航宙軍士官、貴族になる   作:あんさん

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136.戦略会議

 宰相ヴィリスとガンツ伯がアランを排除しようと話し合っていた頃、アラン達もまた話し合いを重ねていた。

 

「さて、どうやって宰相とガンツ伯を引きずり落としたものかな」

 

「やはり、脱税を中心にマックスウェル卿の件を絡めるべきでしょう」とはクレリアだ。

 

「リア様の言われる部分で攻めるのが正統でしょう

 それにガンツ伯の家令をこちらに引き込んだことで、こちらが取れる手段は大幅に広がります」

 

 と続けるのは当のマックスウェル卿だ。

 

「税に関しては確かに重罪ですが多少の不正は見逃されることも多いので、どれ程の額かを明確にする必要はあるでしょう」

 

「ふむ、どうせ裏金はとんでもない数字になるだろうから心配は要らないがそこはきちんと証拠として押さえておこう

 後は王の権利を私物化しているというのはどうだ?」

 

「それも良さそうです」

 

「叩けば埃は沢山出るだろうが、致命的なものを探さないとなあ」

 

「まぁいざとなれば私がされたようにでっち上げればいいでしょう」

 

 表面上は笑いながらも、目の奥に凄みを出しながら言う。

 

「そうだな、それも一考しようか 近いうちに一度エルヴィンに会いに行って報告を受け取っておこう」

 

「であれば、また手紙を書いておきましょう」

 

 既に何度かエルヴィン達に手紙は配ってもらっていたので、マックスウェル卿も勝手は判っている。

 

「ああ、よろしく頼みます 王都に行く時には直接挨拶に行くことを考えているので、その旨も添えて欲しいですね」

 

「承知しました」

 

 披露宴で一部の貴族たちとは会談したのだが、代理の者も多かったので是非とも会って話す必要があるだろう。

 何といってもライスター卿の伝手は貴重な上に強力なのだ。味方につけない手はない。

 

「アラン 商人関係から入手した宰相の悪事についてはここにまとめてあります」

 

「アリスタ ありがとう」

 

「私たちに入手可能な情報は自身の地位で握りつぶせるくらいの物しか無かったわ

 流石に抜け目ないとしか言えませんね」

 

「そうだろうな、そうでなければ宰相の地位まで登り詰められないだろう」

 

「ただ噂としてですが他国と大使との交流で、怪しいと思われるのは幾つかありました」

 

「ふむ?」

 

「幾つかの国の大使とかなり親密度が高いようです

 中でもセシリオやアロイスの大使とは懇意にしていて、頻繁に訪問を受けたり、夜会等で親しく会話したりしている様子が目撃されていました

 その大使自身は王子派のようで、大使としての立場にかかわらず攻撃的な発言が何度も物議をかもしている人物です」

 

「ふむ、ベルタを攻め落としたらベルタをお前に任せてやるぞ!くらいの話をセシリオから吹き込まれて仲が良くなっていると面白いのだが…

 ダメもとでエルヴィンに探らせてみようか」

 

「アラン そう言えばエルヴィン達に襲われた時に『報告しても手を打ってくれない』と言っていた気がするわ」

 

 セリーナに言われてもすぐに思いだせないので確認する。

 

(イーリス その時の映像を再生出来るか?)

 

[はい艦長 再生します]

 

 少し手前から早送りで表示され、該当箇所は通常で再生される。

 前後を見て確かにそういう発言があった事を思い出した。

 

「思い出した、確かに言っていたな

 セシリオと懇意にしていて、都合が悪い報告を握りつぶしていたと考えるのも不自然じゃないな」

 

「流石にそこまで国賊ではないかと思いたいですが…

 しかし宰相以上の地位を望み国王になれない以上、それくらいしかありませんね」

 

 渋い顔をしながらマックスウェル卿が言う。

 

「そういえばエルヴィン達をセシリオに送り出していただろう?

 あれはやはり王子の動きを探らせていたのか?」

 

「ええ、そうです 老国王の容態と国民の動向を調べさせていました

具体的には王子の軍国主義に賛同する者たちがどの程度いるか?

 ベルタ王国へ侵攻する可能性はどれくらいあるか?

 などでありましたが、ご存じの通り報告は聞けずじまいです」

 

「ふむ、現時点では王子が国王になればベルタ侵攻は既定路線になっているから、開戦は避けられないだろうな」

 

「残念です あの時に報告を受け取っていられれば、兵力を増強するなど準備のやりようもあったのに」

 

「そう悲観しなくてもいいぞ まだ時間はあるし、最後は俺たちでセシリオを相手してもいい」

 

「そうですね、このタイミングでアラン様が男爵から辺境伯になられる予定なのは、まさに女神ルミナス様のお導きです」

 

 そこは宗教に頼ってほしくないが、確かに俺という存在は間違いなくセシリオにとっては予想外の障壁になるだろう。

 ベルタでもそれに気づいているものは居ないけれども。

 

「とは言えそれは良い情報だな

 国家反逆罪とまでいかなくとも宰相の仕事をサボタージュしているのだから、十分に更迭に値するだろう」

 

「でもアラン、さすがにその証拠を集めるのは大変なのでは?」

 

「そうだな、まぁそれは状況証拠だけ突き付けておいて、王都でやってもらえばいいだろう

 崖から蹴り落とす最後の一押しになるだろうさ」

 

「なるほど、状況証拠であれば十分に集まるでしょう」

 

「しかしそれならばスターヴェークで謀反が起きた時にベルタ王国が動かなかったことや、ハインツやブルーノが幽閉されていたことにも関係あるかもしれないわ」

 

 リアが憤慨しながら続ける。

 

「なるほど、あの脱走から後に問題になっていないことを考えると宰相が握り潰している可能性もあるか」

 

「あの後手配書が回ることもなかったですし、その可能性は高い気がしますね」とはシャロン。

 

「ライスター卿を幽閉していた時点で真っ黒だからな、大っぴらに捜索できないとしても放置され過ぎか」

 

 状況が怪しいのは間違いないが、これも証拠を集めるには難しかろう。

 

「そういう訳で直近はガンツ伯と宰相への工作が最優先だが、中期的にはセシリオの対応が必要になる

 後者はベルタに攻めてくるタイミングでカウンターを浴びせて、攻め込みたいところなだ」

 

「攻め込むのですか?」

 

 マックスウェル卿やダルシムが驚いたように言う。

 

「可能ならなそうだな、そしてセシリオの樹海側の街くらい貰っておこうじゃないか

 街道を通せば十分取引先として取り込めるだろうし、魔の大樹海の資源を独占するのもいいぞ?」

 

 老国王が倒れ、若い王子が軍国主義に舵を取ったとしても、ほころびは多いから付け入るスキはあるはずだ。

 

「…流石アラン様ですね」

 

 随分呆れられたような反応だ。心外だな。

 

「そういうことでベルタ王国の兵と共闘する場合は、セシリオ側はわれらの兵だけで対処したい」

 

「判りました」

 

「どうせ国を建てればいずれセシリオも簒奪の対象だからな」

 

「確かにそうです」

 

「ああ、この領地だけで独立してもいいが、さすがに取引先がガンツだけであれば兵糧攻めをされるときつい

 だからこそタイミングと国土は慎重に選びたいところだ」

 

「それに建国後に最短でアロイスを狙うにしても、セシリオの脅威は排除しておきたい

 アロイスを攻めている横からちょっかいを出されても堪らないだろう?」

 

「そうですね」

 

 イーリスと計画している本当の理由はまだみんなに伏せているが、大筋では違いは無い。

 こうしてアラン達も辺境伯になることを見越して着々と準備を進めていたのだった。

 

 





週二回、水曜、日曜に更新予定です。

これで二十万文字になりました。
自分でもここまで書けるとは思いませんでした(笑)
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