予定をできる限り前倒し、王都に着いたのは出発の二十二日後であった。
強行軍で四日から五日は日程を稼げたため、その日数分を王都での活動に充てる事ができる。
「アラン様 私は無事到着したことを報告してきます
何かあれば使者を向かわせることになりますが、宿泊場所はどちらでしょうか?
「今回は宿屋ではなく、王都に準備した滞在中に利用する屋敷になります
場所はここですね」
簡単な通りが書かれた地図で場所を教える。
「ここですか! 承知しました なるほど確かにあそこであればアラン様に相応しいと思います」
どうやらフォルカーはその場所を知っているようだ。
そしてフォルカーと別れ王都滞在中の宿泊場所である屋敷に向かう。
高級宿に泊まる選択肢もあったのだが、今回カトルたちは屋敷を手配したのだ。
万が一襲撃されることや扱う情報の秘匿性、食事から交流までを考えると、屋敷の方が都合が良いという理由であった。
仮に襲撃されるとしても関係ない人を巻き込まないのもポイントが高い。
ちょっと古い建物で男爵には立派過ぎるが、辺境伯には格式が足りないといった物件である。
元は武家である子爵の居住地だったと聞いているが、かなり堅牢な作りで警備の者たちが寝泊まりする宿舎も十分ある。
貴族街の外れにあり、守備隊にも近く、荒事を起こすには向いてない場所だったのも決め手の一つだ。
「カトル 良い感じの屋敷じゃないか」
「ありがとうございます、アラン様 ちょうど良い物件があったので押さえて大慌てで改修しました
時間が足りずまだ全て終わっていませんので、使えない部屋などもあり申し訳ありません」
「大丈夫だよ、それにしても一~二カ月程度の滞在には勿体ないな」
「とは言え警備を考えますと宿では難しいこともありますので、ここは丁度良いかと思います
それに辺境伯ともなれば王都に屋敷を構えないことには、ちょっと格好が付きません」
そうなのか? 貴族は色々面倒だなとは心の中で思ったのだが、ダルシムたちに辺境伯ともなればそういう立場でもなくなると言われ説得されたのだ。
そもそも王都滞在は短期間の予定のため、屋敷までは必要ない気がするが仕方ない。
屋敷内を一通り見て回りながら、同行してきた技術兵に仕上げの魔道具の設置を頼んでいく。
魔道具まで持ち込んだのでかなりの大荷物になっていた。
内装はカリナとカトルが王都の商業ギルドに頼んであっただけあり、きちんと仕上げが出来ている。
これなら滞在中は十分で問題ないだろう。
応接兼執務室へ向かい、主要なメンバーに声を掛ける。
「ダルシム、カトル、荷物を置いたら打ち合わせを行うので、ここに集まってくれる様に伝えてくれ」
「「承知しました」」
「アラン様 私は荷物を私室に片づけてきます」
「ああ、済まないよろしく頼むよ」
カリナは今回の滞在中は同室で過ごす事になっていた。
他の四人にこれ以上増えないよう監視するように言われているらしい。
そんな監視は心配いらないよと言うと、俺ではなく捻じ込んでくる貴族や商人を監視する!との事だった…
こうして王都の屋敷で生活が始まった。
◇◇◇◇◇
翌日、先ず向かったのは教会だった。
「ゲルトナー枢機卿はおいででしょうか? アラン・コリントと申します 王都に参りましたので挨拶に伺いました」
「コ!コリント卿 承知いたしました、ご案内しますのであちらで少しお待ちください」
良かった、先に手紙を送っていたがきちんと話は通っていたようだ。
受付のシスターたちが慌ただしく対応をするため奥へ向かっていく。
案内された応接室で上等なお茶とお菓子をいただいていると、ゲルトナー枢機卿が現れた。
「コリント卿! お待たせしました」
「ゲルトナー枢機卿 ご無沙汰しております」
「久しぶりですね、お噂は聞いておりますよ、いよいよ辺境伯だそうですね」
「ありがたい話です 枢機卿が司祭の派遣を決めてくださったお陰もあり、入植希望者に恵まれました」
「それはきっかけに過ぎませんよ、魔の大樹海を開拓できたのはひとえにコリント卿のお力でしょう」
「それでも教会が出来たことは大きかったです
お陰で無事も陛下に呼ばれ王都に来られたのですから、感謝しかありません」
「新しく辺境伯に任命されるなど滅多に有る事ではないので、王都はその噂で持ち切りですよ」
「そこまでですか? 昨日王都に着いたばかりで、街の様子まではさっぱり判らないのです」
それ程話題の人物が、将来国に謀反を起こし建国などしようものならどうなることかちょっと考えたくない。
「ええ、それはもう熱狂的ですね、正式に辺境伯に任命された後にパレードを行ってみてはどうですか?」
「パレードは勘弁してください、結婚式で懲りましたので…」
思い返しても本当にあれは辛かった。
「そうなのですか? コリント卿の奥様方はかなり楽しんでいたように見えましたが」
「彼女たちはそうですが、私は向いてないと身に沁みました」
しばらく歓談したのち、正式任命後に相談したいことがあるのでまた訪問すると約束をして教会を後にする。
今回は使徒の夢の話はせずに済ませた。毎回だと不審すぎるからだったが、別れ際には少し残念そうであった。
続いてはライスター卿の伝手で繋がりを持った、王都の貴族たちへの対応だ。
先ずは結婚式に出席してもらった同程度の格式の貴族たちを順に訪問する。
アポイントを取る余裕がなかったため挨拶という体で訪問し、伝言を頼むつもりだった。
が、今を時めく話題の人物の訪問!…と言う為かほぼ全員が会ってくれたのだ。
数日後に屋敷で予定しているパーティの招待状を手渡し、もし良ければ参加して欲しいと伝える。
勿論もし良ければ格上の貴族の方にも挨拶したいのでアポイントが取れないか打診して欲しいと、頼む事も忘れない。
手土産として持参したお酒には大いに喜んでくれたので、スムーズに話は進むだろう。
そして何人かに側室へどうだと娘の売り込みを受けそうになったのはお約束である。
貴族の挨拶の後はガンツ伯を失脚させるための準備だ。
王都での予定は目白押しであった。
週二回、水曜、日曜に更新予定です。