、家族構成を無視して詰め込んでもいいなら三万五千から四万の住居は確保している」
ふたたびマックスウェル卿が目を見開いて絶句している。何度目だ。
そう言えば最近は状況を聞いてなかったな。
(イーリス 最新の情報を教えてくれ)
[現在は二万五千人、最大収容人員は七万人程度です]
(随分進んだな)
[グローリアが石材を運んでくれるのでもの凄く捗っています]
(そうなのかお礼を言っとかないとな)
新しい情報は今は黙っておこう。
「…………それほどの規模の街はベルタ王国でも数えるほどしかありませんぞ」
この世界は王都でも十万人程度に規模で、国として三十万人も居れば大国なのは把握済みだ。
「確かにな
そして今回領地に入植する第一陣のメンバーは次のとおりだ
・王都で募った職人とその家族や文官、冒険者、孤児、あと教会関係者 約千六百名
・スターヴェーク王国ルドヴィーク辺境伯軍 約千名
・シャイニングスターのメンバーと関係者 百人余り
合計二千六百名でスタートだ」
「まさか開拓前の領地に教会関係者が来ていただけるのですか?」
「ああ、王都でゲルトナー大司教と懇意になれてね
孤児を連れてくることと半ば引き換えみたいなものだが、司祭とシスターの派遣を決めてくださった」
「ああ女神ルミナス様、感謝します」
おっとマックスウェル卿は敬虔な信者だったのか、ロベルトとは話が合いそうだ。
「引き続き第二陣以降の予定だ
・スターヴェーク王国ルドヴィーク辺境伯軍 残り約千名とその家族合わせて四千人
・エルヴィンの里の者 二百人余り
・スターヴェーク王国ゆかりの者たち 約一万八千名
・王都や他の街からの移民はまだ読めないが、孤児や文官経験者を中心に少しずつ募集する事になる
ガンツに比べるとまだ少ないが、すぐに似た規模の街になるだろ」
「なんと、既にそれほど多くの領民が予定されていようとは思いませんでした」
「何か気づいた事はあるか?」
「そうですな、現時点で領民は騎士や冒険者、それに職人に偏っており孤児が多いのも気になります
商人や何より食料を生産する農民が足りて居ないように思われるのですが」
流石に気づいたな。
「ああ、理解している
実は現時点では領民はほぼ全て領地で雇用することにする、給金制だな
誰もが儲けれないが、普通に働けば飢えはしない仕組みだ
もちろん頑張ったものには報酬があがるし、サボったものは下がるようにする
そして領地で生産したものや猟で得た物を売ったお金で、給金を払ったり食料を購入する予定だ
この制度は暫定的に五年を予定しておりそれ以降は自由にする」
「まさかそのような仕組みを考えておられるとは、確かに領地を立ち上げたばかりであれば有効な仕組みかもしれません」
この世界ではありえない考えなのに理解が早い。
流石に幽閉されてまで政策のアドバイスをしてただけある。
「しかしそれだけの資金を何処から調達される予定なのでしょうか?」
「一つは魔の大樹海産の素材だ、これは騎士や冒険者などで調達するが、領地の開拓時に集まった素材も沢山あるので放出すればそれなりの額になる
放出しすぎると価格が下がるので売る量を制限するか、素材を加工したものを売る必要がある
ごく短期的にはこのお金とクランがすでに持っている資金が元手だ」
「二つ目は領地だけで生産出来る特産品を作る、具体的には酒と魔道具だな
長期的にはこっちの稼ぎが多くなるだろう
今のところ二つの柱で資金を回す」
「やはりそこまで考えられているのですね 素晴らしいです
その特産品についての目処はどの様にお考えでしょう?」
「酒については職人と資材が揃えば半年後に目処が立つだろうが、利益になるのは一年から二年はかかるだろう
特産品についても似た感じだと思ってくれ」
「分かりました、穀物の生産については?」
「農業が形になるのはスターヴェークからの移民が来てからだから、当面は購入に頼るようになる
商人が少ないがガンツの商人、それにカトルの父がゴタニアで雑貨商をやっているのでその伝手を頼ることになるだろう」
「分かりました、そこまで考えておられるのであれば後は我らで進められるでしょう」
「では続いて組織としてだが、現在シャイニングスターは冒険者のパーティとしてリーダーが俺で次席がセリーナ、三席がシャロンとなる
それに加えてクレリアとエルナの五人で冒険者ギルドに登録してある
クランはダルシム副官以下、一チームあたり十名、十チームの合計百名を登録している
残りは商人組と呼んでいるカトルと配下の者が数名だな
ここまでが現時点の主要なメンバーの話だ」
「はい、理解しました」
「最後にこれからの組織の案になる
まずクランは解体し、領地の管理と維持を行う新しい組織に再編成する
と言っても冒険ギルドに登録してる事もあり形としては残す事になるけどな
まず大きく武官と文官の組織に分け、それぞれセリーナとシャロンに長に着いてもらう
武官の副長はダルシム副官だ、これは特に今までとは変わりないと思ってくれていい」
「分かりました」
「その下は大きく三組織で、騎士、治安維持、冒険者になる
役割は名前でだいたい分かってもらえると思う
ああ騎士は儀礼用程度なので人数は不要だ
大っぴらに戦力を拡大していると思われるのはよろしくない
治安維持は街中や街道の警備部隊となる者たちで、戦力としては主力部隊になる
冒険者はそのままだな、樹海で魔物を狩ったり商隊の警護で移動したりが主な仕事だ」
「もし武力行使が必要となった場合は全員で対応する事になる」
「続いて文官の副長はクレリアだ
エルナは本来武官だがクレリアの付き人兼補佐としたい
それでいいかな?」
「もちろんです!」
「騎士長に推薦しても良いんだぞ」
「いえ、付き人でお願いします」
「分かった、では文官の事も勉強してくれよ」
エルナは苦手だが頑張るだろう。
「さらに補佐としてロベルトに着いてもらう、頼めるか?」
「勿論です」とロベルト
「そしてマックスウェル卿にも補佐として、文官の組織が国の運営に耐えられる物になるようにアドバイスをして欲しい」
「ありがたく拝命致します」
「文官の下の組織としては多岐にわたるので一例を上げると
生産系
・職人(木工、金属、ガラス、陶器)
・酒
・魔道具
商業系
・商人
・宿屋
・飲食店
領地運営
・税務関係
・給金の管理
・街の環境維新など
と、ざっと思いつくだけでこれほどある
沢山あるので整理してほしいが、とはいえ先ずは生活環境を整える事が優先課題だ
ロベルト、この辺りは文官達に伝えてマックスウェル卿と組織を立ち上げることを進めて欲しい」
「承知しました」
「さっきも言ったように、しばらくはすべての領民を雇用する形態なので、必ずどこかの組織に所属するようになる
そのためにまずは正確な名簿づくりを最優先で行ってほしい
職人の妻や赤ん坊など働かないものが居るかもしれないが名簿には必ず載せるように頼む」
「「「承知しました」」」」
「あとグローリアには門の番人(龍)になってもらうつもりだからセリーナ配下になる」
「分かりました」
「エルヴィンについては当面俺の直轄だな
それと教育関係は例外的にセリーナとシャロン二人で管理して欲しいのでよろしく頼む」
「「任せてください」」
「ああ、一つ大事なことがある
役職は家柄ではなく個人の能力でもって任命してほしい
能力が高ければ平民だろうが孤児だろうが問題なく重用すること
これだけは徹底してくれ」
最後の一言はなかなか衝撃的だった様でセリーナシャロン以外はみんな唖然としてた。
帝国では普通なのだから仕方ない。
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